メスの渡し方|刃の種類・付け外しと電気メスの扱い方

1年目🔰まずコレ
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🔪 執刀医が「メス」と言ったとき、手で渡しますか?置きますか?

メスは、器械出しで最初に渡すことが多い器械です。
そして、看護師自身がけがをしやすい器械でもあります。

答えは「基本は置いて渡す」。手で渡すときにも、守る向きがあります。

✅ この記事では、メスの渡し方・刃の種類・付け外しと、電気メスなどエネルギーデバイスの扱い方を、1年目向けに整理します。

手術室で10年働き、診療科リーダーとして新人指導にもあたってきた経験をもとに書いています。配属前の予習にも、初めての器械出しの前日の確認にも使ってください。

この記事を書いている人

オペ看めろん

オペ看めろん🍈

年間6,000件以上の手術室で10年間積み上げてきた経験を基に、記事・サイトを更新中

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メスの渡し方は「置いて渡す」が基本

結論から言うと、メスは手から手へ直接渡さず、トレイなどに置いて受け渡すのが基本です。

この方法を「ハンズフリーテクニック」と呼びます。看護師と術者が、同じ瞬間に同じ刃物を持たないようにする方法です。

厚生労働省の研究班がまとめた院内感染対策のガイドライン案でも、手術時の鋭利器材の受け渡しにはハンズフリーテクニックを用い、手での直接の受け渡しを避けた方が良いとされています。

メスの安全な渡し方。ニュートラルゾーンに一旦置いて受け渡す方法と、直接渡すときは刃先を下に向け自分側にして柄を術者に向ける方法
手と手が直接ぶつからないようにします

トレイ(中間ゾーン)での受け渡し手順

看護師と術者のあいだに、膿盆や専用トレイを置きます。この場所を「中間ゾーン」や「ニュートラルゾーン」と呼びます。

  1. 術者の利き手側で、手が届きやすい位置にトレイを置く
  2. 「メス置きます」と声をかけて、柄を術者側に向けて置く
  3. 術者がトレイから取り、使い終わったらトレイに戻す
  4. 戻ってきたメスは、看護師が器械台の決まった場所へ戻す

置く位置やトレイの種類は、施設によって異なります。最初の器械出しの前に、先輩に置き場所を確認しておきましょう。

手渡しするときの向き

術者の希望や手術の流れで、手渡しになる場面もあります。そのときは、刃が誰の手にも向かない向きで渡します。

  1. 看護師は、メスホルダーの刃に近い部分を持つ
  2. 刃先は下に、刃の切れる側は自分側に向ける
  3. 柄を術者の手のひらに、軽く当てるように渡す
  4. 術者が握ったのを確かめてから、手を離す

術者の持ち方には、細かい切開で使う「ペン持ち」と、上から握る「テーブルナイフ持ち」があります。

術者の持ち方使う場面の例
ペン持ち(ペンホールド)15番などで細かく切開するとき
テーブルナイフ持ち10番などで皮膚を長く切開するとき

どちらの持ち方でも、術者が握る柄の部分を空けておくことが大切です。持ち方の好みは術者によって違うので、迷ったら先輩に確認しましょう。

「渡す」より「置く」が基本

メス刃の種類と10・11・15番の違い

結論として、1年目はまず「丸い刃(円刃)は長く切る、尖った刃(尖刃)は刺して開く」と覚えれば十分です。

メスは、持ち手の「メスホルダー(メスハンドル)」に、使い捨ての「替刃」を付けて使います。

刃の番号形主な使い方
10番円刃(大きめ)皮膚や腹膜を長く切開する
15番円刃(小さめ)顔や手など、細かい切開
11番尖刃刺して小さく開く。膿瘍の切開など
20番台円刃(大)大きな切開。大きいホルダーに付ける

10番・11番・15番は同じ大きさのホルダーに、20番台はひと回り大きいホルダーに付けるのが一般的です。

どの刃をどの手術で使うかは、術者や施設によって異なります。手術ごとの器械表で確認しておきましょう。

メス刃の付け方・外し方は持針器で

結論として、刃の着け外しは必ず持針器などの器械で行い、指で刃をつままないことが鉄則です。

メス刃の着脱。刃は必ず持針器でつかんで着け外しし、素手や指で触らず、外した刃はすぐ専用容器へ捨てる
着脱も廃棄も、必ず持針器で

付け方

  1. 持針器で、刃の根元(穴のあいている側)をはさむ
  2. 刃先を自分や人に向けず、下向きに保つ
  3. ホルダーの溝に、刃の穴を合わせて差し込む
  4. カチッと止まるまで押し込み、ぐらつかないか確かめる

外し方

  1. 持針器で、刃の根元をしっかりはさむ
  2. 刃の根元を少し持ち上げ、ホルダーの溝から浮かせる
  3. 刃先が自分に向かない方向へ、ゆっくり滑らせて外す
  4. 外した刃は、すぐに鋭利物用の廃棄容器へ捨てる

専用の刃の取り外し器具(リムーバー)を使う施設もあります。どの方法でも、刃を指で持たないことは共通です。

外した刃を器械台に置いたままにすると、片付けのときに切創事故が起きやすくなります。使い終わった刃は、その場で捨てる習慣をつけましょう。

メス刃は、針と同じように数を数える対象になることが多いです。カウントの方法は施設の手順に従います。

器械台には「鋭利ゾーン」を作る

結論として、メスや針糸の置き場所を最初に決めておくと、渡すときも片付けるときも安全になります。

私は器械台を並べるとき、メスや針糸などの鋭利物品の置き場所を決めて「鋭利ゾーン」を作っていました。

置き場所が決まっていれば、手を伸ばす先に刃物があるかどうかを毎回考えずにすみます。結果として、安全に器械出しができるようになります。

新人指導のときに見ていたのは、執刀医が実際に握る部分に、自分の手や指が重ならないように渡せているかでした。渡し方が上手い人は、ここが自然にできています。

メスはとくに、看護師の指が刃の近くにあります。術者の手と自分の手がぶつからない位置を、トレイでも手渡しでも意識してみてください。

エネルギーデバイスの違いを表で整理

結論として、エネルギーデバイスは「電気で焼くか、振動で切るか」で大きく分けると覚えやすくなります。

エネルギーデバイスとは、電気や超音波の力で、切開と止血を同時に行う器械のことです。

種類しくみ器械出しの注意
電気メス(モノポーラ)電気の熱で切る・止める使わないときはホルスターへ
バイポーラ先端の2本の間だけ電気が流れる絶縁型かどうかを確かめる
血管シーリング(リガシュアなど)電気の熱と圧力で血管を封止使える血管の太さに上限がある
超音波凝固切開装置(ハーモニックなど)超音波の振動で切る・止める使用直後の先端は熱い

電気メス(モノポーラ)

電気メスは、高周波の電流を組織に流し、その熱で切開や止血を行います。手術室でもっとも多く使われるエネルギーデバイスです。

多くの電気メスペンシルでは、黄色のボタンが切開(カット)、青のボタンが凝固(コアグ)です。機種によって違うこともあるので、使う器械で確かめましょう。

モノポーラでは、患者さんの体に「対極板」を貼り、流れた電流を回収します。対極板の貼り方や熱傷の予防は、電気メスとバイポーラの違いでくわしく解説しています。

バイポーラ

バイポーラは、ピンセットのような先端の2本のあいだだけに電流が流れるタイプです。対極板は使いません。

バイポーラピンセットには、先端以外が絶縁されている「絶縁型」と、されていない「非絶縁型」があります。PMDAの医療安全情報では、取り違えによる熱傷の事例が報告されています。

見た目では区別しにくいため、添付文書や施設の表示で確かめます。

血管シーリング(リガシュアなど)

血管シーリングは、組織や血管をはさみ、電気の熱と圧力で血管の壁を封止(シール)する器械です。封止したあと、内蔵の刃で切る機種もあります。

糸で結ばずに血管を処理できるので、消化器外科や婦人科の手術でよく使われます。ただし、使える血管の太さには上限があります。

たとえばリガシュアの添付文書では、直径7mmを超える血管には使わないこととされています。上限は機種によって違うので、使う製品の添付文書で確かめます。

超音波凝固切開装置(ハーモニック)

超音波凝固切開装置は、電気ではなく、先端の金属の細かい振動で生じる熱を使って、組織を固めながら切ります。

電気メスに比べて、周りの組織への熱の広がりや煙が少ないとされ、細かい剥離に向いています。リガシュアとの使い分けは、リガシュアとハーモニックの違いでまとめています。

注意したいのは、使用直後の先端が高温になっていることです。止めてもすぐには冷めないので、周りの組織やドレープに触れさせないようにします。

エネルギーデバイスの渡し方と置き方

結論として、エネルギーデバイスは「使わないときはホルスターへ、ドレープの上に置かない」が基本です。

使わないときはホルスターに戻す

日本医療機能評価機構の医療安全情報No.59では、電気メスペンシルを収納ケースに入れていなかったために、熱傷が起きた事例が報告されています。

開創器がスイッチに当たって通電したり、持っていた手で誤ってボタンを押したりした例です。使わないペンシルは、術野や手術台の上に置かず、ホルスター(収納ケース)に戻します。

先端をドレープの上に直接置かない

PMDAの医療安全情報No.33では、電気メスや光源の先端をドレープの上に置いて、ドレープが焦げ、患者さんがやけどをした事例が紹介されています。

腹腔鏡の光源ケーブルも、電源を切ってからしばらくは熱を持っています。先端の置き場所まで決めておくと安心です。

先端の汚れはこまめに拭く

電気メスの先端に焦げた組織がつくと、電気が伝わりにくくなり、切れにくくなります。術者が戻したタイミングで、こまめに拭き取りましょう。

拭き方には、専用のクリーナーや湿らせたガーゼなどがあります。先端の種類によって適した方法が違うため、施設の方法に従います。

コードの取り回しも器械出しの仕事

エネルギーデバイスのコードは、術野から本体までつながっています。ほかの器械やコードと絡まないように、ドレープへの固定位置を最初に決めておきます。

ME機器全体の点検やトラブル対応は、手術室のME機器の安全使用もあわせて確認してください。

1年目がつまずきやすいミスと対策

結論として、ミスの多くは「置き場所」と「向き」を決めていないことから起きます。

よくあるミス対策
刃の着け外しで指を切る持針器で根元をはさみ、刃先を自分に向けない
外した刃を台に置きっぱなしその場で鋭利物用の容器へ捨てる
トレイが術者から遠い術者の利き手側、手が届く位置に置く
電気メスを術野に置いたまま使わないときはホルスターへ戻す
先端の汚れで「切れない」と言われる戻ってきたタイミングで拭き取る

どれも、器械出しに入る前に「どこに置く?」「どっち向きで渡す?」を頭の中で決めておけば防げます。

次に渡すものを予測するには、術野をよく見て、執刀医と同じ目線で手術の操作を考えることが近道です。私は執刀医向けの医学書や参考書を読むことが、同じ目線で器械出しできるようになるのにとても役立ちました。

よくある質問

メスとエネルギーデバイスについて、新人からよく聞かれる疑問に短く答えます。

Q. メスを手渡ししてもいい?

ダメと決まっているわけではありませんが、基本はトレイなどを使うハンズフリーテクニックです。手渡しをするかどうかは、施設のルールと術者の希望に合わせます。

Q. 円刃と尖刃の見分け方は?

刃先の形で見分けます。刃先が丸くカーブしているのが円刃(10番・15番など)、まっすぐ尖っているのが尖刃(11番など)です。

刃の包装にも番号が書かれています。

Q. 電気メスの黄色と青のボタンは?

多くの機種で、黄色が切開(カット)、青が凝固(コアグ)です。機種によって違うこともあるので、使う器械で確認しましょう。

Q. 器械の渡し方をまとめて覚えたい

ハサミや鉗子の渡し方は、剪刀(ハサミ)の種類と渡し方と鉗子・鑷子の種類と渡し方でまとめています。

まとめ:メスは置き場所と向きで守る

メスとエネルギーデバイスは、患者さんと自分の両方を守る意識が必要な器械です。最後に要点をふり返りましょう。

💡 マスターチェックリスト

  • □ メスは基本、トレイに置いて受け渡しできる
  • □ 手渡しでは、刃先を下・刃を自分側にして柄を渡せる
  • □ 10番・11番・15番の違いを説明できる
  • □ 刃の着け外しを持針器で行い、外した刃をすぐ捨てられる
  • □ 器械台に鋭利ゾーンを作れる
  • □ 電気メスを使わないときはホルスターに戻せる
  • □ リガシュアと超音波凝固切開装置のしくみの違いを言える

次の器械出しでは、メスを手に取る前に一度だけ「どこに置く?どっち向き?」と自分に聞いてみてください。それだけで、手の動きに迷いがなくなります。

1年目に覚えることの全体像は、1年目オペ看の学習ロードマップで確認できます。

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参考文献

  • 厚生労働科学研究班.医療機関における院内感染対策マニュアル作成のためのガイドライン(案)「6 鋭利器材」.第4回院内感染対策中央会議 資料6.2007年3月.全文PDF
  • 日本医療機能評価機構.医療安全情報 No.59「電気メスペンシルの誤った取り扱いによる熱傷」.2011年10月.全文PDF
  • 医薬品医療機器総合機構(PMDA).PMDA医療安全情報 No.33改訂版「光源装置、電気メス、レーザメスを用いた手術時の熱傷事故について」.2017年3月.全文PDF(No.31〜40)
  • 医薬品医療機器総合機構(PMDA).PMDA医療安全情報 No.16「電気メス取扱い時の注意について(その3)」.2010年4月.全文PDF
  • コヴィディエンジャパン.ForceTriad エネルギープラットフォーム(LigaSure Atlas ハンドスイッチ式)添付文書.2023年7月改訂(第7版).全文PDF

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