【持針器(マチュー・ヘガール)】結紮糸の安全な渡し方も新人オペ看向けに解説

心臓血管外科・呼吸器
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「持針器から針がポロリと落ちてヒヤッとした…」
「糸が絡まって先生に渡すときパニックに!」

新人オペ看の皆様、いかがお過ごしでしょうか。

手術における「縫合(縫うこと)」と「結紮(縛って止血すること)」は、手術の終盤だけでなく、術中のあらゆる場面で頻繁に行われる超重要プロセスです。しかし、針や糸は細かくて絡まりやすく、何よりも「針刺し事故」という重大な危険が伴います。

この記事では、持針器(マチュー・ヘガール)の違いや安全な渡し方、結紮糸(糸のみ・鉗子付き)の扱い方まで、針刺し事故ゼロ&ドクターがスムーズに縫える器械出しの極意を徹底解説します。基本を制して、安全第一の手術室ナースを目指しましょう!

1. 持針器の種類と特徴:マチューとヘガールの違い

「持針器(じしんき)」は、その名の通り「縫合針を持つ(把持する)ための器械」です。大きく分けて2つのタイプがあります。

マチュー持針器

  • 特徴:柄の後端(おしり)の部分に板バネとラチェットがついています。「握れば閉じる(ロックされる)、さらに強く握れば開く(ロック解除)」というワンアクションの操作性が特徴です。
  • 用途:連続して浅い部分をスピーディーに縫う時(皮膚縫合や筋膜縫合など)によく使われます。
  • 注意点:「強く握りすぎると予期せず開いてしまい、針が落ちる」ため、針を取り付ける段階で自分が強く握りすぎないよう注意が必要です。

ヘガール持針器

  • 特徴:ハサミや鉗子のように「リング(指を入れる穴)」がついており、そこについているラチェットで固定します。
  • 用途:縫合時に持針器を持つ角度を微調整しやすく、深部での縫合(腹腔内、骨盤内など)や、硬い組織へ強い力で針を通すときに適しています。
  • 注意点:術前に「把持面(針を挟む先端部分の溝)の摩耗」がないか必ず確認してください。ここがツルツルにすり減っていると、縫合中に針がクルッと回転してしまい非常に危険です。

2. 針刺し事故を防ぐ!持針器の正しい渡し方

持針器の受け渡しは、手術室で最も針刺し事故リスクが高い瞬間です。以下のルールを徹底しましょう。

絶対に「針先」を手掌側に!縫合糸の向きは手背側!

  1. 針の向き:持針器に針をセットする際、針の先端(尖っているほう)が、「術者の手のひら(手掌)側」または上に向くようにセットして渡します。逆にセットすると術者は反対の手で持ち替えなければならず、その瞬間に針刺し事故が起きます。
  2. 糸のさばき方:縫合糸が術者の手や指に絡まないよう、糸の長い部分は術者の手背(手の甲)側、つまり外側へ垂れるように手で軽く持ち上げながら渡します。
  3. 声かけの徹底:必ず「針いきます」と声をかけ、術者がしっかり受け取ったことを確実に確認してから自分の手を離します。

器械台に置くときの鉄則

使用前・使用後に器械台(メイヨー台)へ置くときは、【必ず針を下向き(器械台の布地側)】にして置きます。上を向いた状態で置くと、別の器械を取ろうとした際に自分の手に刺さる恐れがあり大変危険です。

3. 結紮糸(けっさつし)の確実な渡し方

結紮(けっさつ)とは、血管などを糸で結んで縛る(止血する)ことです。
針がついていない「糸だけ」を渡すシーンですが、これも術者の状況に応じた気配りが必要です。

結紮糸(糸のみ)の渡し方

術野の深さや、術者の手の向き(右手で結ぶか、左手で受け取るか)に合わせて渡します。
ポイントは、糸の両端を自分の両手で持ち、糸が「ピーンと張った状態(ゆるみがない状態)」にして、術者の手掌にパンッと押し当てるように強めに渡します。たるんだ糸を手渡すと、術者が糸の端を見失って結紮作業に遅れが生じます。

鉗子付き結紮糸の渡し方

主に骨盤内や腹腔内の「深い部位」や「狭い創部」で結紮を行う場合、ドクターの手が直接奥まで届きません。
そこで、ペアン鉗子などの先端に糸をくっつけて渡します。

  • 鉗子の先端で、糸の端から約3mm〜5mm程度を浅く把持します(深く挟みすぎると術者が糸を引き抜けなくなります)。
  • 鉗子の先端がドクターの取りやすい向き(手掌側)になるように渡し、糸が術者の手に入り込まないよう、糸の余り部分は手背側へ逃がします。

4. 新人がつまずく!よくあるミスと注意点

⚠️ ミス1:糸が絡まって解けない!術者は待っているのに!

【対策】長い縫合糸(75cmなど)のパッケージを開ける際、焦って力任せに引っぱると一瞬で結び目ができ、使用不能になります。糸のパッケージの方向(引く方向が矢印で書いてあります)を必ず守り、ゆっくりまっすぐ一定のスピードで引き抜くのがコツです。

⚠️ ミス2:渡す瞬間に針が外れて術野へ落下!最悪の「針の体内遺残」リスク

【対策】原因のほぼ100%は「持針器のラチェット(ロック)のかけ忘れ(浅すぎる)」または「持針器の把持面の異常な摩耗」です。渡す前に自分の手元で必ず「カチッ」としっかり針が固定されてブレないか確認すること。異常な摩耗がある持針器は術前に必ず排除してください。

5. まとめ:持針器・結紮出しのマスターチェック確認!


💡 マスターチェックリスト



  • □ マチューとヘガールの違いを理解し、術前の「摩耗・亀裂チェック」ができる。

  • □ 針の先端を術者の手掌側に向け、糸を手に絡ませずに安全な受け渡しができる。

  • □ 器械台に置く時は、必ず針の先端を「下向き」にしている。

  • □ 糸だけを渡す時、たるまないようピンと張って渡すことができる。

  • □ 鉗子付き結紮の際、糸の端3mmを的確に把持してスムーズに渡せる。



縫合や結紮は、出血を止めたり傷口を閉じるという「患者さんの安全な回復」に直結する重要な場面です。

最初は針の向きを考えるだけで混乱するかもしれませんが、「もし自分が縫う立場だったら、どっちの向きだと縫いやすいか?」をイメージする習慣をつけると、自然と体が動くようになりますよ!

【参考文献】
・日本手術看護学会(編). 『手術室ナーシングマニュアル』.
・臨床実習・新人教育用資料『針刺し・切創防止対策ガイドライン』

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