ドレーンの挿入部位と種類|目的と術式別の位置を新人向けに解説

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💧「このドレーン、どこに入っているの?」と聞かれて答えられますか?

右横隔膜下、ウィンスロー孔、ダグラス窩。
手術室では、ドレーンの挿入部位が聞き慣れない言葉で飛び交います。

でも挿入部位は、暗記する言葉ではありません。「体の中で、液がどこにたまるか」が分かれば、自然に決まる場所です。

✅ この記事では、ドレーンの目的・挿入部位・種類と、器械出し・外回り・申し送りのポイントを、新人オペ看向けに整理します。

手術室で10年働き、診療科リーダーとして新人指導にもあたってきた経験をもとに書いています。配属前の予習にも、配属直後の復習にも使ってください。

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  1. 【まずは理解度チェック!】この記事の内容をテスト
  2. ドレーンとは?手術で入れる理由
  3. ドレーン留置の3つの目的
  4. ドレーンの挿入部位は「液がたまる場所」で決まる
    1. 腹腔内の主な挿入部位
    2. ダグラス窩ドレーンとは
    3. 左横隔膜下・ウィンスロー孔ドレーンとは
    4. 「挿入部位」と「留置部位」の違い
  5. 術式別・主なドレーン留置位置
    1. 消化器外科
    2. 心臓血管外科
    3. 胸部外科(肺・食道)
    4. 脳神経外科
    5. 婦人科・泌尿器科
  6. ドレーンの分け方:開放式・半閉鎖式・閉鎖式
    1. 受動的ドレナージと能動的ドレナージ
    2. サイズの「Fr(フレンチ)」の読み方
  7. 手術室で使用する主なドレーンの種類
    1. ① ペンローズドレーン — 受動型
    2. ② 閉鎖式ドレーン(JP・ブレイク)— 能動型
    3. ③ 胸腔ドレーン — 低圧持続吸引型
    4. ④ 脳室ドレーン
    5. ⑤ Tチューブ(胆道ドレーン)
    6. ⑥ シート状ドレーン
  8. ドレーン挿入の流れと器械出しの準備
    1. 器械出しのチェックポイント
    2. 外回り看護師のチェックポイント
  9. 排液の「色」と「量」が異常を教えてくれる
    1. 正常な経過:だんだん薄く・少なくなる
    2. 危険サイン:この色・この量は要報告
  10. ドレーンの申し送りで伝えること
  11. ドレーンのトラブルと「逆行性感染」を防ぐ
    1. 起こり得るトラブル
    2. 移送のときが、いちばん危ない
  12. 新人オペ看のドレーン「あるある失敗」と対策
  13. よくある質問
    1. Q. 腹腔鏡の手術でもドレーンは入る?
    2. Q. ミルキングは手術室でもする?
    3. Q. 胸腔ドレーンは移送のときにクランプする?
    4. Q. ドレーンの名前が覚えられません
  14. まとめ:ドレーンは「どこに・何本・どんな排液か」
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    3. ◆ 関連おすすめ記事
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ドレーンとは?手術で入れる理由

結論から言うと、ドレーンは体の中にたまる液体や空気を外へ出し、中の様子を外から見えるようにする管です。

出すものは、血液・滲出液(しみ出てくる液)・消化液・膿・空気などです。

  • たまった液や空気を体の外へ出す
  • 縫合不全・出血・感染などの合併症に早く気づく
  • 胸腔では、肺がふくらむのを助ける

ドレーンは入れっぱなしにするものではありません。目的を果たしたら、できるだけ早く抜くのが原則です。

体の中と外をつなぐ管なので、長く入っているほど細菌の入口になりやすいからです。抜くタイミングは、排液の性状と量を見ながら医師が判断します。

ドレーン留置の3つの目的

結論として、目的は「治療」「予防」「情報(モニタリング)」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

目的考え方と例
治療的ドレナージすでにたまった膿・血液・空気を出す。膿瘍ドレナージ、気胸・血胸の胸腔ドレナージなど
予防的ドレナージ術後にたまりそうな液を先に逃がす。吻合部の周り、肝切除後の切離面など
情報的ドレナージ排液の色や量で、体の中の変化に早く気づく。出血・縫合不全・膵液漏などのサイン

実際には、一本のドレーンが予防と情報の両方を担うことも多いです。

たとえば膵臓の手術のあとは、排液の色を見るだけでなく、排液のアミラーゼ値を測って膵液漏がないかを判断します。

手術室の看護師としては、どの目的で、どこに、何本入るのかを術前に把握しておくことが基本になります。

ドレーンの挿入部位は「液がたまる場所」で決まる

結論として、ドレーンの先端は液がたまりやすい低い場所と、トラブルが起きやすい吻合部や切離面の近くに置かれます。

お腹の中には、くぼんでいて液がたまりやすい場所がいくつかあります。仰臥位では、肝臓と右の腎臓のあいだ(モリソン窩)や骨盤の底(ダグラス窩)に液が集まりやすく、上体を起こすと骨盤のほうへ流れ込みやすくなります。

だから術式ごとに「どこにたまりそうか」「どこが漏れそうか」を考えると、挿入部位が覚えやすくなります。

腹腔内の主な挿入部位

部位どこにある?主な術式の例
右横隔膜下肝臓と右の横隔膜のあいだ肝切除、胃切除
左横隔膜下脾臓や胃の上、左の横隔膜の下胃全摘、脾摘、膵体尾部切除
ウィンスロー孔肝十二指腸間膜のうしろ(網嚢の入口)胃切除、肝胆膵の手術
モリソン窩肝臓と右の腎臓のあいだ肝胆道系の手術
ダグラス窩骨盤のいちばん深いところ直腸の手術、子宮全摘

同じ術式でも、何本入れるか、どこに置くかは術者や施設によって違います。上の表は「よく使われる場所の例」として見てください。

ダグラス窩ドレーンとは

ダグラス窩は、女性では子宮と直腸のあいだ(直腸子宮窩)を指します。男性で同じ位置にあたるのは、膀胱と直腸のあいだ(直腸膀胱窩)です。

腹腔の中でも低い場所なので、骨盤の手術のあとに血液や滲出液が集まりやすく、低位前方切除や子宮全摘などでドレーンを置くことがあります。

直腸の吻合部の近くに置くドレーンは、縫合不全に早く気づくための「センサー」の役割も担います。

左横隔膜下・ウィンスロー孔ドレーンとは

左横隔膜下は、胃全摘や脾摘、膵体尾部切除のように左上腹部を操作した手術で使われる場所です。

ウィンスロー孔は、肝臓の下で網嚢という袋状の空間につながる入口です。胃切除や肝胆膵の手術で、吻合部や切離面の近くに置かれることがあります。

「挿入部位」と「留置部位」の違い

現場では同じ意味で使われることも多い言葉ですが、分けて考えると申し送りが正確になります。

言葉指すもの
挿入部位(刺入部)皮膚からドレーンが出ている場所。「右側腹部」など
留置部位(先端の位置)体の中で先端がある場所。「右横隔膜下」など

ドレーンは手術の傷とは別に、小さく切った皮膚から出すことが多いです。腹腔鏡の手術では、ポートの穴から出すこともあります。

術式別・主なドレーン留置位置

結論として、吻合部・切離面・低い場所の3つを思い浮かべながら表を見ると、位置の意味が分かります。

消化器外科

術式主なドレーン留置位置
胃全摘術・胃切除術吻合部周囲・左横隔膜下・ウィンスロー孔
膵頭十二指腸切除術(PD)膵空腸吻合部・胆管空腸吻合部・肝断面下
肝切除術肝断面(カットサーフェス)・横隔膜下
低位前方切除術(LAR)直腸吻合部周囲(骨盤底)・ダグラス窩
腹腔鏡下胆嚢摘出術胆嚢床周囲(入れないことも多い)

詳しい手順は、膵頭十二指腸切除(PD)やラパコレの記事でも紹介しています。

心臓血管外科

術式主なドレーン留置位置
開心術(弁形成・CABG など)心嚢腔・縦隔・左右胸腔
大動脈手術(AAA・胸部大動脈)後腹膜腔・縦隔・胸腔

胸部外科(肺・食道)

術式主なドレーン留置位置
肺葉切除術・肺部分切除術胸腔(前方・後方)
食道切除再建術胸腔・頸部吻合部・腹腔内

脳神経外科

術式主なドレーン留置位置
開頭術(血腫・腫瘍)皮下・硬膜外(創部ドレーン)
慢性硬膜下血腫の穿頭術硬膜下(血腫腔)
脳室ドレナージ脳室(脳室内出血・急性水頭症など)

婦人科・泌尿器科

術式主なドレーン留置位置
子宮全摘・広汎子宮全摘術ダグラス窩・骨盤底リンパ節郭清部
膀胱全摘・回腸導管造設術骨盤底・尿管回腸吻合部周囲

どの表も、施設や術者によって本数と位置は変わります。配属先の手術手順書に、実際の位置を書き込んでおくのがおすすめです。

ドレーンの分け方:開放式・半閉鎖式・閉鎖式

結論として、種類の名前を覚える前に「外とつながっているか」「吸引するか」の2つで分けると理解が早くなります。

分け方特徴例
開放式体外の端を短く切り、ガーゼで覆うペンローズ
半閉鎖式体外の端にパウチなどをかぶせるペンローズ+パウチ
閉鎖式排液バッグまで管がつながっている多くの腹腔・胸腔ドレーン

閉鎖式は外気にふれないので、逆行性感染(外から中へ細菌が入ること)が起きにくく、排液の量も測りやすいのが利点です。

泌尿器科の開腹術後で、開放式から閉鎖式に変えたところ、細菌の検出やドレーンを抜くまでの日数が減ったという報告もあります。

受動的ドレナージと能動的ドレナージ

  • 受動的:重力や毛細管現象で自然に流れ出る
  • 能動的:リザーバーや吸引器で陰圧をかけて引き出す

サイズの「Fr(フレンチ)」の読み方

ドレーンやチューブの太さは、Fr(フレンチ)で表します。1Frは約1/3mmで、数字が大きいほど太くなります。

たとえば24Frなら、外径は約8mmです。準備のときは、種類だけでなくFr数まで術者に確認します。

手術室で使用する主なドレーンの種類

結論として、まずはペンローズ・閉鎖式・胸腔・脳室・Tチューブ・シート状の6つを、用途とセットで覚えましょう。

① ペンローズドレーン — 受動型

項目内容
素材・形状やわらかいゴム・シリコン製の平型チューブ
排液の仕組み毛細管現象・重力による受動的排液(吸引なし)
主な使用場面感染創・膿瘍腔・表在性ドレナージ
特徴構造がシンプル。開放式で使うことが多く、ガーゼの汚染に注意

ペンローズドレーンは、やわらかい平らなチューブです。吸引はかけず、重力と毛細管現象で液を出します。

開放式で使うときは、体外の端に安全ピンなどを付けて、体内に入り込まないようにします。付け方は施設の手順に従います。

② 閉鎖式ドレーン(JP・ブレイク)— 能動型

項目内容
素材・形状シリコン・PVC製。丸型(JP)や、溝の入ったブレイク型
排液の仕組みバルブ式リザーバー(容器)の陰圧による能動的排液
主な使用場面腹腔内・乳房切除後・リンパ節郭清部
特徴閉鎖回路で感染リスクが低い。排液量の計測が容易

閉鎖式ドレーンは、リザーバー(排液をためる容器)をつぶして陰圧をかけ、液を引き出します。

留置して皮膚に固定したあとでリザーバーにつなぎ、陰圧をかけるのが一般的な流れです。陰圧のかけ方は製品ごとに違うので、添付文書と施設の手順で確認しておきましょう。

③ 胸腔ドレーン — 低圧持続吸引型

項目内容
素材・形状硬めのPVC製大口径チューブ(20〜32Fr)
排液の仕組み水封式チャンバー+低圧持続吸引(圧は医師の指示)
主な使用場面肺切除後・開心術後・気胸・血胸・胸水
特徴エアリーク(気泡)の有無で肺瘻を確認できる

胸腔ドレーンは、胸腔の液や空気を出し、肺がふくらむのを助けます。水封式のチャンバーにつなぎ、医師の指示した圧で吸引します。

外回り看護師は、チャンバーの準備・水封の水の注入・接続を担当することが多いので、使う機種の手順を事前に確認しておきます。

PMDAの医療安全情報では、胸腔ドレーンの挿入で肺や大動脈を傷つけた事例が紹介されています。肋骨のすぐ下には肋間動脈・静脈・神経が走っているため、挿入の位置と方向に注意が必要です。

④ 脳室ドレーン

項目内容
素材・形状細径シリコン製チューブ
排液の仕組み重力による受動的排液(排液高さで圧を調整)
主な使用場面脳室内出血・水頭症・術後頭蓋内圧管理
特徴排液高さ(基準点=外耳孔)の設定が厳密に必要

脳室ドレーンは、脳脊髄液を出して頭蓋内圧を調整します。排液の高さが圧に直結するため、外耳孔をゼロ点として高さを合わせるのが基本です。

日本医療機能評価機構の医療安全情報では、回路のクランプを開けるときに大気に開放するクランプを開け忘れ、排液が出すぎた(オーバードレナージ)事例が報告されています。

移送のときのクランプの順番も施設で決まっています。脳外科の手術に入る前に、手順を必ず確認しましょう。

⑤ Tチューブ(胆道ドレーン)

項目内容
素材・形状T字型ラテックス・シリコン製チューブ
排液の仕組み胆汁の重力排液(受動型)
主な使用場面総胆管切開後・胆管結石の除去後など
特徴T字部分を総胆管内に留置し胆汁を外部に誘導

Tチューブは、T字の部分を総胆管の中に置き、胆汁を体の外へ出します。器械出しは、サイズ(Fr数)を術者に確認してから渡します。

術後は、胆汁の色・量・濁りが大事な観察項目です。

⑥ シート状ドレーン

薄いシート状のドレーンで、肝臓の切離面や骨盤底など、広い面から液を集めたいときに使われます。

チューブ1本より広い範囲をカバーできるのが特徴です。

ドレーン挿入の流れと器械出しの準備

結論として、器械出しは「部位と本数の確認 → 皮膚切開 → 引き出し → 固定 → 接続」の流れで先回りして準備します。

  1. 術者に、挿入する部位・本数・種類・サイズを確認する
  2. 尖刃メス(11番など)で、皮膚を小さく切る
  3. 鉗子(ペアンやケリーなど)で腹壁を通し、ドレーンを体外へ引き出す
  4. 先端の位置を術者が決め、余った長さを切る
  5. 非吸収糸で皮膚に固定する
  6. 排液バッグやリザーバーにつなぐ

使う器械と順番は、施設・術者・術式によって違います。ドレーンが何本も入る手術では、1本ずつこの流れをくり返します。

器械出しのチェックポイント

  • ドレーンの種類・本数・Fr数を術前に確認しておく
  • 渡す前に、先端の形と接続部に破損がないか見る
  • 固定用の糸と、皮膚切開用のメスをすぐ出せる場所に置く
  • 切り落としたドレーンの切れ端は、術野に残らないよう回収する
  • 胸腔ドレーンは、側孔がすべて胸腔内に入っているか術者と確認する

メスを渡すときの注意はメスの渡し方、固定糸の選び方は縫合糸と縫合針の使い分けで確認できます。

外回り看護師のチェックポイント

  • ドレーンの部位・本数・種類・サイズを、その場で記録する
  • 胸腔ドレーンは、チャンバーの準備と吸引圧の設定をする
  • 体外で折れたり、体の下敷きになったりしていないか見る
  • 退室前に、固定と接続がゆるんでいないか確かめる
  • 術了時の排液の色と量を、時刻とともに記録する

排液の「色」と「量」が異常を教えてくれる

結論として、「だんだん薄く、少なく」が順調、そこから外れたら報告と覚えておきましょう。

ドレーン排液が血性から淡血性、漿液性へと薄くなる正常経過と、鮮血の増加や胆汁様など危険サインを示した図

ドレーンは入れて終わりではありません。そこから出てくる排液が、体の中でいま何が起きているかを教えてくれます。

手術室看護師は、術了時の排液を最初に見る人です。ここで「基準」を残せると、病棟が変化に気づく手がかりになります。

正常な経過:だんだん薄く・少なくなる

術後の排液は、血性 → 淡血性(うすいピンク) → 漿液性(うすい黄色)と色が薄くなり、量も日ごとに減っていくのが順調な経過です。

危険サイン:この色・この量は要報告

排液の様子疑われること
急に鮮やかな赤が増える術後出血。短時間で多いときは緊急
黄色〜緑色で胆汁のよう胆汁漏
濁っている・便のようなにおい感染や消化管の縫合不全
ワインレッド色・灰白色の濁り(膵臓の手術後)膵液漏。排液のアミラーゼ値で判断する
白く濁った乳のよう乳び漏(リンパ液の漏れ)
透明な排液が多すぎる(脳室ドレーン)髄液の出すぎ。高さやクランプを確認
急にゼロになった治ったとは限らない。閉塞・屈曲・抜けの可能性

とくに覚えておいてほしいのが、「急にゼロ」も危険サインだということです。

ドレーンが詰まって、行き場を失った血液や液体が体の中にたまっている可能性があります。「順調に減った」のか「急に止まった」のかは、まったく意味が違います。

ドレーンの申し送りで伝えること

結論として、申し送りでは「どこに・何が・何本・どんな排液か」を、相手が見て確かめられる形で伝えます。

私が病棟看護師への申し送りで必ず伝えていたのは、まず予定どおりの術式で終わったか、そのうえで術中の出来事と特記事項でした。

なかでも重点的に伝えていたのが、ドレーンの本数と性状、手術室で入れたルートの本数、輸液量と出血量などのin-outです。帰室後も病棟で見続ける項目だからです。

項目伝え方の例
部位と本数「右横隔膜下に1本、ダグラス窩に1本の計2本です」
種類とサイズ「どちらも閉鎖式、19Frです」
接続と吸引「リザーバーで陰圧をかけています」
術了時の排液「右は淡血性で少量、ダグラス窩は血性で少量です」
固定と注意点「皮膚に糸で固定済みです」

口頭だけで終わらせず、記録と実物を一緒に確かめると、伝え漏れが減ります。申し送り全体の流れは術前訪問・術後訪問の記事でも紹介しています。

ドレーンのトラブルと「逆行性感染」を防ぐ

結論として、トラブルのほとんどは移送の瞬間に起きます。バッグの高さとチューブの張りに気をつけましょう。

排液バッグを挿入部より低く保つ正しい位置と、高く持ち上げて逆流し逆行性感染を招く誤った位置の比較図

ドレーンは体の中と外をつなぐ管です。便利な反面、外から中へ細菌が入る入口にもなります。

起こり得るトラブル

トラブルなぜ起こる気をつけること
閉塞血の塊や組織で詰まる排液が急に止まったら疑う。ミルキングは医師の指示を確認
屈曲・圧迫体位や固定でチューブが折れる体外の走行を目で追う。体の下敷きにしない
抜け・ずれ固定不良、移動時の牽引固定を確実に。移送時はチューブを引っ張らない
逆行性感染排液バッグから細菌が逆流バッグを挿入部より高く上げない
迷入・遺残先端の位置ずれ、抜去時の断裂先端の形状・長さを把握しておく

移送のときが、いちばん危ない

患者さんを手術台からベッドへ移す瞬間、ドレーンのトラブルが集中します。ここでの鉄則を押さえておきましょう。

  • 排液バッグは、必ず挿入部より低い位置に保つ。持ち上げると排液が逆流し、逆行性感染の原因になります
  • 移送中にチューブを引っ張らない。抜けやずれの多くは、この一瞬で起きます
  • 胸腔ドレーンのクランプは自己判断しない。施設の方針を確認する(誤ったクランプは緊張性気胸につながることがある)
  • 移す前に、ドレーンが何本・どこに入っているかを声に出して全員で共有する

ドレーン管理は地味に見えますが、入れる技術より「見て、守り、伝える力」が問われる領域です。

排液の色を言葉にできる、トラブルの芽に気づける、正確に申し送れる。これができるオペ看は、病棟からも医師からも信頼されます🍈

新人オペ看のドレーン「あるある失敗」と対策

結論として、失敗の多くは術前に「何本・どこに・何を」を確認していないことから起きます。

よくある失敗対策
ドレーンの種類・サイズを間違えて準備する術前カンファで「ドレーンの種類・本数・サイズ」を必ず確認リストに加える
胸腔ドレーンの接続順序がわからず焦るチャンバーの説明書を事前に読み、手順を紙にメモして持参する
ドレーンの留置本数を記録し忘れるドレーンが入るたびに声に出して確認・その場で記録する習慣をつける
申し送り時にどこに入ったか伝えられない挿入時に「右横隔膜下・1本目」のように都度メモし、術後すぐ整理する
閉鎖式ドレーンの陰圧をかけるタイミングを見逃す外回りは「ドレーン留置完了→陰圧確認」をセットで動くルーティンを作る

私も1年目のころ、初めて入る診療科の外回りを、ほかの診療科の経験だけで準備したことがあります。

診療科リーダーに「初めて入る診療科手術なのに、なんで何も質問してこないの?」と言われ、泣きそうになりました。言い方は怖かったけれど、言っていることは正しかったと思います。

ドレーンの本数や種類は、施設や術者ごとの違いが大きいところです。分からなければ、前日に先輩に聞いておくのがいちばん確実です。

私は聞いたことを院内の手術手順書のコピーに書き込み、自分だけのカンペにしていました。

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よくある質問

ドレーンについて、新人からよく聞かれる疑問に短く答えます。

Q. 腹腔鏡の手術でもドレーンは入る?

入ることもあります。ポートの穴からドレーンを出すことが多いですが、入れるかどうかと本数は術式・術者・施設によって違います。

Q. ミルキングは手術室でもする?

ミルキングは、チューブをしごいて血の塊などを流す操作です。行うかどうかと方法は、医師の指示と施設の手順に従います。

Q. 胸腔ドレーンは移送のときにクランプする?

自己判断でクランプしてはいけません。空気が抜けている状態でクランプすると、緊張性気胸につながることがあります。

施設の方針と医師の指示を確認します。

Q. ドレーンの名前が覚えられません

名前より先に「何をしたいドレーンか」を考えると覚えやすくなります。吸引するのか、自然に流すのか、どこの液を出したいのかを、表と照らし合わせてみてください。

まとめ:ドレーンは「どこに・何本・どんな排液か」

ドレーンは、体の中の様子を外に伝えてくれる管です。最後に、要点をふり返りましょう。

  • ✅ 目的は治療的・予防的・情報的の3つ
  • ✅ 挿入部位は「液がたまる低い場所」と「吻合部の近く」で決まる
  • ✅ 腹腔なら右・左横隔膜下、ウィンスロー孔、モリソン窩、ダグラス窩
  • ✅ 開放式・半閉鎖式・閉鎖式と、受動的・能動的で分けて覚える
  • ✅ 胸腔ドレーンは吸引圧、脳室ドレーンは外耳孔の高さとクランプ
  • ✅ 排液は「だんだん薄く少なく」が順調。「急にゼロ」も危険サイン
  • ✅ 申し送りは部位・本数・種類・術了時の排液をセットで

次の手術では、まず「このドレーンは何のために、どこに入っているか」を一本ずつ言葉にしてみてください。それだけで、術後の観察が変わります。

消化器の術式をまとめて確認したい方は、消化器外科手術の術式まとめもあわせて読んでみてください。

参考文献

  • 医薬品医療機器総合機構(PMDA).PMDA医療安全情報 No.60「胸腔ドレーン取扱い時の注意について」.2020年8月.全文PDF
  • 日本医療機能評価機構.医療安全情報 No.83「脳脊髄液ドレナージ回路を開放する際の誤り」.2013年10月.全文PDF
  • 竹野香織,益元智子,岡田明子,宇根はずき.泌尿器科開腹術後感染防止に対するクローズドレーンの有用性.日本農村医学会雑誌.2005;53(5):789-795.J-STAGE
  • 日本手術医学会.手術医療の実践ガイドライン(改訂第三版).手術医学.2019;40(Suppl).全文PDF
    ※2026年3月に改訂第四版が発行されています(Web非公開)。本記事は公開されている第三版で内容を確認しています。

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