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「電気メス、言われた通りに渡しているだけ…」
手術室には、電気メス・吸引器・内視鏡のカメラや光源など、たくさんの機械が並んでいます。
アラームが鳴るたびにドキッとして、どこを見ればいいのか分からなくなる人も多いと思います。
私は手術室で10年働き、診療科リーダーとして新人指導にもあたってきました。
1年目は専門用語と先輩の動きの速さについていけず、毎日泣きながら帰っていました。
機械が怖いのは、あなたが弱いからではありません。
「何が起きると危ないのか」を知らないまま、ボタンの順番だけを覚えているからです。
この記事では、ME機器で起きる事故の種類と、器械出し・外回りがその場で確認することをまとめました。
配属前の人も、配属半年の人も、明日の手術の前に読み返せる内容にしています。
\オペ看1838人のリアルな声/
手術室のME機器とは?起きうる3つの事故
ME機器は患者さんに電気や熱を加える機械で、熱傷・電撃・火災の3つを起こしうる。

ME機器(医用電気機器)は、電気の力で治療したり、体の情報を測ったりする医療機器です。
電気メス・吸引器・内視鏡システム・生体情報モニター・麻酔器・加温装置などがあります。
手術室は、病院の中でいちばん多くの種類のME機器を使う場所です。
しかも、そのほとんどが患者さんの体に直接つながっています。
全身麻酔中の患者さんは、熱い・しびれるといった異変を自分で伝えられません。
だから、機械の異常に気づく役目は手術チームにあります。
| 事故 | 起きること | 主な原因 |
|---|---|---|
| 熱傷 | 対極板の下や、意図しない場所のやけど | 対極板のはがれ・光源の先端・電流の分流 |
| 電撃 | 患者さんやスタッフが感電する | 故障した機器・アースのない電源・家電の接続 |
| 火災 | ドレープや消毒薬に火がつく | 電気メスや光源+消毒薬+酸素 |
この3つは、機械が壊れていなくても、使い方を間違えると起こります。
次の章から、機器ごとに「どこを見れば防げるか」を整理していきます。
1年目が最初に覚えたいME機器一覧
まずは「何をする機械か」と「新人が見るところ」を1つずつ押さえれば十分。
| 機器 | 何をする機械か | 新人が見るところ |
|---|---|---|
| 電気メス | 電流の熱で切る・止血する | 対極板・出力・メス先の置き場所 |
| 吸引器 | 血液や洗浄液を吸い取る | 圧の上がり・詰まり・瓶の量 |
| 内視鏡システム | カメラ・光源・気腹で腹腔鏡手術を行う | 光源の先端・気腹圧・ガスの残り |
| 生体情報モニター | 心電図・血圧・SpO₂などを測る | アラームの意味・電極やセンサーの外れ |
| 加温装置 | 温風や温水で体温を保つ | ホースの向き・低温熱傷 |
| 除細動器 | 電気ショックで不整脈を止める | 置き場所・バッテリー・点検日 |
麻酔器は麻酔科医が始業点検を行う機械ですが、外回りもアラームの意味は知っておくと安心です。
モニターの見方は【麻酔】オペ看向け完全版の記事から、目的の記事をたどれます。
電気メスのモノポーラとバイポーラ
違いは電流の通り道で、モノポーラだけが対極板を必要とする。

電気メスは、高周波の電流を組織に流し、そのとき出る熱で切開や止血をする機械です。
新人がまず押さえるのは、電流が体のどこを通るかという1点です。
| 種類 | 電流の通り道 | 対極板 |
|---|---|---|
| モノポーラ | メス先から患者さんの体を通り、対極板へ抜ける | 必要 |
| バイポーラ | ピンセットの先端と先端の間だけを流れる | 不要 |
モノポーラは、体の中を電流が通るぶん、対極板や金属との接触に気を配る必要があります。
バイポーラは脳外科や形成外科など、細かい止血でよく使われます。
バイポーラピンセットには、先端以外が絶縁されたものと、全体の金属が出ているものがあります。
目的の場所以外にふれると熱傷につながるため、どちらの型かを使う前に確認します。
電流の流れ方やペースメーカーの患者さんの考え方は、電気メスとバイポーラの違いの記事で詳しく解説しています。
対極板の貼り方と熱傷が起きる原因
対極板は「術野の近く・血流のよい筋肉の上・金属を電流が通らない位置」に、すき間なく貼る。
対極板は、体を通った電流を回収する出口です。
貼った面積が小さくなると電流が一点に集まり、その場所がやけどになります。
貼る場所の選び方
- 手術部位にできるだけ近い場所
- 太ももやおしりなど、筋肉が多く血流のよい平らな場所
- 人工関節などの金属を、電流が通り道にしない位置
- 骨の出っ張り・傷あと・毛の多い場所は避ける
- 仙骨部など、体重で圧迫される場所は避ける
圧迫される場所は血流が悪く、熱が逃げにくくなります。
やけどと褥瘡の両方のリスクが重なるため、避けるのが基本です。
熱傷が起きる主な原因
| 原因 | 何が起きるか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 体位変換で対極板がずれた・折れた | 接触面積が減り、電流が集中する | 体位固定のあとに貼り直しを確認 |
| 対極板の下に消毒液が流れ込んだ | 一部だけ電気が通りにくくなる | 消毒の範囲と流れ込みを見る |
| 小児用の対極板で大きな出力を使った | 小さな面に大きな電流が流れる | 体格に合う対極板か確認 |
| 体が手術台の金属にふれている | 金属にふれた部分に電流が逃げる | 体位固定で金属との接触をなくす |
| 指輪などの金属をつけたまま | すき間の部分に電流が集中する | 入室時にアクセサリーを確認 |
今の電気メスの多くは、対極板の状態を見張って、異常があれば出力を止める機能を持っています。
ただ、条件がそろうと出力されることがあり、はがれてもアラームが鳴らない機種もあります。
機械の見張りだけに頼らず、体位を変えたあとは自分の目で対極板を確認しましょう。
手術が終わったら対極板をはがし、皮膚に赤みや水ぶくれがないかを見て記録します。
電気メスと光源の引火を防ぐ3つの確認
火事は「着火源・燃えるもの・酸素」の3つがそろうと起きるため、手術前にチームで確認する。
| 火事の3要素 | 手術室での例 | 看護師が見ること |
|---|---|---|
| 着火源 | 電気メス・光源の先端・レーザー・ドリル | メス先と光源を使わないときの置き場所 |
| 燃えるもの | アルコールを含む消毒薬・ドレープ・ガーゼ | 消毒薬が乾いたか・薬液だまりがないか |
| 酸素 | 酸素・亜酸化窒素(笑気) | 顔まわりの手術でドレープの下に酸素がこもらないか |
① アルコール消毒薬は乾いてから
アルコールを含む消毒薬が乾く前に電気メスを使うと、火花で引火することがあります。
ドレープをかける前に、乾いていることと、体の下や横に薬液がたまっていないことを確認します。
シーツにしみこんだ消毒液に気づかず電気メスを使い、引火した事例も報告されています。
消毒のあとは、体の下のシーツがぬれていないかも見ておきましょう。
② 顔まわりの手術は酸素に注意
頭頸部や胸部の手術では、術野の近くに高い濃度の酸素がもれやすくなります。
酸素の濃度を下げる判断は麻酔科医が行いますが、外回りは顔まわりのドレープの中に酸素がこもっていないかに気を配ります。
③ 使わないときの着火源の管理
電気メスのメス先は、使っていないときはホルダーに戻します。
光源の先端も、外したまま布の上に置くと焦げることがあります。
🔥 「燃えそう」と思ったら声に出す
消毒薬が乾いていない、ドレープの下がぬれている、と気づいたら、その場で術者と麻酔科医に伝えましょう。
ガイドラインでも、火災の危険を手術ごとに評価し、開始までにチームで共有することが勧められています。
器械出しが守る電気メスの扱い方
器械出しの役目は、メス先を安全な場所で管理し、意図しない通電を起こさないこと。
- 使い終わったメス先は、すぐにホルダーへ戻す
- 使った直後のメス先は熱いので、患者さんの皮膚と自分の手にふれさせない
- コードを鉗子で強くはさまない(被覆が傷むと漏電の原因になる)
- メス先の焦げつきは、施設の手順に沿って取り除く
鑷子(ピンセット)にメス先を当てて止血するときは、メス先がしっかりふれてから通電します。
離れたまま通電すると火花が出て、術者の手のやけどや電撃につながります。
外回りは、フットスイッチを術者の足元の正しい位置に置き、誤って踏まれないようにします。
メスの刃の付け外しや渡し方は、メスの渡し方の記事をあわせて読んでみてください。
吸引器は「音」ではなく「流れ」で確認する
吸引器は使う前に圧が上がるかを確かめ、使っている間はチューブの中を液体が流れているかを目で見る。
使う前のチェック
- 壁の吸引アウトレット(黒色の表示が多い)につながっているか
- 瓶とチューブの接続が正しく、ふたが浮いていないか
- チューブの先を折り曲げて塞ぎ、メーターの圧が上がるか
- 瓶に十分な空きがあるか
吸引の圧は、術野や術者の指示によって変わります。
何に使う吸引なのかを確認してから設定しましょう。
使っている間に見ること
吸引の音がしていても、チューブの途中で血のかたまりや骨のかけらが詰まっていることがあります。
「チューブの中を液体が流れているか」を目で確かめるのが確実です。
瓶がいっぱいになったまま吸い続けると、廃液が配管に入り、吸引が止まったり故障したりします。
瓶の量は、手術の流れを見ながら早めに交換します。
💡 吸引瓶は出血量の記録にも使う
吸引瓶の中身は、出血量を数えるときの材料になります。
洗浄に使った生理食塩水の量を、外回りが記録しておくことを忘れないようにしましょう。
出血量の数え方は輸血と術中の輸液管理の記事で解説しています。
内視鏡システムで外回りが見る4つのこと
腹腔鏡手術では、光源・気腹装置・ケーブル・ガスの残りの4つを外回りが見守る。
| 見るところ | 起きること | 外回りの動き |
|---|---|---|
| 光源の先端 | 光の熱で先端が熱くなり、布が焦げる・やけどする | 使わないときは光源をオフ(スタンバイ)にする |
| 気腹装置の圧 | 圧が高すぎると呼吸や循環に影響が出る | 設定圧と実際の圧のずれ、アラームを見る |
| ガスの残り | 手術中に二酸化炭素がなくなる | 開始前に残量と予備のボンベを確認 |
| ケーブルの配置 | カメラの映像にノイズが入る・断線する | カメラと電気メスのケーブルを同じ場所に固定しない |
光源ケーブルは、カメラから外すと先端から強い光と熱が出ます。
ドレープの上に置きっぱなしにしないよう、器械出しと声をかけ合いましょう。
腹腔鏡用の電気メスは、シャフトが絶縁されています。
被覆に傷があると、カメラの外で臓器にやけどを起こすことがあるため、出す前に傷がないか見ます。
気腹が体に与える影響は、腹腔鏡手術はなぜ全身麻酔が必要?の記事で詳しく解説しています。
電源とコンセントで事故を防ぐ
ME機器は医用のコンセントにつなぎ、手術室の電源容量と非常電源のしくみを知っておく。
- プラグはアースのある医用3Pプラグを使い、2Pプラグは使わない
- アースのピンが短い・曲がっているプラグは交換を依頼する
- テーブルタップ(延長コード)を安易に使わない
- スマートフォンや家電をME機器につながない・上に置かない
手術室の電源は、ショートしても電気が止まりにくいしくみになっています。
その代わり、たくさんの機器を同じ回路につなぎすぎると、ブレーカーが落ちて給電が止まります。
停電のときは、非常電源に切り替わります。
無影灯やコンピューターを使う機器は、途切れずに電気が届く無停電の電源につなぐのが基本です。
| 非常電源 | 電気が戻るまで | 主な用途 |
|---|---|---|
| 一般非常電源 | 40秒以内 | 照明・重要な設備 |
| 特別非常電源 | 10秒以内 | 止まると困る機器 |
| 無停電非常電源 | 途切れない | 無影灯・コンピューターを使う機器 |
どのコンセントがどの電源につながっているかは、施設によって表示や色が違います。
配属されたら、自分の手術室のコンセントを一度見て回っておきましょう。
点検シールと使用前点検のルール
点検は臨床工学技士(CE)の定期点検と、使う人の使用前点検の二重で行う。
ME機器は、CEが年に数回、漏れ電流や安全機能を計画的に点検しています。
機器に貼られた点検シールの次回点検日が過ぎていたら、使わずにCEかリーダーに伝えます。
使う人が行う使用前点検は、電源が入るか、コードに傷がないか、アラームが鳴るかを見るのが基本です。
麻酔器は、使う前に麻酔科医などの使用者が始業点検を行います。
- 点検シールの次回点検日が期限内か
- コードやプラグに傷・折れ・焦げがないか
- 電源を入れたときにエラー表示が出ないか
- 医療ガスのアウトレットにゆるみや漏れがないか
新しく導入された機器は、研修を受けてから使うのがルールです。
使い方を知らないまま操作することがないよう、分からない機器は手を出す前に聞きましょう。
アラームや異常に気づいたときの動き方
おかしいと感じたら、ひとりで直そうとせず、すぐに声に出して伝える。
- 患者さんの安全を確かめる(やけど・モニターの変化はないか)
- 術者と麻酔科医に「〇〇のアラームが鳴っています」と伝える
- 必要なら使用を止め、CEやリーダーを呼ぶ
- 代わりの機器を用意する
- 故障した機器は使わない表示をして残し、記録する
いちばん危ないのは、異常に気づいているのに、手術を止めるのが怖くて言い出せないことです。
焦げたにおい、いつもと違う音、触ったときの熱さも、立派な異常のサインです。
原因が分からないまま設定を上げ下げすると、やけどや故障を悪化させることがあります。
直すのはCEや術者と一緒に、が基本です。
🍈 めろんから
術中に医師から質問されて、答えられないこともありました。
そんなとき私は、分からないことを素直に伝えて聞くようにしていました。
機械のことも同じだと思います。
知らないことを知らないと言えるのは、患者さんを守るための大事な力です。
新人がやりがちなNG行動と直し方
NG行動の多くは「仕組みを知らないまま」動くことから起きる。
| NG行動 | 何が危ないか | こうする |
|---|---|---|
| 対極板の位置を毎回なんとなく決める | 骨の上や金属の近くで熱傷が起きる | 術野・筋肉・金属の3点で選ぶ |
| 体位変換のあと対極板を見ない | ずれや折れに気づけない | 体位固定のたびに確認する |
| 吸引の音だけで吸えていると思う | 詰まりに気づかず視野が取れない | チューブの中の流れを目で見る |
| 光源の先端をドレープの上に置く | ドレープが焦げる・やけどする | 光源をスタンバイにして管理する |
| アラームを消してそのまま続ける | 原因が残ったまま事故につながる | 消す前に原因を伝えて確認する |
器械出しで器械が足りないと気づいたときも、外回りに伝えて出してもらうのが基本です。
ME機器も同じで、困ったらまず周りに伝えることから始めましょう。
指導者向け:原理とリスクをセットで教える
「ボタンの順番」だけでなく「なぜ危ないか」を一緒に伝えると、新人は異常に気づけるようになる。

❌ NGな指導
「ここのボタンを押してね」「対極板は太ももに貼ってね」と、操作だけを伝える。
これでは手順が少し変わっただけで、新人は動けなくなります。
「対極板が浮いていると、どうしてやけどになると思う?」と問いかけ、電流が一点に集まる理由を一緒に考えます。
手術の空き時間に「今アラームが鳴ったら、どこを見る?」と声をかけるのも効果的です。
新人はそれだけでいっぱいいっぱいなので、1日に伝えることは1つに絞るのがおすすめです。
「今日は対極板の確認だけ完璧にしよう」と小さな目標にすると、できたことを一緒に喜べます。
迷ったときの判断フレーム3つ
機器にふれるときは、3つの問いを頭の中で順番に確かめる。
- この機器は、患者さんの体にどんなエネルギーを加えているか?
- もし今この機器が故障したら、患者さんに何が起きるか?
- アラームや接触不良のサインはないか?安全と言い切れるか?
1つでも答えに詰まったら、それは「確認が必要」というサインです。
スイッチを切って安全を確保し、術者・麻酔科医・CEに伝えてください。
よくある質問
配属前後の新人からよく聞かれる4つの疑問に答える。
Q. ME機器はどこまで覚える?
まずは電気メス・吸引器・モニターの3つで十分です。
腹腔鏡手術に入るようになったら、光源と気腹装置を足していきましょう。
Q. 対極板はどこに貼る?
術野に近く、筋肉が多くて血流のよい平らな場所が基本です。
金属のインプラントがある人は、電流がそこを通らない位置を選びます。
Q. 吸引が弱いときはどこから見る?
先端から順に、チューブの詰まり、接続のゆるみ、瓶の量、壁のアウトレットの順に見ていきます。
それでも戻らないときは、新しい吸引に交換して手術を止めないことを優先します。
Q. 夜間に機器が壊れたら?
まずは代わりの機器に交換し、故障した機器は使わない表示をして残します。
夜間の連絡先は施設ごとに決まっているので、配属のうちに確認しておきましょう。
まとめ|明日の手術で確認する5つ
ME機器は「仕組み」と「危ない理由」をセットで覚えると、アラームが鳴っても慌てなくなる。
☑ 対極板は術野の近く・筋肉の上・金属を避けて貼り、体位変換のたびに見る
☑ アルコールを含む消毒薬は、乾いて薬液だまりがないことを確認してから電気メスを使う
☑ メス先はホルダーへ、光源は使わないときスタンバイ
☑ 吸引は音ではなく、チューブの中の流れで確かめる
☑ おかしいと思ったら、ひとりで直さず声に出して伝える
機械に苦手意識があっても大丈夫です。
1つずつ「なぜ危ないのか」が分かると、怖さは確認するポイントに変わっていきます。
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参考文献
【まずは理解度チェック!】この記事の内容をテスト
⚡ 理解度チェック!ME機器クイズ 全10問
電気メス・吸引器・内視鏡の安全な取り扱いとトラブル対策、どれだけ頭に入っていますか?
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◆ ごあいさつ
初めまして、オペ看めろん🍈です。
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