※医療・看護ケアや手順・器械は施設の方針に従ってください
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「タイムアウト、みんなが言っているのを聞いているだけになっていませんか?」
手術室に配属されると、執刀の直前に全員が手を止める場面に出会います。
それがタイムアウトです。
でも新人のうちは、何を確認しているのか、自分は何をすればいいのか分からないまま終わりがちです。
「先生たちが確認しているから大丈夫」と思ってしまうのも、無理はありません。
この記事では、タイムアウトで確認する項目、新人看護師が見るべきポイント、違和感があるときの声のかけ方を、WHOと日本手術医学会のガイドラインに沿って整理します。
手術室で10年働き、診療科リーダーとして新人指導にもあたってきた私が、1年目のころに知りたかったことをまとめました。
\オペ看1838人のリアルな声/
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タイムアウト・ガーゼカウント・患者確認、医療安全の基本どれだけ頭に入っていますか?
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タイムアウトとは?執刀直前の確認
結論から言うと、タイムアウトは皮膚切開の直前に、手術チーム全員が手を止めて、患者・術式・手術部位を声に出して照合する確認です。

タイムアウトは、WHO(世界保健機関)の「手術安全チェックリスト」(2009年版)の一部です。日本では、日本麻酔科学会が翻訳したガイドラインで紹介されています。
チェックリストは、手術の流れに沿って3回の確認に分かれています。タイムアウトは、その2回目にあたります。
| 段階 | いつ | 主に確認すること |
|---|---|---|
| サインイン | 麻酔導入の前 | 本人・部位・術式・同意、マーキング、アレルギー、気道、出血リスク |
| タイムアウト | 皮膚切開の前 | 全員の名前と役割、本人・術式・部位、抗菌薬、予想される重大な事象、画像 |
| サインアウト | 手術室を出る前 | 術式名、ガーゼ・針・器械のカウント、検体のラベル、術後の注意点 |
日本手術医学会のガイドラインも、皮膚切開前の確認は手術チームのすべてのメンバーが参加して行うとしています。
そして、患者・術式・手術部位などに食い違いがあれば、解決するまで次の段階に進んではならないとされています。
つまりタイムアウトは「読み上げる儀式」ではありません。メスを入れる前に、間違いに気づける最後のチャンスです。

なぜ全員で手を止めて声に出すのか
医療安全の大前提は、人は必ずエラーを起こすということです。気をつけていればミスは起きない、という考え方は通用しません。
だから、エラーを個人の注意力だけで防ごうとしません。エラーが起きても事故につながらない仕組みを作ります。
チェックリストやダブルチェックが、その代表です。
手術室には、ほかの部署よりも仕組みが必要になる理由があります。
- 多職種が同時に動く:医師・麻酔科医・看護師の間で、情報が行き違いやすい
- 患者さんが指摘できない:全身麻酔中は、本人が間違いを止められない
- 一度起きたら戻せない:部位の取り違えや体内遺残は、取り返しがつかない
一人ひとりが頭の中で確認するだけでは、誰かの勘違いに誰も気づけません。声に出すことで、チーム全員の目と耳がダブルチェックになるのです。
タイムアウトで確認する項目と担当
タイムアウトでは、「誰の・どこを・何の手術か」と「この手術で起こりうること」をチームで共有します。
WHOのチェックリストでは、皮膚切開前に次の項目を確認します。
| 確認すること | 主に話す人 | 中身 |
|---|---|---|
| 全員の名前と役割 | チーム全員 | 途中で交代した人も名乗る |
| 患者・術式・切開部位 | 全員で照合 | 氏名、予定術式、左右・部位 |
| 予防的抗菌薬 | 麻酔科医など | 切開前60分以内に投与したか |
| 手術の山場・時間・出血量 | 外科医 | 通常と違う手順、予定時間、予想出血量 |
| 患者さん特有の問題 | 麻酔科医 | 持病や麻酔上の注意点 |
| 滅菌・器材の確認 | 看護師 | インジケータの結果、器材の不足や不具合 |
| 画像の表示 | 外科医など | 必要な画像が見られる状態か |
日本手術医学会のガイドラインでは、このタイミングでブリーフィング(事前の打ち合わせ)も行うとしています。外科医は予定時間や出血の見込みを、看護師は器材の準備状況を、言葉にして共有します。
ただし、項目の数や読み上げる順番、誰が声をかけるかは施設によって異なります。自分の施設のチェックリストを一度、紙で見ておきましょう。
マーキングはタイムアウトの前提
左右のある手術では、手術部位に印をつけるマーキングを行います。
ガイドラインでは、原則として患者さんが起きている間に医師がマーキングし、消毒やドレープをかけた後も見えるようにするとされています。
タイムアウトでは、このマーキングと、同意書・画像・読み上げた部位がそろっているかを確かめます。
タイムアウトの流れと新人看護師の役割
新人看護師の役割は、聞くことではなく、手元の情報と照らし合わせることです。
施設によって細かい違いはありますが、おおまかな流れは次のとおりです。
- 執刀医・麻酔科医・看護師がそろい、準備の手を止める
- 担当者がチェックリストに沿って読み上げる
- 各自が手元の情報(リストバンド・同意書・マーキング・画像)と照合する
- 食い違いがあれば、解決するまで執刀しない
- 確認したことを記録する
役割ごとに、見ておきたいポイントをまとめます。
| 役割 | タイムアウト前に | タイムアウト中に |
|---|---|---|
| 器械出し | 術式と術側を頭に入れる | 手を止め、読み上げと自分の把握を照合 |
| 外回り | 同意書・指示・抗菌薬の時刻を確認 | リストバンド・マーキング・画像と照合 |
器械出しは清潔野にいるため、カルテを見に行けません。術側と術式は、ガウンを着る前に頭に入れておくのがコツです。
実例:「右」と言っても防げなかった
日本医療機能評価機構の医療安全情報(No.128)では、脳神経外科手術で左右を取り違えた事例が11件報告されています。
ある事例では、執刀医が執刀直前に「右」と周囲に伝えていました。しかし、患者さんの顔が右を向き、右側が下になっていることに気づかないまま、反対の左側に処置が進みました。
器械出し看護師は、術側を把握していませんでした。
別の事例では、看護師は医師の「右」という言葉を聞いていました。でも、すでにドレープがかかっていて、術野が右側かどうかを確かめられませんでした。
ここから分かるのは、読み上げるだけでは間違いは止まらないということです。声に出した部位と、目の前の術野を照らし合わせて、はじめて確認になります。
この医療安全情報では、11件のうち4件が、医師が声に出した手術部位と執刀部位を照合しなかった事例でした。
新人がやりがちな3つのミス
タイムアウトでの失敗は、知識不足よりも「参加しているつもり」から起きます。
ミス①:聞き流して傍観者になる
「先生たちが確認しているから大丈夫」と、読み上げを聞き流してしまうパターンです。
【対処法】読み上げられた言葉を、心の中で手元の情報と一つずつ照らし合わせます。「左・鼠径ヘルニア・同意書も左」というように、自分の確認として聞きます。
ミス②:準備の手を止めない
次の器械の準備や記録を続けたまま、耳だけで参加してしまうパターンです。
【対処法】タイムアウトの声がかかったら、手を止めて顔を上げます。手を動かしながらでは、食い違いに気づく余裕がなくなります。
ミス③:違和感を言い出せない
「何か変だな」と思っても、怒られそうで黙ってしまうパターンです。これがいちばん危険です。
【対処法】言う言葉を先に決めておきます。
- 「すみません、確認させてください。同意書では左となっています」
- 「マーキングが見えないので、部位をもう一度確認してもいいですか」
- 「抗菌薬の投与時刻を、もう一度確認させてください」
事実と、確認したいことだけを短く伝えます。相手を責める言い方にする必要はありません。
「ストップ」を言えるようになるまで
違和感を声に出せるかどうかは、性格ではなく準備と練習で変わります。
新人のころの私には、周りに確認せずに自己判断してしまう癖がありました。
分からないことを聞いて「今さらそんなことも分からないの?」と言われるのが怖かったのです。だから、自信がないまま動いてしまうことがありました。
その先に待っていたのは、インシデントや良くない結果でした。それでは患者さんの安全が守れません。
そこで、一時的に怒られて嫌な気持ちになったとしても、分からないことは事前に聞いて、解決してから動くと決めました。
もう一つ意識していたのは、執刀医の機嫌が悪そうな日でも、いつも通りの態度で、端的に伝わる言葉で話すことです。特別にご機嫌を取る必要はありません。
伝えるべきことは、相手の機嫌とは関係なく伝える。そう決めておくと、タイムアウトで「待ってください」と言うハードルも下がります。
質問の仕方に悩んでいる方は、手術室の新人が覚えられない・つらいときの質問のコツも参考にしてください。
タイムアウトのあとも続く確認:カウント
執刀後の安全確認の中心は、ガーゼ・針・器械のカウントです。体内への置き忘れ(異物遺残)を防ぎます。

カウントのタイミングと基本
日本手術医学会のガイドラインでは、カウントは手術開始前と手術終了時を最低限に、体腔を閉じる前・閉創を始める前・看護師の交代時など、複数のタイミングで行うとしています。
閉創のときに「閉創時のタイムアウト」をコールして、チームで確認する方法も紹介されています。
- 誰が:器械出しと外回りの2人で、目で見て声に出して数える
- 何を:ガーゼだけでなく、針などの鋭利物、器械、小物品も
- どう残す:結果を記録に残す
カウントの方法やX線撮影を行う基準は、施設ごとに決められています。配属先の手順書を確認しておきましょう。
カウントが合わないときの順番
私が実際に動いていた順番は、次のとおりです。
- まず執刀医と外回り看護師に、カウントが合わないという事実を伝える
- 再カウントを行う
- 執刀医に術野を見てもらい、ガーゼが残っていないか確認してもらう
そのうえで、ドレープの下や床、ガーゼを入れた容器などを探します。それでも見つからないときは、施設の基準に沿ってX線撮影で確認します。
いちばん勇気がいるのは、執刀医に「先生も術野を探してください」とお願いする場面です。
私は経験を重ねるうちに、「ガーゼが1枚ありません」という事実と、「術野に残っている可能性があるので、一緒に確認してください」というお願いを、タイミングを見て短く伝えられるようになりました。
絶対に避けたいのは、「たぶん捨てたときに紛れたのだろう」と曖昧なまま手術を終えることです。

数えるより「管理する」意識
カウントは、決められた時に数を合わせるだけの作業ではありません。
器械出し中は、「今、患者さんの体の中にガーゼが何枚入っているか」をいつも把握しておきます。これが遺残を防ぐいちばんのカギです。
数えやすい器械台の作り方は、器械台の展開と配置のコツで解説しています。
サインアウトとデブリーフィング
手術の最後には、患者さんが手術室を出る前にサインアウトを行います。看護師が術式名を口頭で確認し、カウントの結果や、検体のラベル(患者氏名を含めて声に出して読む)を確かめます。
あわせて、術中に起きた問題や術後に注意してほしい点を共有するデブリーフィング(振り返り)も行います。ここで共有したことは、病棟への申し送りにつながります。
患者誤認を防ぐ本人確認
本人確認は、2つ以上の情報を、患者さん自身に名乗ってもらって照合するのが基本です。

誤認は、「間違えるわけがない」という思い込みや、同姓同名、忙しさによる確認の省略から起こります。
氏名(フルネーム)と、生年月日またはID番号など、2つ以上の情報をリストバンドやカルテと照らし合わせます。手術室では、次の場面で確認を重ねます。
- 病棟からの申し送りのとき
- 手術室への入室・ベッド移乗のとき
- 麻酔導入の前
- タイムアウトのとき
やってはいけないのは、次の3つです。
- 顔なじみの患者さんだからと、顔だけで判断する
- 「病棟で確認したから」と、自分の確認を省く
- 「〇〇さんですね?」と聞き、「はい」と答えてもらうだけで済ませる
緊張していると、違う名前でも「はい」と答えてしまうことがあります。「お名前をフルネームで教えてください」と、患者さんに名乗ってもらう聞き方にしましょう。
入室時の本人確認の流れは、手術室の入室時対応|本人確認とモニター装着で詳しく解説しています。
チームで声を出すコミュニケーション
医療事故の背景には、多くの場合情報の共有不足があります。タイムアウト以外の場面でも、声に出す習慣が安全を支えます。
| 方法 | 使う場面 | ポイント |
|---|---|---|
| 指差し呼称 | 物品や数値の確認 | 指で差して声に出す |
| 復唱(リードバック) | 口頭指示を受けたとき | 薬剤名と量をそのまま繰り返す |
| SBAR(エスバー) | 異常を報告するとき | 状況→背景→評価→提案の順 |
手術室では「沈黙はリスク」です。「ベテランの先生に言いづらい」という空気は、患者さんを危険にさらします。
職種や年次に関係なく、安全に関わる疑問を口にできる雰囲気を心理的安全性と呼びます。新人の「何か変」が、事故を止めるきっかけになることは少なくありません。
次のような考えが浮かんだら、事故の入口に立っているサインです。
- 「先生がイライラしているから、確認を省こう」
- 「先輩も見ているから、先輩が確認してくれるだろう」
- 「変だと思ったけれど、怒られそうだからやめておこう」
指導者向け:タイムアウトの教え方
手順だけを教えるのではなく、「なぜそれが必要か」を事例とセットで伝えることが定着のカギです。

❌ NGな指導
「マニュアルだから絶対守れ!」「ルール通りにやれ!」と手順だけを強要すること。これでは応用が効かず、イレギュラー時に事故を起こします。
事例と振り返りで伝える
「確認を省いたことで、こういう事故が起きた。だから当院ではこの仕組みを入れている」と、ストーリーで伝えると新人の納得感が変わります。
前の章で紹介した医療安全情報のような、公表されている事例を教材に使うのもおすすめです。
手術のあとに「あの場面で、なぜ止めたの?」「止めたかったけれど言えなかったことはある?」と一緒に振り返るのも効果的です。
私自身、新人がインシデントを起こしたときに、なぜ起きたのかが理解されないまま一方的に責められる場面を見て、悩んだことがありました。
責めるより先に、なぜ起きたのかを本人から聞く。そのほうが、次の事故を防ぐ仕組みづくりにつながります。
新人指導にあたっていたころは、「今日はタイムアウトで照合することだけ意識しよう」のように、目標を一つにしぼって伝えていました。
10個のアドバイスは、新人にはキャパオーバーになるからです。
迷ったときの判断フレーム
「これ、省略してもいいかな」と迷ったら、止めて確認するのが正解です。
忙しい現場で迷ったときは、次の3つを自分に問いかけてください。
- 省略したら、患者さんに害が及ぶか?
- 今の確認は、誰が見ても十分と言えるか?
- 違和感を、声に出してチームに伝えたか?
一度止めて確認するのにかかる時間は、ほんの数十秒です。その数十秒が、取り返しのつかない事故を防ぎます。
よくある質問
タイムアウトについて、新人からよく聞かれる疑問に短く答えます。
Q. タイムアウトは誰が声をかける?
施設によって違います。外回り看護師が声をかける施設もあれば、執刀医が読み上げる施設もあります。
配属先の手順書と、先輩の動きを確認しておきましょう。
Q. 緊急手術でもタイムアウトする?
行います。時間がない緊急手術ほど、取り違えが起きやすい条件がそろいます。
手順を簡略化する施設はあっても、患者・術式・部位の照合は省きません。
Q. 局所麻酔の手術でも必要?
チェックリストは、麻酔の方法にかかわらず手術で使うことが想定されています。具体的な運用は、施設の手順書を確認してください。
Q. タイムアウトとサインインの違い
サインインは麻酔導入の前、タイムアウトは皮膚切開の前に行う確認です。タイムアウトは、執刀医を含むチーム全員がそろって行う点が大きな違いです。
まとめ:タイムアウトは照合が大切
タイムアウトは、メスを入れる前に間違いに気づける最後のチャンスです。聞くだけでなく、手元の情報と照らし合わせて参加しましょう。
✅ これできてる?タイムアウト5つのチェックポイント
- ガウンを着る前に、術式と術側を頭に入れているか?
- 声がかかったら、手を止めて顔を上げているか?
- 読み上げを、同意書・マーキング・画像と照合しているか?
- 違和感を伝える言葉を、先に決めてあるか?
- 本人確認で、患者さんに名乗ってもらっているか?
はじめから堂々と「待ってください」と言える新人はいません。私も、聞くのが怖くて一人で抱え込んでいた時期がありました。
まずは次のタイムアウトで、読み上げられた部位を、自分の目で確かめることから始めてみてください。その一回が、患者さんを守る力になります。
参考文献
🍈 いちばん多い相談は、手当の話です
SNSで受ける相談で、いちばん多いのがこれです。
・オペ室手当がつかない。この先も上がる見込みがない
・オンコールに入っても、手当がほとんど出ない
・あと5万円くらい上げたいけれど、どこを見れば分かるのか知りたい
ここまで読んで勉強しているあなたは、確実に伸びているオペ看です。ただ、その頑張りに手当がついてくるかどうかは、正直なところ病院しだい。オペ室手当もオンコール手当も0円という職場は実在しますし、逆にどちらもきちんと出る病院もあります。
私がいつも見ているのは、求人票の「手当欄」です。転職するかどうかは後で決めればよくて、いまの職場が相場のどのあたりにいるのかを知っておくだけでも、気持ちはずいぶん違いますよ。
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