※医療・看護ケアは各施設の方針に従ってください。手順・使用器械は施設により異なります。
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「外回りって、結局なにを優先すればいいの?」
患者さんが入室した瞬間から、外回りには仕事が一気に押し寄せます。モニターをつけて、本人確認をして、麻酔科医に呼ばれて、器械出しからは「これ出してください」。電話も鳴る。全部やらなきゃいけないのは分かっているのに、どれから手をつけるかで固まってしまう。新人のうちは、そんな日が何度もあります。
外回りの仕事は、器械出しのように「この術式ならこの器械」と覚えれば済むものではありません。体位、体温、輸液と輸血、急変、記録。種類がばらばらに見えるので、どこから勉強すればいいのかも分かりにくい分野です。
このページは、これまで書いてきた外回り看護の記事を入室前から申し送りまでの時間の流れに沿って並べ直した地図です。今日つまずいたところだけ拾い読みしてもらえれば十分です。
読む前に|外回りは「あとで取り返せないこと」から片づける
私が最初に「手術室に向いていないかもしれない」と思ったのは、器械出しではなく外回りでした。患者さんが入室してからの流れの中で、優先順位をつけて動けなかったのです。
頼まれた順に手をつけ、先輩に置いていかれ、帰りの電車でぼんやり反省する。そんな日が続きました。
あとから振り返って分かったのは、足りなかったのは手の速さではなく順番を決める基準だったということです。記録は5分後でも書けます。
でも、麻酔がかかる前の本人確認は二度とできません。体位を固定してしまえば、除圧のやり直しには大きな手間がかかります。
「あとで取り返せるかどうか」で並べ替える。外回りの仕事は、ほとんどがこの物差しで整理できます。
入室前の確認と外回りの段取り
外回りの仕事は、患者さんが手術室に入る前から始まっています。前日の情報収集と術前訪問。
ここで拾えた情報の量が、そのまま当日の余裕になります。
術前訪問・術後訪問の目的と流れ
術前訪問では、アレルギー、関節の動く範囲の制限、既往歴と手術歴を確かめ、手術への不安を聞きます。
新人のうちは「何を聞けばいいか分からない」と悩みがちですが、10年続けて思うのは、こちらが聞く量より、患者さんが話してくれた量のほうが大事だということです。
「不安です」というひと言でも、何が怖いのかは人によってまったく違います。一方的に質問を並べるより、手術をどう受け止めているかを聞けるかどうかが大切です。
手術前に外すもの(装着物)の確認
指輪、入れ歯、ジェルネイル、まつげエクステ、湿布。外してもらう理由は物ごとに違います。
金属は電気メスによる熱傷やむくみによる血流障害、ネイルはパルスオキシメーターの測定の障害、入れ歯は気道確保の妨げになります。
理由まで言えるようにしておくと、「どうしても外したくない」と言われたときに、外せない場合の代わりの対応を考えられます。眼鏡や補聴器のように、会話や歩行に必要なら直前まで着けておいてよいものもあります。
外回り看護の優先順位
入室から執刀までの数十分を、時間の流れに沿って整理した記事です。中心にあるのは3つの問いです。
いま患者さんの命に関わるか。いまやらないと後でできなくなるか。後回しにしても取り返せるか。この順に自問すれば、麻酔科医と器械出しから同時に呼ばれても、どちらに先に行くかが決まります。
入室直後の数分で私が必ずやっていたのは、患者さんへの対応とモニター装着、病棟から持ってきた抗菌薬の溶解などの準備でした。
手術体位と合併症の予防
体位固定は、外回りの仕事のなかでもっとも「あとで取り返せない」ものです。手術が始まれば何時間も直せず、神経障害や褥瘡は、患者さんが目を覚ましてから初めて分かります。
体位の記事は3本ありますが、それぞれ入口が違います。
体位ごとの固定ポイントを覚える
仰臥位、側臥位、砕石位、腹臥位。まずは体位ごとに「どこに圧がかかり、どの神経が危ないか」の地図を持つための記事です。
仰臥位なら後頭部・仙骨部・かかと、側臥位なら下側の肩と腸骨、腹臥位なら顔面と胸、そして目の圧迫。体位が変わると、守る場所がまるごと入れ替わります。
外回りに入る前日に、明日の体位の項目だけ読み返す使い方がおすすめです。
神経障害と褥瘡はなぜ起きるのか
こちらは「なぜ」から理解するための記事です。神経は圧迫だけでなく、引き伸ばされることでも傷つきます。
腕を90度より大きく開くと腕神経叢が伸ばされ、膝の外側では総腓骨神経が支持器に当たりやすい。だから固定の原則は、圧を分散する・無理に引っ張らない・締めつけすぎないの3つに集約されます。
理屈が分かると、初めて見る特殊な体位でも、どこを守ればいいかを自分で考えられるようになります。
準備・体位グッズ・術中の観察
3本目は実践編です。体位固定は「事前設計が9割」で、術前訪問で聞いた可動域の制限や体型から、どのグッズを何枚使うかを入室前に決めておきます。
見落としやすいのが、固定具やSpO₂プローブ、コード類による圧迫(医療関連機器圧迫創傷)です。体に触れている物は、すべて圧迫の原因になりえます。
私がいつまでもヒヤッとしていたのは、長時間の砕石位でした。脚の筋肉がむくんで血流が悪くなるコンパートメント症候群のリスクが上がるため、時間と脚の状態を最後まで気にかけていました。
体温の管理
術中の低体温予防と加温
手術中に体温が下がるいちばんのタイミングは、執刀よりずっと前、麻酔導入の直後に来ます。麻酔で末梢の血管が広がり、体の中心の熱が手足へ流れ出すためです(再分布性低体温)。
導入後の最初の1時間ほどで、中枢の体温が1℃前後下がることもあります。だから加温は「冷えてから」では間に合わず、入室前や導入前から始めるのが基本です。
低体温は傷の感染や出血の増加、術後の震え(シバリング)にもつながります。冷たい輸液や広い術野からの放熱も、外回りが気づける体温低下の原因です。
輸液・輸血と循環の管理
輸液と輸血は、医師の指示で動くものです。それでも、つなぐ・数える・照合するのは外回りの手。
指示の意図が分かっていると、量の変化や数字の異常に一歩早く気づけます。
術中輸液の目的と量の考え方
新人がつまずきやすいのは、輸液を「ルートを保つためのただの水」と思ってしまうことです。手術室の輸液は、循環を直接動かす薬と同じ重みを持っています。
入れすぎればむくみや肺水腫、少なすぎれば臓器への血流が落ちる。昔のように「とりあえず全開で入れて尿を出す」時代ではなくなっています。
晶質液と膠質液の違い、体の中で水がどこへ移動するかが分かると、麻酔科医が速度を絞った理由も、急に上げた理由も読めるようになります。
輸血の種類と、出血量・尿量のカウント
輸血の記事でいちばん伝えたいのは照合の手順です。手術室の患者さんは、自分の名前も血液型も言えません。
だからベッドサイドで、2人で、声に出して、製剤ごとに照合します。事前にまとめて確認して安心するのではなく、つなぐ直前に1袋ずつ。
もうひとつの柱が出血量と尿量のカウントです。数字そのものより「どのくらいの速さで増えているか」を麻酔科医に伝えることが、輸血を始めるかどうかの判断材料になります。
術中の急変とその対応
急変は、外回りがチームの「足」と「声」になる時間です。応援を呼ぶ、物を取りに走る、時刻を記録する。
手術室で10年働いても、緊急の場面だけは最後まで緊張しました。だからこそ、起きる前に頭の中で一度動いておくための記事を並べています。
大量出血・急速輸血と術中の急変
大量出血、急速輸血、術中のアナフィラキシー、悪性高熱症。どれも数分単位で状況が変わる急変です。
共通するのは、外回りが最初にやることが「処置」ではなく人を集めることと、役割を割り振ることだという点です。急速輸血では加温と照合を同時に回し、アナフィラキシーでは原因になりそうな薬を止める。
悪性高熱症では体温より先に、呼気の二酸化炭素(EtCO₂)の上昇が手がかりになることがあります。新人時代、急変の場で何をすべきか分からず立ち尽くした経験があるからこそ、この記事は手順の順番にこだわって書きました。
緊急手術の流れと準備
緊急手術は、予定手術の段取りを数分に縮める仕事です。連絡が入ったら、まず何の手術かを把握します。
開腹か腹腔鏡か。そこから部屋とベッド、麻酔の指示と薬剤、挿管の準備、器械台と、決める順番が見えてきます。
1年目のとき、出勤した直後に超緊急の帝王切開が入り、申し込みとほぼ同時に患者さんが手術室へ運ばれてきました。入室、モニター装着、麻酔導入、執刀がほとんど同時に進んでいく。
怖いというより言葉を失った、あの日の段取りをこの記事に詰めています。
挿管困難のとき、外回りが先回りすること
気道のトラブルは、急変のなかでもいちばん時間の猶予がありません。外回りの役目は、SpO₂が下がり始めてから動くのではなく、マスク換気の手応えが悪い時点で応援を呼び、DAMカートを部屋に入れることです。
カートは置いてあるだけでは足りず、どの引き出しに何が入っているかを知っていて初めて使えます。麻酔の側から見た詳しい解説は、麻酔のまとめでも取り上げています。
麻酔導入時の血圧変動と心停止
導入で血圧が下がり、挿管や皮膚切開の刺激で上がる。この波を知っていれば、血圧を測る間隔を詰めるタイミングが分かります。
外回りとして覚えておきたいのは、モニターに波形が出ていても脈が触れないPEA(無脈性電気活動)のように、心電図だけでは気づけない心停止があることです。
数字を見たら、次は患者さんの体を見る。その順番を体に覚えさせておくための記事です。
記録・アセスメントと申し送り
手術が終わっても、外回りの仕事は終わりません。手術室で起きたことを、病棟で読める言葉に変えて渡す。
ここが抜けると、手術室で守ったものが病棟で途切れてしまいます。
手術看護のアセスメントの書き方
アセスメントが書けないのは、観察が足りないからとは限りません。見えた事実、それが何を招くか、だからどうしたか。
この3つの枠を順に埋めれば形になります。2つ目が書けないときは、たいてい1つ目に数字と時間が入っていません。
「側臥位」だけでなく「何時間の予定か」、「出血」だけでなく「どのくらいの速さか」。手術室の患者さんは「痛い」「しびれる」と言えないので、術前訪問で聞いたことが、そのまま訴えの代わりになります。
実際の7事例で書き方を示しています。
術中の看護計画の立て方
皮膚トラブルと神経障害、麻酔による呼吸と循環の変動、低体温、深部静脈血栓症、手術部位感染。
代表的な5つのパターンに分け、観察計画と援助計画を例文つきで載せました。そのまま写すのではなく、術前訪問で聞いた患者さんの事情をひとつ足すだけで、その人のための計画になります。
申し送りについても少しだけ書いておきます。私が病棟へ必ず伝えていたのは、まず予定どおりの術式で終わったか。
そのうえで、ドレーンの本数と性状、手術室で入れたルートの本数、輸液量と出血量などのin-out、術中の体位と皮膚の状態です。
発赤ができていたら、色と大きさ、指で押して色が戻るかまで伝えます。そして、使った鎮痛薬や呼吸を抑える薬と、その最後の時刻。
帰室してからも見続ける必要があるものから順に渡す、というのが基準でした。
麻酔の流れ、挿管と気道、麻酔薬、モニタリングについては、対になる「麻酔のまとめ」で整理しています。外回りは麻酔科医のいちばん近くにいる看護師です。
2つをあわせて読むと、導入から覚醒までの全体がつながります。
手の動きで確認したいときに
体位固定、術中の急変対応、体温管理、術前訪問・術後訪問は、YouTubeでも時間をかけて解説しています。固定具の当て方や急変時の立ち位置は、文章より映像のほうが早く伝わることがあります。
ガーゼカウントが合わないときや、挿管困難が起きたときのシミュレーションなど、踏み込んだ内容の一部はメンバーシップ向けに置いています。必要になったときに覗いてもらえたら嬉しいです。
外回りの勉強、どこから手をつけるか
どの記事も単独で読めるように書いています。それでも迷ったら、私が後輩に勧めるならこの順番です。
- 外回り看護の優先順位を最初に。順番を決める物差しがあると、ほかの記事の知識がどこで効くのかが分かります
- 次に体位ごとの固定ポイント。明日の症例の体位だけでかまいません。いちばん取り返しがきかない仕事から押さえます
- そのあと体温管理と輸液。導入直後に何が起きるかが分かると、入室前の準備が変わります
- 急変と緊急手術の記事は、一度通して読んで、ときどき読み返す。めったに起きないことほど、頭の中で練習しておくしかありません
- アセスメントと看護計画は、その日の外回りが終わったあとに。経験したばかりの症例で書くと、3つの枠が自然に埋まります
私が外回りで動けるようになったのは、知識が増えたからだけではありませんでした。うまくいかなかった日を振り返ってみると、周りに確認せずに自分だけで判断してしまう癖があったのです。
それに気づいてからは、分からないことを入室前に聞くようになり、当日の動きが目に見えて変わりました。
今日の外回りで迷った場面をひとつだけ選んで、このページから該当する記事を開いてみてください。「次はこうしよう」がひとつ決まれば、それで十分です。
その積み重ねで、入室の時点で今日の流れが見える日が来ます。



















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