※医療・看護ケアは各施設の方針に従ってください。手順・使用器械は施設により異なります。
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「整形って器械もインプラントも多すぎて、何から覚えればいいの?」
整形外科の手術は、ほかの科と勝手が違います。ドリルやハンマーの音、次々に開くインプラントの箱、透視の合図。新人のうちは、手術の流れより先に「物の多さ」に圧倒されがちです。
でも整形の手術は、部位で分けると驚くほど似た骨組みをしています。股関節と膝は「削って、部品に置き換える」。骨折は「骨の中に芯を通して留める」。背骨は「神経の圧迫を取って、金属で固める」。この3つの型が見えると、初めての術式でも次の一手が読めるようになります。
このページは、これまで書いてきた整形外科まわりの記事を部位ごとに並べ直した地図です。明日入る手術がある方は、その術式だけ拾い読みしてもらっても大丈夫です。

術式の前に|整形の土台は「体位」と「透視」
整形の手術は、術式が違っても体位と透視の扱いがほぼ毎回ついてきます。股関節は側臥位、背骨は腹臥位、骨折は牽引台。体位の作り方を間違えると、手術がうまくいっても神経障害や褥瘡が残ります。
まずは体位固定の基本を押さえておくと、どの術式に入っても慌てにくくなります。
もうひとつの土台が透視です。私は妊娠が分かったとき、早い段階で全体に伝えて、腰椎後方固定術のような透視を使う手術から外してもらいました。安定期を待たずに伝えることには少し抵抗もありましたが、手術室ではそれが必要でした。
透視は、それくらい整形の手術と切り離せないものです。防護衣と線量計は「面倒な準備」ではなく、自分の体を守る道具だと思っておいてください。
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人工関節の手術
整形で一番よく出会うのが、股関節と膝の人工関節です。どれも傷んだ関節を削って、金属や樹脂の部品に置き換える手術です。
人工物が体の中に残るので、感染が起きると治療がとても難しくなります。清潔操作の重みが、ほかの手術より一段重いと考えておいてください。
THAとBHA(人工骨頭置換術)の違い
股関節の手術に入る前に、まずここを読んでください。違いを一言でいうと、「受け皿まで替えるかどうか」です。
骨盤側の受け皿(臼蓋)の軟骨も傷んでいればTHA、受け皿は健康で骨頭だけが問題ならBHA。器械出しで見ると、臼蓋を削るリーマーやカップの準備があるかどうかが分かれ目になります。
この違いが頭に入ると、股関節の手術は一枚の地図にまとまります。
THA(人工股関節全置換術)
THAは、どちら側から関節に入るか(アプローチ)で看護がまるごと変わる手術です。後方から入るなら側臥位で、術後は深く曲げて内側にひねる動きで脱臼しやすくなります。
前方系なら仰臥位が多く、脱臼しやすい方向も逆になります。だから申し送りでは、必ずアプローチを言葉にして伝えます。
病棟での禁忌肢位の指導は、この一言から組み立てられるからです。
BHA(人工骨頭置換術)
BHAで入室してくるのは、転倒して大腿骨の付け根を折った高齢の患者さんが中心です。動けない時間が長いほど寝たきりや肺炎につながるので、できるだけ早く手術をして起き上がれるようにすることが重視されます。
皮膚が薄く、移乗や体位づくりだけでも傷ができることがあります。工程はTHAから臼蓋の処理を抜いた形でシンプルなので、股関節の手術の流れをつかむ最初の一例になりやすい術式です。
TKA(人工膝関節置換術)
TKAは、外回りが「時計」を握る手術です。ひとつはタニケット(駆血帯)。
加圧の時刻を復唱して記録し、経過時間を声に出して術者に伝えます。骨切りに集中している術者は時間の感覚が飛びやすいからです。
もうひとつは骨セメント。混ぜた瞬間から固まり始めるので、扱える時間は限られています。
セメントを入れるときは麻酔科医に声をかけ、血圧や酸素の変化を一緒に見ます。
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骨折の手術|髄内釘による骨接合
大腿骨などの骨折で、骨の中(髄腔)に金属の芯を通して固定する手術です。骨折した場所を大きく開くと、そのまわりの血流が失われて骨が治りにくくなることがあります。
髄内釘は骨折部を直接開かずに固定できるのが強みです。その代わり、見えない骨の中を進むので、最初から最後まで透視の画像が頼りになります。
つまり、被ばくの多い手術です。透視の合図が出たら、器械出しでも可能なら一歩下がる。
それは逃げではなく、正しい防護です。透視画面から「今どの工程か」を読めるようになると、器械の先読みが一気に楽になります。
脊椎の手術
器械が多く、苦手にされやすい領域です。ただ、やっていることの骨組みは共通しています。
神経の圧迫を取り除き(除圧)、不安定になった背骨を金属で固める(固定)。この2段階のどこにいるかが分かれば、出す器械の順番も見えてきます。
PLIF・TLIF・PSFの違い
名前が似ていて混乱しやすい3つですが、見分けるポイントは「椎間板に入るか、入るならどこから入るか」です。PLIFは背中側から両側で入り、ケージを2つ入れることが多い方法。
TLIFは片側の椎間関節を削って斜め外側から入り、長めのケージを1つ入れる方法。PSFは椎間板には触れず、横突起のあいだに骨を移植して固める方法です。
多くの場合、最後は椎弓根スクリューをロッドでつなぐ工程に合流します。
PLIF(腰椎後方椎体間固定術)
PLIFでぜひ知っておいてほしいのが、腹臥位という体位そのものがリスクを作るということです。お腹が台に押されて腹圧が上がると、背骨のまわりの静脈がうっ血して、術野の出血が増えることがあります。
「今日は出血が多い」と感じたとき、体位が原因かもしれないと気づける看護師は頼りにされます。顔や眼が圧迫されていないかの確認も、ドレープをかける前にしかできません。
体位を作る数分間が、その後の数時間を決める手術です。
ACDF(頚椎前方固定術)
首の前から入る手術です。怖さは切る場所そのものより、そこへ行くまでの通り道にあります。
気管・食道、頸動脈、声に関わる反回神経が、数センチの中に密集しています。そしてもうひとつの山場は、手術が終わったあと。
首の中に出血がたまると、外から気管を押しつぶすことがあります。抜管直後の声のかすれや、ドレーンの排液が急に止まったことまで申し送る。
ACDFの看護は、退室で終わりではありません。
下肢血管の手術
このブログでは整形のカテゴリーにまとめていますが、施設によっては血管外科や心臓血管外科が担当する手術です。骨ではなく、足の血流を取り戻すための手術だと考えると、看護で見るところがはっきりします。
下肢動脈内膜除去術+パッチ形成術
この手術で外回りが握っているのは、拍動・ヘパリン・体温の3つの情報です。足の動脈の拍動は、ドレープをかける前に探して印をつけておきます。
術後に同じ場所で触れるかを比べる基準点になるからです。ヘパリンの投与時刻と血管を遮断していた時間も、その場にいた人しか残せません。
体は冷やさないように温めますが、血流を止めている足に温風を当て続けないことも大切です。
下肢遠位バイパス術
この手術を受けるのは、足を失うかもしれない状態の患者さんです。自分の足の静脈(大伏在静脈)を採って、詰まった動脈の先へ血液を流す新しい道を作ります。
器械出しで一番気をつけたいのは、採った静脈には代わりがないこと。乾かしたり器械台から落としたりすれば、取り直せない可能性があります。
保存する容器の置き場所を決めて、そこには他の物を置かない。それが一番確実な守り方です。
整形外科で使う縫合糸・器械
新人のころ、先輩に「器械は何をしたいのか考えてみな」と言われたことがあります。名前を丸暗記するより、形と用途で覚えたほうが早いという意味でした。
糸も器械も、どの術式でも繰り返し出てきます。ここを押さえると、初めての手術でも半分は手が動きます。
バイクリル・PDS・モノクリル(吸収糸)
吸収糸は、縫う層が治るまでの時間で選ばれます。編み糸のバイクリルは扱いやすく、迷ったらこれという万能型。
PDSは1本の糸(モノフィラメント)で張力を長く保つので、治りの遅い層に使われます。モノクリルは皮膚の内側を縫って表面をきれいに仕上げるときによく出てきます。
「なぜこの層にこの糸なのか」が分かると、術者が次に欲しがる糸を先に用意できるようになります。
プロリンとナイロン(非吸収糸)
ざっくり覚えるなら、青いプロリンは血管、ナイロンは皮膚です。下肢血管の手術ではプロリンが主役になり、整形の皮膚縫合ではナイロンをよく見かけます。
ただ、ここは術者のこだわりが出やすいところです。私は手順書のコピーに「〇〇先生はここでナイロンじゃなくてプロリンを使う」と書き込んでいました。
教科書通りではない部分ほど、自分のメモが助けてくれます。
エレバとラスパ
どちらも骨膜を扱う器械ですが、エレバは「持ち上げる」、ラスパは「こそげ落とす」と覚えると混ざりません。エレバは奥の神経や血管を守る板としても使われます。
そして整形、とくに脊椎の手術で知っておいてほしいのが、削った骨のかけらが移植の材料になることです。拭き取って捨ててしまうと、移植する骨がなくなります。
手術の前に「今日、削った骨は使いますか」とひとこと聞く。迷ったら捨てない、が安全側です。
動きで確認したいときは、動画もあります
THA・TKA・髄内釘・腰椎後方固定術・ACDFは、YouTubeでも時間をかけて解説しています。整形は器械の形や渡す向きが文章だけでは伝わりにくい分野なので、記事で流れをつかんでから動画で手元を見ると、つながりやすいと思います。
体位固定の質問に答える回など、踏み込んだ内容の一部はメンバーシップ向けに置いています。必要になったときに覗いてもらえたら嬉しいです。
整形の勉強、どこから始めるか
ここに並べた記事を、頭から順に読む必要はありません。私が後輩に勧めるなら、この順番です。
- 明日入る手術を1本だけ読む。目の前の一例と結びついた知識が、いちばん残ります
- 次にTHAとBHAの違い。股関節の手術がひとつの地図にまとまり、整形の「置き換える手術」の型がつかめます
- そのあと糸と器械の3本。どの術式でも出てくるので、読んだ分がすぐ現場で返ってきます
- 脊椎は最後で大丈夫です。器械の多さに慣れてからのほうが、除圧と固定の流れがすっと入ります

予習を完璧にしてから入ろうとしなくていいです。一度も見たことのない手術を本だけで理解するのは、正直かなり難しい。
私が続けていたのは、手術が終わって着替える前の5分で、今日つまずいたところを殴り書きしておくことでした。そのメモを、このページから飛んだ記事で答え合わせする。
整形は、同じ術式に何度も入れる科です。今日分からなかったことは、次の一例で確かめられます。
苦手だった整形が「次はあれを出す」と分かる科に変わる日は、思っているより早く来ますよ。
📚 整形全体をこの1冊でおさらいしたい人へ
🍈 いちばん多い相談は、手当の話です
SNSで受ける相談で、いちばん多いのがこれです。
・オペ室手当がつかない。この先も上がる見込みがない
・オンコールに入っても、手当がほとんど出ない
・あと5万円くらい上げたいけれど、どこを見れば分かるのか知りたい
ここまで読んで勉強しているあなたは、確実に伸びているオペ看です。ただ、その頑張りに手当がついてくるかどうかは、正直なところ病院しだい。オペ室手当もオンコール手当も0円という職場は実在しますし、逆にどちらもきちんと出る病院もあります。
私がいつも見ているのは、求人票の「手当欄」です。転職するかどうかは後で決めればよくて、いまの職場が相場のどのあたりにいるのかを知っておくだけでも、気持ちはずいぶん違いますよ。
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