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「プロリンとナイロン、どっちも溶けない糸だよね…何が違うの?」🍈
吸収糸(バイクリル・モノクリル)を覚えた次にぶつかるのが、この非吸収糸の2大巨頭。この記事では、プロリンとナイロンの違いを「血管のプロリン・皮膚のナイロン」の軸で整理し、血管吻合の器械出し準備まで現役オペ看が解説します。
※吸収糸をまだ整理していない方は先にこちら👇
📖 モノクリルとバイクリルの違い/バイクリルとPDSの使い分け
プロリンとナイロンの違い【早見表】
| プロリン | ナイロン(エチロン等) | |
| 素材 | ポリプロピレン | ポリアミド(ナイロン) |
| 構造 | モノフィラメント | モノフィラメント |
| 糸の色 | 青 | 黒(緑もあり) |
| 強度の持続 | 体内でほぼ恒久的に保持 | 年単位で徐々に低下 |
| 主戦場 | 血管吻合・心臓血管外科 | 皮膚縫合(抜糸前提)・ドレーン固定 |
| 針の特徴 | 両端に針が付いたダブルアームが多い | 角針との組み合わせが定番 |
覚え方はこの一行——「青いプロリンは血管、黒いナイロンは皮膚」。ここから、なぜそうなるのかを掘り下げます。
プロリン|血管吻合の絶対エース
なぜ血管にはプロリンなのか
血管の縫い目は、患者さんが生きている限りずっと血圧に耐え続ける必要があります。プロリン(ポリプロピレン)が選ばれる理由は3つ。
- 強度がほぼ恒久的に保たれる——溶けたら大出血につながる場所だから
- 組織反応が極めて少ない——血管壁への炎症を最小限に
- 表面がなめらか——血流に触れても血栓の足場になりにくい
「一生持たせたい場所には、一生強度が変わらない糸」。理屈が分かると、心外の先生がプロリンにこだわる理由が腑に落ちますよね。
ダブルアーム針とラバー付きモスキート
血管吻合用のプロリンは、糸の両端に針がついた「ダブルアーム」が主流。両側から縫い進めて中央で結ぶ吻合手技のためです。器械出しの準備ポイントは:
- 針カウントは2本分——ダブルアームは針が2つ。紛失時のインシデント防止に絶対
- ラバー付きモスキート(ラバーモスキート)を準備——糸を一時保持するとき、金属のままだと糸が傷むため
- 細い番手(5-0〜8-0)はわずかな引っかかりで切れる。渡すときのテンションに細心の注意
ナイロン|皮膚縫合の定番・抜糸とセットで考える
ナイロンは、皮膚縫合の「あとで抜く」前提で使われる糸。体表で目立ちにくく安価で、モノフィラメントなので細菌がすみつきにくいのが強みです。
- 皮膚縫合(マットレス縫合・単結節縫合)の第一選択のひとつ
- ドレーンやチューブの固定糸としても頻出
- 体内に置くと加水分解で年単位で強度が落ちる——だから「permanent」が必要な血管には使わない
抜糸の目安もセットで覚える
ナイロンの皮膚縫合は抜糸までがワンセット。目安は顔なら5〜7日、体幹・四肢なら10〜14日程度(部位・創の状態・施設方針で変わります)。外来や病棟から「いつ抜糸?」と聞かれたとき、目安を知っていると連携がスムーズです。
使い分けの考え方【非吸収糸の思考回路】
| 場面 | 選ばれやすい糸 | 理由 |
| 血管吻合・人工血管 | プロリン | 恒久強度+低血栓性 |
| 皮膚縫合(抜糸前提) | ナイロン | 安価・組織反応少・抜きやすい |
| ヘルニアのメッシュ固定 | プロリン系 | 長期の支持力 |
| ドレーン固定 | ナイロン(または絹糸) | 一時的固定で十分 |
ポイントは「その縫い目に何年働いてほしいか」。一生=プロリン、抜糸まで=ナイロン。吸収糸で学んだ「糸の寿命と組織の治癒速度を合わせる」原則の、非吸収糸バージョンです。
縫合糸の全体マップ|これで「糸の地図」が完成する
プロリンとナイロンを覚えると、縫合糸の世界が「吸収するか」×「モノフィラメントか編み糸か」の4象限で整理できるようになります。
| モノフィラメント | ブレード(編み糸) | |
| 吸収糸 | モノクリル/PDS | バイクリル |
| 非吸収糸 | プロリン/ナイロン | 絹糸(シルク)/エチボンド |
新しい糸に出会ったら、この地図のどこに入るかを考えるだけで特徴の8割が予測できます。「吸収×モノ=表面か滑らかさ重視」「非吸収×モノ=血管か皮膚」「ブレード=結びやすさ重視」——丸暗記ではなく地図で覚えるのが、糸に強いオペ看への近道です。
番手(太さ)の感覚もセットで
非吸収糸は使う場所で番手がガラッと変わります。ざっくりの相場観:
- 皮膚縫合のナイロン:3-0〜5-0(顔はより細く)
- 大血管のプロリン:3-0〜4-0
- 末梢血管・冠動脈のプロリン:5-0〜8-0(極細。取り扱い最注意)
「心外の冠動脈バイパスで7-0プロリン」のような極細糸は、一度絡むとほどけない・すぐ切れるため、渡す前の糸さばきまで含めて器械出しの腕が出ます。
よくあるミスと対策【新人オペ看向け】
ミス① 青と黒の見間違い
無影灯の下では青プロリンと黒ナイロンが意外と似て見えます。糸の色ではなくパッケージの製品名で確認が鉄則。「5-0プロリンです」と番手+名前で声出し確認を。
ミス② ダブルアームの針カウント漏れ
「1パック=針1本」の思い込みが事故のもと。プロリンのダブルアームは針2本としてカウント表に記載。返却時も2本そろっているか必ず目視。
ミス③ ラバーモスキートの準備忘れ
血管吻合が始まってから「ラバー付きある?」と聞かれて慌てるのは新人あるある。プロリンが出る術式=ラバーモスキートもセットで覚えておきましょう。
よくある質問【Q&A】
Q1. 溶けない糸が体に残って大丈夫?
大丈夫です。プロリンやナイロンは組織反応が非常に少ない素材で、体内では周囲が薄い膜で包まれて(被包化)安定します。だからこそ「溶けては困る場所」に安心して使えるんです。
Q2. 絹糸(シルク)はどこに入るの?
絹糸も非吸収糸の仲間で、結びやすさは抜群。ただ天然素材ゆえに組織反応が比較的強く、血管内では使われません。結紮やドレーン固定などで今も現役の名脇役です。
Q3. 血管吻合の器械出しができるようになりたい!
素晴らしい目標です。ただ、血管吻合を日常的に経験できるかは病院の症例構成次第。心臓血管外科や血管外科の症例が少ない施設では、何年働いても機会がないことも。専門性を伸ばしたい方向の症例がある職場かどうか、キャリアの視点で一度確認してみる価値はありますよ。
「心外の器械出しに挑戦したい」「専門性を高めたい」——そんな人は、症例構成から職場を探すのがおすすめ。求人を見るだけでもOK(登録3分・無料)です。
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まとめ|「青いプロリンは血管、黒いナイロンは皮膚」
- プロリン=ポリプロピレン・青。恒久強度で血管吻合のエース。ダブルアーム針とラバーモスキートをセットで
- ナイロン=ポリアミド・黒。皮膚縫合の定番、抜糸とセットで考える
- 判断軸は「その縫い目に何年働いてほしいか」
- 針カウント(ダブルアーム=2本)と色ではなく製品名での確認が事故防止のカギ
これで縫合糸クラスターが完結です👇
📖 バイクリルとPDSの使い分け(吸収糸・深い層)
📖 モノクリルとバイクリルの違い(吸収糸・表面)
📖 サージセルとタコシールの違い(止血剤)
📖 クーパーとメッツェンバウムの違い(剪刀)
参考文献
参考文献
- ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 エチコン事業部.縫合糸 製品情報(プロリン・エチロン).https://www.ess.jjkkpro.jp/products/sutures/index
- 川原美穂子編著.完全保存版! 手術室の器械・器具210(オペナーシング2024年春季増刊).メディカ出版,2024.
※糸の選択・抜糸時期は術式・施設の基準・医師の指示に従ってください。
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