※医療的判断・看護ケアは、必ず各施設のマニュアル・方針に従って実施してください。手術手順や使用器械は施設により異なる場合があります。
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🦴「THAと人工骨頭置換術、何が違うの?器械の準備も変わる?」
どちらも股関節の手術なのに、名前も器械も微妙に違う——新人オペ看が混乱しやすいのが、THA(人工股関節全置換術)と人工骨頭置換術(BHA)の違いです。「結局どこが違って、準備は何が変わるの?」と思いますよね。
この記事では、2つの術式の違いを比較表でスッキリ整理し、適応・インプラント・器械出し・外回り看護の違いまで、手術室看護師の視点でわかりやすく解説します🍈
THAとBHAは、どちらも傷んだ股関節を人工物に置き換える手術ですが、「どこまで置き換えるか」が決定的に違います。この違いがわかると、適応・準備する器械・看護のポイントまで一本の線でつながります。まずは結論から見ていきましょう。
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THAと人工骨頭置換術(BHA)の違いを一言でいうと
違いを最もシンプルに言うと、こうなります。
- THA(人工股関節全置換術)=股関節の「ボール(大腿骨頭)」と「受け皿(臼蓋)」を両方とも人工物に置き換える
- 人工骨頭置換術(BHA)=ボール(大腿骨頭)だけを置き換え、受け皿(臼蓋)は自分のものを残す
つまり「全部(Total)置き換えるのがTHA」「部分的に(骨頭だけ)置き換えるのがBHA」と覚えると分かりやすいです。この“置換する範囲の違い”が、すべての違いの出発点になります。
【比較表】THAとBHAの違いを一覧で整理
| 項目 | THA(人工股関節全置換術) | 人工骨頭置換術(BHA) |
|---|---|---|
| 置換する範囲 | 臼蓋+大腿骨頭(全置換) | 大腿骨頭のみ(部分置換) |
| 臼蓋(受け皿) | 人工カップを設置する | 自分の臼蓋を温存する |
| 主な適応 | 変形性股関節症・関節リウマチ・大腿骨頭壊死など | 主に大腿骨頚部骨折(高齢者) |
| インプラント | カップ+ライナー+骨頭+ステム | バイポーラ骨頭+ステム(カップなし) |
| 手術侵襲・時間 | やや大きい・長い | 低侵襲・短時間 |
| 長期成績 | 安定。若年者にも適応 | 臼蓋摩耗のリスクあり。高活動の若年者には不向き |
THA(人工股関節全置換術)とは
THA(Total Hip Arthroplasty)は、傷んだ大腿骨頭と臼蓋の両方を人工関節に置き換える手術です。股関節は「ボール(大腿骨頭)」が「受け皿(臼蓋)」にはまった構造をしていますが、その両方を人工部品に置き換えることで、痛みのない滑らかな動きを取り戻します。
適応となるのは、変形性股関節症・関節リウマチ・大腿骨頭壊死など、関節そのもの(臼蓋も骨頭も)が傷んでいる疾患です。受け皿側の軟骨もすり減っているため、臼蓋も置き換える必要があるのです。手術手順の詳細は人工股関節全置換術(THA)の手術手順の記事で解説しています。
THAのインプラントは、大きく分けて4つのパーツから構成されます。①寛骨臼カップ(受け皿)②ライナー(カップの内張り)③大腿骨ステム(骨に入れる軸)④骨頭ボールです。臼蓋を専用のリーマーで削ってカップを設置し、大腿骨側はリーミング・ブローチで形を整えてステムを挿入します。臼蓋側・大腿骨側の両方を処理するため、工程数が多くなるのが特徴です。
人工骨頭置換術(BHA)とは
人工骨頭置換術(BHA:Bipolar Hip Arthroplasty)は、大腿骨頭だけを人工物に置き換える手術です。受け皿(臼蓋)には人工カップを入れず、患者さん自身の臼蓋を残します。置き換えたバイポーラ骨頭が、自分の臼蓋の軟骨と直接かみ合って動く仕組みです。
主な適応は、高齢者の大腿骨頚部骨折です。骨折で大腿骨頭への血流が途絶えると骨頭が壊死してしまうため、骨頭を人工物に置き換えます。一方で、臼蓋の軟骨が比較的保たれているケースが対象になります。手術手順の詳細は人工骨頭置換術(BHA)の手術手順の記事をご覧ください。
BHAのインプラントは、大腿骨ステム+バイポーラ骨頭が基本です。臼蓋にはカップを入れないため、THAのような臼蓋リーマーやカップ・スクリューは使いません。大腿骨側のみを処理してステムを挿入し、自身の臼蓋に合うサイズのバイポーラ骨頭を選びます。臼蓋側の工程がない分、手術全体がシンプルで短時間になります。
なぜ術式が分かれる?決め手は「臼蓋の状態」
THAとBHAのどちらを選ぶか——その最大の決め手は「臼蓋(受け皿)の軟骨が健康かどうか」です。
- 臼蓋も傷んでいる(変形性股関節症など)→ 受け皿も置き換える必要があるためTHA
- 臼蓋は健康で、骨頭だけがダメ(頚部骨折など)→ 骨頭だけ置き換えるBHA
💡 BHAでも将来THAになることがある
BHAは自分の臼蓋を残すため、長く使ううちに臼蓋の軟骨がすり減って痛みが出る(臼蓋摩耗)ことがあります。その場合、後からTHAに変更する手術が必要になることも。そのため、活動性の高い若い患者さんには、最初からTHAが選ばれやすいのです。
手術の流れ・工程の違い
両術式の手術の流れを大まかに並べると、違いがよりはっきりします。共通するのは「展開 → 骨頭の処理 → 大腿骨側の処理 → 設置」という骨格ですが、THAには臼蓋側の工程が加わるのが最大のポイントです。
| 工程 | THA | BHA |
|---|---|---|
| 展開・脱臼 | あり | あり |
| 大腿骨頚部の骨切り・骨頭摘出 | あり | あり |
| 臼蓋のリーミング・カップ設置 | あり | なし |
| 大腿骨のリーミング・ステム設置 | あり | あり |
| 骨頭・トライアルで整復確認 | あり | あり(バイポーラ骨頭) |
このように、BHAは「臼蓋のリーミング・カップ設置」がまるごと省略される分、工程がシンプルです。器械出しは、この工程の有無を意識すると「次に何を渡すか」の先読みがしやすくなります。
器械出し・準備の違い【オペ看の視点】
術式が違えば、器械出しの準備も変わります。最大の違いは「臼蓋側の処理があるかどうか」です。
| 準備するもの | THA | BHA |
|---|---|---|
| 臼蓋リーマー(受け皿を削る器械) | 必要 | 不要 |
| 寛骨臼カップ・ライナー | 必要 | 不要 |
| スクリュー類(カップ固定) | 必要なことがある | 不要 |
| 大腿骨ステム・骨頭 | 必要 | 必要(バイポーラ骨頭) |
| 骨頭のサイズ計測(トライアル) | あり | あり(自身の臼蓋に合わせる) |
つまりBHAは臼蓋側の器械(リーマー・カップ・スクリュー)が不要な分、準備する物品も工程もシンプルになります。THAは臼蓋を削ってカップを設置する工程が加わるため、レンタル器械やインプラントの種類が多くなります。担当する手術がどちらかを確認し、必要なインプラントのサイズ展開を過不足なくそろえることが大切です。
整形外科のインプラントはメーカーごとの専用器械(レンタル器械)を使うことが多く、何段ものコンテナで器械が届きます。THAは臼蓋・大腿骨の両方を扱うため器械の数がとくに多くなります。術前にメーカーの手技書に目を通し、左右やサイズの組み立てを確認しておくと、当日落ち着いて器械出しができます。トライアル(仮合わせ)で決まったサイズの本物のインプラントを開封する際は、必ず最終確認を徹底しましょう。
🔎 オペ看ポイント
どちらの術式もインプラントの開封は最終ダブルチェックが鉄則です。患者指定ラベル・左右・サイズを術者と声出しで確認してから開封しましょう。インプラントは高額で、落下・開封ミスは大きな損害になります。
外回り看護・術後で押さえる違い
外回り看護や術後管理でも、両術式の背景の違いを押さえておくと観察に活かせます。とくにBHAは大腿骨頚部骨折の高齢者が対象になることが多く、心疾患や認知機能の低下など全身の予備力が小さい患者さんが少なくありません。手術侵襲を最小限にしつつ、全身状態を慎重に管理する視点が求められます。
- 患者背景:BHAは大腿骨頚部骨折の高齢者が多く、全身状態の管理に注意。THAは変性疾患の幅広い年齢層
- 共通の合併症:脱臼・感染・深部静脈血栓症(DVT)/肺塞栓・神経損傷・出血。とくに脱臼予防は両術式で重要
- 体位:側臥位または仰臥位(アプローチによる)。長時間になりやすく除圧・体温管理に配慮
- 骨セメント使用時:セメント挿入時の骨セメント注入症候群(BCIS)による血圧低下に注意(高齢のBHAでとくに警戒)
よくある疑問(オペ看Q&A)
Q. 「バイポーラ」ってどういう意味?
BHAの「バイポーラ(bipolar)」とは、人工骨頭内に2つの可動部をもつ構造のことです。
具体的には、インナーヘッドとアウターカップの間で動き、さらにアウターカップと臼蓋の間でも動きが生じます。これにより、単純な1軸性の人工骨頭よりも、股関節の動きに応じた可動性を確保しやすい構造になっています。
Q. どちらが手術時間は短い?
一般にBHAのほうが短時間です。臼蓋を削ってカップを設置する工程がないためです。高齢で全身状態に余裕がない患者さんに対し、手術侵襲を抑えられる点もBHAが選ばれる理由のひとつです。
Q. セメントは使う?使わない?
骨にステムを固定する方法には、骨セメントを使う「セメント固定」と、使わずに骨と直接結合させる「セメントレス固定」があります。骨が弱い高齢者のBHAではセメント固定が選ばれることが多い傾向です。セメント使用時は、注入のタイミングで骨セメント注入症候群(BCIS)による血圧低下が起こりうるため、外回りはバイタルの変動に注意し、麻酔科医と連携します。
Q. 脱臼予防で気をつけることは?
どちらの術式も術後の脱臼予防が重要です。アプローチ(前方・後方など)によって禁忌肢位が異なるため、「どの方向に動かすと脱臼しやすいか」を術式・アプローチごとに把握し、術後の体位や移動時に注意します。たとえば後方アプローチでは、股関節を深く曲げて内側にひねる動きが脱臼を起こしやすいとされます。移乗や体位変換のとき、患側の肢位に注意し、必要に応じて外転枕などで肢位を保持します。患者さん本人にも、してはいけない動きをわかりやすく伝えることが大切です。
こうした整形外科手術の専門知識は、あなたのオペ看としての市場価値そのものです。「もっと専門性を評価される環境で働きたい」と感じたら、情報収集だけでも始めてみる価値があります。手術室看護師に強い転職サービスはこちらから、今の自分の市場価値をのぞいてみてください(登録は無料・転職しなくてもOK)。
まとめ|THAと人工骨頭置換術(BHA)の違い
- THA=臼蓋+骨頭の両方を置換、BHA=骨頭のみ置換(受け皿は自分のものを残す)
- 適応の決め手は臼蓋の状態。変性疾患はTHA、頚部骨折(高齢者)はBHAが基本
- 器械出しは臼蓋側の器械(リーマー・カップ・スクリュー)の有無が最大の違い
- BHAは低侵襲・短時間だが、将来の臼蓋摩耗でTHAになることもある
- 両術式とも脱臼予防・感染・DVT・セメント使用時のBCISに注意
2つの術式は名前が似ていて混乱しがちですが、「臼蓋も置き換えるのがTHA、骨頭だけがBHA」という1点を軸にすれば、適応も器械も看護のポイントもつながって理解できます。それぞれの手術手順の詳細は、THAの手術手順記事とBHAの手術手順記事でも解説しているので、あわせて読むと理解がさらに深まります。
「どこまで置き換えるか」という視点で見れば、THAとBHAの違いはスッキリ理解できます。違いがわかれば、器械の準備も看護の観察も自信を持って臨めるようになります。この記事が、整形外科手術の器械出しの助けになれば嬉しいです🍈
📚 参考文献
- 日本整形外科学会・日本股関節学会 編.『変形性股関節症診療ガイドライン2016(改訂第2版)』.南江堂,2016年.
- 日本整形外科学会・日本骨折治療学会 編.『大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン2021(改訂第3版)』.南江堂,2021年.
- 川原美穂子 編著.『完全保存版! 手術室の器械・器具210』.メディカ出版,2024年.
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