※医療的判断・看護ケアは、必ず各施設のマニュアル・方針に従って実施してください。手術手順や使用器械は施設により異なる場合があります。
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😰「頚部郭清術、神経や血管が多すぎて何を渡せばいいか分からない…」
頚部(けいぶ)には副神経・迷走神経・舌下神経・横隔神経・内頚静脈・総頚動脈など、温存すべき重要な神経・血管が密集しています。器械出しに入ると「今どこを操作していて、何を温存しているのか」を見失いがちですよね。
この記事では、頚部郭清術の基礎知識から、手術の流れ・使用器械・温存すべき神経まで、新人オペ看にも分かりやすく徹底解説します。読み終わる頃には、頚部郭清術の器械出しに自信を持って臨めるはずです🍈
頚部郭清術は耳鼻咽喉科・頭頸部外科で行われる代表的な手術のひとつですが、解剖が複雑で温存すべき構造が多く、新人オペ看が苦手意識を持ちやすい術式です。しかし、「どの場面で、何を温存しながら、どの器械を使うのか」という流れさえ押さえれば、器械出しは驚くほどスムーズになります。まずは基礎から整理していきましょう。
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頚部郭清術とは?新人オペ看が知っておく基礎知識
頚部郭清術(けいぶかくせいじゅつ/ネックディセクション)とは、頭頸部がん(口腔がん・咽頭がん・喉頭がん・甲状腺がんなど)の頚部リンパ節への転移を取り除く(郭清する)ための手術です。がんが原発巣からリンパの流れに沿って頚部リンパ節へ広がるため、リンパ節と周囲の脂肪組織を一塊(いっかい)にして摘出します。
「一塊にして摘出する」というのが頚部郭清術の大きな特徴です。リンパ節を一つひとつ取るのではなく、転移している可能性のあるリンパ節と脂肪組織をまとめて切除することで、がんを取り残さないようにします。しかし頚部には温存すべき神経・血管が密集しているため、「温存する構造は傷つけず、郭清物だけをきれいに剥がす」という繊細な操作が必要になります。これが、頚部郭清術が「難しい」と言われる理由です。
頚部郭清術の種類
頚部郭清術は、どこまで温存し、どこまで切除するかによって大きく分類されます。とくに副神経・内頚静脈・胸鎖乳突筋の3つを残すかどうかが、術式を分けるポイントになります。
| 種類 | 副神経・内頚静脈・胸鎖乳突筋 |
|---|---|
| 根治的(全)頚部郭清術 | 3つとも切除する |
| 保存的頚部郭清術 | 1つ以上を温存する |
| 選択的頚部郭清術 | 転移しやすい特定領域(レベル)のみ郭清・温存 |
頚部リンパ節は、解剖学的な位置によってレベルⅠ〜Ⅵに分類されます。どのレベルを郭清するかは、原発巣の部位やがんの進行度によって決まります。担当する手術が「全郭清なのか/保存的なのか」「どのレベルまでか」を事前に確認しておくと、温存すべき構造をイメージしながら器械出しができます。
頚部リンパ節のレベル分類(Ⅰ〜Ⅵ)
レベル分類は、術者が「どこを郭清しているか」を表す共通言語です。ざっくりとした位置関係を知っておくと、術野の理解が一気に深まります。
| レベル | おおよその位置 |
|---|---|
| レベルⅠ | オトガイ下・顎下(あごの下) |
| レベルⅡ | 上内深頚(首の上部・内頚静脈に沿う) |
| レベルⅢ | 中内深頚(首の中央) |
| レベルⅣ | 下内深頚(首の下部) |
| レベルⅤ | 後頚三角(首の後ろ側) |
| レベルⅥ | 前頚部・気管周囲(甲状腺の周囲) |
どんながんで行われる?
頚部郭清術は、口腔がん・咽頭がん(中咽頭・下咽頭)・喉頭がん・甲状腺がん・唾液腺がんなど、頚部リンパ節へ転移しやすい頭頸部のがんに対して行われます。原発巣の手術(腫瘍切除)と同時に行われることも多く、その場合は手術が長時間に及びます。担当する際は、「原発巣はどこか」「同時手術か」もあわせて確認しておきましょう。
頚部の層構造をざっくり理解しよう
頚部郭清術を理解するうえで、首の「層(レイヤー)」をイメージできると一気に分かりやすくなります。首は表面から順に、皮膚 → 広頚筋 → 浅頚筋膜 → 胸鎖乳突筋などの筋肉 → 深頚筋膜 → 大血管・神経という層構造になっています。
郭清の操作は、この層をひとつずつ深く下りていくイメージです。浅い層では皮弁を挙上し、深い層では大血管・神経を温存しながら郭清物を剥がす——術者が「今どの層を操作しているか」を意識すると、次に確認・温存する構造が予測でき、器械出しの先読みにつながります。
頚部郭清術で温存すべき神経・血管
頚部郭清術の最大の難所は、温存すべき神経・血管を傷つけずに、リンパ節と脂肪組織だけを取り除くことです。器械出しとして「今、何を温存しているのか」を理解しておくと、術者の操作の意図が読めるようになります。代表的な温存構造を整理しましょう。
これらの神経・血管は、どれも損傷すると患者さんの生活の質(QOL)を大きく左右します。だからこそ術者は、ひとつずつ確認しながら慎重に郭清を進めます。器械出しは、剥離(メッツェンバーム・形成剥離剪刀)と止血(バイポーラ・結紮糸)を細かく繰り返すことを念頭に、器械を切らさず、テンポよく出せるように準備しておくことが大切です。神経を確認する場面では操作がいったんゆっくりになるため、その“間”を読んで次の器械を用意できると、術者から信頼される器械出しになれます。
| 温存する構造 | 損傷するとどうなる? |
|---|---|
| 副神経 | 僧帽筋が麻痺し、肩が上がりにくくなる |
| 迷走神経 | 嗄声(させい)・嚥下障害など |
| 舌下神経 | 舌の運動障害(構音・嚥下に影響) |
| 顔面神経下顎縁枝(レベルⅠb付近) | 口角が下がる(口元のゆがみ) |
| 横隔神経 | 横隔膜が麻痺し、呼吸に影響 |
| 腕神経叢 | 上肢の運動・感覚障害 |
| 交感神経 | ホルネル症候群(眼瞼下垂・縮瞳など) |
| 内頚静脈・総頚動脈 | 大出血のリスク(とくに保存術では温存) |
| 反回神経(甲状腺郭清時) | 嗄声・声帯麻痺 |
| 胸管・リンパ管(左下方) | 乳び漏(リンパ液の漏れ) |
💡 ベッセルループの色分けに注目
術中は、温存する血管・神経にベッセルループ(赤・青・黄)をかけて目印にすることがあります。一般に赤=動脈、青=静脈、黄=神経として使い分けられます。色の意味を知っておくと、術者が今どの構造を確保しているのかが一目で分かり、先読みした器械出しにつながります。
※色の運用は施設・術者によって異なる場合があります。自施設のルールを確認しましょう。
頚部郭清術の器械出しで準備する物品と体位
スムーズな器械出しのためには、事前準備が欠かせません。頚部郭清術では剥離・止血・結紮を繰り返すため、剪刀類・止血鉗子・結紮糸を多めにそろえておくのがコツです。
- 切開・剥離:No.10メス・電気メス・バイポーラ・メッツェンバーム剪刀・形成剥離剪刀
- 把持・牽引:マッカンドー有鉤/無鉤鑷子・アリス鉗子・スキンフック・ランゲンベック扁平鉤・2爪鉤
- 止血・結紮:モスキート・ペアン・コッヘル・各種結紮糸(2-0/3-0絹糸・シルク)
- 神経・血管の確保:ベッセルループ(赤・青・黄)・つり針
- 吸引・閉創:サクションチューブ・吸引管・持針器(マチュウ・ヘガール)・指示のドレーン・縫合糸
体位は基本的に仰臥位で、肩枕を入れて頚部を軽く伸展させ、顔を健側へ向けて術野を確保します。長時間手術になりやすいため、除圧・体温管理・末梢神経障害の予防にも配慮が必要です。神経モニタリング(NIM)を使用する場合は、術者の指示に従って筋弛緩薬の使用を麻酔科医と調整することがあるため、外回りも把握しておきましょう。
また、頚部郭清術は原発巣の手術(腫瘍切除)と同時に行われることが多く、その場合は使用する器械セットや手術時間が大きく変わります。担当する手術が「郭清単独か」「原発巣手術との同時か」を術前に確認し、必要な器械セット・縫合糸・ドレーンを過不足なくそろえておきましょう。事前のカンファレンスや手術申し込み内容をしっかり読み込んでおくことが、当日の落ち着いた器械出しにつながります。
頚部郭清術の手術手順と使用器械
ここからは、頚部郭清術の流れをSTEPごとに、使用する器械とオペ看のポイントを交えて解説します。施設や術者によって細かな違いはありますが、多くの病院で共通する流れに沿ってまとめました。
全体の流れは、①消毒・準備 → ②皮弁を挙上して術野を展開 → ③上方・下方・後方の郭清ラインを決める → ④郭清物を一塊に剥離して摘出 → ⑤洗浄・ドレーン・閉創という順序です。「今はどの段階か」を意識しながら読むと、器械の流れが頭に入りやすくなります。それでは順番に見ていきましょう。
【STEP1】消毒
下口唇から乳頭上部までの広い範囲を消毒します。頚部は可動性があり、術野が広く取られるのが特徴です。郭清の範囲が鎖骨上窩まで及ぶこと、術中に頭部の向きを変えることがあることから、あえて広めに消毒範囲を確保します。原発巣の手術を同時に行う場合は、口腔内なども含めて消毒範囲がさらに広がります。
- 使用器械の例:消毒鉗子・イオダイン消毒液・綿球
【STEP2】ドレーピング・局所麻酔・マーキング
耳鼻科用ドレープで術野を確保し、局所麻酔とマーキングを行います。電気メス・バイポーラ・吸引などのデバイス類もこの場面でセッティングします。局所麻酔は、出血を抑える目的でエピネフリン入りの薬剤が使われることもあるため、薬剤の種類と濃度を術者・麻酔科医と確認します。デバイス類は、コードが術野の邪魔にならないよう整理し、電気メス・バイポーラの出力設定もあわせて確認しておきましょう。
- 使用器械の例:耳鼻科用ドレープ・ドレープテープ・電気メス・バイポーラ鑷子・バイポーラコード・サクションチューブ・への字型吸引管(中)・シリコンタックシート・指示の麻酔薬・5mLロックシリンジ・2-0絹糸・丸針・マッカンドー有鉤鑷子・外科剪刀(反)
【STEP3】皮膚切開
マーキングに沿って皮膚を切開します。メスで切開し、電気メス・バイポーラで止血しながら進めます。頚部の皮膚切開は、術後の整容性(見た目)にも配慮して、しわに沿った切開線がデザインされることが多くあります。切開のあとは、電気メスとバイポーラを使い分けながら、出血を抑えて層を進んでいきます。
- 使用器械の例:No.10メス・マッカンドー有鉤鑷子・無鉤鑷子・ポッツスミス鑷子・電気メス・バイポーラ・サクションチューブ・吸引管
【STEP4】皮膚皮弁の挙上と後方の処理
広頚筋(こうけいきん)直下で皮膚を剥離・挙上し、術野を展開します。この場面で副神経・肩甲舌骨筋・顎二腹筋を確認し、上方・後方の郭清ラインを決定していきます。
広頚筋は首の皮膚のすぐ下にある薄い筋肉で、この直下の層で皮膚を剥離すると、出血が少なく神経も傷つけにくくなります。胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)は首を回す太い筋肉で、頚部郭清術の“ランドマーク(目印)”になります。保存的郭清術ではこの筋肉を残し、全郭清術では切除します。副神経はこの胸鎖乳突筋を貫いて僧帽筋へ向かうため、胸鎖乳突筋の裏面を剥離する場面は副神経を傷つけやすい要注意ポイントです。
- 広頚筋直下で皮膚を剥離・挙上する
- 胸鎖乳突筋の前縁から裏面を剥離する(保存術では鎖骨枝を残し胸骨枝を切除/全郭清では胸鎖乳突筋を全切除)
- 深部で副神経・肩甲舌骨筋・顎二腹筋を確認する
- 顎二腹筋を顎下腺まで露出し、上方の郭清ラインを決定する
- 副神経を僧帽筋まで剥離保存する(全郭清では副神経を切除)
- 深頚筋膜を露出し、後方の郭清ラインを決定する
- 使用器械の例:モスキートコッヘル・ペアン(曲)・モスキート・ペアン止血鉗子(細長)・3-0シルク・つり針・タオル鉗子・ウェット・マッカンドー有鉤/無鉤鑷子・メッツェンバーム剪刀・アリス鉗子・スキンフック・ベッセルループ・形成剥離剪刀・2爪鉤
🔎 オペ看ポイント
副神経を確認・保存する場面は最も緊張する瞬間のひとつ。剥離用のメッツェンバーム剪刀や形成剥離剪刀、神経確保用のベッセルループをすぐ出せるよう手元に準備しておきましょう。
【STEP5】下方の処理
鎖骨上窩(さこつじょうか)で重要な神経・血管を確認します。この領域は胸管・リンパ管が走行しており、損傷すると乳び漏を起こすため、とくに慎重な操作が求められます。
鎖骨上窩の深部には、横隔神経(おうかくしんけい)と腕神経叢(わんしんけいそう)という重要な神経が走っています。横隔神経は横隔膜の動き(=呼吸)を、腕神経叢は腕の運動・感覚を支配するため、いずれも損傷すると重大な後遺症につながります。これらを確認・温存しながら郭清ラインを決めるのが、この場面のポイントです。
- 鎖骨上窩で肩甲舌骨筋・頚横動脈・総頚動脈・内頚静脈・迷走神経を確認する(全郭清では内頚静脈を切断)
- 斜角筋の深さで横隔神経・腕神経叢を確認する
- 肩甲舌骨筋を鎖骨上部で切断する
- 斜角筋筋膜を露出し、鎖骨上窩の郭清ラインを決定する
- 使用器械の例:ランゲンベック扁平鉤・鑷子・2-0絹糸・3-0絹糸・モスキート・外科剪刀(反)
⚠️ 乳び漏に注意
左鎖骨上窩には胸管が走行しています。リンパ管・胸管を損傷すると術後に乳び漏(リンパ液の漏出)を起こすため、結紮用の絹糸を切らさず準備しておきます。術野に乳白色の液が出ていないか、外回りも観察を意識しましょう。
【STEP6】上方の処理
顎二腹筋の深層で、温存すべき神経・血管を確認・保存します。この上方の領域には、舌下神経(ぜっかしんけい)という舌の動きを支配する神経が走っており、損傷すると舌の運動障害(しゃべりにくさ・飲み込みにくさ)を起こします。内頚静脈・内外頚動脈・迷走神経とあわせて、慎重に確認しながら処理を進めます。
- 顎二腹筋の深層で副神経・内頚静脈・内外頚動脈・迷走神経・舌下神経を確認保存する(全郭清では内頚静脈を可能な限り上方で切断)
- 胸鎖乳突筋の上方部を切断切除する(全郭清では乳様突起から切断切除)
- 使用器械の例:電気メス・バイポーラ・モスキート・ベッセルループ(赤・青・黄)
【STEP7】郭清物の剥離挙上
いよいよ郭清物(リンパ節と脂肪組織)を一塊にして剥離・挙上していきます。温存すべき神経・血管を確認しながら、郭清物だけを丁寧に剥がしていく繊細な操作です。
とくに重要なのが頚動脈鞘(けいどうみゃくしょう)の処理です。頚動脈鞘とは、総頚動脈・内頚静脈・迷走神経を包む膜状の構造のこと。この中を走る大血管と迷走神経を傷つけないよう、鞘を慎重に開いて郭清物を剥がしていきます。器械出しは、剥離用のメッツェンバーム剪刀や形成剥離剪刀、結紮用の絹糸をテンポよく出せるように準備しておきましょう。剥離と結紮を細かく繰り返すため、結紮糸はこまめに補充することが大切です。
- 後方から深頚筋膜上で頚神経を適宜切断しながら、郭清物をメス・剪刀で剥離挙上する
- 腕神経叢・横隔神経を確認保存する
- 頚動脈鞘を剥離し、内頚静脈・総頚動脈(内外頚動脈)・迷走神経を確認保存する
- 交感神経を確認保存する
- 胸骨舌骨筋の外側縁で郭清物を一塊に摘出する
- 使用器械の例:メッツェンバーム剪刀・形成外科剥離剪刀・2-0/3-0絹糸・マッカンドー有鉤/無鉤鑷子・モスキート・ランゲンベック扁平鉤・電気メス・バイポーラ・マチュウ持針器・ヘガール持針器・外科剪刀(反)
🔎 オペ看ポイント
摘出した郭清物は病理検査に提出します。どのレベルの郭清物かを術者と確認し、検体の取り違えがないよう正確にラベリングしましょう。検体の左右・部位の確認は声出しで行うのが安全です。
【STEP8】甲状腺・気管周囲のリンパ節郭清(喉頭がん/下咽頭がん/甲状腺がんの場合)
原発巣が喉頭・下咽頭・甲状腺の場合は、甲状腺と気管周囲のリンパ節(レベルⅥ)の郭清を追加で行います。この場面では反回神経(はんかいしんけい)の温存が最重要です。気管に近い領域の操作になるため、気道の確保状況にも注意しながら進めます。
- 反回神経を確認保存し、ベリー靭帯を切離して甲状腺を遊離する
- 甲状腺と気管・食道周囲のリンパ節を郭清する
反回神経は声帯の動きを支配する神経で、損傷すると嗄声や声帯麻痺を起こします。神経刺激装置を使用して反回神経を確認する施設もあるため、事前に準備の有無を確認しておきましょう。
反回神経は、その名のとおり「反(かえ)って回る」ように走行するため、走行を把握しにくく損傷リスクの高い神経です。甲状腺を支えるベリー靭帯(ベリーじんたい)の近くを通るため、靭帯を切離して甲状腺を遊離する場面では、神経の位置を確認しながら慎重に操作します。器械出しは、細かい剥離・止血に対応できるよう、バイポーラや細い剪刀をすぐ出せるようにしておきましょう。
【STEP9】洗浄・ドレーン挿入・皮膚縫合・ドレッシング
止血を確認し、ドレーンを挿入してから皮膚を縫合します。頚部は死腔(しくう)ができやすく血腫・浸出液がたまりやすいため、ドレーン管理が重要です。郭清によって大きなスペースができると、そこに血液やリンパ液がたまり、血腫や感染、皮弁の血流障害の原因になります。これを防ぐためにドレーンを留置し、持続的に排液を促して死腔をつぶすのです。ドレーンの本数・留置部位は、術者と確認して正確に記録・申し送りしましょう。
- 止血確認後、ドレーンを挿入する
- ポリソープ・ナイロンで縫合する
- 縫合創を被覆する(ドレッシング)
- 使用器械の例:指示のドレーン・ヘガール持針器・2-0絹糸・アドソン鑷子(有鉤)・針糸(ポリソープ・ナイロン)
🔢 閉創前のカウントは必須
多数のガーゼ・器械を使う頚部郭清術では、閉創前のガーゼカウント・器械カウントが欠かせません。カウントが合わないときは必ず術者に報告し、体内遺残がないことを確認してから閉創に進みます。
頚部郭清術の外回り看護・術中管理のポイント
頚部郭清術は気道・大血管・多数の神経が密集する領域の手術です。外回り看護師は、器械出しと連携しながら次のポイントに注意します。とくに頭頸部の手術は麻酔科医と術野の距離が近く、気道トラブルが起こりやすいため、チーム全体での情報共有が欠かせません。
- 気道管理:手術が気道に近接するため、挿管チューブの固定・抜けに注意。原発巣の手術を伴う場合は気管切開を併用することもある
- 出血の観察:内頚静脈・総頚動脈などの大血管を扱うため、出血量を把握し急な出血に備える
- 神経モニタリング:副神経・反回神経を刺激装置で確認する場合、筋弛緩薬の効果が反応に影響するため麻酔科医と連携する
- 体位・体温・除圧:長時間手術になりやすく、保温と末梢神経障害・褥瘡の予防が重要
- 検体管理:郭清物のレベル・左右を正確にラベリングし、病理へ提出する
頚部郭清術の術後合併症と観察ポイント
頚部郭清術では、術後にも特有の合併症が起こりえます。とくに術後出血と気道閉塞は緊急性が高いため、退室時の申し送りでしっかり共有しましょう。
| 合併症 | 観察ポイント |
|---|---|
| 術後出血・血腫 | ドレーン排液の量・性状、頚部の腫脹。血腫は気道圧迫の原因になる |
| 気道閉塞 | 最も緊急。血腫や腫脹による呼吸困難・喘鳴に注意 |
| 乳び漏 | ドレーンから乳白色の排液。左鎖骨上窩の操作後に多い |
| 神経麻痺 | 副神経(肩が上がらない)・反回神経/迷走神経(嗄声)・舌下神経(舌の動き) |
| 皮弁壊死 | 創部の色調・血流。皮弁の縁が黒ずんでいないか |
退室時には、「どのドレーンが、どこに、何本入っているか」「温存/切除した神経」「術中の出血量」を病棟へ正確に申し送ることが、術後の安全な観察につながります。
頚部郭清術の器械出しで新人がやりがちな失敗と対策
| よくある失敗 | 対策 |
|---|---|
| 全郭清か保存術か把握せず準備する | 術前に「副神経・内頚静脈・胸鎖乳突筋を残すか」を確認する |
| 剥離用の剪刀・鑷子が手元になく渡せない | メッツェンバーム・形成剥離剪刀を常に手元に準備 |
| ベッセルループの色の意味を知らない | 赤=動脈・青=静脈・黄=神経の基本を覚えておく |
| 結紮用の絹糸を切らしてしまう | 2-0・3-0絹糸は多めに準備。血管処理が多い術式 |
| 摘出検体のレベル・左右を確認しない | 病理提出前に術者と声出しでダブルチェック |
| 閉創前カウントを省略する | ガーゼ・器械カウントを必ず実施し遺残を防ぐ |
こうした専門的な器械出しスキルは、あなたのオペ看としての市場価値そのものです。「もっと専門性を評価される環境で働きたい」と感じたら、情報収集だけでも始めてみる価値があります。手術室看護師に強い転職サービスはこちらから、今の自分の市場価値をのぞいてみてください(登録は無料・転職しなくてもOK)。
頚部郭清術のよくある疑問(オペ看Q&A)
Q. 全頚部郭清術と保存的頚部郭清術は何が違うの?
大きな違いは副神経・内頚静脈・胸鎖乳突筋を残すかどうかです。全(根治的)頚部郭清術ではこの3つを切除しますが、保存的頚部郭清術では1つ以上を温存します。温存できれば肩の運動障害などの後遺症を軽減できます。担当する手術がどちらかで、準備する器械や術者の操作が変わります。
Q. なぜ副神経の温存がそんなに大切なの?
副神経は僧帽筋(そうぼうきん)の動きを支配する神経です。損傷すると肩が上がりにくくなり、腕を挙げる動作に支障が出ます(肩症候群)。日常生活への影響が大きいため、がんの状況が許す限り温存が目指されます。
Q. 乳び漏(にゅうびろう)とは?
胸管やリンパ管が損傷し、リンパ液(乳び)が漏れ出す合併症です。とくに左鎖骨上窩には胸管が走行しているため、この領域の操作後に起こりやすくなります。ドレーンから乳白色の排液が見られたら乳び漏のサインです。術中はリンパ管・胸管を損傷しないよう慎重に操作し、結紮糸を切らさず準備しておきます。
Q. 神経モニタリング使用時に気をつけることは?
副神経や反回神経を確認するために神経刺激装置(モニタリング)を使うことがあります。このとき筋弛緩薬が効いていると神経への反応が出にくくなるため、術者・麻酔科医と連携して筋弛緩のタイミングを調整します。外回りも「いつモニタリングを使うか」を把握しておくと、スムーズに対応できます。
まとめ|頚部郭清術の器械出しで押さえる要点
頚部郭清術の器械出しで、オペ看が押さえるべきポイントを整理します。
- 頚部郭清術は頚部リンパ節転移を一塊に摘出する手術。全郭清か保存術かで温存範囲が変わる
- 温存すべき構造は副神経・迷走神経・舌下神経・横隔神経・腕神経叢・交感神経・内頚静脈・総頚動脈
- ベッセルループの色(赤=動脈・青=静脈・黄=神経)で温存構造を把握する
- 左鎖骨上窩は胸管損傷による乳び漏に注意
- 甲状腺郭清時は反回神経の温存が最重要
- 多数の器械・ガーゼを使うため閉創前カウントは必須
最初は「神経や血管の名前が多すぎて覚えられない」と感じるかもしれません。でも、“層をひとつずつ下りていき、温存する構造を確認しながら郭清物を剥がす”という大きな流れさえつかめば、一つひとつの操作の意味が見えてきます。担当する手術が「全郭清か保存術か」「どのレベルまでか」を確認し、温存する神経・血管をイメージしながら器械を準備する——これを意識するだけで、器械出しは格段にスムーズになります。
頚部郭清術は神経・血管が密集する難易度の高い手術ですが、「何を温存しているのか」が分かれば、器械出しは落ち着いてできるようになります。この記事が、明日の頚部郭清術の器械出しの自信につながれば嬉しいです🍈
📚 参考文献
- 日本頭頸部癌学会 編.『頭頸部癌取扱い規約 第6版補訂版』.金原出版,2019年.
- 一般社団法人 日本手術医学会.「手術医療の実践ガイドライン(改訂第三版)」.2019年.
- 川原美穂子 編著.『完全保存版! 手術室の器械・器具210』.メディカ出版,2024年.
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