※医療的判断・看護ケアは、必ず各施設のマニュアル・方針に従って実施してください。手術手順や使用器械は施設により異なる場合があります。
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🩸「肝臓の手術、出血が怖い…器械も多くて何を渡せばいいか不安」
肝臓は血流が非常に豊富な臓器。肝切除術は大出血のリスクと隣り合わせで、CUSAやプリングル法など見慣れない手技も多く、新人オペ看が緊張しやすい手術です。
この記事では、開腹で行う「肝右葉切除術」と「肝部分切除術」を、それぞれ手術手順と使用器械に分けてオペ看向けに解説します。2つの違いと共通の看護ポイントもまとめました🍈
肝切除術は、切除する範囲によって「肝右葉切除術(大きく切る)」「肝部分切除術(部分的に切る)」などに分かれます。この記事では、それぞれの開腹手術の流れを、術者の操作の意図とあわせて整理していきます。まずは基礎から押さえましょう。
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肝切除術とは?新人オペ看が知っておく基礎知識
肝切除術とは、肝臓がん(肝細胞がん・転移性肝がんなど)や良性腫瘍に対して、病変を含む肝臓の一部を切除する手術です。肝臓は右葉・左葉に大きく分かれ、さらに細かく区域(S1〜S8)に分けられます。どこまで切るかによって、肝右葉切除・肝部分切除・区域切除などに分類されます。
肝臓は門脈・肝動脈・胆管(グリソン系)と肝静脈・下大静脈という多くの血管・胆管が複雑に走行する、血流の非常に豊富な臓器です。そのため肝切除術では、「いかに出血を抑えて切るか」が最大のテーマになります。これがCUSA(超音波吸引装置)やプリングル法(血流遮断)といった独特の手技につながります。
肝臓は、門脈の枝分かれをもとにS1〜S8の8つの区域(クイノー分類)に分けられます。右葉はおおよそS5〜S8、左葉はS2〜S4、そしてS1(尾状葉)が中央にあります。「どの区域に腫瘍があるか」で切除範囲が決まるため、術中エコーで腫瘍と区域・血管の関係を確認することがとても重要になります。区域の名前をなんとなく知っておくと、術者の会話やマーキングの意図が理解しやすくなります。
また、肝臓は切除しても再生する臓器ですが、切りすぎると残った肝臓(残肝)が機能しきれず、肝不全になる危険があります。そのため、術前に肝機能を評価し、「どこまで切れるか」を慎重に判断したうえで手術が行われます。器械出しとしても、この“出血と残肝機能のバランス”の上に手術が成り立っていることを知っておくと、丁寧な操作の意味が見えてきます。
💡 知っておきたいキーワード
・CUSA(キューサー)=超音波で肝臓の組織を砕いて吸引し、血管・胆管を残しながら肝実質を切離する装置
・プリングル法(Pringle法)=肝十二指腸間膜(門脈・肝動脈・胆管が通る)を一時的に遮断し、肝臓への血流を止めて出血を減らす手技
・グリソン鞘=門脈・肝動脈・胆管を一緒に包む膜。まとめて処理(一括処理)することがある
肝右葉切除術と肝部分切除術の違い
同じ肝切除でも、切除する範囲によって手術の規模・手順が大きく変わります。2つの術式の違いを整理しておきましょう。
| 項目 | 肝右葉切除術 | 肝部分切除術 |
|---|---|---|
| 切除範囲 | 肝臓の右葉を大きく切除 | 腫瘍周囲を部分的に切除 |
| 血管処理 | 右肝動脈・右門脈・右肝管・右肝静脈を処理 | 切離面の血管を都度処理(大きな脈管の系統的処理は少ない) |
| 肝臓の授動(脱転) | 必要(右葉を後腹膜から外す) | 腫瘍部位による(大きな授動は少ない) |
| 手術規模・侵襲 | 大きい | 比較的小さい |
| 出血・残肝機能リスク | 高い(大きく切るため) | 比較的低い |
ざっくり言うと、肝右葉切除は「右葉ごと大きく切る手術」(ちなみに「左葉ごと大きく切る手術」は「肝左葉切除」です)、肝部分切除は「腫瘍の周りだけを切る低侵襲寄りの手術」です。それぞれの手順を、使用器械とあわせて見ていきましょう。なお、腹腔鏡で行う場合は腹腔鏡下肝右葉切除術の記事もあわせてご覧ください。
【肝右葉切除術】の手術手順と使用器械
まずは肝右葉切除術です。右葉全体を切除する大きな手術で、血管・胆管の系統的な処理と、右葉の授動(脱転)が特徴です。多くの病院で共通する流れに沿って解説します。
術野消毒・セッティング
乳頭から恥骨上まで消毒し、ドレープをかけて電気メス・サクション・超音波電気メスなどをセッティングします。肝臓は肋骨弓の奥にある臓器のため、手術台固定型の開創器(リトラクター)システムや、術野を上方・側方に大きく引き上げる開創器が活躍します。セッティングの段階で、術野がしっかり確保できるよう器械の位置を整えておきましょう。
- 使用器械の例:消毒鉗子・綿球、開腹用ドレープ、M式タオル鉗子、電気メス・超音波電気メス、サクションチューブ・外科用吸引管、開創器(リトラクター)システムなど
開腹(右上腹部を切開)
剣状突起から臍方向に正中切開し、弧状に右肋骨弓下へ切開を加えます(逆L字切開やJ字切開など)。電気メスで皮下・筋層を切開し、腹膜を切開して腹腔内へ到達します。肝臓は肋骨弓の奥深くにあるため、右上腹部を大きく開く切開が選ばれます。十分な視野を確保することが、その後の安全な脈管処理・切離につながります。出血しやすい部位でもあるため、電気メス・止血鉗子での止血を確実に行いながら進めます。
創縁保護用ドレープは、手術部位感染(SSI)を予防し、切開創を保護するために使用されます。創縁を覆うことで皮膚常在菌や体液、手術器械による汚染を防ぎ、清潔な術野を維持します。また、開創器による圧迫や創部の乾燥から組織を保護し、創傷へのダメージを軽減します。
- 使用器械の例:No.21メス、有鉤鑷子2本、電気メス、コッヘル止血鉗子、ランゲンベック扁平鉤、メッツェンバーム剪刀、ミクリッツ腹膜鉗子、創縁保護用ドレープ
腹腔内検索と切除範囲の確認
開腹後、癒着・腹水の有無、腫瘍の占拠部位、播種、肝硬変の有無を確認します。続いて術中エコーで、腫瘍と門脈・肝静脈・下大静脈との位置関係を確認し、切除範囲を見極めます。
術中エコーは肝切除の“ナビゲーション”です。体表からのエコーでは見えなかった小さな腫瘍が見つかったり、血管との距離が分かったりすることで、切除範囲が最終決定されます。器械出しは、エコープローブに滅菌カバーをかける介助や、ゼリーの準備をスムーズに行えるようにしておきましょう。
- 使用器械の例:フリッチ氏腹壁鈎 大・小、エコー、滅菌シャーレ、滅菌エコーゼリー
肝円索の結紮切断・肝鎌状間膜の切離
肝円索を結紮・切断し、肝鎌状間膜を切離して肝臓を遊離しやすくします。開腹鉤で術野を確保します。肝円索は胎児期の血管のなごりで、肝臓を前腹壁につないでいるひも状の組織です。これらの間膜を切ることで肝臓が動かせるようになり、奥の操作がしやすくなります。術野の確保は肝切除の安全性に直結するため、開創器をしっかりかけて視野を作ります。
- 使用器械の例:4-0ポリゾーブ、ヘガール持針器、ペアン(クライル・止血鉗子)、開腹鉤
胆嚢摘出・肝十二指腸間膜の処理
肝十二指腸間膜を露出し、胆嚢動脈・胆嚢管を処理して胆嚢を摘出します。肝右葉切除では、胆嚢を合わせて切除することが一般的です。肝十二指腸間膜の中には門脈・肝動脈・胆管という重要な脈管が通っているため、この部分の操作は肝切除の“要”になります。胆嚢を先に処理しておくことで、その奥にある脈管を確認・テーピングしやすくなります。
- 腸管を下げ、肝十二指腸間膜を露出。胆管の右辺縁に沿って縦切開し、胆嚢管・総胆管・胆嚢動脈を露出する
- 胆嚢動脈を3-0バイクリルなどで2重結紮する
- 胆嚢管を3管合流部まで剥離し、結石がないことを確認して通過結紮する
- 胆嚢を肝床から剥離する
- 使用器械の例:胆嚢鉗子、ケリー、ドベイキー血管鉗子、メッツェンバーム剪刀、長クーパー、3-0バイクリル、4-0ポリゾーブ、ヘガール持針器、電気メス
門脈・肝動脈・胆管の確保
切除に向けて、主要な脈管をベッセルループ(血管テープ)でテーピングします。色分けで構造を区別するのがポイントです。
- 固有肝動脈・左右の肝動脈・総胆管をテーピングする
- 右側に牽引し、門脈本管・左右門脈・左右肝管をテーピングする
🔎 ベッセルループ色分けの例
一般に赤=動脈(固有肝動脈・左右肝動脈)/青=門脈(門脈本管・左右門脈)/黄=胆管として使い分けられることがあります。色の意味を知っておくと、術者がどの脈管を確保しているか一目で分かります。
※色の運用は施設・術者によって異なる場合があります。
右肝動脈・右門脈枝・右肝管の結紮切離
右葉に向かう脈管を順に処理します。それぞれ2重結紮+貫通結紮で確実に処理してから切離します。これらをまとめてグリソン鞘として一括処理することもあります。グリソン鞘とは、門脈・肝動脈・胆管を一緒に包んでいる膜のこと。一本ずつ処理する方法と、鞘ごとまとめて処理する方法があり、術者の方針によって異なります。どちらの場合も、結紮糸が外れると大出血につながるため、確実な結紮が求められます。器械出しは、結紮糸・持針器をすばやく、正確に渡せるよう準備しておきましょう。
- 右肝動脈を2重結紮または貫通結紮し、切断する
- 右門脈枝を両端2重結紮、中枢端は貫通結紮し、切断する
- 右肝管(または前後区域枝)を2重結紮、中枢端は貫通結紮し、切断する
- 使用器械の例:ケリー、3-0バイクリル、4-0オペポリックス、ヘガール持針器、ドベイキー、メッツェンバーム剪刀、長クーパー
⚠️ 虚血域の境界(デマルケーション)
右の脈管を処理すると、血流が止まった右葉の表面に色の変わった境界線(デマルケーションライン)が現れます。これが肝実質を切離する目印になります。器械出しは、ここから切離・止血の器械(CUSA・電気メス・結紮糸)の準備に移ります。
肝右葉の脱転・下大静脈の露出・右肝静脈の処理
肝鎌状間膜・三角間膜・肝腎間膜を切離して右葉を後腹膜から授動(脱転)し、下大静脈を露出します。下大静脈との間を剥離し、左右の肝静脈根部を確認します。「授動(脱転)」とは、肝臓を体の後ろ側の組織から外して持ち上げられるようにする操作です。これにより、肝臓の裏側を走る下大静脈や肝静脈にアプローチできるようになります。肝臓を起こす際は、急な静脈の損傷や血圧変動に注意が必要な場面です。
- 使用器械の例:ケリー、ドベイキー、メッツェンバーム剪刀(下大静脈周囲の剥離)
🚨 大出血リスクが最も高い場面
下大静脈や肝静脈の周囲は、損傷すると大量出血や空気塞栓を起こす危険があります。血管鉗子・血管縫合糸(サージプロなど)をすぐ出せるよう準備し、外回りは出血量・血圧の変動を注視します。輸血の準備状況も確認しておきましょう。
肝実質の切離:CUSA(超音波吸引装置)の使用とプリングル法の施行
いよいよ肝臓本体を切離します。エコーで切離線を確認し、電気メスでマーキング。CUSA(超音波吸引装置)で肝実質を砕いて吸引しながら、現れる血管を止血・切離していきます。出血が多いときはプリングル法で血流を遮断します。
- エコーで腫瘍と中肝静脈を確認し、切離線を電気メスでマーキングする
- CUSAで肝実質を切離し、現れる血管を電気メス・ハーモニックフォーカスで止血切離する
- 必要に応じてプリングル法で血流遮断(遮断15分・解除5分のサイクル)を行う
- 右肝静脈に血管鉗子をかけて切断し、断端は4-0サージプロの連続縫合で閉鎖する
- 使用器械の例:CUSA、電気メス、ハーモニックフォーカス、サテンスキー、ケリー、3-0バイクリール、4-0オペポリックス、4-0サージプロ、ヘガール持針器、エコー
⏱️ プリングル法は時間管理がカギ
血流遮断は肝臓へのダメージを抑えるため、「遮断15分・解除5分」などのサイクルで行われます。外回りは遮断・解除の時刻を声出しで管理・記録し、術者に経過時間を伝えます。タイムキーパーとしての役割が重要です。
肝実質切断面の止血
切離が終わったら、切断面からの出血を確実に止めます。肝静脈からの出血が中心になるため、4-0・5-0サージプロで縫合止血し、さらに組織接着・止血シート(シート状生物学的組織接着・閉鎖剤)で圧迫止血します。肝臓の切断面は広く、細かい血管・胆管の断端が無数にあります。出血だけでなく胆汁の漏れ(胆汁漏)がないかも確認しながら、ていねいに処理します。止血用の細い縫合糸は多めに準備しておくと安心です。
- 使用器械の例:4-0・5-0サージプロ、ヘガール持針器、タコシール、ケリー2本、ベルガーゼ、シート状生物学的組織接着・閉鎖剤
洗浄・ドレーン挿入・閉腹・創の被覆
温生食で腹腔内を洗浄し、出血・胆汁漏出がないことを確認します。肝切断面へドレーンを留置し、腹膜・筋層・皮下を縫合して閉腹します。
- 使用器械の例:温生食、外科用吸引管外筒、リスター、ドレーン、No.11メス、マッチュウ持針器、3-0ポリソープ、1号ポリソープ(ループ針)、4-0マクソン、Yガーゼ
🔢 閉腹前カウントは必須
長時間・大量の器械とガーゼを使う肝切除では、ガーゼ・器械カウントを確実に行います。とくに止血に使ったツッペルやガーゼの遺残に注意。カウントが合わないときは必ず術者へ報告します。
【肝部分切除術】の手術手順と使用器械
続いて肝部分切除術です。腫瘍の周囲を部分的に切除する術式で、肝右葉切除のような大きな血管の系統的処理や授動は少なく、切離面の血管を都度処理しながら腫瘍を取り除くのが特徴です。CUSAやプリングル法を使う点は共通しています。
肝部分切除は、肝右葉切除に比べて切除する量が少なく、残肝機能を温存しやすいのがメリットです。肝硬変などで肝機能が低下している患者さんや、複数の小さな腫瘍がある場合などにも選ばれます。手順としては肝右葉切除と重なる部分も多いため、共通点と違いを意識しながら読むと理解しやすくなります。
術野消毒・セッティング
消毒・ドレーピング後、電気メス・サクションに加え、超音波メスやCUSA(超音波吸引装置)を設置します。CUSAはイリゲーション用の生食をセットし、動作チェックを行います。上腹部の手術では片つり腹壁鉤を両側に設置します。肝切除では使用するデバイスが多いため、セッティングの段階での動作確認がとても重要です。CUSAは組み立てる部品が多く、術中に不具合が出ると手術が止まってしまうため、開始前に必ず作動チェックをしておきましょう。
- 使用器械の例:消毒鉗子・綿球、開腹用ドレープ、M式タオル鉗子、電気メス・超音波電気メス、サクションチューブ・外科用吸引管、手術台固定型の開創器(リトラクター)システムなどの開創器、CUSA
皮膚切開・開腹
円刃刀で切開します(切開法は腫瘍の部位によって異なります)。電気メスで皮下・筋層を切開し、腹膜を切開して腹腔内へ到達します。
- 使用器械の例:No.21メス、有鉤鑷子2本、電気メス、コッヘル止血鉗子、ランゲンベック扁平鉤、メッツェンバーム剪刀、ミクリッツ腹膜鉗子
腹腔内検索・切離部位の確認:腫瘍をどれだけの余白(マージン)をつけて切るかのチェック
癒着・腹水・播種・肝硬変の有無を確認し、術中エコーで腫瘍と門脈・肝静脈・下大静脈の関係を調べます。腫瘍の占拠部位を電気メスでマーキングします。肝部分切除では、「腫瘍をどれだけの余白(マージン)をつけて切るか」がエコーで最終決定されます。切除線のマーキングは手術の設計図になるため、エコー介助とマーキングの場面は集中して見ておきましょう。
- 使用器械の例:フリッチ氏腹壁鉤、開腹鉤、エコー、滅菌エコーゼリー、滅菌シャーレ、電気メス
血管確保・肝実質の切離
必要に応じて脈管をテーピングし、プリングル法で一時的に血流を遮断しながら、CUSAや超音波電気メスで肝実質を切離します。出現する血管は太さに応じて結紮・切離します。
肝部分切除では、肝右葉切除のように右の脈管をまとめて処理するのではなく、切離を進めながら、その場に現れた血管・胆管を一本ずつ処理していくのが基本です。腫瘍の位置によっては門脈などのテーピングを省略することもあります。切離と止血・結紮を細かく繰り返すため、器械出しは結紮糸・止血材を切らさず、テンポよく出すことが求められます。CUSAの先端で組織が砕かれ、血管が“すじ”のように残って見えてくるのが特徴的な所見です。
- 固有肝動脈・左右門脈・総胆管をテーピングする(腫瘍部位によりテーピングしないこともある)
- 肝切離線周囲の腹膜に支持糸をかけてペアンで把持し、視野を展開する
- プリングル法で一時的に阻血し、CUSA・超音波電気メスで切離、バイポーラで止血する
- 細い静脈は結紮・切離、太い静脈は2重結紮で処理する
- 使用器械の例:ケリー(剥離鉗子)、ベッセルループ(赤=動脈/青=門脈/黄=胆管)、ペアン(クライル止血鉗子)、ヘガール持針器、ドベイキー、サテンスキー、血管テープ、タニケット、ハーモニック、3-0・4-0ポリソープ
止血
肝切離面からの出血を、止血材を当てて止血します。肝臓の切離面は「にじむような出血(じわじわした出血)」が起こりやすいため、縫合だけでなく、こうした面で止める止血材が活躍します。
- 使用器械の例:止血剤、銀ケリー2本、ベルガーゼ、腹壁鉤
腹腔内洗浄・ドレーン挿入・閉腹
開腹器と創縁保護用ドレープを外し、出血・異物がないことを確認して洗浄します。ドレーンを腹腔外へ引き出し、腹膜・筋層を縫合して閉腹します。ドレーンは、術後に肝切離面からの出血や胆汁漏を早期に発見するための大切な“見張り役”です。留置部位・本数を術者と確認し、正確に記録・固定しましょう。閉腹前には、ガーゼ・器械のカウントを必ず実施します。
- 使用器械の例:No.11メス、リスター、ペアン止血鉗子、マッチュウ持針器、有鉤鑷子、クーパー、3-0・4−0ポリソープ、1号ポリソープ
創の被覆
皮下洗浄を行い、4-0マクソンで皮下を縫合して創を被覆します。手術が終わっても、肝切除の患者さんは術後出血や胆汁漏、肝機能の変化に注意が必要です。退室時には、ドレーンの本数・位置・排液の性状、術中の出血量、プリングル法の有無などを病棟へ正確に申し送ることが、術後の安全な観察につながります。
- 使用器械の例:4-0マクソン、ヘガール持針器、クーパー、滅菌ワンウェイガーゼ、Yガーゼ
肝切除術で器械出し・外回りが押さえる共通ポイント
肝右葉切除・肝部分切除に共通する、肝切除術ならではの看護ポイントをまとめます。肝切除は「出血のコントロール」と「肝臓へのダメージを抑えること」を両立させる手術です。器械出し・外回りが連携してこの2つを支えることが、安全な手術につながります。
- 出血への備え:肝臓は血流が豊富。出血量カウント・輸血の準備・血圧変動の観察を徹底する
- プリングル法の時間管理:遮断・解除の時刻を声出しで管理・記録し、術者に経過時間を伝える
- CUSA・エネルギーデバイスの準備:CUSAの動作チェック、ハーモニック・VIOの設定を事前確認
- 止血材の準備:すぐ出せるようにしておく
- 体温管理:長時間・開腹手術になりやすく、低体温に注意(加温に配慮)
- カウント:ガーゼ・ツッペル・器械の遺残防止カウントを確実に
肝切除で多用するCUSAの組み立て・セッティングに不安がある方は、CUSA(キューサー)のセッティング方法の記事もあわせてご覧ください。
肝切除術のよくある疑問(オペ看Q&A)
Q. プリングル法はなぜ「15分遮断・5分解除」なの?
肝臓への血流を長く止めすぎると、残る肝臓がダメージを受けてしまいます。そこで一定時間遮断したら一度血流を戻し、肝臓を休ませるサイクルを繰り返します。「15分遮断・5分解除」は代表的な例で、実際の時間は施設や患者さんの肝機能によって異なります。外回りの時間管理がとても重要です。
Q. なぜCUSAで肝臓を切るの?普通のメスではダメ?
肝臓の中には細かい血管・胆管が無数に走っています。メスで一気に切ると大出血してしまうため、CUSAで肝実質(やわらかい組織)だけを砕いて吸引し、血管・胆管は残して露出させるのです。露出した血管を一本ずつ結紮・止血しながら切離することで、出血を最小限に抑えられます。
Q. 肝右葉切除と肝部分切除、器械出しで何が一番変わる?
最も変わるのは「大きな脈管を系統的に処理する工程があるか」です。肝右葉切除では右肝動脈・右門脈・右肝管・右肝静脈をそれぞれ確実に処理し、右葉を授動する工程があるため、テーピング・結紮・血管処理の器械を多く使います。一方、肝部分切除は切離面で都度処理するため、よりCUSAでの切離と止血材が中心になります。担当する術式がどちらかで、準備の重点が変わると覚えておきましょう。
Q. 術後に注意する合併症は?
主な術後合併症に、術後出血・胆汁漏(たんじゅうろう)・肝不全・腹水・感染などがあります。とくに胆汁漏は肝切除に特徴的で、ドレーンからの排液に胆汁(黄褐色の液)が混じっていないか観察します。退室時には、ドレーンの本数・留置部位・排液の性状を正確に申し送りましょう。
こうした難易度の高い肝胆膵手術の器械出しスキルは、あなたのオペ看としての市場価値そのものです。「もっと専門性を評価される環境で働きたい」と感じたら、情報収集だけでも始めてみる価値があります。手術室看護師に強い転職サービスはこちらから、今の自分の市場価値をのぞいてみてください(登録は無料・転職しなくてもOK)。
まとめ|肝右葉切除術・肝部分切除術の器械出しで押さえる要点
- 肝右葉切除=右葉ごと大きく切る大手術。右肝動脈・右門脈・右肝管・右肝静脈の系統的処理と右葉の授動が特徴
- 肝部分切除=腫瘍周囲を部分的に切る術式。切離面の血管を都度処理する
- 共通するのはCUSAでの肝実質切離・プリングル法での血流遮断
- ベッセルループは赤=動脈・青=門脈・黄=胆管で構造を区別
- 最大の注意点は大出血。とくに肝静脈・下大静脈周囲は危険。出血量カウント・輸血準備を徹底
- 外回りはプリングル法の時間管理がタイムキーパーとして重要
- 術後は胆汁漏・術後出血に注意。ドレーン排液の観察と申し送りを確実に
2つの術式は、「右葉ごと大きく切るか」「腫瘍の周りだけ切るか」という規模の違いはあっても、CUSAで丁寧に切離し、血管・胆管を確実に処理するという肝切除の基本は同じです。まずは大きな流れと、出血コントロールの考え方をつかむことが上達への近道です。
肝切除術は器械が多く出血リスクも高い難しい手術ですが、「出血をいかに抑えて切るか」という視点で流れを追うと、CUSAやプリングル法の意味が見えてきます。この記事が、肝胆膵手術の器械出しの自信につながれば嬉しいです🍈
📚 参考文献
- 日本肝臓学会 編.『肝細胞癌診療ガイドライン 2025年版(第6版)』.金原出版,2025年.
- 一般社団法人 日本手術医学会.「手術医療の実践ガイドライン(改訂第三版)」.2019年.
- 川原美穂子 編著.『完全保存版! 手術室の器械・器具210』.メディカ出版,2024年.
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