※医療的判断・看護ケアは、必ず各施設のマニュアル・方針に従って実施してください。手術手順や使用器械は施設により異なる場合があります。
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人工骨頭置換術の流れをわかりやすく解説
大腿骨近位部骨折や変形性股関節症 などに対して行われる 人工骨頭置換術 は、術後の機能回復を大きく左右する重要な手術です。
本記事では、 ステム挿入 → 骨頭装着 → カップ設置 → 閉創 までの一連の流れを、わかりやすく整理します。
器械出し・外回り双方の視点を意識しながら
手術の全体像を押さえていきましょう。
【この記事で分かること】
✅ 人工骨頭置換術の手術手順
✅ 人工骨頭置換術で使用する器械と器械出し看護ポイント
人工骨頭置換術(BHA)全体の流れ

術野消毒・ドレーピング
① 両下肢の消毒と清潔範囲の確保
術前に両下肢全体を十分に消毒します。
助手に脚を持ち上げてもらいながら、背側・殿部側まで清潔範囲を確保します。
感染予防のため、広範囲かつ均一な消毒操作を意識し、ムラなく丁寧に行うことが重要です。
| 目的 | 看護のポイント |
|---|---|
| 感染予防 | 背側・殿部まで確実に消毒し、清潔範囲を広く確保 |
| 術野確保 | 助手と連携しながら均一に実施 |
② ストッキネットとドレーピング
消毒後、両下肢をストッキネットで被覆します。
その後、滅菌ドレープを順に展開し、清潔野を形成します。
股関節周囲の可動域を意識し、術中操作に支障が出ないようドレーピングを行うことが重要です。
③ デバイス・オクトパスリトラクター支柱の設置
清潔野完成後、使用予定の手術用デバイスおよび オクトパスリトラクター支柱を設置します。
これは術中に筋層を牽引し、良好な視野を確保するための重要工程です。
| 設置タイミング | 目的 |
|---|---|
| 清潔野完成直後 | 術中の安定した視野確保 |
| 切開前準備段階 | スムーズな術野展開 |
皮膚切開〜股関節展開

① 皮膚切開(局所麻酔後)
術前に局所麻酔薬を注入し、疼痛軽減を図ります。
その後、No.21メスを用いて皮膚切開を行います。
切開線は術式に応じて設定され、出血に注意しながら皮下組織へ進みます。
| 使用器械 | ポイント |
|---|---|
| No.21メス | 切開線を意識し、皮下まで正確に進める |
| 局所麻酔薬 | 疼痛軽減と術中反応の抑制 |
② 大腿筋膜切開・大臀筋の鈍的展開
No.21メスで大腿筋膜を切開します。
その後、大臀筋を筋繊維方向に沿って鈍的に展開。
筋損傷を最小限に抑えながら深部へアクセスします。
| 目的 | 看護の理解ポイント |
|---|---|
| 深部構造への到達 | 筋繊維方向を意識した展開 |
| 筋損傷軽減 | 鈍的操作の意義を理解 |
③ 短回旋筋群剥離・関節包T字切開
コブ脊柱エレベーターで短回旋筋群を丁寧に牽引・剥離します。
関節包を視認後、T字切開を加え、 股関節への進入路を形成します。
ここから人工骨頭置換操作への準備が本格的に始まります。
| 操作 | 目的 |
|---|---|
| 短回旋筋群剥離 | 関節包の露出 |
| 関節包T字切開 | 股関節への安全な進入路形成 |
器械出し看護ポイント
レトラクター(1・3・4番)は使用頻度が高い器械です。
筋層・関節包展開のタイミングを先読みし、
スムーズな牽引ができる準備を整えておくことが重要です。

大腿骨頭の切除(骨頭の脱臼・大腿頸部の骨切り)

① 大腿骨頭の後方脱臼
股関節を屈曲・内転・内旋させ、単鈍コウで大転子を背側へ押すことで、 大腿骨頭を後方へ脱臼させます。
脱臼時は関節包損傷を防ぐことが重要であり、 幅広ノミを用いて慎重に操作します。
| 操作 | ポイント |
|---|---|
| 股関節操作 | 屈曲・内転・内旋のポジションを理解 |
| 脱臼操作 | 関節包損傷を防ぐ慎重な操作 |
② 大腿頸部骨切り(テンプレーティングに基づく)
頸部をレトラクトし、術前計画(テンプレーティング)に基づいた角度で オシレーターを用いて骨切りを行います。
骨折症例では骨頭抜去器で骨頭を除去した後、 骨端線の位置を確認し適正角度で骨切りします。
| 症例別ポイント | 確認事項 |
|---|---|
| 変形性股関節症など | テンプレート通りの角度確認 |
| 大腿骨頸部骨折 | 骨端線位置と骨切り角度 |
器械出し看護ポイント
大腿頸部骨切り時に準備する主な器械:
- エレバ(ランゲンベック骨膜起子)
- 髄核鉗子
- リュエル
- レトラクター5・6(U字レトラクター)
特にオシレーター使用中は、
牽引・吸引の補助を的確に行うことが重要です。
視野確保と安全確保を両立させ、円滑な操作を支援します。


カップ選定・リーミング・ラスピング

① トライアルカップによるサイズ決定
抜去した骨頭をノギスで計測し、実測値に近いトライアルカップを順に試します。
トライアルカップにハンドルを装着し、臼蓋に当ててフィット感・安定性を確認。 最適なサイズを選定します。
| 確認項目 | 評価ポイント |
|---|---|
| 実測値 | ノギス計測値との一致 |
| 適合性 | 臼蓋へのフィット感と安定性 |
② リーミング(髄腔形成)
下肢を屈曲・内転し、膝蓋骨が下を向くよう保持します。
ボックスノミで髄腔入口を整え、 カナルファインダーで中心軸を確認しながらリーミングを行います。
正確な位置と角度の決定が、ステム固定性に直結します。
| 使用器械 | 役割 |
|---|---|
| ボックスノミ | 髄腔入口の形成 |
| カナルファインダー | 中心軸の確認 |
③ ラスピング(近位部形成)
ラスプを用いて大腿骨近位部 (内側・前方・後方)を形成します。
遠位部を適度に削り、 ステムが安定して挿入できる形状を作成します。
固定性と適合性を高める重要工程です。
| 目的 | 重要ポイント |
|---|---|
| ステム安定化 | 過度な削りすぎに注意 |
| 適合性向上 | サイズアップの順序確認 |
器械出し看護ポイント
ラスプハンドル(ステム用ハンドル)に ステムを装着して順に手渡します。
サイズ展開:
1番小 → 0〜6番 → 必要時リバース
挿入時はハンマーを使用するため、 確実な準備とタイミングを合わせた手渡しが重要です。


トライアルと洗浄

① トライアル装着と仮整復
ラスピング後、選定したステムに トライアルネック・トライアルヘッドを装着します。
さらにトライアルカップを重ね、 股関節の仮整復を行います。
これによりサイズ・脚長・安定性・可動域などを術中に評価します。
| 確認項目 | 評価ポイント |
|---|---|
| サイズ適合 | 緩み・過度な緊張の有無 |
| 位置関係 | 脚長差・前捻角の確認 |
| 安定性 | 脱臼傾向の有無 |
② トライアル抜去と徹底洗浄
仮整復確認後、すべてのトライアルコンポーネントを抜去します。
その後、インプラント挿入予定部位を 丁寧に洗浄し、 骨片・血餅を完全に除去します。
| 目的 | 具体的内容 |
|---|---|
| 感染予防 | 術部の清潔維持 |
| 適合性向上 | 骨片・血餅の除去 |
インプラント挿入前洗浄の重要性
インプラント挿入前の洗浄は、 感染リスクの低減と インプラント適合性の向上が目的です。
骨片や血餅を残さないことが、術後合併症予防に直結
清潔な環境を維持することで、 術後感染や緩みのリスクを最小限に抑えます。

人工骨頭(ステム・カップ)の挿入

① ステム挿入・固定
適正サイズのステム(人工骨頭の柄部)を選択し、 徒手または専用ホルダーで大腿骨髄腔内へ挿入します。
打ち込み時はハンマーを使用し、 回旋アライメントや挿入深度を調整しながら確実に固定します。
| 確認項目 | ポイント |
|---|---|
| サイズ適合 | ラスピング時の形成状態と一致 |
| 回旋アライメント | 前捻角・脚長バランス |
| 挿入深度 | 過度な沈み込みや浮き上がりの防止 |
② 骨頭ヘッド装着・カップ設置
ステム上部(トラニオン)に骨頭ヘッド(インナーヘッド)を装着します。
続いて、その上にバイポーラカップ(アウターヘッド)を組み合わせます。これは骨盤側に固定する部品ではなく、温存した患者さん自身の臼蓋(受け皿)に直接かみ合って動く人工骨頭側のパーツです。
BHAでは臼蓋にはインプラントを固定しません。THAのような臼蓋カップのプレスフィット/スクリュー固定は行わず、自身の臼蓋にバイポーラ骨頭を整復して安定性を確認します。
| バイポーラ骨頭の構成 | 特徴 |
|---|---|
| インナーヘッド | ステムのトラニオンに装着する内側ボール |
| アウターカップ | 自身の臼蓋と摺動する外側カップ(骨盤には固定しない) |
術中の重要確認ポイント
✔ ステムの安定性(沈み込み・ぐらつきなし)
✔ ステムの前捻角・脚長バランス
✔ 整復後の安定性(脱臼テスト)と仮整復時との整合性確認
固定性とアライメントが、術後成績を左右する重要因子

筋層・皮下組織の縫合・閉創して手術終了

① 層ごとの縫合(筋層 → 皮下 → 皮膚)
人工骨頭挿入後、筋層・皮下組織・皮膚を 解剖学的層に沿って丁寧に縫合します。
各層を適切に閉鎖することで、 創部の安定性と術後感染予防につながります。
| 縫合層 | 目的 |
|---|---|
| 筋層 | 解剖学的再建・安定性確保 |
| 皮下組織 | 死腔減少・創部緊張軽減 |
| 皮膚 | 創閉鎖・外部汚染防止 |
② 閉創前の最終確認
閉創前に止血状況を再確認します。
さらに、 創部の清潔状態・異物残存の有無 をチェックします。
これらを確認後、最終縫合を行い閉創完了となります。
🔍 閉創時の重要チェック項目
✔ 出血の有無(再出血がないか)
✔ ガーゼカウント・器械カウント最終確認
✔ ドレーン位置・固定状況
✔ 創部緊張や皮膚縫合状態の確認
最後の確認が術後合併症予防を左右する
まとめ
人工骨頭置換術では、まず大腿骨髄腔に適切なサイズのステムを挿入し、回旋や深度を調整しながら確実に固定します。続いてステム上部に骨頭ヘッド(インナーヘッド)を装着し、その上にバイポーラカップ(アウターヘッド)を組み合わせます。BHAでは臼蓋にカップを固定せず、温存した自身の臼蓋にバイポーラ骨頭を整復して安定性を確認します。
最終的に止血と創部の清潔を確認し、筋層・皮下・皮膚を層ごとに丁寧に縫合して閉創となります。
参考文献
- 日本整形外科学会/日本骨折治療学会監修.大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン2021(改訂第3版).南江堂;2021.
- メディカ出版.オペナーシング2023年秋季増刊『オペナースのための予習用術式マニュアル』.メディカ出版;2023.
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