※医療・看護ケアは各施設の方針に従ってください。手順・使用器械は施設により異なります。
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『下肢遠位バイパス術の手術流れが分からない』
『バイパス術の器械出し看護に不安がある・・・』
このように思う手術室看護師の方も多いのではないでしょうか?
今回は下肢遠位バイパス術についての手術看護手順について解説していきます!
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この手術を受けるのは、足を失うかもしれない人です
手順に入る前に、患者さんの背景を押さえておきます。ここが分かると、準備の意味が変わります。
下肢遠位バイパスの対象の多くは、包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)——足の血流が足りず、安静にしていても痛い、傷が治らない、壊死が進んでいる状態の方です。
この手術の目的は、足を切断せずに残すことです。
2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン(日本循環器学会・日本血管外科学会)は、治療の選び方について「25cm以上の病変に対しては自家静脈を用いたバイパス術を第一選択とする」としています。
記事の手順で大伏在静脈を採取しているのは、このためです。
透析をしている方が多い
同ガイドラインは「多くの透析患者を抱えるわが国では、透析合併CLTIも重要な病態」とし、透析開始後5年のCLTI発症率は15%程度にのぼるという報告を挙げています。
つまり外回りとして、入室前に必ず確認することがあります。シャントがどちらの腕にあるかです。
- シャント側では、血圧測定・点滴・採血をしない
- 体位固定でシャント肢を圧迫しない。固定ベルトや手台の位置にも注意
- 術中もシャントのスリル(振動)が保たれているかを定期的に触れて確かめる
長時間の手術で、シャントが閉塞してしまう——足を救う手術で、透析の命綱を失うことは避けなければいけません。麻酔導入の前に、麻酔科医と「シャントは左です」とひと言そろえておくだけで防げます。
足先に傷や壊死があるときは
糖尿病を合併していることも多く、手術する足に潰瘍や壊死があることがあります。その部分は細菌が付いている前提で扱います。
消毒の順番やドレープのかけ方で、感染している部分と、バイパスの吻合をする部分を分ける——施設ごとの方法を、術前に確認しておいてください。
器械出しとしては、足先に触れた器械を、吻合に使う器械と混ぜないことが大切です。
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下肢遠位バイパス術 患者入室から麻酔導入・挿管
患者入室時の確認事項や、麻酔導入・挿管手順については以下を確認してください。
手術体位固定【仰臥位】
バイパス術は仰臥位で行います
体位固定のポイントついては以下の記事を参考にしてください
バイパス術 手術準備
術野消毒〜ドレーピング
①手術側の下肢全体(下肢表面と裏面)を消毒します
②消毒後に下肢にストッキネットを被せます
③下肢遠位バイパス用のドレープをかけます
電気メス・バイポーラ・サクションの接続
手術時に使用する電気メスやバイポーラ、サクションを接続します
下肢遠位バイパス術開始【バイパス用血管(大伏在静脈)の採取】
下肢皮膚切開〜大伏在静脈確保
①バイパス用血管の確保のために、下肢皮膚の切開を行います
②バイパス用血管(大伏在静脈)のを露出します
下肢皮膚切開〜バイパス用血管確保時は
・No.10円刃メス
・マッカンドー有鈎セッシ
・剥離剪刀
・メッツェンバーム剪刀
・アドソン開創器
・血管テーピング用テープ(ベッセルループテープ、綿テープなど)
③大伏在静脈の血管テーピングを行います
④大伏在静脈の側枝は結紮、切離します
大伏在静脈側枝を糸で結紮する場合は、
①大伏在静脈側枝をモスキートペアンで把持する
②3-0ブレードシルクや4-0ブレードシルクで結紮を行う
③剥離剪刀もしくはメッツェンバーム剪刀で大伏在静脈側枝を切離する
もしくは、ウエックなどの血管クリップを使用し、大伏在静脈側枝の切離を行います
【reverse法の場合】大伏在静脈の切離
【reverse法とは?】
静脈には「静脈弁」があるため、静脈を体外へ取り出し、血管を反転させて吻合する方法を「reverse法」といいます。
静脈の末梢側をバイパスする血管の中枢側へ吻合し、中枢側はバイパスする血管の末梢側へ吻合します。
①大伏在静脈切離前に、ピオクタニンなどの色素でマーキングを行います
【大伏在静脈のマーキングはなぜ行う?】
⇨血管バイパス時に、バイパス血管である大伏在静脈がねじれてしまうことを防ぐために行います
②切離予定の大伏在静脈中枢側をブルドッグ鉗子もしくはホプキンス鉗子で把持します
③大伏在静脈末梢側を2-0ブレードシルク、もしくは3-0ブレードシルクで結紮し、切離します
④大伏在静脈血管内を末梢側からヘパリン入り生理食塩水で満たします
⑤大伏在静脈血管内を加圧充填した際に、血管内からの漏れの有無を確認し、漏れがある部分を結紮もしくはウエック等で血管クリップを行います
⑥大伏在静脈中枢側を2-0ブレードシルク、もしくは3-0ブレードシルクで結紮し、切離します
⑦大伏在静脈を採取します
採取した大伏在静脈は【ヘパリン入り生理食塩水】と【患者から採取した動脈血】を混ぜたものの中で保管することが多いため、適切に管理します
【in situ法(Non-reverse法)の場合】大伏在静脈の切離
【in situ法(Non-reverse法)とは?】
「静脈弁カッター」を使用することで、静脈を反転させることなく吻合する方法です。
大伏在静脈を取り出す必要がなく、皮膚切開が小さく済みます。
そのため、創治癒不良の患者に対して適しています。
①エコーで大伏在静脈側枝を確認しながら、側枝の箇所で皮膚切開を追加します
②大伏在静脈側枝をモスキートペアンで把持し、結紮と切離します
③大伏在静脈を大腿静脈流入部で切離し、断端を大腿動脈に吻合します
④末梢側から静脈弁カッターを挿入し弁カットします
下肢バイパス 吻合準備【顕微鏡(マイクロ)セッティング】
術野へ顕微鏡(マイクロ)を挿入し、セッティングします
【reverse法の場合】大伏在静脈-膝窩動脈 吻合
膝窩動脈を遮断し、大伏在静脈の末梢側を膝窩動脈に吻合します
吻合時は5-0・6-0・7-0プローリン・サージプロ・ネスピレンなどの針糸を使用します
大伏在静脈-膝窩動脈の吻合時は
・No.11メス
・遮断鉗子
・サイドクランプ鉗子
・アオルタパンチ
・マイクロリング鑷子
を使用します
吻合【足背動脈(後脛骨動脈)-大伏在静脈 吻合】
①動脈を遮断します
②足背動脈(後脛骨動脈)で末梢側吻合を行います
吻合時は9-0・10-0のプローリン(サージプロ・ナイロンなど)と、非常に小さい針糸の受け渡しを行うこととなります。
そのため針糸の紛失に注意し、針糸の受け渡し時は持針器から目を離さないようにしましょう
③吻合後、一度遮断解除し漏れの有無を確認します
吻合時では
・マイクロ鑷子
・マイクロポッツ剪刀
・サイザー
・マイクロ持針器
を使用します
採取した静脈は、代わりがききません
記事の手順で「採取した大伏在静脈は適切に管理します」と書きました。その重みを補足しておきます。
同ガイドラインは、大規模研究の結果として「single segment の大伏在静脈・静脈グラフト径3.5mm以上でグラフト開存率が良好」と記載しています。
術前にエコーで静脈の太さを測っているのは、使える静脈かどうかを見極めるためです。
逆に言えば、条件を満たす静脈は、患者さんに何本もあるわけではありません。採った静脈を乾かしたり、器械台から落としたりすれば、もう取り直せない可能性があります。
保存液の容器を器械台のどこに置くかを決めて、その場所には他のものを置かない——これがいちばん確実な守り方です。
バイパス血管 血流量測定
フローメーターを使用し、バイパス血管の血流量を測定します
必要に応じて血管造影を行いながら、血管血流量や血流状態を評価していきます。
下肢遠位バイパス術 終了
止血・洗浄
吻合部の止血と、術野の洗浄を行います
ドレーン挿入・閉創~下肢遠位バイパス手術終了
ドレーンの挿入を行い、閉創します
閉創前に、ガーゼカウントと器械カウントを行い、体内遺残がないことを確認します
麻酔覚醒・抜管~退室
手術終了後、麻酔覚醒と抜管を行い、バイタルサインに変動が無ければ退室となります
病棟に渡すのは「足の色と温かさ」
この手術の成否は、手術室を出たあとに分かります。バイパスが詰まっていないかを見続けるのは病棟です。
だから申し送りでは、手術が終わった時点の足の状態を具体的に伝えてください。
- 足背動脈・後脛骨動脈が触れたか、ドプラで聴取できたか(どこで、どう確認したか)
- 足先の皮膚の色と温かさ(術前と比べてどうか)
- 吻合した位置と、ドレーンが入っている場所
- シャントのスリルが保たれていたか(透析の方)
「さっきまで触れていた脈が触れない」は、グラフト閉塞のサインのことがあります。病棟がそれに気づけるのは、手術室で「どこで触れていたか」を渡しているときだけです。
「続けられる働き方」から先に決めたほうが、早いこともあります
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参考文献
・日本循環器学会/日本血管外科学会.2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン(全文PDF)
・日本手術医学会.手術医療の実践ガイドライン(改訂第三版).手術医学 Vol.40, Suppl., 2019(全文PDF)
※術式・器械・静脈の保存方法は施設と術者によって異なります。必ず自施設の方針に従ってください。
下肢遠位バイパス術 手術看護手順まとめ
今回は下肢遠位バイパス術の手術手順について解説しました。
✅下肢遠位バイパス術の手術流れについて知りたい方
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ぜひ記事を参考にしてください!
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