【局所麻酔薬完全ガイド】種類・作用・局所麻酔薬中毒の症状と対応|リドカイン・ロピバカイン・ブピバカインの特徴も解説

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💉 「局所麻酔だから全身麻酔より安全だよね?」——それ、本当に危険です。

手術室では毎日のように使われる局所麻酔薬。「全身麻酔に比べれば安全」というイメージを持っている新人看護師は少なくありません。しかし実際には、局所麻酔薬は使い方を誤ると致命的になりうる薬剤です。

局所麻酔薬中毒(LAST)は突然発症し、数分以内に心停止を引き起こすこともあります。「自分の現場では起こらない」という油断が最も危険です。

この記事では、手術室で使う局所麻酔薬の種類・作用のしくみ・使い分けから、局所麻酔薬中毒(LAST)の症状・予防・緊急対応まで、新人オペ看護師が現場で即使える知識を徹底解説します。

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  1. 局所麻酔薬とは?作用メカニズムをゼロから理解する
    1. 局所麻酔薬の基本的な作用機序
    2. エステル型とアミド型の2種類
  2. 手術室でよく使う局所麻酔薬の種類と特徴
    1. ① リドカイン(商品名:キシロカイン®)
    2. ② ロピバカイン(商品名:アナペイン®)
    3. ③ ブピバカイン(商品名:マーカイン®)
    4. ④ レボブピバカイン(商品名:ポプスカイン®)
    5. ⑤ メピバカイン(商品名:カルボカイン®)
    6. 主要薬剤の比較一覧表
  3. 局所麻酔の種類と手術室での使い分け
    1. ① 浸潤麻酔
    2. ② 末梢神経ブロック(伝達麻酔)
    3. ③ 脊髄くも膜下麻酔(腰椎麻酔・脊椎麻酔)
    4. ④ 硬膜外麻酔
    5. ⑤ 表面麻酔
  4. 局所麻酔薬中毒(LAST)とは|最も恐れるべき合併症
    1. LASTが起こりやすい状況
    2. LASTの症状:中枢神経系→心臓の順に進行する
    3. LASTの予防策
    4. LASTの対応・治療:脂肪乳剤(イントラリピッド®)が鍵
  5. 局所麻酔薬の安全な使用のための看護ポイント
    1. 薬剤の準備と確認
    2. 投与中・投与後の観察ポイント
    3. よくあるミスと対策
  6. 新人オペ看が覚えておきたいQ&A
    1. Q1. キシロカインとリドカインは同じもの?
    2. Q2. 局所麻酔薬中毒は予防できる?
    3. Q3. 局所麻酔薬のアレルギーはよくある?
    4. Q4. 脊椎麻酔の後、なぜ血圧が下がりやすい?
    5. Q5. 局所麻酔薬の「比重」って何?
  7. まとめ
    1. 参考文献
    2. ◆ ごあいさつ
    3. ◆ コメントのお願い
    4. ◆ 関連おすすめ記事
    5. ◆ オペ看勉強コンテンツ

局所麻酔薬とは?作用メカニズムをゼロから理解する

局所麻酔薬とは、特定の部位の神経に作用して、その領域の痛みや感覚を一時的に遮断する薬剤です。全身麻酔と異なり、意識を失わせることなく手術部位の痛みだけを取り除くことができます。

局所麻酔薬の基本的な作用機序

局所麻酔薬の作用の核心は、神経細胞膜にあるナトリウムイオンチャネル(Naチャネル)の遮断です。

通常、神経が刺激を受けると、Na⁺チャネルが開いてナトリウムイオンが細胞内に流入し、活動電位が発生します。この活動電位の連鎖が「痛みの信号」として脳に伝わります。局所麻酔薬はこのNa⁺チャネルをブロックすることで、活動電位の発生を抑制し、痛みの信号が脳に届かないようにします

📌 作用機序のポイント:Na⁺チャネル遮断

神経刺激 → Na⁺チャネル開放 → Na⁺流入 → 活動電位発生 → 痛み信号伝達
          ↑ここを局所麻酔薬がブロック↑
→ 活動電位が発生しない → 痛みが伝わらない

局所麻酔薬は細い神経線維(痛覚・温度覚)に先に効き、太い神経線維(運動神経・触覚)には後から効きます。これが「痛みは取れているのに足は動く」という硬膜外麻酔の仕組みです。

エステル型とアミド型の2種類

局所麻酔薬は化学構造によってエステル型アミド型の2種類に分けられます。現在の手術室でほぼ使用されるのはアミド型です。

分類 代表薬 代謝 特徴
エステル型 プロカイン、テトラカイン、コカイン 血漿コリンエステラーゼで加水分解 アレルギー起こしやすい・現在はほぼ不使用
アミド型 リドカイン、ロピバカイン、ブピバカイン、メピバカイン、レボブピバカイン 肝臓で代謝(CYP3A4) 安定性が高い・アレルギー少ない・現在の主流

エステル型はアレルギーを起こしやすいため、現在の臨床ではアミド型が圧倒的に多く使われています。アミド型のアレルギーは非常にまれです。「局所麻酔薬にアレルギーがある」という患者さんの申告があった場合は、どちらの型に対するアレルギーなのか確認することが重要です。

手術室でよく使う局所麻酔薬の種類と特徴

ここでは、手術室で頻繁に使われるアミド型局所麻酔薬を一つひとつ解説します。薬剤の特性を把握することで、「なぜ今この薬を使うのか」が理解できるようになります。

① リドカイン(商品名:キシロカイン®)

リドカインは最もよく使われる局所麻酔薬の代名詞です。作用発現が速く(5〜10分)、効果持続時間は60〜120分程度。価格が安く、信頼性が高いため、浸潤麻酔・神経ブロック・表面麻酔・静脈内局所麻酔(ビア麻酔)など幅広い場面で使われます。

項目 内容
商品名キシロカイン®(0.5%・1%・2%・4%など)
作用発現速い(約5〜10分)
持続時間60〜120分(エピネフリン添加で延長可)
最大使用量(成人)エピネフリンなし:4.5mg/kg(最大300mg)
エピネフリンあり:7mg/kg(最大500mg)
主な使用場面浸潤麻酔・神経ブロック・表面麻酔・静脈内局所麻酔・気管内挿管前の咽頭麻酔
特記事項脊髄くも膜下麻酔での単独使用は馬尾症候群リスクがあり制限あり

リドカインにはエピネフリン(血管収縮薬)添加製剤があります。エピネフリンを加えることで、局所の血管が収縮し局所麻酔薬の吸収が遅くなるため、①効果の持続時間が延長し、②術中出血量が減少し、③血中への吸収速度が遅くなるため中毒リスクが下がるというメリットがあります。ただし、指・鼻・耳・陰茎などの末梢血管が細い部位への使用は壊死リスクがあるため禁忌です。

② ロピバカイン(商品名:アナペイン®)

ロピバカインは現在の手術室・ペインクリニックで最も広く使われる長時間作用型局所麻酔薬のひとつです。作用持続が長く(2〜6時間以上)、神経ブロック・硬膜外麻酔・術後鎮痛に多用されます。

最大の特徴はブピバカインと比較して心毒性が低い点です。純粋なS(−)鏡像体のみで構成されているため(レボロタリー型)、心臓への影響が少なく安全性が高いとされています。

項目 内容
商品名アナペイン®(0.2%・0.75%など)
作用発現やや遅い(10〜20分)
持続時間2〜6時間以上(濃度・使用法による)
最大使用量(成人)200〜300mg(用途により異なる)
主な使用場面硬膜外麻酔・末梢神経ブロック・術後鎮痛(持続硬膜外)
特記事項ブピバカインより心毒性が低い。低濃度(0.2%)で運動神経遮断を最小化できる

③ ブピバカイン(商品名:マーカイン®)

ブピバカインは長時間作用型局所麻酔薬のパイオニア的存在です。持続時間は4〜8時間以上と非常に長く、脊髄くも膜下麻酔(脊椎麻酔)に広く使われます。

ただし、心毒性がロピバカインより高いという重大な特性があります。誤って血管内に投与された場合、致死的な不整脈(心室細動など)を引き起こし、蘇生が非常に困難になります。このリスクから、0.75%製剤は硬膜外麻酔への使用が禁忌とされています(脊椎麻酔への低用量使用は可)。

項目 内容
商品名マーカイン®(0.5%・0.75%)
作用発現やや遅い(10〜20分)
持続時間4〜8時間以上
最大使用量(成人)2mg/kg(最大150〜175mg)
主な使用場面脊髄くも膜下麻酔(低比重・等比重)・末梢神経ブロック
⚠️ 特記事項0.75%硬膜外投与は禁忌。心毒性が高く血管内誤注入は致命的になりやすい

④ レボブピバカイン(商品名:ポプスカイン®)

レボブピバカインは、ブピバカインのS(−)鏡像体(光学異性体)のみを純粋に取り出した薬剤です。ブピバカインと同等の麻酔効果を持ちながら、心毒性・中枢神経毒性がブピバカインより低いとされています。

項目 内容
商品名ポプスカイン®(0.5%・0.75%)
持続時間4〜8時間(ブピバカインと同程度)
主な使用場面硬膜外麻酔・末梢神経ブロック・浸潤麻酔
特記事項ブピバカインより安全性が高い。硬膜外麻酔に使用可

⑤ メピバカイン(商品名:カルボカイン®)

メピバカインはリドカインに似た中程度の持続時間(1.5〜3時間)を持つ局所麻酔薬です。血管収縮作用が弱く単独でもある程度効果が持続するため、エピネフリンが使いにくい部位(末梢血流障害のある部位など)での使用に向いています。歯科治療でもよく使われる薬剤です。

主要薬剤の比較一覧表

薬剤名 商品名 作用発現 持続時間 心毒性 主な用途
リドカイン キシロカイン® 速い(5〜10分) 60〜120分 中等度 浸潤・表面・神経ブロック
ロピバカイン アナペイン® やや遅い(10〜20分) 2〜6時間以上 低い 硬膜外・神経ブロック・術後鎮痛
ブピバカイン マーカイン® やや遅い(10〜20分) 4〜8時間以上 高い 脊椎麻酔(低用量)
レボブピバカイン ポプスカイン® やや遅い 4〜8時間 中程度 硬膜外・神経ブロック
メピバカイン カルボカイン® 速い(5〜10分) 1.5〜3時間 中等度 浸潤・神経ブロック・歯科

局所麻酔の種類と手術室での使い分け

局所麻酔薬の投与方法(手技)にはいくつかの種類があり、手術の内容・部位・目的によって使い分けられます。外回り看護師として、どの方法がどんな状況で使われるかを把握しておくことは、準備・介助・観察の質を高める上でとても重要です。

① 浸潤麻酔

手術部位の組織に直接局所麻酔薬を注射する方法です。最もシンプルで広く使われます。皮膚切開前の浸潤・縫合時の追加投与など、小手術から大手術まであらゆる場面で使われます。使用量に注意が必要で、広範囲に使う場合は中毒リスクを意識した量の管理が必要です。

② 末梢神経ブロック(伝達麻酔)

特定の末梢神経の近傍に局所麻酔薬を投与し、その神経支配領域全体を麻酔する方法です。超音波ガイド下神経ブロックが普及し、安全性・精度が大幅に向上しました。上肢手術(腕神経叢ブロック)・下肢手術(大腿神経ブロック・坐骨神経ブロックなど)・術後鎮痛に使われます。

外回り看護師は超音波装置・神経刺激器・神経ブロック用針・局所麻酔薬の準備をあらかじめ整えておく必要があります。また、ブロック後は運動麻痺が起こることがあるため、体位変換時の転落防止にも注意が必要です。

③ 脊髄くも膜下麻酔(腰椎麻酔・脊椎麻酔)

くも膜下腔(脳脊髄液の流れる空間)に少量の局所麻酔薬を投与する方法です。下腹部〜下肢の手術(帝王切開・下肢骨折・経尿道的手術など)に多用されます。少量の薬剤で広い範囲を麻酔できる一方、血圧低下(高位脊椎麻酔では呼吸停止のリスクも)や頭痛(硬膜穿刺後頭痛)などの合併症に注意が必要です。

脊椎麻酔で使われる主な薬剤はブピバカイン(等比重・低比重・高比重)です。比重によって広がり方が変わるため、体位管理が麻酔効果を左右します。麻酔科医の指示する体位を正確に維持することが看護師の重要な役割です。

④ 硬膜外麻酔

硬膜外腔にカテーテルを留置し、局所麻酔薬を持続投与する方法です。主に胸腹部の大手術・術後鎮痛・産婦人科手術(無痛分娩)に使われます。ロピバカインやレボブピバカインが多く使われ、持続硬膜外投与による術後疼痛管理(PCA:患者自己調節鎮痛)と組み合わせることも一般的です。

外回り看護師は硬膜外カテーテルの位置確認・固定・カテーテルの接続部の管理・投与ポンプの設定確認などを担当します。カテーテルの偶発的な抜去・接続外れが重篤な事態を招くため、術中・術後を通じた管理が求められます。

⑤ 表面麻酔

皮膚・粘膜の表面に局所麻酔薬を塗布・噴霧する方法です。気管挿管前の咽喉頭・気管へのキシロカインスプレー・眼科手術の点眼麻酔・内視鏡前処置などが代表例です。吸収が速い粘膜への使用では全身吸収による中毒リスクがあるため、使用量に注意します。

局所麻酔薬中毒(LAST)とは|最も恐れるべき合併症

局所麻酔薬全身性毒性(LAST:Local Anesthetic Systemic Toxicity)は、局所麻酔薬が血中に過剰に吸収または誤って血管内に直接投与されることで、中枢神経系・心血管系に重篤な障害を引き起こす緊急事態です。

LASTは頻度は低い(1万回に数件程度)ものの、一旦発症すると心停止・死亡に至ることもある重篤な事態です。手術室看護師として、その兆候を見逃さず、迅速に対応できることが求められます。

LASTが起こりやすい状況

  • 血管内誤注入:神経ブロック時・硬膜外投与時に針が血管に迷入し、局所麻酔薬が直接血管内に入る(最多・最危険)
  • 過量投与:体重・年齢・肝機能を考慮せずに最大用量を超えて使用する
  • 血管が豊富な部位への投与:肋間神経ブロック・気管内投与・粘膜への多量使用
  • 代謝が遅い患者:肝機能障害・心不全・高齢者・新生児・低体重の患者
  • エピネフリン無添加での多量使用:エピネフリン添加がないと吸収が速くなる

LASTの症状:中枢神経系→心臓の順に進行する

LASTの症状は血中濃度の上昇とともに中枢神経系から始まり、重症化すると心臓に及びます。心臓への影響が出た段階では、蘇生が極めて困難になることがあります。特にブピバカインはNa⁺チャネルへの結合が強く、心臓から離れにくいため(「fast in, slow out」ではなく「slow out」の性質)、心停止後の蘇生が非常に困難です。

進行段階 症状 血中濃度
初期(中枢神経興奮) 口周囲のしびれ・舌のしびれ・めまい・耳鳴り・金属味・不安感・興奮・視覚異常(複視) 低〜中(リドカイン換算 1〜5μg/mL)
中期(中枢神経抑制) 意識混濁・筋肉の振戦・けいれん(全身性強直間代発作) 中〜高(5〜10μg/mL)
重症(心臓毒性) QRS幅拡大・PR延長・心室頻拍・心室細動・無脈性電気活動(PEA)・心停止 高(10μg/mL以上)

🚨 LASTの早期サインを見逃すな!(特に重要)

  • 神経ブロック・硬膜外注射の直後に「口がしびれる」「耳鳴りがする」「気分が悪い」と訴えたとき
  • 意識が急に変わった(興奮・不安・ぼんやり)
  • バイタルサインが急に変化した(特に不整脈・血圧変動)
  • 注射直後の突然のけいれん

→ 「局所麻酔を使った直後である」という事実を常に頭に置いて観察する

LASTの予防策

LASTの発生を防ぐために、麻酔科医・術者・看護師が協力して以下の取り組みを行います。

  • テスト投与(試験量):神経ブロックや硬膜外麻酔では、本投与の前に少量(3〜5mL)を投与し、血管内誤注入の徴候(頻脈・血圧変動・しびれ感)がないか確認する。エピネフリン添加製剤を使う場合は、静脈内投与なら心拍数が上昇するため検出に役立つ
  • 頻回の吸引確認:注射針で薬剤を投与する際、「吸引陰性(血液が引けない)」を確認してから注入する
  • 超音波ガイド下使用:神経や血管の位置を視覚的に確認することで誤注入リスクを大幅に減らす
  • 最大量を超えない:患者の体重・状態に応じた計算された用量を守る
  • 分割注入:一度に大量を注入せず、複数回に分けて少量ずつ投与する
  • モニタリング:局所麻酔薬使用中はSpO₂・心電図・血圧を継続的に監視する

LASTの対応・治療:脂肪乳剤(イントラリピッド®)が鍵

LASTが疑われた場合、迅速な初期対応が命を救います。新人看護師のうちにイントラリピッド(脂肪乳剤)の場所と使い方を把握しておくことは必須です。

📋 LAST発症時の対応手順

  1. 局所麻酔薬の投与を即座に中止する
  2. 応援を要請する(麻酔科医・救急チーム)
  3. 気道確保・酸素投与(100%酸素で換気)。必要なら挿管
  4. けいれんコントロール:ベンゾジアゼピン系(ミダゾラムなど)を投与
  5. 脂肪乳剤療法(Lipid Emulsion Therapy)を開始
    イントラリピッド20%を1.5mL/kgをIVボーラス投与(約1分)→
    その後0.25mL/kg/minで持続投与。必要に応じてボーラス追加
  6. 心停止時は高品質なCPRを実施(心肺蘇生は長時間続けることが重要)
  7. エピネフリンは少量(≦1μg/kg)に抑える(大量は禁忌)
  8. ECMOの準備・導入を考慮(治療抵抗性の場合)

脂肪乳剤(イントラリピッド®)がなぜ効くのか?——これは「Lipid Sink理論」と呼ばれます。脂溶性の高い局所麻酔薬が血中の脂肪粒子に取り込まれ(sink=吸い取られる)、心臓への影響が弱まるという機序です。シンプルですが非常に有効で、多くの症例報告で劇的な回復が報告されています。

イントラリピッドは手術室・集中治療室・ICUで常備しておくべき緊急薬剤です。あなたが勤務する施設での保管場所・在庫・使用方法を、新人のうちに必ず確認しておきましょう。

局所麻酔薬の安全な使用のための看護ポイント

薬剤の準備と確認

  • 薬剤名・濃度・容量のダブルチェック:リドカイン1%と2%、アナペイン0.2%と0.75%など濃度違いが複数存在するため、用途に合った濃度を正確に確認する
  • エピネフリン添加の有無の確認:エピネフリン添加製剤は禁忌部位(指・耳・鼻など)に使用しないよう、投与部位と照合する
  • 有効期限・外観確認:変色・混濁のあるものは使用しない
  • 最大使用量の計算:「この患者さんの体重に対して今使っている量は安全域か?」を意識する

投与中・投与後の観察ポイント

観察タイミング 観察すべきこと
投与直後〜5分 口周囲のしびれ・耳鳴り・金属味の訴え・SpO₂低下・心電図変化・血圧変動
投与後5〜30分 意識レベル・瞳孔反応・運動麻痺の範囲(脊椎麻酔・硬膜外)・低血圧・徐脈
持続硬膜外中 カテーテルの固定位置・刺入部の発赤・腫脹・疼痛・接続部の漏れ・ポンプの作動確認
神経ブロック後 ブロック側肢の運動麻痺の程度・転落リスク・循環(末梢血流)・異常感覚の増悪

よくあるミスと対策

⚠️ よくあるミスと対策

  • ミス①:濃度の違う同じ薬剤を間違えて渡す→薬剤名と濃度を声に出して確認。ラベルを必ず術者と一緒に読み合わせる
  • ミス②:局所麻酔投与後の観察を忘れる→「局所麻酔を使った直後は5分間注意集中」をルール化する
  • ミス③:エピネフリン添加製剤を禁忌部位に渡してしまう→注射器へのラベリングを徹底する
  • ミス④:硬膜外カテーテルの接続が外れているのに気づかない→体位変換のたびに接続確認をルーティン化する
  • ミス⑤:イントラリピッドの場所を知らない→勤務開始時に必ず保管場所を確認しておく

新人オペ看が覚えておきたいQ&A

Q1. キシロカインとリドカインは同じもの?

A. はい、同じ成分(リドカイン)の別名・商品名です。「キシロカイン®」はAstraZenecaの商品名で、成分名はリドカインです。ジェネリック品も含め「リドカイン注射液○%」として流通しています。臨床ではどちらの呼び方も使われるので、混乱しないよう覚えておきましょう。

Q2. 局所麻酔薬中毒は予防できる?

A. 完全には防げませんが、リスクを大幅に下げることは可能です。テスト投与・超音波ガイド下技術・分割注入・最大量の遵守・モニタリングの継続が有効な予防策です。看護師は「局所麻酔を使った直後は目を離さない」という意識を持つことが最大の予防です。

Q3. 局所麻酔薬のアレルギーはよくある?

A. アミド型(リドカイン・ロピバカインなど)の真のアレルギーは非常にまれです(0.1%以下)。「局所麻酔でアレルギーが出た」という訴えの多くは、血管内誤注入による中毒症状・添加物(防腐剤・エピネフリン)への反応・迷走神経反射(注射恐怖による失神)の場合があります。既往がある患者さんには詳細な問診が重要です。

Q4. 脊椎麻酔の後、なぜ血圧が下がりやすい?

A. 脊椎麻酔では交感神経もブロックされるため、血管が拡張して末梢血管抵抗が低下し、血圧が下がります。特に頭側への麻酔の広がりが大きいほど影響が強くなります。対策として、事前の輸液負荷・硬膜外から少量ずつの分割投与・昇圧薬(エフェドリン・フェニレフリンなど)の準備が重要です。血圧低下は投与直後から30分以内に起こりやすいため、投与後の血圧監視を厳重に行います。

Q5. 局所麻酔薬の「比重」って何?

A. 脊椎麻酔では局所麻酔薬の「比重(水との重さの比較)」が重要です。
高比重製剤(ハイパーバリック):脳脊髄液より重い→重力の方向(下側)に広がる
等比重製剤(アイソバリック):脳脊髄液と同等→体位の影響を受けにくい
低比重製剤(ハイポバリック):脳脊髄液より軽い→重力と逆方向(上側)に広がる
麻酔科医は手術部位・体位に応じてこれを使い分けます。看護師は体位変換の指示を正確に守ることで、麻酔の広がりを適切に管理するサポートができます。

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まとめ

局所麻酔薬と局所麻酔薬中毒(LAST)について、新人オペ看護師が現場で活かせるポイントを整理します。

  • 作用機序:Na⁺チャネルを遮断して活動電位の発生を抑える。アミド型が現在の主流
  • リドカイン(キシロカイン®):速効・短時間。浸潤・表面・神経ブロックに幅広く使用。エピネフリン添加で持続延長
  • ロピバカイン(アナペイン®):長時間・低心毒性。硬膜外・神経ブロック・術後鎮痛の第一選択
  • ブピバカイン(マーカイン®):長時間・高心毒性。脊椎麻酔に少量使用。0.75%硬膜外は禁忌
  • レボブピバカイン(ポプスカイン®):ブピバカインより安全性高い。硬膜外・神経ブロックに使用
  • 局所麻酔薬中毒(LAST):初期症状は口周囲しびれ・耳鳴り・不安感→けいれん→心室細動・心停止へ進行
  • LAST対応の要:投与中止・気道確保・脂肪乳剤(イントラリピッド®)の即時投与。施設での保管場所を事前確認すること
  • 予防の要:テスト投与・超音波ガイド・分割注入・最大量厳守・投与後5分の厳密観察
  • 看護師の役割:薬剤の正確な準備・濃度確認・投与後の継続観察・緊急薬剤の所在把握・体位管理

局所麻酔薬は「軽い処置に使う薬」という印象を持ちやすいですが、その裏には致命的になりうるリスクが常に存在します。正しい知識を持って準備・観察・対応ができる手術室看護師になることが、患者さんの命を守ることに直結します。

参考文献

  • Neal JM, Barrington MJ, Fettiplace MR, et al. The Third American Society of Regional Anesthesia and Pain Medicine Practice Advisory on Local Anesthetic Systemic Toxicity: Executive Summary 2017Reg Anesth Pain Med. 2018;43(2):113-123.
  • Weinberg GL. Lipid emulsion infusion: resuscitation for local anesthetic and other drug overdose. Anesthesiology. 2012;117(1):180-187.
  • Rosenberg PH, Veering BT, Urmey WF. Maximum recommended doses of local anesthetics: a multifactorial concept. Reg Anesth Pain Med. 2004;29(6):564-575. doi:10.1016/j.rapm.2004.08.003.
  • 公益社団法人 日本麻酔科学会 安全委員会.『局所麻酔薬による全身性中毒への対応プラクティカルガイド』.J Anesth. 2019;33(1):1-8.

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