※医療・看護ケアは各施設の方針に従ってください。手順・使用器械は施設により異なります。
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「器械は全部そろっているのに、なぜか準備が終わらない」
「術者に呼ばれた瞬間、いつも使っている器械が見つからない」
器械出しを始めた頃は、器械台をきれいに並べることが正解だと思いがちです。でも、写真のように整っているだけでは、術中に使いやすい器械台にはなりません。
大切なのは、手術の流れに合わせて迷わず取れる・数えやすい・使ったあとに戻せることです。
この記事では、器械出し看護師の目線で、器械台を準備する順番と考え方を解説します。オペ看めろんが10年かけてたどり着いた「こんなときはこうする」というコツも、実際の場面に沿ってお伝えします。
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なお、器械セットの内容、カウントの時機、鋭利物の受け渡し方法は施設ごとに異なります。この記事を土台にしつつ、必ず所属施設の手順書とメーカーの添付文書・取扱説明書を優先してください。
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器械出し看護師の器械台は「探さない・数えやすい・戻せる」が正解

器械台の並べ方に、すべての手術室で共通する唯一の正解はありません。術式、術者、器械出し看護師の立ち位置、器械台の数、コード類の取り回しによって、使いやすい配置は変わります。
それでも、よい器械台には共通点があります。
- 手術の進行に沿って、次に使う器械が見える
- 同じ種類の器械がまとまり、カウントしやすい
- 使用済み器械を戻す場所が決まっている
- 鋭利物をほかの器械と分けて管理できる
- 予定外の追加器械を置く余白がある
私が新人の頃は、器械を隙間なく並べるほど「準備ができている」と感じていました。ところが手術が始まると、使用済み器械や追加物品で台がすぐに崩れます。そこから10年かけてわかったのは、空いている場所も準備の一部だということでした。
完成時に台の1〜2割ほどを空けておくと、追加器械や一時的に分けたい器械を置けます。余白は手抜きではなく、予定外に対応するための安全スペースです。
並べ始める前に決めたい3つのこと
1.自分の立ち位置と受け渡し動線
最初に、自分が患者さんの右側・左側のどちらに立つのか、術者へどの方向から器械を渡すのかを確認します。
器械コンテナ(滅菌器械セットを収納する容器)は、単純に「右に置く」「左に置く」と覚えるのではなく、主な受け渡し動線をふさがず、自分が無理なく手を伸ばせる位置に置きます。器械台が2台ある場合は、メイン台とサブ台の役割も先に決めましょう。
ここでコードやチューブの出口も考えておくと、術中の交差を減らせます。電気メスのコード、吸引チューブ、エネルギーデバイスのコードが、自分の手や器械の受け渡し経路にかからない向きを選びます。
こんなケース、ありませんか。準備は終わったのに、患者さんの体位や術者の立ち位置が変わり、器械台を反対側へ動かすことになった。そんなときは器械を全部並べ直すより、まず「受け渡し側」「器械コンテナ側」「鋭利物ゾーン」の3つだけを再設定します。大きな区画から直すと、短時間で安全な形へ戻せます。
2.手術の流れと最初の10分に使うもの
次に、皮膚切開から展開までの流れを頭の中で再生します。術式手順書、器械リスト、術者別の申し送りがあれば、準備前に確認します。
最初からすべてを完璧に予測する必要はありません。まずは「手術開始後の10分で使うもの」を答えられる状態を目指しましょう。
私が予習で見る順番は、次の4点です。
- 皮膚切開から展開までに使う基本器械
- 最初に接続する電気メス・吸引・デバイス
- 出血時にすぐ必要になる器械と材料
- 術者ごとに変わりやすい器械や縫合材料
手順を丸暗記するより、「次に何が起きるか」を2手先まで考える方が、配置に理由が生まれます。理由のある配置は、緊張しても思い出しやすくなります。
3.施設のカウント手順と器械の基準数
器械、針、ガーゼなどのカウントは、体内遺残を防ぐための重要な安全行動です。WHOの安全な手術のためのガイドラインでも、器械は手術開始前と創閉鎖前、針やガーゼは定められた複数の時機で数えることが示されています。
ただし、実際のカウント対象とタイミングは、術式や施設手順で異なります。器械コンテナのリストを使い、外回り看護師と声と目を合わせて確認してください。分解できる器械は、構成部品まで確認します。
「あとで並べながら数えよう」と思うと、追加物品と混ざって基準数がわからなくなることがあります。私も新人の頃、この“あとで”に何度も困りました。今は、器械を大きく動かす前に初回カウントを終え、数えた列を崩さないようにしています。
器械台を準備する7ステップ

ステップ1.滅菌状態・器械の状態・セット内容を確認する
包装や滅菌インジケータなどを施設手順に沿って確認し、器械コンテナを展開したら、リストと照合します。器械の破損、ゆるみ、欠損、汚れ、動作不良がないかも見ます。
異常を見つけたら、自己判断で使えることにしません。該当器械を分け、外回り看護師へ共有し、代替器械を準備します。手術が始まってから気づくより、この段階で止める方が患者さんにもチームにも安全です。
ステップ2.器械台のスペースを先に確保する
キット内のガウン、ガーゼ、ドレープ、縫合材料などを整理し、器械を置ける面を確保します。器械台が2台なら、メイン台にはよく使う器械、サブ台には予備や後半に使う物品を置くと整理しやすくなります。
器械台が1台しかない場合は、器械コンテナと反対側の端などに、今すぐ使わない物品をまとめます。ただし、高く積み重ねて視界を遮ったり、落下しやすい状態にしたりしないことが大切です。
準備が遅れていると、焦って器械コンテナから次々に出したくなりますよね。そんなときほど、30秒だけ手を止めて「今使う物」「あとで使う物」「数える物」に分けます。この30秒が、術中に何分も器械を探す時間を減らしてくれます。
ステップ3.器械コンテナと3つのゾーンを決める

器械台を、次の3つのゾーンに分けます。
- 受け渡しゾーン:使用頻度が高く、すぐ手に取る器械
- 保管ゾーン:器械コンテナ、予備器械、後半に使う器械
- 安全ゾーン:メス、針、その他の鋭利物を管理する場所
ゾーンの境界は、線を引く必要はありません。「この範囲には何を置くか」を自分の中で決めれば十分です。
私が10年続けているコツは、使用済み器械の戻り先まで最初に決めることです。渡す場所だけ決めても、戻ってきた器械が空いたところへ置かれると、台はすぐ崩れます。「渡す場所」と「戻す場所」を対で決めると、同じ器械を探しにくくなります。
ステップ4.基本器械を種類と使用順で並べる
基本器械は、術式の流れと使用頻度に合わせて並べます。見た目の大きさ順だけでなく、次のように役割でまとめると探しやすくなります。
- 切開・切離に使う器械
- 把持・剥離に使う鑷子や鉗子
- 止血に使う鉗子
- 術野展開に使う鉤類
- 縫合・閉創に使う持針器や剪刀
開腹手術なら、浅い術野で使う短い器械と、深部で使う長い器械を分けます。同じ形の鉗子が多い場合は、先端の違いが見える向きにそろえると判別しやすくなります。
本数はセット内容や術式で変わるため、この記事の数字を基準にはしません。所属施設の器械リストを使い、術式と術者に合わせて増減してください。
ステップ5.コード・チューブ類を整え、使用前確認につなげる
電気メス、吸引、エネルギーデバイスなどは、器械台が混み合う前に組み立てると作業しやすくなります。ただし、接続方法と使用前確認は、施設手順とメーカーの指示に従います。電気メスの出力設定など、外回り看護師や術者と確認すべき事項を一人で決めないようにします。
コード類は、根元をたどれば何につながっているかわかる状態にします。私は同じ方向へそろえてから、必要な長さだけ術野側へ出すようにしています。長く出しすぎると絡まり、短すぎると引っ張られます。「余りをどこへ逃がすか」まで決めておくのがコツです。
ステップ6.鋭利物は分けて、必要な時機に準備する
メス刃や針などの鋭利物は、ほかの器械と混ざらない専用の安全ゾーンで管理します。針を器械台へ裸のまま置かず、針カウンターや定められた容器を使います。
メス刃の着脱は、指で直接行わず、施設が定める器具と方法を使います。鋭利物の受け渡しは、手渡しだけを前提にせず、ニュートラルゾーン(受け渡し用の定位置)を使う方法もあります。どの方法を採用するかは、チームで共有してください。
急いでいると、鋭利物を先に完成させたくなることがあります。でも、そのあと器械やガーゼを大きく動かすと、手が触れる危険が増えます。私は周囲の整理と初回カウントが終わってから、必要な鋭利物を準備します。
ステップ7.手術開始前に「10秒のリセット」をする
最後に、手を止めて器械台全体を見ます。
- 最初に使う器械は見えているか
- カウントした物品は勝手に移動していないか
- 鋭利物の位置を外回り看護師と共有できているか
- コードやチューブが交差していないか
- 追加物品を置く余白があるか
この10秒で、「あるはずなのに見えない」を手術開始前に見つけられます。私は焦っているときほど、このリセットを省かないようにしています。
10年の経験でわかった、器械台が崩れにくくなる5つのコツ
1.きれいさより「住所」を固定する
器械の住所とは、使ったあとに戻す定位置のことです。コッヘルはここ、剪刀はここ、持針器はここ、と種類ごとに戻す場所を決めます。
器械台が少し乱れても、住所が残っていれば立て直せます。逆に、見た目がきれいでも戻り先が決まっていない台は、数回の受け渡しで探しにくくなります。
2.術者の好みは「基本配置の上に足す」
術者ごとに好みが違うと、毎回ゼロから並べ方を変えたくなります。しかし、それでは自分の動きが安定しません。
まず自分と施設の基本配置を作り、その上に「この術者はこの鉗子を早めに使う」「この場面ではこの縫合糸を選ぶ」と差分を足します。基本と例外を分けると、初めて組む術者でも慌てにくくなります。
3.次の器械だけでなく「次に空けたい場所」を考える
大きな開腹鉤や自動吻合器などが後から出る手術では、器械そのものを用意するだけでなく、置き場所を予約しておきます。
大きな器械が出た瞬間に置き場所がなくて困ること、ありますよね。そんなときは、準備段階で空白の四角を一つ作り、「後半の大型器械用」と決めておくと台が崩れません。
4.わからない器械名は、形と用途で確認する
聞き慣れない呼び方をされ、どの器械かわからないこともあります。曖昧なまま渡すより、「長い方ですか、短い方ですか」「把持に使う○○で合っていますか」と、形や用途を添えて短く確認します。
器械名には施設や術者独自の呼び方があります。知らないことより、確認せずに似た器械を渡すことの方が危険です。手術後に呼び方をメモし、正式名称とセットで覚えると、次回から迷いが減ります。
5.崩れたら全部直さず、3点だけ戻す

緊急対応や出血で器械台が乱れたとき、術中に最初の形へ完全に戻すのは難しいです。
私はまず、①鋭利物、②カウント対象、③次に使う器械の3点だけを整えます。安全と進行に直結する場所から戻し、余裕ができたらほかを整理します。全部を一度に直そうとしない方が、手術から目を離す時間を短くできます。
器械出しで困りやすい場面と対処法

追加器械が次々に出て、置き場所がなくなった
サブ台があれば予備・後半の器械を移し、メイン台には「今使う器械」だけを残します。サブ台がなければ、使用頻度が下がった器械をまとめます。追加された器械はカウント対象かを外回り看護師と確認し、既存の器械と混ぜる前に数を共有します。
器械が見つからず、術者を待たせそう
無言で探し続けず、早めに外回り看護師へ器械名と状況を伝えます。代替器械の可否は術者へ確認します。焦ると同じ場所を何度も探すため、器械コンテナ、受け渡しゾーン、戻し場所の順に区切って探すと見落としを減らせます。
器械の破損や部品不足に気づいた
使用を止め、破損した器械と部品を分けて管理します。外回り看護師と術者へ共有し、代替を準備します。欠損部品がある場合は、体内や術野に残っていないかをチームで確認し、施設手順に沿って対応します。
カウントが合わない
まず声に出して不一致を共有し、手術チームの注意をそろえます。器械台、器械コンテナ、術野、ドレープ周囲、床、廃棄物などを施設手順に沿って再確認します。見つからない場合も、独断で「合っていること」にせず、画像確認を含む院内手順へつなげます。
器械台の並べ方でよくある質問
器械コンテナは必ず術野から遠い側に置きますか?
一律ではありません。受け渡しの妨げにならず、無菌野を保ち、器械を安全に取り出せる位置を選びます。立ち位置、器械台の形、術式、施設手順に合わせて決めてください。
右利きなら、器械コンテナは必ず右側ですか?
利き手だけでは決まりません。術者への受け渡し方向、患者さんとの位置関係、コード類の向きも含めて判断します。自分の手が交差せず、無理に体をひねらない配置が基本です。
器械台の写真をそのまままねしてもいいですか?
写真は考え方を学ぶ参考になりますが、そのまま再現する必要はありません。「なぜその位置なのか」を確認し、自分の施設の器械、手順、カウント方法へ合わせてください。
🍈 教育体制に悩んでいる器械出し看護師さんへ
頑張って予習しても、症例経験や指導体制は病院によって異なります。まずは情報収集として、教育体制の整ったオペ室求人を確認するところからでも大丈夫です。
まとめ|明日の器械出しは「最初に余白を作る」から始めよう
器械出し看護師が器械台を準備するときは、次の順で考えると整いやすくなります。
- 立ち位置と受け渡し動線を決める
- 手術の流れと最初に使う器械を確認する
- 初回カウントと器械の状態確認を行う
- スペースを確保して器械コンテナの位置を決める
- 受け渡し・保管・安全の3ゾーンを作る
- 使用順と役割で器械を並べる
- 鋭利物を分け、最後に10秒リセットする
最初から完璧な器械台を作れなくても大丈夫です。明日の手術では、まず台の1〜2割に余白を残し、よく使う器械の「戻す住所」を一つ決めてみてください。
器械台は、経験とともに育っていきます。きれいさを競うものではなく、患者さんの安全と手術チームの動きを支える道具です。自分が迷わず動ける理由のある配置を、少しずつ作っていきましょう。
参考文献
- 日本手術看護学会監修・日本手術看護学会手術看護基準・手順プロジェクト編集.手術看護業務基準 改訂第2版.日本手術看護学会,2025.
- 山田和彦編著.とことん詳しい消化器外科の器械出し.メディカ出版,2024.
◆ ごあいさつ
初めまして、オペ看めろん🍈です。
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