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🏥 この記事でわかること
- 人工肛門(ストーマ)は本当に元に戻せるのか
- 閉鎖術ができる人・できない人の条件と時期
- 手術室看護師が術前に押さえておくべき3つのこと
- ストーマ周囲切開から腸管吻合までの手術手順
- SSI(創感染)を減らす「巾着縫合」という閉じ方
- 器械出し・外回り看護のポイント
「先生、このストーマ、いつか元に戻せるんですか?」
ストーマ造設術を受けた患者さんが、いちばん知りたいのがこの答えです。そして手術室看護師にとっても、「閉鎖術」は造設術とセットで理解しておきたい術式。手術時間は短めなのに、実は手術部位感染(SSI)の発生率が高い、油断できない手術でもあります。
この記事では、10年間手術室に立ち続けてきたわたし(オペ看めろん)が、人工肛門閉鎖術(ストーマ閉鎖術)の流れと看護のポイントを、一般の方にもわかるよう丁寧に解説します。
📘 先に造設術を復習したい方はこちら
▶ 人工肛門(ストーマ)造設術の流れ|単孔式・双孔式まで10年目オペ看が解説
人工肛門閉鎖術とは|「ストーマは戻せる」の意味
人工肛門閉鎖術(ストーマ閉鎖術)とは、お腹に造ったストーマを閉じて、腸をもう一度つなぎ直し、便が肛門から出る本来の通り道に戻す手術のことです。
ここで大切なのが、すべてのストーマが戻せるわけではないということ。
- 一時的ストーマ=最初から「閉じること」を前提に造られたストーマ。閉鎖術の対象になる
- 永久ストーマ=肛門そのものを切除しているため、原則として戻せない
直腸がんの手術(低位前方切除術)で、吻合部(腸のつなぎ目)を守るために造られた一時的ストーマ。潰瘍性大腸炎やクローン病で、腸を休ませるために造られたストーマ。こうしたケースが閉鎖術の主な対象です。
患者さんにとって閉鎖術は「元の生活に戻れる日」であり、精神的にも非常に大きな意味を持つ手術です。手術室看護師としても、その重みを理解して関わりたいところです。
閉鎖術ができる人・できない人|適応と時期
閉鎖術はいつ行われるのか
一般的には造設術から3〜6ヶ月後に行われることが多いです。この期間には理由があります。
- 吻合部が確実に治癒するのを待つため(守っていた縫合部が安全になってから閉じる)
- 術後の癒着が落ち着くのを待つため(早すぎると剥離が難しく、腸管損傷のリスクが上がる)
- 術後化学療法のスケジュールとの兼ね合い(がん治療が優先される場合がある)
閉鎖できないと判断されるケース
一時的ストーマとして造設されていても、次のような場合は閉鎖が見送られる、あるいは永久ストーマへ移行することがあります。
- 吻合部の縫合不全(リーク)が治っていない
- 吻合部に狭窄がある(つなぎ目が狭くなり便が通らない)
- がんの局所再発がある
- 肛門括約筋の機能が不十分(戻しても便失禁でQOLが下がってしまう)
- 全身状態が手術に耐えられない
そのため、閉鎖術の前には注腸造影や内視鏡で吻合部にリークや狭窄がないかを確認するのが一般的です。「戻せると思っていたのに戻せなかった」という結果は患者さんにとって非常につらいため、慎重な評価が行われます。
手術室看護師が術前に押さえておくべき3つのこと
閉鎖術は「造設術より簡単そう」に見えますが、実際は前回手術の状況によって難易度が大きく変わる術式です。手術室看護師として、術前に次の3点を必ず確認しておきましょう。
① 前回手術記録から「どんなストーマか」を読み解く
閉鎖術の準備は、前回の手術記録を読むところから始まります。確認すべきは次の項目です。
| 確認項目 | なぜ必要か |
|---|---|
| 回腸か結腸か | 腸管の厚みが違う=自動縫合器のステープル高が変わる |
| 単孔式か双孔式か | 双孔式なら局所操作で完結しやすいが、単孔式は開腹が必要になりやすい |
| 前回手術からの期間 | 癒着の程度=剥離にかかる時間の目安になる |
| 前回の術式・開腹歴 | 腹腔内の癒着範囲を予測できる |
特に「双孔式か単孔式か」は器械の準備を大きく左右します。双孔式ならストーマ周囲の局所切開だけで終わることも多い一方、単孔式では腸管の断端同士を探して吻合するため、正中切開を追加して開腹するケースが増えます。
② 「開腹に移行する可能性」を前提に準備する
閉鎖術で最も注意すべきなのが、予定どおりに終わらないことがあるという点です。
ストーマ周囲の癒着が強い、腸管を剥離中に損傷した、腸管の長さが足りない——こうした場合、局所操作から正中切開での開腹へ移行します。「ストーマ周囲だけの小手術」と思って準備していると、器械が足りずに慌てることになります。
🔵 準備のポイント:開腹セットをすぐ出せる位置に置いておく。腸管切除・吻合になった場合に備え、自動縫合器・自動吻合器の在庫と種類を事前に確認しておく。手術時間も「短時間で終わる前提」で組まないことが大切です。
③ 「最初から不潔手術」であることを理解しておく
これが閉鎖術最大の特徴です。ストーマは腸管が開いている=便が出ている場所。つまり、皮膚を切開した瞬間から腸管内容に触れる「汚染手術」からのスタートになります。
造設術では「閉腹が終わってから不潔手術に切り替わる」のに対し、閉鎖術は最初から最後まで汚染リスクと隣り合わせ。だからこそSSI(手術部位感染)の発生率が高く、後述する「皮膚の閉じ方」が重視されるのです。
🔵 準備のポイント:ストーマ開口部を覆うドレープやガーゼ、腸管を仮閉鎖するための器材(施設によって異なる)を確認。汚染器械と清潔器械を分けるための予備トレーも用意しておきましょう。
手術手順|ストーマ周囲切開から腸管吻合まで
ここからは、双孔式(ループ)ストーマの閉鎖術を例に、標準的な流れを追っていきます。
STEP 1|ストーマ周囲の皮膚を環状に切開する
ストーマの縁から約5mm離して、皮膚を全周にわたり環状に切開します。ストーマぎりぎりを切ると腸管を傷つけ、離しすぎると皮膚欠損が大きくなるため、この距離感が重要です。
切開後は腸管の開口部からの便汚染を防ぐため、ガーゼで開口部を塞いだり、糸で仮に縫い閉じるなどの処置を行う施設もあります。
STEP 2|腸管を腹壁から剥離する
造設時に腹壁へ縫い付けた腸管を、皮下組織・腹直筋前鞘・腹膜から順に剥がしていきます。閉鎖術で最も時間がかかり、最も慎重さが求められる工程です。
癒着した腸管を無理に剥がすと腸管損傷(穿孔)を起こし、術後の縫合不全や腹膜炎につながります。電気メスと剥離鉗子を使い分けながら、層を見極めて丁寧に進めます。
🔵 器械出し看護師のポイント:剥離用の細い鉗子・剪刀、電気メス(ペンシル)を切れ目なく回せる体制を作ります。剥離が長引くとガーゼの出入りも増えるため、カウントは通常以上に慎重に行いましょう。
STEP 3|腹腔内に到達し、腸管を体外へ引き出す
腹膜まで剥離が進んだら腹腔内に到達し、ストーマになっていた腸管を体外へ十分に引き出します。吻合操作をしやすくするための工程です。
ここで癒着が強く展開できない場合、正中切開を追加して開腹に移行することがあります。
STEP 4|吻合方法を選択する(2パターン)
腸管をどうつなぎ直すかは、腸管の状態によって2つに分かれます。
🅰️ 腸管を切除しない場合|層々吻合(単純閉鎖)
半周切開されていた部分だけを縫い閉じる方法。モノフィラメント吸収糸で粘膜を縫合し、絹糸で漿膜筋層を縫合する「層々吻合」が基本術式です。腸管の状態がよく、切除の必要がない双孔式ストーマで選択されます。
🅱️ 腸管を切除する場合|機能的端々吻合(FEEA)
ストーマになっていた腸管が瘢痕化・狭窄している場合は切除します。その後自動縫合器を用いた機能的端々吻合(FEEA)で腸管をつなぎ直します。単孔式ストーマの閉鎖では、こちらが選択されることが多くなります。
🔵 器械出し看護師のポイント:どちらになるかは術中に決まることが多いため、両方の準備が必要です。層々吻合なら吸収糸・絹糸、FEEAなら自動縫合器(リニアステープラー)を、いずれもすぐ出せる状態にしておきましょう。
STEP 5|腸管を腹腔内に還納する
吻合が完成した腸管を腹腔内に戻します。このとき腸管がねじれていないか(軸捻転していないか)を必ず確認します。ねじれたまま戻すと術後に腸閉塞を起こします。
STEP 6|腹壁(筋膜)を閉鎖する
ストーマ孔として開いていた腹直筋前鞘(筋膜)を縫合閉鎖します。ここが弱いと術後に切開創ヘルニアを起こすため、確実な縫合が必要です。
STEP 7|皮膚を閉じる(ここが予後を分ける)
最後に皮膚を閉じます。ここでどう閉じるかによって術後の創感染率が大きく変わるため、次の章で詳しく解説します。
皮膚の閉じ方が予後を分ける|巾着縫合とSSI
閉鎖術はSSI(手術部位感染)が起こりやすい手術です。日本の報告では、ストーマ閉鎖術におけるSSIは全合併症の約42%を占めるとされています。便が出ていた場所を閉じるのですから、当然といえば当然です。
直線縫合と巾着縫合の違い
| 直線縫合(linear closure) | 巾着縫合(purse-string) | |
|---|---|---|
| 閉じ方 | 円形の創を引き寄せて一直線に縫い閉じる | 真皮を巾着状に縫い縮め、中央に小さな穴を残す |
| 創の状態 | 完全閉鎖(密閉される) | 直径5〜10mmのドレナージ孔を残した開放創 |
| SSI率 | 高い | 有意に低い |
| 治癒 | 早いが感染すると開放が必要 | 閉じるまで数週間かかる |
2025年に報告された系統的レビュー・メタアナリシスでは、巾着縫合群のSSI発生率は4%(12/310例)、直線縫合群は27%(79/296例)と、巾着縫合で有意に低いことが示されています。
「完全に閉じないほうが感染しにくい」というのは直感に反しますが、あえて小さな穴を残すことで滲出液や汚染物が外に逃げられる——これが巾着縫合の考え方です。
🔵 看護のポイント:術者がどちらの方法を選ぶかで、術後の創処置の説明も変わります。巾着縫合の場合、患者さんは「創が閉じていない」ことに不安を感じやすいため、「わざと小さく開けている」ことが術後に伝わるよう申し送ることが大切です。
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器械出し看護師のポイント
① 「汚染手術」としての器械管理を最初から徹底する
ストーマ切開の時点で腸管内容に触れます。ストーマ操作に使った器械は最初から汚染扱いにし、別トレーで管理。腹壁閉鎖・皮膚縫合に入る前には器械を入れ替え、清潔な器械で閉創できる体制を作ります。
② 吻合の2パターン両方を準備する
層々吻合(モノフィラメント吸収糸+絹糸)とFEEA(自動縫合器)のどちらになるかは術中判断です。両方すぐ出せる状態にしておきましょう。自動縫合器はステープル高が腸管の厚みに合っているか、術者に確認します。
③ 剥離操作が長引く前提でガーゼカウントを厳格に
癒着剥離は出血・滲出が多く、ガーゼの出入りが増えます。狭い術野に小ガーゼが残りやすいため、通常以上にカウントを慎重に行ってください。
④ 開腹移行に備えた器械の待機
癒着が強い・腸管損傷が起きた場合、正中切開に移行します。開腹セットを取り出せる位置に確保しておきましょう。
⑤ 皮膚縫合の方法を術者に確認
巾着縫合か直線縫合かで使用する糸が変わります。巾着縫合では真皮を縫い縮めるため吸収糸を準備します。
外回り看護師のポイント
① 入室時のストーマ観察と装具の取り扱い
入室時にストーマの色調・周囲皮膚の状態を観察します。装具をいつ外すか(病棟で外すか手術室で外すか)は施設によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
② 体位と手術時間の見積もり
基本は仰臥位ですが、開腹移行や吻合部の確認で砕石位を選択する施設もあります。「短時間で終わる前提の体位固定」にしないことが、神経障害・褥瘡予防につながります。
③ 抗菌薬の投与タイミング管理
SSIリスクが高い術式です。執刀前の予防的抗菌薬投与と、手術延長時の追加投与のタイミングを確実に管理します。
④ 術後申し送りに含める内容
- 吻合方法(層々吻合かFEEAか/腸管切除の有無)
- 皮膚の閉じ方(巾着縫合か直線縫合か・ドレナージ孔の有無)
- 術中の腸管損傷・汚染の有無
- ドレーンの有無と留置位置
- 開腹に移行したかどうか
術後の経過と患者さんが不安に思うこと
閉鎖術は「元に戻る手術」ですが、術後すぐに以前と同じ排便に戻るわけではありません。ここは患者さんが最も戸惑うポイントです。
- 頻便・便意切迫:長く使っていなかった腸と肛門が慣れるまで、1日に何度も便意が来ることがある
- 便失禁・漏れ:特に直腸を切除している場合、便を溜める機能が落ちているため起こりやすい
- 肛門周囲の皮膚トラブル:排便回数が多いことによる皮膚炎
- 創が閉じるまで時間がかかる:巾着縫合の場合、完全に閉じるまで数週間かかる
これらは多くの場合数ヶ月かけて徐々に落ち着いていきます。「戻したのにこんなに大変だとは思わなかった」と落ち込む患者さんも少なくないため、術前から「戻ったあとにも慣らす期間が必要」と伝わっていることが大切です。
手術室看護師が直接術後を見る機会は少ないですが、この先に何が待っているかを知っているかどうかで、術中の関わり方や申し送りの質が変わります。
まとめ
- 閉鎖術の対象は一時的ストーマのみ。永久ストーマは原則戻せない
- 時期は造設から3〜6ヶ月後が一般的。吻合部の治癒と癒着の落ち着きを待つ
- 術前に手術室看護師が押さえるべきは①前回手術記録 ②開腹移行の可能性 ③最初から不潔手術であること
- 手順:環状切開(ストーマから5mm)→ 腸管剥離 → 引き出し → 吻合(層々吻合 or FEEA)→ 還納 → 筋膜閉鎖 → 皮膚閉鎖
- 皮膚は巾着縫合のほうがSSI率が有意に低い(4% vs 27%)
- 器械出しは最初から汚染管理・吻合2パターン準備・ガーゼカウント厳格化が要
- 術後は頻便・便失禁が起こりうる。「戻ってからも慣らす期間が必要」
参考文献
- 日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会、日本大腸肛門病学会 編. 消化管ストーマ造設の手引き. 文光堂, 2014.
- 畑啓昭 編. 研修医のための見える・わかる外科手術. 羊土社, 2015.
- 大腸癌研究会 編. 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2024年版. 金原出版, 2024.
- 河島秀昭, 樫山基矢, 高橋夏絵, 大関亜樹子. ストーマ閉鎖術における手術部位感染を含めた術後合併症に関する検討. 日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌, 36(3): 86-93, 2020.
- Menegon Tasselli F, et al. Circular (purse-string) vs primary skin closure following stoma closure: an up-to-date systematic review and meta-analysis. Tech Coloproctol, 2025.
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