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「鉗子や鑷子の種類が多すぎて覚えられない…」
器械出しの最初につまずきやすいのが、ペアンやコッヘルなどの「鉗子(かんし)」や「鑷子(せっし)」の違いや、ドクターが使いやすいように渡すコツですよね。
実は、鉗子・鑷子にはそれぞれ「なぜその形状で、どんな組織に使うのか」という明確な理由があります。
私も新人のころは、飛び交う専門用語や器械の名前についていけず、毎日泣きながら帰っていました。覚えられないのは、あなたの努力が足りないからではありません。
この記事では、手術室で10年働き、診療科リーダーとして新人指導にもあたってきた私が、鉗子・鑷子の見分け方、使い分け、渡し方、よくあるミスの対策を順番にまとめました。一つずつ、一緒に押さえていきましょう。
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ペアン・コッヘルの違いや鉗子・鑷子の種類と渡し方、どれだけ頭に入っていますか?
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1. ペアンとコッヘルの違いは先端の鉤
結論:先端に鉤(こう=小さな歯)がなければペアン、あればコッヘルです。

鉗子(かんし)の役割は、組織をつかむ(把持)・ひっぱる(牽引)・血を止める(止血)ことです。なかでも一番よく使うのが、ペアンとコッヘルです。
新人が最初につまずく器械も、この2本です。形は一見同じなのに、先端に鉤があるかないかの違いしかなく、よく見ないと区別できないからです。
ペアンとコッヘルの比較表
| 名称 | 先端の特徴 | 主な用途・対象 |
|---|---|---|
| ペアン鉗子 | 鉤なし(無鉤)。横溝だけ | 血管や腸管など、傷つけたくない柔らかい組織の把持や止血点。 |
| コッヘル鉗子 | 先端に鉤あり(有鉤) | 筋膜や硬い組織など、滑らせずに確実に把持したい部位。 |
迷ったら、名前ではなく先端を見るのが確実です。
先端→長さ→曲がりの順に見る
器械台で迷ったら、次の順番で見てください。
- 先端:鉤があるか(ペアンかコッヘルか)
- 長さと太さ:小さく細ければモスキート、長ければ長ペアンなど
- 曲がり:まっすぐ(直)か、曲がっている(曲・反)か
「曲がりのコッヘル」「長いペアン」のように、医師は形と長さをセットで呼ぶことが多いです。この3段階で見る習慣をつけると、聞き返す回数がぐっと減ります。
⚠️ 名前だけで判断しない
手術室では「有鉤=コッヘル、無鉤=ペアン」と呼び分けるのが一般的です。
ただし製品名としては「コッヘル止血鉗子 無鉤」のような規格も実際に販売されています。呼び方は施設によって異なるので、最後は先端を目で確かめるのが安全です。
ペアンとコッヘルの覚え方をもっと詳しく知りたい方は、コッヘルとペアンの違い|一発で覚える見分け方もあわせてどうぞ。
2. 覚えておきたい鉗子の種類と使い分け
結論:ペアン・コッヘルの次は、ケリー・モスキート・アリスの3本を押さえれば十分です。
1年目のうちに全部を覚える必要はありません。よく出てくる順に、形と用途をセットで覚えましょう。
| 名称 | 見た目の特徴 | よく使う場面 |
|---|---|---|
| ケリー鉗子 | ペアンに似ているが、先端が細く華奢 | 組織の剥離(はくり)。止血や把持にも |
| モスキート鉗子 | 小さく細い。有鉤・無鉤どちらもある | 細い血管の止血、小児の手術 |
| アリス鉗子 | 先端が幅広く、細かい歯が並ぶ | 腸管・胃などの粘膜や漿膜の把持 |
| ミクリッツ鉗子 | 大きめでしっかりした鉗子 | 閉腹時などの腹膜の把持 |
ケリー鉗子:ペアンより先端が細い
同じ長さのペアンと並べると、先端がかなり細く作られています。細いぶん組織のすき間に入りやすく、剥離によく使われます。
メーカーによっては、先端の溝の種類を色で区別していることもあります。
モスキート鉗子:小さな「蚊」の鉗子
名前のとおり、小さく細いのが特徴です。細い血管の止血点や、小児の手術などで活躍します。
施設によっては、組織や糸を傷めないよう先端にゴム製のカバーをつけて使うこともあります。カバーの扱いは4章で説明します。
アリス鉗子・ミクリッツ鉗子
アリス鉗子は、消化管の吻合(ふんごう)などで腸管の断端をつかむときによく使います。硬い組織には使いません。
ミクリッツ鉗子は、主に腹膜をつかむための鉗子です。開腹手術の閉腹のときに出番がくることが多いです。
ペアンとクーパーの違い
「クーパーとペアンの違い」もよく聞かれます。クーパーやメッツェンは剪刀(せんとう=ハサミ)で、切ったり剥離したりする器械です。
ペアンは「挟む」、クーパーは「切る」と覚えれば混ざりません。ハサミの種類はハサミ(剪刀)の記事でまとめています。
\ このままで良いのかな?と思ったら /
最初の一歩は「情報を持つこと」です。
迷ったら、まずは以下を登録しておくと間違いありません。
3. セッシ(鑷子)の有鉤と無鉤
結論:滑らせたくない組織は有鉤、傷つけたくない組織は無鉤のセッシです。
セッシ(鑷子)はピンセットのような器械です。鉗子と同じく、先端の「鉤」の有無で使い分けます。
- 有鉤(ゆうこう)セッシ:先端に歯がある。皮膚の縫合や筋膜など、滑らせたくない組織に
- 無鉤(むこう)セッシ:先端に歯がない。腸管など、傷つけたくない組織に
迷ったら「この組織は滑ると困る?傷がつくと困る?」と自分に聞いてみてください。答えがそのままセッシの選び方になります。
💡 少しマニアックな特殊セッシ
- アドソンセッシ:持ち手が幅広く、先端が極細。顔や首など細かい部分の皮膚に。
- ドベーキーセッシ:先端に細かい溝があり、血管を傷つけずにつかめる。心臓血管外科でよく使う。
- ダイヤモンドチップセッシ:先端に硬い加工があり、針や細い糸を滑らせずにつかめる。
4. 鉗子とセッシの渡し方
結論:術者が手元を見ずに、受け取った瞬間そのまま使える向きで渡します。

「ペアンちょうだい」と言われたとき、術者の目は術野から離れていません。だから器械出しは、持ち替えなくていい向きで渡すことが大切です。
渡す前にラチェットを1段だけ掛ける
鉗子の手元には、カチカチと噛み合う「ラチェット(留め具)」があります。
- 術前:噛み合わせが硬すぎないか、ゆるすぎないかを確かめる
- 渡す直前:先端が開かないよう、ラチェットを1段だけ掛ける
- 深く掛けすぎない:術者が片手で外しにくくなる
1段掛けは多くの施設で基本とされています。ただ術者の好みで変わることもあるので、最初は先輩に確認しておくと安心です。
鉗子はリングを術者の手のひらへ
器械出し看護師は、鉗子の関節に近い部分を軽く持ちます。そしてリング(指を入れる部分)が、術者の手のひらにしっかり当たるように渡します。
曲がりのある鉗子は、カーブの先が術者の手のひら側を向く向きを基本として教わることが多いです。ただし術野の位置や利き手、術者の好みで変わります。
いちばん大事なのは、術者がこの鉗子でどこをつかむかを想像することです。使う場面が浮かべば、渡す向きは自然に決まります。
セッシは手の上から「乗せる」
セッシは閉じた状態で、先端に近いところを持ちます。術者の親指と人差し指の間に、上からそっと乗せるイメージで渡します。
実は、鉗子よりもセッシの渡し方のほうが難しいと感じる新人は多いです。鉗子は手のひらに収めればいいのに対し、セッシは「上から乗せる」感覚がつかみにくいからです。
有鉤と無鉤を取り違えないよう、渡す前に先端を一度見る癖もつけておきましょう。
上手な人は「握る部分」に指を重ねない
手術室で10年働くなかで感じたのは、渡し方が上手な人には共通点があることです。それは、術者が実際に握る部分に、自分の手や指が重なっていないこと。
自分の指がリングにかかっていると、術者は一度握り直さなければなりません。渡すときは、自分がどこを持っているかも意識してみてください。
渡し方はペン1本で練習できる
私が新人のころは、ペンをセッシに見立てて渡す練習をくり返しました。渡し方は頭で考えるより、体が自然に動くまで反復するほうが身につきます。
同期や家族に手を出してもらい、「持ち替えずに使えるか」を確かめてもらうのもおすすめです。
5. 布鉗子と鉗子カバーの注意点
結論:布鉗子は皮膚の挟み込み、鉗子カバーは体内遺残に気をつけます。
布鉗子(タオル鉗子)
布鉗子は、ドレープ(滅菌布)や電気メスのコードを固定するときに使います。先端がとがっているので、意図せず患者さんの皮膚を一緒に挟まないことが一番の注意点です。
ラチェットの噛み合わせが弱いと、術中にコードが外れて落ち、不潔になることもあります。事前の開閉チェックで防げるトラブルです。
鉗子カバーの体内遺残
細い鉗子の先端に、ゴム製のカバーをつけて使うことがあります。このカバーが外れて体内に残る「体内遺残」は、絶対に防がなければなりません。
- 装着するときは、しっかり押し込んで固定する
- いくつ出したかを数え、外回り看護師と共有する
- 返ってきたら、欠けや破れがないかを確かめる
カウントの対象やルールは施設によって異なります。ガーゼカウントが合っていたのに体内にガーゼが残った事例も報告されているので、数だけでなく実物の形も確かめる意識が大切です。
6. 新人がつまずく!よくあるミスと対策
結論:ミスのほとんどは、術前の確認と「先読み」で防げます。
⚠️ ミス1:渡した鉗子の向きが逆!
【対策】渡す前に、「術者がこの鉗子でどこをつかむか」を頭の中で思い描きましょう。
向きに迷ったら、その術者に入ったことのある先輩に「この先生はどの向きが好みですか」と聞くのが近道です。
⚠️ ミス2:ラチェットが固くて外れない
【対策】中央材料室から上がってきた器械でも、摩耗や歪みは起こります。術前のカウントと同時に、すべての鉗子を自分の手で開閉して確かめましょう。
動きが悪い器械は使わず、外回り看護師に交換を頼みます。不具合は手術後に中央材料室へ伝えておきましょう。
⚠️ ミス3:名前を言われても形が浮かばない
【対策】私も新人のころ、先輩に「器械は何をしたいのか考えてみな」と言われました。
ペアンは先が丸いから柔らかい組織を優しく挟む。コッヘルは歯があるから硬い筋膜を滑らせずにつかむ。名前ではなく「形と用途」で覚えると、忘れにくくなります。
⚠️ ミス4:術者が無言で手を出してきて固まる
初めて1人で器械出しに入った日、私はこれで泣きそうになりました。ドレーピングのあと、何も言わずに手を差し出す執刀医に、何から渡せばいいのか分からなかったのです。
【対策】術野をよく見て、医師と同じ目線で次の操作を考えることです。手術の流れを事前に頭に入れておくほど、無言の手にも応えられるようになります。
7. 1年目の器械の覚え方
結論:術前に「頭の中で手術を担当」し、術後すぐに振り返るのが一番の近道です。
器械出しは、一度清潔野に立つとメモを見られません。だから本番までに、どれだけ手術をイメージできているかが勝負になります。
- 術前:最初に何を渡すか、次に何を渡すかを紙に書き出す
- 術中:先輩がなぜ今その器械を手に取ったのかを見る
- 術後:着替える前の5分で、今日の反省をメモする
先生が手を出す少し前に、もう柄の向きを変えて待っている先輩がいました。その理由をメモするようになってから、私の器械出しは少しずつ変わっていきました。
勉強の進め方は器械出し看護師の勉強方法完全ガイドにまとめています。開腹手術の準備は開腹手術の器械出しチェックリストも参考にしてください。
8. まとめ:鉗子出しのチェックリスト
結論:先端を見て、術前に開閉を確かめ、使う場面を想像して渡せば合格です。
💡 マスターチェックリスト
□ ペアンとコッヘルを、名前ではなく先端の鉤で見分けられる。
□ ケリー・モスキート・アリスの形と用途を言える。
□ 術前に、全数の開閉とラチェットの具合を確かめている。
□ ラチェットを1段だけ掛けて渡せる。
□ 術者の手のひらに、リングが収まるように渡せる。
□ セッシを、術者の指の間に上から乗せるように渡せる。
□ 鉗子カバーの数を把握し、返却時に欠けを確かめている。
器械出しは「リズムと先読み」です。最初は種類が多くて焦るかもしれません。
まずは基本の鉗子とセッシの用途、そして渡し方を押さえましょう。それだけで、手術の流れが驚くほど見えるようになります。
焦らず、一つひとつの器械が持つ「意味」を意識しながら、思いやりのある渡し方を目指していきましょう。
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