※医療・看護ケアや手順・器械は施設の方針に従ってください
※有料記事は購入後に全文閲覧可(返品・キャンセル不可)
※メンバー限定動画はメンバーシップ加入が必要です
※記事内にPRリンクを含む場合があります
「手洗いの手順があいまいで、毎回ドキドキする」「ガウンを着るときに不潔にしそうで怖い」
手術室に配属されて最初に覚えるのが、手術時手洗いとガウンテクニックです。
先輩によってやり方が少しずつ違って見えて、どれが正しいのか迷う人も多いと思います。
この記事では、スクラブ法とラビング法の違いと手順、ガウンと手袋のつけ方、清潔とみなす範囲を順番に整理します。
不潔になったかもしれないときの動き方と、新人のうちにできる練習もまとめました。
私は手術室で10年働き、診療科リーダーとして新人指導にもあたってきました。
手順を「なぜそうするのか」とセットで覚えると、先輩ごとの違いにも振り回されにくくなります。
\オペ看1838人のリアルな声/
【まずは理解度チェック!】この記事の内容をテスト
🧤 理解度チェック!手術時手洗い・ガウンテクニッククイズ 全8問
スクラブ法・ラビング法の違いとガウンテクニック、どれだけ頭に入っていますか?
選択肢をタップすると、その場で正解と解説が表示されます。まずは腕試し!
手術時手洗いの目的は菌を減らすこと
手術時手洗いは、手袋が破れても術野に入る菌をできるだけ少なくしておくために行います。
日本手術医学会のガイドラインでは、目的を「手袋が破損しても術野が汚染される細菌数を最小限にすること」としています。
手術中の手袋は、気づかないうちに小さな穴があくことがあります。
そのときに手の菌が少なければ、患者さんの傷に届く菌も少なくて済みます。
- 通過菌:日常生活で手についた菌。手洗いでしっかり落とす
- 常在菌:皮膚にもともといる菌。ゼロにはできないので数を減らす
ガイドラインでは、手指の菌を1cm²あたり10⁴〜10⁶個から、10²〜10³個程度まで減らすことが目標とされています。
⚠️ 新人が誤解しやすいポイント
人の皮膚を無菌にすることはできません。
目的は「菌を減らして、手術が終わるまでその状態を保つこと」です。
強くこすれば清潔になるわけではありません。
皮膚に傷がつくと、かえって菌が増えやすくなります。
やさしく、もれなくが基本です。
手洗い前の準備|爪・装飾品・身じたく
手洗いを始める前に、爪と装飾品と身じたくを整えておきます。
手洗いを始めてからでは、帽子やマスクは直せません。
洗い場に立つ前に、次の項目をそろえておきます。
- 爪は短く切る。人工爪(ジェルネイルなど)はつけない
- 指輪・ブレスレット・腕時計は外す
- マニキュアは手洗いの前に落とす
- 帽子で髪を全部おおい、マスクで鼻と口をおおう
- 手に傷や手荒れがあるときは、先に先輩に伝える
ここに挙げた爪・人工爪・装飾品・マニキュアの扱いは、日本手術医学会のガイドラインにも書かれています。
マニキュアは塗って4日ほどたつと剥がれて感染源になりうる、とされています。
手洗いに使う水は滅菌水でなくてよく、管理された水道水で同じ効果が得られるとされています。
新人のうちは「水道水で大丈夫なの?」と不安になりやすいので、知っておくと安心です。
スクラブ法の手順|指先から肘へ洗う
スクラブ法は、消毒薬入りの洗浄剤と流水で、指先から肘へ一方向に洗う方法です。
4%クロルヘキシジンや7.5%ポビドンヨードのスクラブ剤を使います。
洗う時間や回数は施設のマニュアルで決まっているので、そちらに合わせてください。
スクラブ法の流れ
- 予備洗浄:流水と洗浄剤で、目に見える汚れを落とす
- 爪の洗浄:爪の間をクリーナーやブラシで洗う(ブラシを使わない施設もある)
- 本洗浄:指先→手のひら・甲→手首→前腕→肘の少し上、の順に片手ずつ洗う
- すすぎ:洗った順と同じく、指先から肘へ水を流す
- 繰り返し:施設で決められた回数を繰り返す
洗う向きは、必ず指先から肘への一方向です。
肘まで洗ったあとに指先へ戻ると、肘の菌を指先に運んでしまいます。
スクラブ法でいちばん大事なこと
すすぎのあいだは、指先を肘より高く保ちます。
水は清潔な指先から、相対的に不潔な肘へ流れる向きでなければいけません。
手が下がると肘の水が指先に戻ってしまうので、最初からやり直しになります。
皮膚をブラシで強くこするのはやめましょう。
ガイドラインでも、ブラシによる皮膚のダメージは手荒れの原因になり、菌が増えるおそれがあると指摘されています。
ラビング法の手順|乾いた手に擦り込む
ラビング法は、石鹸で洗って完全に乾かした手に、アルコール製剤を擦り込む方法です。
「石鹸での手洗い」と「アルコールの擦り込み」の2段階で行うので、2ステップ法と呼ぶ施設もあります。
使う製剤は、クロルヘキシジンなどの消毒薬が入ったアルコール製剤が多いです。
ラビング法の流れ
- 予備洗浄:石鹸と流水で、手から肘までの汚れを落とす
- 乾燥:ペーパータオルで水分を完全にふき取る
- 擦り込み:規定量を手に取り、指先・爪→手のひら・甲→手首→前腕→肘へ擦り込む
- 乾くまで待つ:アルコールが乾ききるまで擦り込み、乾いてからガウンを着る
擦り込む量と時間は製剤ごとに決まっています。
施設のマニュアルと製剤の説明書きに合わせて、何プッシュを何回、と覚えておきましょう。
ラビング法でいちばん大事なこと
水分が残ったまま擦り込まないことです。
手がぬれているとアルコールが薄まり、消毒の効果が下がってしまいます。
乾ききる前にガウンを着るのも避けましょう。
指の間や親指のまわりは乾きにくいので、最後に確かめてから次へ進みます。
スクラブ法とラビング法の違い【比較表】
2つの方法は消毒の効果に差がなく、いまはラビング法を使う手術室が増えています。
ガイドラインでは、ラビング法とスクラブ法で消毒効果に差がないとされています。
フランスのランダム化比較試験でも、手術部位感染(SSI)の発生率に差はありませんでした。
| 項目 | スクラブ法 | ラビング法 |
|---|---|---|
| 主な働き | 洗浄剤+流水で洗い流す | アルコール製剤で消毒する |
| 手順 | 洗浄剤で洗う→すすぐ | 石鹸で洗う→乾かす→擦り込む |
| 時間 | 施設の規定による | 製剤の規定による |
| 手荒れ | こすり方によっては起きやすい | 起きにくい |
| 注意点 | すすぎで水を逆流させない | 水分を残さず乾いた手で使う |
結局どちらをやればいいの?
新人のうちは、配属された施設のマニュアルどおりに行うのが正解です。
どちらも正しく行えば、目的は同じように果たせます。
ラビング法は、手荒れが少なく短時間で済み、続けやすいことから広まってきました。
施設によっては、その日最初の手洗いだけ流水で丁寧に洗う、などの決まりがあります。
手洗いのNG|逆流・洗い残し・ぬれた手
新人がやりがちなのは、手が下がる・指の間を洗い残す・ぬれた手で擦り込む、の3つです。
❌ スクラブ法でのNG:手が下がって水が逆流する
タオルを取ろうとした瞬間に気がゆるみ、肘が下がって水が手首へ戻るミスです。
「指先はいつも天井」を意識しましょう。
❌ スクラブ法でのNG:洗い残し(特に指の間・親指の付け根)
指の股(水かきの部分)と親指の付け根は、洗い残しが多い場所です。
ここだけは意識してスポンジを当てましょう。
❌ ラビング法でのNG:濡れた手での擦り込み
水分が残ったままアルコールを擦り込むと、消毒の効果が下がります。
乾ききる前にガウンを着るのも避けましょう。
滅菌ガウンの清潔範囲は前面と袖
ガウンを着たあとに清潔とみなすのは、胸から手術台の高さまでの前面と、肘の少し上から手先までの袖です。
手洗いが終わったら、その手を守りながら滅菌ガウンと滅菌手袋を身につけます。
ガウンテクニックの目的は、手と、患者さんに近いガウン前面の清潔を保つことです。
| 場所 | 扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 胸〜手術台の高さの前面 | 清潔 | 自分の目で見えて、術野に近い |
| 袖(肘の少し上〜手先) | 清潔 | 器械を受け渡す範囲 |
| 首まわり・肩・脇の下 | 不潔 | 汗や髪にふれやすい |
| 背中側すべて | 不潔 | 自分の目で見えない |
| 手術台より下 | 不潔 | 目が届かず、物にふれやすい |
手は、胸の前からおへその高さのあいだで保ちます。
腕組みのように脇の下へ手を入れたり、腰より下に手を下ろしたりしないように気をつけましょう。
細かい範囲は施設の基準で少し違うことがあります。
手術室全体の清潔・不潔の区域については手術室の清潔・不潔区域の記事でくわしく書いています。
ガウンテクニックの手順(クローズド法)
クローズド法では、手袋をつけ終わるまで指先を袖口から出しません。
まずは、多くの施設で使われているクローズド法の流れを見ていきます。
- ガウンを広げる:ガウンの首元の内側を持ち、まわりにふれないように持ち上げて広げる
- 腕を通す:両腕を袖に通す。指先は袖口のゴムの手前で止め、外に出さない
- 首と内側のひもを結んでもらう:外回り看護師が背中側から結ぶ
- 手袋をつける:袖の中に手を入れたまま手袋をつかみ、手袋の口を袖口にかぶせる
- 整える:袖ごと手袋を引き、指を奥まで入れる
- 腰ひもを回す:前のひもを外回り看護師に渡し(カードを使う施設も多い)、体を1回転させて自分で結ぶ
クローズド法と呼ぶのは、手袋をつけるまで素手を袖の中に閉じこめておくからです。
素手が手袋の外側にふれると、その手袋は不潔になります。
オープン法と2重手袋は施設で違う
オープン法は、袖口から手を出してから手袋をつける方法です。
ガウンを着ずに滅菌手袋だけをつける処置や、施設によっては手袋の交換のときに使われます。
ガイドラインでは、手袋はガウンを着たあとにつけること、2重手袋をすすめることが書かれています。
2重手袋の1枚目と2枚目をどの方法でつけるかは、施設のマニュアルを確認してください。
ガウン・手袋をつけるときのミスと対策
ミスの多くは「急いで手が動きすぎる」ことから起きるので、動作をゆっくりにするのがいちばんの対策です。
❌ よくあるミス
- 腕を通した勢いで、手が袖から出てしまう
- 手袋をかぶせるときに、素手が手袋の外側にふれる
- ガウンの裾や袖が壁や器械台にふれる
🟢 対策
- 袖口を内側から軽く握って、手を止めておく
- 目線は手元と手袋の境目に集める
- まわりとの距離をとり、ひと動作ずつゆっくり行う
不潔になったかも、と思ったらすぐ申告
「ふれたかもしれない」と思ったら、その場で申告して交換するのが正解です。
清潔かどうか自分で判断できないときは、不潔として扱います。
新人のうちは「言ったら怒られそう」と黙りたくなりますが、黙っていると患者さんの感染につながります。
| 起きたこと | すること | ポイント |
|---|---|---|
| 手袋が不潔な物にふれた | 外回りに伝えて手袋を交換 | 交換の方法は施設の手順で |
| 手袋に穴・破れを見つけた | すぐ伝えて交換 | 気づいた時点で申告する |
| 袖や前面が不潔にふれた | ガウンごと替えるか先輩に確認 | 施設によって対応が違う |
| 手洗い中に手が下がった | 最初から洗い直す | 時間がなくても省かない |
申告は「すみません、今ふれました」のひと言で十分です。
先輩も新人のころに同じ経験をしているので、正直に言える人のほうが信頼されます。
新人のうちの練習|手順は体で覚える
手洗いとガウンテクニックは、頭で考えなくても体が動くところまで繰り返すと安定します。
私が新人のころに先輩から教わったのは、基本の手技は「考える」より「体で覚える」ということでした。
ガウンテクニックも無菌操作も、体が自然に動くまで何度も繰り返しました。
- 更衣室で、ガウンなしで「袖から手を出さない」動きだけ練習する
- 手洗いの順番を声に出して、指先→手首→前腕→肘を体に覚えさせる
- 器械出しの前日に、ガウンを着てから器械台を整えるまでを紙に書き出す
- 終わったら、迷った場面をその日のうちにメモしておく
器械出しは、一度清潔野に立つとメモを見られません。
私は「ガウンテクニックが終わったら、まず器械台のどこから整える?」と、頭の中で手術を順番に思い描いてから入るようにしていました。
不器用でも、覚えるのが遅くても大丈夫です。
自分なりに練習のやり方を工夫できれば、少しずつでも確実にできるようになります。
覚えることが多くてつらいときは、新人が覚えられないときの順番と先輩への聞き方も読んでみてください。
指導者向け|手洗いとガウンの教え方
指導では、手順と「なぜそうするのか」をセットで伝えると、新人の自己流を防げます。
❌ 避けたい指導
「とりあえず私のやり方を見て覚えて」「順番が違う、もう一回」と、理由を言わずに手順だけを覚えさせること。
伝わりやすい声かけの例
- 「今の角度だと肘の水が指先に戻るよ。指先は天井に向けよう」
- 「水滴が残っているとアルコールが薄まって効きにくくなるよ」
- 「手が袖から出たね。素手で手袋の外にふれると不潔になるから、袖の中で止める練習をしよう」
私が新人指導をしていたときは、「今日は清潔・不潔だけは絶対に守ろう」と、目標をひとつに絞って伝えていました。
10個のアドバイスを一度に言われても、新人は覚えきれないからです。
不潔にしてしまったあとは責めるより、「どこで手が動いたか」を一緒に振り返るほうが次につながります。
まとめ|明日の手洗いで確認する5つ
手洗いとガウンテクニックは、目的と理由を知っておくと迷う場面が減ります。
☑ 爪・装飾品・マニキュア・帽子とマスクを、洗い場に立つ前に整えた
☑ スクラブ法は指先から肘へ一方向、すすぎは指先を高く
☑ ラビング法は完全に乾いた手に規定量を擦り込み、乾くまで待つ
☑ ガウンの清潔範囲は、胸から台の高さまでの前面と袖
☑ ふれたかもしれないときは、すぐ申告して交換する
最初は時間がかかって当然です。
一つひとつの動作の理由を思い出しながら、ゆっくり確実に進めてみてください。
あわせて読みたい
参考文献
- 日本手術医学会.手術医療の実践ガイドライン(改訂第三版).手術医学.2019;40(Suppl):S84-85(手術時手洗い)・S90(手術時の服装・手袋).全文PDF
- World Health Organization.WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care.2009.WHO
- World Health Organization.Global Guidelines for the Prevention of Surgical Site Infection, 2nd ed.2018.WHO
- Berríos-Torres SI, et al.Centers for Disease Control and Prevention Guideline for the Prevention of Surgical Site Infection, 2017.JAMA Surg.2017;152(8):784-791.DOI
🍈 いちばん多い相談は、手当の話です
SNSで受ける相談で、いちばん多いのがこれです。
・オペ室手当がつかない。この先も上がる見込みがない
・オンコールに入っても、手当がほとんど出ない
・あと5万円くらい上げたいけれど、どこを見れば分かるのか知りたい
ここまで読んで勉強しているあなたは、確実に伸びているオペ看です。ただ、その頑張りに手当がついてくるかどうかは、正直なところ病院しだい。オペ室手当もオンコール手当も0円という職場は実在しますし、逆にどちらもきちんと出る病院もあります。
私がいつも見ているのは、求人票の「手当欄」です。転職するかどうかは後で決めればよくて、いまの職場が相場のどのあたりにいるのかを知っておくだけでも、気持ちはずいぶん違いますよ。
オンコールのない働き方を知りたい方は → オンコールなしのオペ室求人の探し方
もう気持ちが固まっている方へ:求人を直接見るなら 看護roo!(登録3分・無料/転職しなくてもOK)。 登録後に確認の連絡が1本きますが、電話が苦手なら「LINE希望」と返信すれば大丈夫です。





コメント