「膀胱全摘って、腹腔鏡から開腹への切り替えがあったり、尿路変更があったりで手順が複雑すぎる…」
「男性と女性で術式が変わるし、会陰操作も入るからパニックになりそう!」
「器械出しとして、どのタイミングでどのデバイスを準備すれば先輩に怒られない?」
そんな風に悩んでいる、手術室看護師1〜5年目のあなたへ。
腹腔鏡下膀胱全摘除術(LRC)に回腸導管による尿路変更が加わる手術は、泌尿器科手術の中でも「最高難度・最長クラス」のオペです。手技のフェーズがコロコロと変わり、要求される器械の種類も膨大なため、最初は誰もが「大きな壁」を感じます。
しかし、安心してください!
この手術は、「①腹腔鏡による剥離・尿管切断」「②会陰・腟からの検体摘出」「③小開腹による回腸導管造設(尿路変更)」という3つの大きなブロックに分けて理解すれば、驚くほどスッキリと頭に入ります。
この記事では、『尿道を引き抜くパターンの腹腔鏡下膀胱全摘・回腸導管造設術』の手順を、解剖の理由と合わせて徹底的にかみ砕いて解説します。
器械出し看護師の視点で、「なぜ今その器械を出すのか」をまとめています。この記事を読めば、長時間の手術でも自信を持って執刀医と息を合わせられるようになりますよ!
腹腔鏡下膀胱全摘と回腸導管造設術の基礎知識
手順を覚える前に、まずは「この手術の目的」を理解しましょう。
ここが分かるだけで、執刀医の次の一手が読めるようになります。
病態と手術の目的
筋層まで浸潤した膀胱癌に対して、
膀胱を丸ごと摘出する根治手術
| なぜ摘出するのか? | 結果どうなる? |
|---|---|
| ・筋層まで浸潤 ・再発リスクが高い ・内視鏡切除では不十分 | ・膀胱機能消失 →尿の通り道がなくなる |
尿路変更術(回腸導管)
膀胱の代わりに
腸で新しい尿の通り道を作る
膀胱摘出
↓
回腸を切り出す
↓
尿管と接続
↓
腹壁へ出口作成(ストーマ)
男女での摘出臓器の違い(重要)
→癌の広がりを防ぐため周囲臓器も一括切除
| 男性 | 女性 |
|---|---|
| ・膀胱 ・前立腺 ・精嚢 ・尿道の一部 | ・膀胱 ・子宮 ・腟前壁 ・尿道 |
・会陰側からの摘出に備える
・女性は腟操作あり → 器械管理が特殊
・摘出臓器の違い=手術展開の違い
・膀胱癌の根治手術
・膀胱摘出+尿路再建がセット
・男女で術式が大きく変わる
・理解すると手術の流れが一気に読める
【第1段階】術前準備〜ポート挿入(手術の立ち上げ)
「消毒〜ポート挿入までの流れが曖昧…」
「器械出しで何を先読みすべきか分からない…」
そんな手術室看護師のために、消毒・ドレーピング〜腹腔鏡操作開始までの流れを
器械・看護ポイント込みで視覚的に整理しました。
術野の消毒・ドレーピング・カテーテル挿入
| 手術展開・手技 | 使用器械・物品 | 看護ポイント |
|---|---|---|
| ①乳頭下〜大腿中央まで広範囲消毒 ②ハーフドレープ+レギンスカバー装着 ③ストーマ部位マーキング ④尿道カテーテル挿入(16Fr) | ・ヨウ素系消毒液 ・消毒鉗子 ・ドレープ類 ・マーキングペン ・尿道カテーテル ・蓄尿バッグ | 器械落下防止が重要 →レギンスカバー余りで ポケット作成 外回り準備 →エネルギーデバイス確認 →機器立ち上げ |
・長時間手術では器械の置き場=安全性
・外回りはエネルギーデバイスの事前確認が勝負
ポート挿入と腹腔鏡操作の開始
| 手術手順 | 使用器械 | 器械出しポイント |
|---|---|---|
| ①臍部小切開(No.15+電気メス) ②ウンドリトラクター装着 ③12mmカメラポート挿入 ④気腹開始 ⑤トロッカー複数挿入 | ・No.15メス ・先細鑷子 ・筋鉤 ・ポート(12mm/5mm) ・腹腔鏡カメラ ・気腹チューブ ・ラパロ鉗子各種 | カメラ曇り対策必須 →温める or 曇り止め使用 一気に器械要求される ・剥離鉗子 ・腸管把持鉗子 ・剪刀 →事前配列で即対応 |
消毒 ↓
ドレーピング ↓
カテーテル挿入 ↓
ポート挿入 ↓
腹腔鏡操作開始
・消毒〜ドレーピングは広範囲&安全確保が最優先
・ポート挿入後は器械要求が一気に加速
・器械出しは「先読み配列」が勝敗を分ける
【第2段階】腹腔鏡操作編:尿管と膀胱周囲の剥離・切断
「尿管の処理って何が一番大事?」
「出血リスクの高い場面でどう動く?」
このフェーズは膀胱摘出術の中でも最重要パート。
病理提出・出血対応・清潔操作が一気に求められます。
尿管の剥離と切離(迅速病理の最重要ポイント)
| 手術手技 | 使用物品 | 看護ポイント |
|---|---|---|
| ①尿管を同定し剥離 ②ベッセルループでマーキング ③ヘモロックで遮断→切離 ④断端を体外へ出し迅速病理提出 | ・エネルギーデバイス ・ベッセルループ(赤・青) ・結紮クリップ+アプライヤー ・ラパロ剪刀 ・検体袋/ネジカップ | 左右識別が最重要 →赤=右 / 青=左など統一 →ホワイトボード記録 迅速病理対応 →断端に癌がないか確認 →追加切除の可能性あり 検体管理 →乾燥防止(濡れガーゼ) →方向マーキングあり |
尿管同定 → テーピング → クリップ → 切離 → 迅速病理
前立腺側方剥離と静脈叢処理(出血ハイリスク)
陰茎深背静脈叢 → 損傷で大量出血
| 使用物品 | 器械出しポイント |
|---|---|
| ・自動縫合器(エンドGIA等) ・エネルギーデバイス ・高周波装置(VIO) | 出血即対応が鍵 ・バイポーラ準備 ・吸引管(ソフト凝固) ・先端の清潔維持 |
膀胱・周囲臓器の剥離(男女の違い)
| 男性 | 女性 |
|---|---|
| ・尿道カテーテルからエア注入 →境界を膨らませる ・電気メスでマーキングし剥離 | ・子宮も同時摘出 ・腟側から器具挿入 →子宮を持ち上げる →視野確保 |
尿道剥離とダブルアプローチ移行
器械出しの負荷MAXフェーズ
・ラパロ器械 ↔ 開腹器械を交互使用
・スムーズな受け渡しが必須
女性症例では
腟内=不潔領域
腹腔内=無菌領域
腟操作器械を腹腔内に使用すると
→腹膜炎のリスク!!
対策
・器械を完全分離
・専用トレー管理
・絶対に使い回さない
・尿管処理=病理提出の精度
・前立腺周囲=出血コントロール
・尿道操作=器械切替スピード
・女性症例=清潔管理が最優先
【第3段階】会陰部からの臓器摘出と骨盤内リンパ節郭清
いよいよ膀胱摘出のクライマックス。
臓器摘出・ドレナージ・リンパ節郭清・尿路変更準備まで、
ミスが許されない重要フェーズが続きます。
膀胱・前立腺(子宮)・尿道の一塊摘出
| 手術手技 | 使用物品 | 看護ポイント |
|---|---|---|
| ①回収バッグ挿入(12mmポート) ②臓器をバッグ内へ収納 ③会陰・腟側から引き抜く ④カテーテル同時抜去 | ・摘出用回収バッグ ・モスキート、ケリー ・メッツェンバーム剪刀 ・ライトアングル ・長鑷子 | 視野確保 →無影灯を会陰部へ 尿量最終確認 →麻酔科へ報告 →カテ抜去後は尿管管理へ移行 |
ポート挿入 → バッグ展開 → 臓器収納 → 会陰側から摘出
会陰部のドレナージと閉創
| 男性 | 女性 |
|---|---|
| ・会陰部を縫合 ・ペンローズドレーン留置 | ・腹腔鏡下で腟壁を縫合 |
・針、ガーゼ残存チェック必須
・閉創前に必ずカウント実施
骨盤内リンパ節郭清(転移制御の要)
・内腸骨
・外腸骨
・閉鎖リンパ節
| 使用物品 | 看護ポイント |
|---|---|
| ・エネルギーデバイス ・結紮クリップ ・縫合糸(ラプラタイ) | 標本管理が最重要 ・部位ごとに分離 ・ラベル管理徹底 ・シャーレ複数準備 |
尿路変更の準備(回腸導管)
回腸 約20cmを使用し新たな尿路作成
| 手技 | ポイント |
|---|---|
| ・回盲部から10〜15cm口側を確認 ・約20cm切離予定 ・マーキング実施 | マーキング重要 →ピオクタニン使用 尿管準備 →体外へ引き出す |
・摘出=安全かつ確実に取り出す
・閉創=カウント徹底
・郭清=標本管理が命
・尿路変更=マーキング精度が重要
【第4段階】開腹操作へ移行:回腸導管の作成と各種吻合
ここからはラパロ→小開腹への切り替え。
器械の入れ替え・腸管操作・吻合・ストーマ造設と、
ミス=重大合併症につながる最終局面です。
回腸導管の切り出し(器械入れ替えフェーズ)
ラパロ器械 → 開腹器械(短い器械へ)
| 手術手技 | 使用物品 | 看護ポイント |
|---|---|---|
| ①ポート創を拡大 ②小腸を体外へ引き出す ③腸間膜切離 ④自動縫合器で20cm切離 | ・No.15メス ・コッヘル ・エネルギーデバイス ・自動縫合器 ・吸引管 ・濡れガーゼ | 方向ミス厳禁 →口側・肛門側を記録 照明調整 →腸間膜血管を透過確認 |
腸引き出し → 血管処理 → 自動縫合 → 導管作成
回腸−回腸吻合(機能的端々吻合)
腸内容物に触れた器械は
=不潔扱い
・生食で徹底洗浄
・または完全隔離
→他器械と混ぜない
尿管−導管吻合(超繊細操作)
| 手技 | ポイント |
|---|---|
| ・導管洗浄(生食約300ml) ・左尿管を右側へ誘導 ・尿管をスパチュレート ・細糸で縫合 ・ステント挿入 | 標本管理 →尿管断端は永久標本 左右識別 →カテーテル加工 →色分け管理 |
ストーマ造設(最終出口)
・片側閉鎖
・片側を腹壁へ誘導
・皮膚縫合(バラ状形成)
最終止血・閉創・ドレッシング
・腹腔鏡で止血確認
・漏れ確認
| 処置 | ポイント |
|---|---|
| ・ドレーン挿入 ・筋膜縫合 ・皮下縫合 ・ドレッシング | ・出血・漏れ最終確認 ・創部保護 ・ストーマパウチ装着 |
・ポート抜去前
・筋膜縫合前
・皮下縫合前
3回以上チェック
開腹・ラパロ・会陰の
3フィールド混在
→カウントミスは致命的
・器械入替=流れを止めない
・腸操作=不潔管理
・吻合=精度と識別
・ストーマ=機能と整容
・閉創=カウント命
【第5段階】最終止血・閉創・ドレッシング
気が遠くなる長時間手術もいよいよ最終局面。
このフェーズではわずかな見落としが重大事故に直結します。
最後まで緊張感を切らさないことが最重要です。
最終確認(腹腔鏡チェック)
・出血の有無
・尿漏れや腸管損傷の有無
・吻合部の状態
止血確認 → 漏れ確認 → ドレーン挿入 → 閉創
止血・ドレーン挿入
| 処置 | 目的 |
|---|---|
| ・マルチチャネルドレーン挿入 (ポート跡などから) | ・血液排出 ・浸出液排出 ・術後合併症予防 |
閉創(層ごとの縫合)
①腹膜
↓
②筋膜(太い吸収糸)
↓
③真皮・皮下縫合
実施タイミング
・ポート抜去前
・筋膜縫合前
・皮下縫合前
3フィールド混在(開腹・ラパロ・会陰)
→カウントミス=重大事故
対策
・外回りとダブルチェック
・声出し確認
・不一致時は即再カウント
ドレッシングと最終仕上げ
| 処置 | ポイント |
|---|---|
| ・創部をガーゼ保護 ・シルキーポア貼付 ・ストーマパウチ装着 | ・感染予防 ・漏れ防止 ・ストーマ観察可能な透明タイプ |
・最終確認=見落としゼロ
・ドレーン=術後管理の要
・閉創=層ごとの確実な縫合
・カウント=絶対ミス不可
・ドレッシング=術後安全のスタート
まとめ:腹腔鏡下膀胱全摘・回腸導管造設術の看護の要点
壮大なスケールの手術、本当にお疲れ様でした!この術式の要点をまとめます。
- 【場面の切り替えの把握】
腹腔鏡(切る)→ 会陰(引き抜く)→ 小開腹(腸をつなぐ・ストーマを作る)という3段階を理解し、その都度メインで使う器械を素早く入れ替えることがスピードアップの鍵です。 - 【検体の管理】
尿管断端の迅速検査、リンパ節郭清(部位別)、臓器一塊など、検体がとにかく多い手術です。「左右」「部位」を外回りと幾度もダブルチェックし、記録と照合しましょう。 - 【清潔・不潔のゾーニング】
腟や会陰からの操作、そして腸管の内腔を開ける(腸吻合)操作など、術中に「不潔・汚染」なものが関わるフェーズが2回もあります。不潔になった器械はステンレス膿盆に避難させ、お腹の中用(清潔)とは絶対に混ぜないという強い意識を持ちましょう。
この術式につけるようになれば、泌尿器科の手術はもちろん、消化器や婦人科の複合手術でも臆することなく立ち回れるようになります。
最初は長丁場で足や腰が辛いかもしれませんが、手順の「なぜ」を理解して先読みができるようになると、あっという間に時間が過ぎる錯覚を覚えるはずです。この記事を手元のメモと照らし合わせて、ぜひ次のオペに自信を持って臨んでくださいね!
参考文献
・日本泌尿器科学会編.膀胱癌診療ガイドライン2019年版[増補版].医学図書出版;2023.
・日本手術医学会.手術医療の実践ガイドライン(改訂第三版).日本手術医学会;2019.
・メディカ出版.オペナーシング2023年秋季増刊『オペナースのための予習用術式マニュアル』.メディカ出版;2023.
◆ ごあいさつ
初めまして、オペ看めろん🍈です。
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記事は今後も
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