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🔬「イントラ?レトロ?どっちも腹腔鏡なのに何が違うの?」
泌尿器科や腎臓外科の手術を初めて担当する新人オペ看が、まず頭を抱えるのがこの2つのアプローチの違いです。経腹膜到達法(イントラ)は腹腔内を通り、後腹膜到達法(レトロ)は腹膜の裏側を通る——言葉ではわかるようで、実際の手術での違いがイメージしにくいですよね。
✅ この記事を読めば、2つのアプローチの「なぜ使い分けるのか」から器械出しの注意点まで丸ごとわかります。
経腹膜到達法と後腹膜到達法を、解剖・手術スペース・体位・トロッカー配置・器械出しの視点から徹底比較します。泌尿器科・腎臓外科・後腹膜腔アプローチを担当する前に、ぜひ読んでおいてください。
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まず解剖を整理!経腹膜・後腹膜とはどこか
「腹膜(ふくまく)」という薄い膜を基準に考えることが大切です。
- 腹腔(ふくくう):腹膜に囲まれた空間。胃・小腸・大腸・肝臓・脾臓などが存在する
- 後腹膜腔(こうふくまくくう):腹膜の後ろ(背中側)にある空間。腎臓・副腎・尿管・大動脈・下大静脈などが存在する
腎臓・副腎は「腹膜の裏側」にある後腹膜臓器です。この臓器にアプローチする際、腹腔(腸が入っている空間)を通るか・通らないかが、イントラとレトロの最大の違いです。
経腹膜到達法(イントラ)・後腹膜到達法(レトロ)とは
経腹膜到達法(Transperitoneal approach / イントラ)
腹腔内にCO₂を送気して気腹を作り、腸管を避けながら後腹膜臓器(腎臓・副腎など)にアプローチする方法です。
- 腹腔内の広い作業スペースを利用できる
- 解剖学的ランドマーク(臓器・血管)が見えやすく視野が良好
- 腎臓にたどり着くには腹膜を切開して後腹膜腔に入る操作が必要
- 腸管が視野に入るため、腸管損傷・術後腸閉塞のリスクがある
- 過去に開腹手術歴がある患者は腹腔内癒着により難渋することがある
後腹膜到達法(Retroperitoneal approach / レトロ)
腹膜を切らずに直接後腹膜腔にアクセスし、腎臓・副腎にアプローチする方法です。最初にバルーンで後腹膜腔を機械的に拡張してから、CO₂でスペースを維持します。
- 腸管に一切触れないため、術後腸管麻痺・腸閉塞のリスクが極めて低い
- 腹膜を開かないため、腹腔内への尿漏れ・血液流入が起こらない
- 作業スペースが後腹膜腔に限られるため視野・スペースが狭い
- 解剖学的ランドマークが少なく、術者に高い技術が要求される
- 過去の開腹手術歴があっても、腹腔内癒着に影響されない
イントラ vs レトロ 徹底比較表
| 比較項目 | 経腹膜(イントラ) | 後腹膜(レトロ) |
|---|---|---|
| アクセス経路 | 腹腔内(腸管の横を通る) | 後腹膜腔直接(腸管に触れない) |
| 作業スペース | 広い | 狭い |
| 視野・ランドマーク | 良好(臓器・血管が見えやすい) | 限定的(解剖の理解が必要) |
| 腹膜切開 | 必要(腎臓到達のため) | 不要 |
| 腸管操作 | あり(腸を避けて操作) | なし |
| 腸閉塞リスク | 相対的に高い | 低い |
| 術後回復 | やや遅い傾向 | 早い傾向 |
| 既往開腹手術 | 癒着で困難になりやすい | 影響を受けにくい |
| 標準的な気腹圧 | 12〜14 mmHg | 10〜12 mmHg |
| スペース作成方法 | CO₂気腹のみ | バルーン拡張→CO₂気腹 |
どんな術式で使われる?適応の違い
| 術式 | 主なアプローチ | 選択理由 |
|---|---|---|
| 腹腔鏡下腎摘除術 | イントラ or レトロ(施設・術者により異なる) | 腫瘍サイズ・位置・既往歴で判断 |
| 腹腔鏡下副腎摘除術 | イントラ(標準)/ レトロ(肥満例など) | 副腎は深部にあり視野確保が重要 |
| 腹腔鏡下腎盂形成術(UPJO) | イントラ or レトロ | 術者の習熟度・患者背景で選択 |
| 腹腔鏡下根治的腎摘除術(腎がん) | イントラ(大型腫瘍)/ レトロ(後面腫瘍) | 腫瘍の位置・大きさが選択基準 |
| 腹腔鏡下膀胱全摘術 | イントラ(標準) | 骨盤内操作に広い視野が必要 |
| 後腹膜腫瘍切除 | レトロ(直接到達が有利) | 腹膜を通らず直接患部へ |
体位・トロッカー配置の違い
経腹膜(イントラ)の体位とトロッカー
- 体位:側臥位(患側を上)または砕石位(膀胱手術)
- 腰台(腰ブリッジ):側臥位で腰を軽く伸展させ、腸骨稜と肋骨の間を広げる
- トロッカー配置(腎手術例):臍周囲にカメラポート→腹部に3〜4本追加
- 気腹開始部位:臍部または左上腹部(Veress針 or Hasson法)
後腹膜(レトロ)の体位とトロッカー
- 体位:完全側臥位(患側を上)。腰を最大限に伸展させる
- 腰台(腰ブリッジ):イントラより強めに腰を反らせ、後腹膜腔への入り口を最大化する
- 最初のトロッカー挿入部位:第12肋骨先端直下(腰三角)から指で後腹膜腔にアクセス→バルーンで拡張→カメラポート挿入
- 追加トロッカー:側腹部・腰背部に2〜3本追加(腹部には置かない)
外回り看護師として重要なのは、「どちらのアプローチか」を術前に把握し、腰台の調整角度・バルーンカテーテルの準備有無を確認しておくことです。
器械出し看護師のアプローチ別ポイント
経腹膜(イントラ)の器械出しポイント
- 腹膜切開用エネルギーデバイスを早めに準備する
- 腸管を牽引・避けるための無鉤の把持鉗子が必要になる
- 腎周囲のGerota筋膜を剥離するための器械を把握しておく
- 血管クリップ(Mまたはラージ):腎動静脈の処理に必須。サイズを確認して準備
- 腎摘除後のエンドバッグ(標本回収袋)を準備する
後腹膜(レトロ)の器械出しポイント
- バルーンカテーテル(拡張バルーン)の準備:術前に術者に使用有無・サイズを確認する
- 後腹膜腔は狭いため細めで操作性の高い器械が求められる
- 解剖ランドマークが少ない分、術者とのコミュニケーションに集中する
- 腎動静脈の処理方法(クリップ or ステープラー)を術前に確認しておく
- イントラと異なり腸管鉗子の出番はほぼない
外回り看護師が術前に確認すべき5つのこと
- ① イントラ・レトロどちらのアプローチかを麻酔科医・術者に確認し記録する
- ② 体位の詳細(腰台の角度・腋窩枕の有無・固定方法)を術者または先輩看護師に確認する
- ③ レトロの場合はバルーン拡張用シリンジと生理食塩水を準備する(容量は施設の手順に従う)
- ④ 気腹装置の設定圧をアプローチに応じて確認(イントラ12〜14mmHg / レトロ10〜12mmHg)
- ⑤ 標本回収袋のサイズを術前CTの腫瘍径から逆算して準備する
新人オペ看が混乱しやすいポイントと対策
| 混乱ポイント | 解決策 |
|---|---|
| 同じ側臥位なのにトロッカーの場所が全然違う | イントラは「腹部」レトロは「腰部・側腹部」と身体の前後で覚える |
| レトロ中に腹膜が破れてイントラに移行すると言われて焦った | 腹膜損傷時はイントラへ切り替える。気腹装置・トロッカー追加が必要になることを把握しておく |
| バルーンカテーテルって何本必要? | 通常1本。術前に担当術者に確認する |
| 腎動静脈の処理をクリップとステープラーどちらで行うかわからない | 術前に「腎茎部の処理方法」を術者に必ず確認。腎動脈は複数本ある場合もある |
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まとめ
- ✅ 経腹膜(イントラ)は腹腔内を経由→作業スペース広い・視野良好・腸管操作あり
- ✅ 後腹膜(レトロ)は腹膜を通らず直接後腹膜腔へ→腸管に触れない・スペース狭い・腸閉塞リスク低い
- ✅ 開腹手術歴がある患者にはレトロが有利(腹腔内癒着の影響を受けない)
- ✅ トロッカー挿入部位が腹部(イントラ)vs 腰部・側腹部(レトロ)で大きく異なる
- ✅ レトロではバルーンカテーテルによる後腹膜腔の拡張が最初のステップ
- ✅ 気腹圧はイントラ12〜14mmHg / レトロ10〜12mmHgが目安
- ✅ 器械出しはクリップサイズ・エンドバッグ・腎動静脈の処理方法を術前に術者に確認する
- ✅ レトロ中に腹膜損傷→イントラへ移行する場合は、気腹・トロッカー追加の対応が必要になることを把握しておく
イントラとレトロの違いは「腹膜の内側か外側か」という一点を軸に整理すると、体位もトロッカーも器械の選択もすべてつながって見えてきます。担当手術が決まったら術前に必ずアプローチを確認し、自信を持って器械台を準備できるようになりましょう。
参考文献
- 日本泌尿器科学会(2021).『泌尿器腹腔鏡手術ガイドライン 2021年版』. 日本泌尿器科学会.
- 日本手術看護学会(2021).『手術看護業務指針 第3版』. 日本手術看護学会.
- 大石幸彦 ほか(2020).「腹腔鏡下腎摘除術——経腹膜到達法と後腹膜到達法の比較」.泌尿器外科, 33(4), pp.421–428. 医学図書出版.
- 田中裕一(2019).「後腹膜鏡下手術の基本と手術室看護師の役割」.オペナーシング, 34(9), pp.36–43. メディカ出版. https://store.medica.co.jp/list/?Category=books
- Gill IS et al.(2000). Retroperitoneal laparoscopic nephrectomy: the Cleveland Clinic experience. Journal of Urology, 163(6), pp.1665–1670.
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