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『腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(TAPP法など)の手術手順を詳しく知りたい』
『腹腔鏡手術の器械出しを始めたばかりで、次に何を渡せばいいのか、画面のどこを見れば良いのか不安が多い・・・』
このように感じている手術室看護師の方は非常に多いのではないでしょうか?
鼠径ヘルニア(脱腸)の手術は日常的によく行われますが、腹腔鏡下になると一気に必要な器械が増え、モニター画面を見ながらの進行予測が求められます。しかし、解剖と手術の手順さえしっかり理解してしまえば、器械出しは驚くほどスムーズになります!
この記事では、器械出し看護師の視点から、腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(主にTAPP法)の手術手順と、絶対におさえておきたい看護ポイントを図表も交えながら分かりやすく徹底解説します。
【この記事で直ぐに分かること】
✅ 鼠径ヘルニアの基礎知識と腹腔鏡手術ならではのメリット(表で比較!)
✅ 腹腔鏡下鼠経ヘルニア根治術における「3大」器械出し看護ポイント
✅ 手術の全手順(ポート挿入〜腹膜切開〜メッシュ固定〜閉鎖まで詳細に)
✅ ラパロ手術特有の針糸(バブドー糸や非CR針)の知識とカウントの注意点
【基礎知識】鼠径ヘルニアと腹腔鏡手術の特徴
まずは基本を整理しましょう。鼠径ヘルニアとは、足の付け根(鼠径部)の筋膜・筋肉が弱くなり、そこから腸管や脂肪がお腹の外にポンっと脱出してしまう病気です。これを「メッシュ(人工布)」で内側から補強する手術が行われます。
腹腔鏡下手術には、お腹の中からアプローチするTAPP法(経腹的腹膜前修復術)と、腹膜を破らず腹壁の中からアプローチするTEP法があります。近年は、両側を同時に観察・治療でき、術後の痛みが少ない腹腔鏡下手術が急速に増えています。
術式の呼び名を整理する(TAPP・TEP・開腹)
鼠径ヘルニアの手術には複数のやり方があり、名前が似ているため混乱しがちです。「どこから入って、どこにメッシュを置くか」で整理すると一気に分かりやすくなります。
| 術式 | どこから入るか | 特徴 |
|---|---|---|
| TAPP(腹腔鏡下・経腹) | お腹の中へ入り、腹膜を開いて裏側へ | 腹腔内が見えるため反対側のヘルニアも確認できる。本記事はこの方法 |
| TEP(腹腔鏡下・腹膜外) | 腹膜の外側だけを進む | 腹腔内に入らないが、空間が狭く難度が高い |
| 開腹(前方アプローチ) | 鼠径部を切開して直接到達 | 局所麻酔でも可能。全身麻酔が難しい患者さんにも対応できる |
器械出しの視点では、TAPPとTEPで準備が変わります。TEPでは腹膜外の空間を広げるための器具が必要になることがあり、TAPPでは腹膜を閉じるための針糸が必ず要ります。前日の情報収集で、まずここを確認してください。
なぜメッシュで覆うのか
鼠径ヘルニアは、お腹の壁の弱くなった部分から腸などが飛び出してくる状態です。飛び出したものを戻すだけでは、また同じ場所から出てきます。
そこで、弱くなった部分を内側から広くメッシュで裏打ちするのが現在の標準的な考え方です。壁の穴に内側から当て板をするイメージで、圧がかかっても押し出されないようにします。メッシュを十分な広さで、きちんと平らに置くことが再発を防ぐ鍵になります。
鼠径部の解剖を「3つの出口」で理解する
腹腔鏡でメッシュを置く場所は、単なる「穴のあいたところ」ではありません。鼠径部には、もともと弱くなりやすい出口が3か所あります。この3つをまとめて覆うのが、腹腔鏡手術の考え方です。
| 出口 | どこから出るか | 特徴 |
|---|---|---|
| 外鼠径ヘルニア | もともと精索や子宮円索が通る穴から | 若い人にも起こる。最も頻度が高い |
| 内鼠径ヘルニア | 腹壁の筋膜が薄くなった部分から | 加齢や腹圧のかかる生活で起こりやすい |
| 大腿ヘルニア | 太ももへ向かう血管の脇の隙間から | 穴が狭く、嵌頓しやすい。注意が必要 |
🧩 だからメッシュは「大きく」置く
術者が「もっと広げて」「しわを伸ばして」と繰り返すのは、この3つの出口を一枚でまとめて覆う必要があるからです。1か所だけ塞いでも、隣の出口から出てくれば意味がありません。
メッシュを広げる操作を介助するとき、この意味を知っているだけで、手の添え方が変わります。
なお、腹腔鏡で内側から見ると、術前の診断とは違う場所にヘルニアが見つかることがあります。「外鼠径だと思っていたら大腿ヘルニアもあった」というケースです。術中に方針が変わっても慌てないよう、この3つの存在を頭に入れておきましょう。
絶対に押さえる!器械出し看護3大ポイント
腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術の器械出し看護ポイントは、具体的に以下の3つに集約されます。これを意識するだけで、術者からの信頼度は劇的に上がります。
- 挿入するメッシュを器械台上で「極限まで清潔に」保つこと(感染が命取り!)
- できるだけメッシュやタッカーに素手で触れずに執刀医に渡すこと
- メッシュ挿入前に、必ずガーゼ・器械のカウントを実施すること(タッキング後のカウント不一致は悲劇を生みます)
術前に確認しておきたいこと
- 患側(左右)と両側同時かどうか — 両側の場合は手術時間もメッシュの枚数も変わります
- 術式(TAPPかTEPか) — 準備する器械が変わります
- メッシュの種類とサイズ — 製品によって扱い方が違います
- 固定方法 — タッカーか、接着剤か、固定しないか
- 再発症例かどうか — 前回の手術による癒着で難度が上がり、開腹移行の可能性も上がります
- 嵌頓(かんとん)の有無 — 飛び出した腸が戻らなくなっている状態なら緊急性が高く、腸切除の準備が必要になることもあります
🚨 「嵌頓」と聞いたら準備が変わります
飛び出した腸が締めつけられて戻らなくなった状態を嵌頓といいます。時間が経つと腸への血流が途絶え、腸を切除しなければならなくなることがあります。
予定手術と同じ準備では足りません。腸管切除・吻合に使う器械を追加で用意できるかを、術前に確認しておいてください。
【保存版】腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術で準備する器械・物品
| グループ | 主な内容 | 押さえるポイント |
|---|---|---|
| ①到達 | メス、トロッカー(12mm・5mm)、気腹チューブ、カメラ、光源ケーブル | 最初のポート作成が最も出血しやすい |
| ②剥離 | 剥離鉗子、把持鉗子、電気メス、超音波凝固切開装置、吸引管 | 剥離はやさしく広く。神経を傷つけない操作が続く |
| ③メッシュ | メッシュ本体、固定用タッカーまたは接着剤 | 清潔操作を最優先。感染すると摘出が必要になる |
| ④閉鎖 | 腹腔鏡用の針糸(非CR針)、持針器 | 腹膜をしっかり閉じることでメッシュと腸の接触を防ぐ |
| ⑤閉創 | 筋膜縫合用の糸、皮膚接合材 | 太いポート跡は筋膜まで縫合 |
体位と外回りの観察ポイント
体位は仰臥位で、術野を確保するために頭側を下げた姿勢(頭低位)をとります。両上肢は体側に固定されることが多く、シンプルに見えて注意点があります。
- 頭低位でのずれ防止:体が頭側にずれないよう固定を確認します。肩を強く押さえると腕神経叢を傷めるため、肩当てに頼りすぎないのがポイントです
- 上肢の位置:体側固定では、手指が手術台の間に挟まっていないかを確認します
- 膀胱を空にしておく:膀胱が張っていると術野に近く、損傷のリスクが上がります。導尿の有無を確認します
- 気腹の影響:頭低位と気腹が重なると換気に影響します。麻酔科医と情報を共有します
メッシュを清潔に保つための具体的な動き
「清潔に扱う」と言われても、具体的に何をすればいいのか迷うところです。メッシュを扱う場面での動きを、順番に整理しておきます。
- 使う直前まで開封しない:術野に出ている時間が長いほど、空気中の落下菌に触れる機会が増えます
- 手袋で直接触らず器械で扱う:手袋は完全な無菌ではありません。特に長時間の手術では微小な穴があくこともあります
- 皮膚に触れさせない:トロッカーから挿入する際、皮膚に接触させないよう注意します
- 置き場所を固定する:器械台の上を移動させるほど汚染の機会が増えます。開封したら最短距離で術野へ
メッシュ感染が起きると、抗菌薬だけで治すことは難しく、再手術で取り出すことになります。患者さんはもう一度全身麻酔を受け、ヘルニアも再発した状態に戻ります。この数十秒の扱いが、その分かれ道になります。
【手術手順】詳細マニュアルと介助のコツ
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