【肺切除術・開胸手術】流れを完全解説|オペ看が絶対つまずくポイントも解説

心臓血管外科・呼吸器
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手術室での勤務が始まり、少しずつ現場のスピードに慣れてきた経験年数1〜3年目の皆さん。胸腔鏡手術(VATS)が増加している現代でも、進行した肺癌や癒着が強い症例、あるいは術中大出血などのトラブル時(コンバージョン)において、「開胸下での肺切除術(Open Thoracotomy)」は依然として極めて重要な術式です。

開胸手術は、胸腔鏡手術と比べて視野が直視下となり、外科医の手の動きがダイナミックになります。その分、出血量が急激に増加するリスクが潜んでおり、使用する開胸器や縫合糸のサイズ、結紮のタイミングなど、器械出し看護師の「一歩先を読む力(先読み)」と、外回り看護師の「全身管理と危機察知能力」がダイレクトに試される手術です。

本記事では、新人・若手オペ室ナースに向けて、開胸下での肺葉切除術・肺切除術を安全かつスムーズに介助できるように、「解剖生理の基礎」「手術の具体的な流れ(STEP別)」「器械出し・外回りそれぞれの看護ポイント」を徹底解説します。
この記事を読めば、『開胸手術の介助につくのが怖い…』という不安が、『次はこんな展開になるから、これを準備しておこう!』という自信に変わるはずです。一緒に学んでいきましょう!

1. 開胸肺切除術の基礎知識とVATSとの違い

① 開胸手術が選択されるケースとは?

近年は低侵襲なVATS(胸腔鏡下手術)やロボット支援下手術(RATS)が主流になりつつありますが、以下のような場合には初めから「開胸」が選択されるか、あるいは手術途中で胸腔鏡から開胸へ移行(コンバージョン)します。

  • 腫瘍が巨大、あるいは周囲臓器(胸壁、大血管、心膜など)へ浸潤している場合:安全な剥離と確実な切除マージンを確保するため。
  • 胸腔内の癒着が極めて強固な場合:炎症の既往(結核など)で肺と胸膜ががっちりと癒着していると、カメラの視野だけでは安全な剥離が困難なため。
  • 術中に出血のコントロールが困難になった場合(緊急開胸):肺動脈や肺静脈からの想定外の大出血に対し、医師が直接手を入れて用圧迫や縫合止血を行う必要があるため。

② 胸部の解剖とアプローチ法

開胸手術で一般的なのは「後側方開胸(Posterolateral thoracotomy)」です。これは肩甲骨の下を沿うように、背中側から脇の下を通って前胸部へと大きく皮膚を切開する方法です。
このアプローチでは、広背筋(こうはいきん)、前鋸筋(ぜんきょきん)などの分厚い筋肉を切開し、肋骨の間(通常は第4または第5肋間)を開いて胸腔内に到達します。場合によっては視野を広げるために、肋骨を1本部分的に切除することもあります。

【解剖のおさらい:肺の構造】
  • 右肺:上葉・中葉・下葉の3つ。気管支は短く太い。
  • 左肺:上葉・下葉の2つ。心臓があるため容積が小さい。
  • 肺の血管:
    ・肺動脈(PA:Pulmonary Artery)=右心室から肺へ向かう「静脈血」が流れる血管。壁が薄く破れやすい。
    ・肺静脈(PV:Pulmonary Vein)=肺から左心房へ戻る「動脈血」が流れる血管。

※手術では、各肺葉へ向かう PA(肺動脈)と PV(肺静脈)、および気管支(Bronchus)を個別にテーピング・結紮・切離していくことが基本的なステップとなります(これを葉切除:Lobectomyと呼びます)。

2. 術前アセスメントと手術室での準備

① 外回り看護師のアセスメントポイント

確認項目アセスメントと対応策
呼吸機能(肺活量・1秒率など)肺を切除した後に、残された肺で十分に呼吸が維持できるか(術後呼吸不全のリスク)を予測します。COPDなどの既往があれば痰の増加や無気肺に注意が必要です。
循環動態と大出血リスク肺動脈は全身の心拍出量が流れるため、損傷時は致死的な大出血になります。必ず太い静脈ルート(18G等)を2本以上確保し、急速輸血・輸液器の準備状況、輸血オーダーの有無を確認します。
麻酔計画(分離肺換気)ダブルルーメンチューブによる片肺換気(患側肺を虚脱させる)を行います。気管支鏡(ファイバー)の事前準備と作動確認を必ず行います。
硬膜外麻酔の有無開胸手術は術後疼痛が非常に強いため、通常は硬膜外麻酔を併用します。硬膜外カテーテルキットの準備と、穿刺時の体位保持(エビのポーズ)を介助します。

② 側臥位(そくがい)固定のポイントと使用物品

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