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腎臓・膀胱・尿管の部位ごとの術式まとめ
泌尿器科手術の主な対象臓器となる腎臓、尿管、膀胱、尿道。
腎臓の手術では患者さんを横向きに寝かせて手術を行い、尿管ステント挿入術では砕石位で尿道から内視鏡を入れる。膀胱全摘では、お腹と会陰の両方から同時に進めたうえで、腸の一部を使って尿の通り道を作り直す・・・
同じ「尿の通り道」の手術でも、手術ごとに方法も術中体位も変わる。だから覚えにくく感じるのだと思います。
このページでは、泌尿器科の手術の記事を腎臓・膀胱・尿管の部位ごとにまとめました。
明日入る手術だけ拾い読みしても大丈夫です。気になるところから開いてください。
腎臓の手術|取るか、残すか
腎臓の手術は、腎臓を丸ごと取るか、腫瘍だけ取って残すかでポイントが変わります。取る手術は血管処理、残す手術は時間との勝負です。
ラパロ腎摘(腹腔鏡下腎摘除術)
ラパロ腎摘のいちばんのポイントは、腎動脈と腎静脈を切るところです。基本は「動脈が先、静脈が後」で、出口の静脈を先に縛ると腎臓がうっ血して腫れ上がるからです。
血管の走り方によって、術者が順番を変えることもあります。術前の画像と術者の方針を確かめておくと、次に渡す器械を予測できます。
RAPN(腎部分切除術)
RAPNは、腎臓の血流を一時的に止めて、その間に腫瘍を切り取り、切り口を縫い合わせる手術です。血流が止まっている時間を阻血時間と呼びます。
止めている間、腎臓には酸素が届きません。長引くほど、残すはずの腎臓の働きが落ちていきます。
だから外回りは、「クランプします」の声で時間を計り始め、決まった間隔で経過を読み上げます。術者はこの読み上げを目安にペースを考えています。
器械出しは、クランプの前に剪刀・針糸・クリップ・止血材・回収袋を手元にそろえます。阻血が始まってから探していては間に合いません。
血流を止めるブルドッグ鉗子は小さな器械のため、体の中で見失わないように注意し、数と位置を確認して共有します。
経腹膜と後腹膜アプローチ
腎臓はお腹の奥、腹膜の裏側にあります。そこへ腸のあるお腹の中を通って行くか、背中側から腹膜の外を通って行くかの違いが、イントラとレトロです。
イントラ(経腹膜)は作業スペースが広く、臓器や血管が見えやすい方法です。そのかわり腸をよけながら進み、以前のお腹の手術で癒着があると難しくなります。
レトロ(後腹膜)は腸に触れずに進めますが、スペースは狭くなります。はじめにバルーンで空間を広げるので、その準備が必要です。
外回りが術前に確かめたいのは、どちらのアプローチか、体位はどうするかです。手術名が同じでも、ここで準備が変わります。
膀胱を取り、尿の道を作る
膀胱全摘は、膀胱を取る手術と、尿の新しい出口を作る手術がセットです。長い手術の中で、器械の清潔・不潔が何度も切り替わります。
腹腔鏡下膀胱全摘
膀胱全摘は、男性と女性で一緒に取る臓器が違います。男性は前立腺や精嚢、女性は子宮や腟の前壁なども合わせて取ることが多い手術です。
尿管を切ったあとは、断端にがんが残っていないかを迅速病理で調べることがあります。右と左を取り違えないよう、テープの色や記録で左右をはっきりさせます。
後半は、お腹からの腹腔鏡と会陰からの操作が同時に進む場面もあります。腹腔鏡の器械と開腹の器械が行き来するので、器械出しの手がいちばん忙しくなるところです。
回腸導管
回腸導管は、小腸の終わりの部分(回腸)を一部切り取って、尿の通り道として使う方法です。尿管をその腸につなぎ、もう片方をお腹の外に出してストーマにします。
腸の中は菌のいる場所です。腸を開ける前に、器械台に「不潔ゾーン」を作り、腸に触れた器械はそこへ置くと決めておきます。
もうひとつ大事なのが、お腹に書かれたストーマの位置の印です。術前に専門の看護師が、患者さんが自分で装具を交換できる位置を選んでつけたものです。
消毒でこの印を拭き取ってしまうことは、実際に起こりえます。消毒の前に位置を確かめ、もし消えてしまったら黙って進めずに報告してください。
尿管ステント|短い手術の準備
尿管ステントの手術は短時間で終わります。ただ、準備に抜けがあると、そのまま手術が止まってしまいます。
尿管ステント留置術
膀胱鏡で尿管の出口を見つけ、透視で見ながらガイドワイヤーを腎盂まで進めます。ステントはそのワイヤーに沿わせて入れるので、ワイヤーが腎盂まで届いているかが何より大切です。
ワイヤーは長くて跳ねやすく、清潔台から落ちやすい物品です。清潔台の上にまっすぐ置き、渡すときは先端と手元の両方に気を配ります。
ステントの太さ(Fr)と長さは、開封前に医師と声に出して確認します。体格や腎盂までの距離で選ぶので、予備のサイズがどこにあるかも把握しておきます。
尿管ステント抜去の痛み
こちらはステントを抜く予定の患者さんに向けて書いた記事です。「抜くとき、すごく痛いんですか」と聞かれたときの参考にしてください。
アンケートでは、痛かった人と平気だった人がほぼ半分ずつに分かれました。差を分けていたのは痛みへの強さではなく、抜去用の糸があるか、使う内視鏡、麻酔の方法、留置期間といった処置の条件でした。
ダビンチと縫合器を使いこなす
泌尿器科は、ロボット手術と自動縫合器に出会う機会が多い科です。どちらも、機械の扱いを知っていることが安全につながります。
ロボット支援手術(ダビンチ)
ロボット手術では、術者は患者さんから離れたコンソールに座っています。患者さんのそばで体を見ているのは、外回り看護師・麻酔科医・器械出し看護師・助手医師です。
頭を低くする体位、顔のむくみ、アームと体のすき間。コンソールの術者には見えないことを、そばにいる私たちが見て伝えます。
そして、手順より先に覚えたいのが緊急離脱です。急変時にアームを外して本体を離す流れを、手術の前に確認しておきます。
ステープラーの種類と渡し方
泌尿器科でステープラー(自動縫合器)が出てくるのは、主に回腸導管で腸を切ってつなぐ場面です。消化器外科の手術ほど頻繁ではないぶん、慌てやすい道具でもあります。
組織を挟んだあと、術者がしばらく撃たずに待つことがあります。組織の水分を押し出し、厚みをそろえてからきれいにステープルを形作るためで、待つ時間も正常な手順です。
待っている間は急かさず、次のカートリッジや止血の物品を準備しておきます。カートリッジの色と組織の厚さの関係も、記事で整理しています。
手順を動画で確認したいときに
膀胱全摘と回腸導管、ラパロ腎摘、尿管ステント抜去の痛みは、YouTubeでも解説しています。
膀胱全摘は工程が多く、文字だけだといまどの段階かを見失いやすい手術です。記事で流れをつかんでから動画を見ると、器械が切り替わる場面がつかみやすいと思います。
RAPN、尿管ステント留置術の手順、ダビンチの完全講義、腎摘の器械台の整理など、踏み込んだ回の一部はメンバーシップ向けに置いています。
泌尿器科はどこから覚えるか
ここに並べた記事を、上から順に読む必要はありません。まずは明日入る手術に関連するものから読んでもらえたらと思います。
- 尿管ステント留置術:短く、膀胱鏡と透視の基本がつまっています
- 腎臓は経腹膜と後腹膜の違いから:ラパロ腎摘とRAPNが読みやすくなります
- 膀胱全摘と回腸導管:ほかの手術で覚えたことを全部使う手術です
1年目のころ、初めて入る診療科の外回りを翌日に控えていたことがあります。ほかの科の経験があったので、診療科リーダーに何も聞かずに帰ろうとしていました。
そのとき言われたのが、「初めて入る診療科なのに、なんで何も質問してこないの?」という一言です。言い方は怖かったけれど、先輩の言っていることは正しいと思いました。
初めての科に入る前の日は、このページで流れだけ見て、分からないことを1つ持ってリーダーに聞きに行く。それだけで、翌日の手術室での不安はずいぶん小さくなります。













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