【気管挿管の介助と抜管の流れ】準備物品と観察ポイントも解説

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「挿管介助で何を準備すればいいか不安…」

「どのタイミングで何を医師に出すの?」

「抜管時に何を見ればいいか分からない…」

これらは、手術室に配属されたばかりの新人看護師が必ず抱える悩みです。

また、指導者側も「流れは教えているが、“なぜその行動か”をうまく説明できていない」と悩むことが多いのではないでしょうか。

💡 この記事で得られること
  • 気道確保の本質が理解できる
  • 気管挿管・抜管時の流れと具体的な役割が分かる
  • 安全に介助できる判断基準と「なぜ」が身につく

\オペ看1838人のリアルな声/

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🫁 気管挿管介助と抜管管理クイズ 全8問

前酸素化・確実な挿管確認・カフ圧管理・抜管基準とトラブル対応をチェック!
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気道確保とは何か(基本概念)

■ 気道確保の目的

気道確保とは、患者さんの呼吸路を開通させ、呼吸ができる状態を保つことです。主な目的は以下の3つです。

  • 酸素供給の維持: 全身の臓器に酸素を届ける
  • 換気の確保: 体内に溜まった二酸化炭素を排出する
  • 誤嚥防止: 胃内容物や分泌物が肺に入るのを防ぐ

■ なぜ気道確保が重要か

低酸素状態は、脳や心臓などの重要臓器に短時間で致命的なダメージを与えます。そのため、気道確保は手術安全における最優先事項です。

「気道=生命線」

気道管理の全体像

■ 主な方法

気道管理には、患者さんの状態や手術内容に応じていくつかの方法があります。

  • マスク換気: 顔にマスクを密着させて換気を行う
  • 気管挿管: 気管内にチューブを直接挿入する(確実な気道確保)
  • 声門上器具(LMAなど): 喉の奥に器具を留置し換気する

■ 手術室での主流

手術室で行われる全身麻酔の多くは、筋弛緩薬を使用するため自発呼吸が止まります。そのため、最も確実で誤嚥防止効果も高い気管挿管が主流となります。

👉 看護師の役割: 看護師自身が挿管を行うわけではありませんが、“環境と物品で医師を支える役割”を担っています。

挿管介助の目的と役割

■ 目的

「安全かつ迅速な気管挿管の実施」をサポートすることです。もたつく時間はそのまま患者さんの無呼吸時間(低酸素状態)に直結します。

■ 看護師の役割

  • 物品準備: 必要なものを過不足なく、すぐに使える状態で揃える
  • 手技の補助: ベストなタイミングで医師に物品を渡す
  • 患者状態の観察: モニター変化をいち早く察知し医師に伝える
医師を「止めない・迷わせない」介助を目指す

挿管前の準備(超重要)

挿管介助の成功は、事前の準備で8割決まると言っても過言ではありません。

■ 患者準備

  • 体位調整: スニッフィングポジション(匂いを嗅ぐような姿勢)を作り、気道が一直線になるように枕などで調整します。
  • 酸素投与(プレオキシジェネーション): 無呼吸になっても血中酸素濃度が急激に下がらないよう、事前に100%酸素を十分に吸ってもらいます。

■ 機器確認

  • 喉頭鏡: ライトが確実に点灯するか(明るさは十分か)確認します。
  • 吸引装置: すぐに手が届く位置に置き、適切な吸引圧がかかるかテストします。
  • 酸素供給: 酸素配管が接続され、バッグバルブマスクなどが使える状態か確認します。

■ チーム準備

麻酔科医や他のスタッフと「誰が何をするか」を明確にし、「挿管始めます」「よろしくお願いします」といった声かけで意識を統一します。

⚠️ 注意: 準備不足は、挿管困難に直面した際のリスク増大(パニック、低酸素脳症など)に直結します。

挿管時の介助の流れ

気管挿管の介助の流れ。前酸素化、麻酔導入、マスク換気、喉頭鏡を渡す、チューブを渡す、カフを膨らませる、固定の順
渡す順番を覚えておくと手が止まりません

医師の動きに合わせて、スムーズに補助を行います。

① 喉頭鏡挿入

医師が左手に喉頭鏡を持ち、口腔内へ挿入します。この時、必要に応じて口を広げる介助や、視野確保のための甲状軟骨圧迫(BURP法)を指示されることがあります。

② チューブ挿入

声帯が見えたら、右手に気管チューブを渡します。あらかじめスタイレット(芯)を入れ、先端を適切なカーブに曲げた状態ですぐに渡せるように持ちます。

③ カフエア注入

チューブが気管に入り、スタイレットを抜いたら、医師の指示でカフ(風船)に空気を注入します。シリンジで適切な圧になるよう空気を入れ、気道を密閉させます。

④ 位置確認と固定

本当に気管に入っているか、以下の項目で確認します。

  • 胸郭の上がり方(左右対称か)
  • モニターの呼気CO₂(カプノメータ)の波形が出ているか
  • 聴診(左右の肺で呼吸音が聞こえ、胃でボコボコ音がしないか)
「入ったか確認するまでが挿管」

挿管時の観察ポイント

挿管操作中、看護師は手元だけでなく生体モニターにも注意を払う必要があります。

  • SpO₂低下: 手技に時間がかかると下がります。90%を切りそうならすぐに医師に伝えます。
  • 心拍数変動: 喉頭展開の刺激で頻脈になったり、迷走神経反射で徐脈になることがあります。
  • 血圧変動: 刺激による血圧上昇や、麻酔薬による血圧低下が起こりやすいタイミングです。

👉 絶対に「低酸素」を見逃さないことが重要です。

挿管時に準備する物品

必要な物品は以下の通りです。施設のルールに合わせて準備しましょう。

■ 基本セット

  • 気管チューブ(予定サイズとその前後、計3サイズ程度)
  • 喉頭鏡(ハンドルとブレード。サイズ違いも準備)
  • スタイレット(チューブの太さに合ったもの)
  • シリンジ(カフ注入用、10mlなど)

■ 補助物品

  • 吸引カテーテル(口腔用・気管用)と吸引接続管
  • 潤滑剤(ゼリーやスプレー)
  • テープまたは固定具
  • バイトブロック

■ 緊急対応グッズ(挿管困難時)

  • バッグバルブマスク
  • 代替気道器具(ビデオ喉頭鏡、LMAなどの声門上器具)
  • エアウェイ(経口・経鼻)

👉 「使わないかも」ではなく「使うかも」という前提で準備することが命を救います。

抜管の目的と役割

■ 目的

手術が終わり、患者さんが自分の力で十分な呼吸ができるようになったら、安全に気道管理を終了(抜管)します。

■ リスク

実は、挿管時よりも抜管時の方がリスクが高い場面も多々あります。

  • 気道閉塞: 舌根沈下(舌が落ち込む)や喉頭痙攣(声帯が痙攣して閉じる)
  • 誤嚥: 胃の内容物や口腔内の分泌物を吸い込んでしまう
  • 低酸素: 自発呼吸がまだ弱く、酸素が足りなくなる

抜管時の介助の流れ

抜管の判断条件と抜管後の観察。意識の回復、十分な自発呼吸、筋弛緩からの回復、カフリークテストを確認し、上気道閉塞と再挿管に備える
抜いた後こそ気道閉塞に備えます

抜管も手順を追って慎重に行われます。

① 覚醒確認

自発呼吸がしっかり戻っているか、名前を呼んで目を開けるか、指示(「手を握って」など)に応答できるかを確認します。

② 吸引

抜管時に分泌物が気管に入らないよう、口腔内や気管内の分泌物をしっかり吸引します。

③ カフ抜気

固定テープを外し、シリンジを使ってカフの空気を完全に抜きます。

④ 抜管

肺が膨らんだ後、息を吐く(呼気)タイミングに合わせて、スムーズにチューブを抜去します。

⑤ 酸素投与

抜管直後はすぐに酸素マスク(またはカヌラ)を装着し、SpO₂が下がらないか確認します。

「抜いた後が本番」

抜管後の観察ポイント

抜管直後は状態が急変しやすいため、以下の点に注意します。

  • 呼吸状態: リズムは一定か、胸はしっかり上がっているか。
  • SpO₂: 95%以上を維持できているか。
  • 努力呼吸: 肩で息をしていないか、陥没呼吸(息を吸う時に首元や肋骨の間がへこむ)はないか。
  • 嗄声(させい): 声の枯れがひどくないか。

👉 異常を早期発見し、すぐに対応できるよう目を離さないことが鉄則です。

よくあるトラブルと対応

■ 挿管時のトラブル

  • 挿管困難: 何度やっても入らない場合。すぐにビデオ喉頭鏡やLMAを準備し、必要に応じて応援スタッフを呼びます。
  • 低酸素: 挿管に時間がかかりSpO₂が低下。直ちに手技を中断し、マスク換気で酸素化を回復させます。

■ 抜管時のトラブル

  • 気道閉塞(舌根沈下): 下顎挙上(顎を持ち上げる)やエアウェイの挿入を行います。
  • 喉頭痙攣: 声帯が閉じて空気が通らない状態。酸素投与を継続し、医師の指示で再挿管や薬物投与の準備をします。

挿管がうまくいかないとき——気道管理アルゴリズムと看護師の動き

ほとんどの挿管はスムーズに進みます。でも、まれに「声帯が見えない」「チューブが入らない」という場面が起こります。ここで看護師が落ち着いて動けるかどうかが、患者さんの安全を大きく左右します。日本麻酔科学会は、こうしたときの対応手順(気道管理アルゴリズム)を示しています。流れを知っておきましょう。

基本の考え方はシンプルです。「挿管すること」より「酸素を届け続けること」が最優先。挿管に何度もこだわって時間を使うより、いったんマスク換気に戻して酸素化を保つ——これが原則です。

段階術者がすること看護師の動き
①まず酸素化を保つマスク換気に戻して酸素を送る換気しやすいよう補助。SpO2を読み上げる
②道具を変えて再挑戦ビデオ喉頭鏡、ブジー(挿管補助具)などに切り替え予測して次の道具をすぐ出す。声門上器具も手元に
③声門上器具で換気ラリンジアルマスク(LMA)などで気道確保サイズを確認して渡す。潤滑・カフの準備
④最終手段の準備換気も挿管もできない場合、外科的気道確保(輪状甲状靭帯切開など)緊急キットの所在を把握し、すぐ出す。応援要請

とくに恐ろしいのが「換気できない・挿管できない(CICO)」という状態です。頻度は高くありませんが、起きたら分単位で低酸素が進みます。だからこそ、緊急用の気道確保キットがどこにあるかを、日頃から把握しておくことが大切です。「探している時間」がそのまま患者さんの低酸素の時間になります。

器械出し・外回りとして覚えておきたいのは、挿管困難は「準備してあれば怖くない」ということ。ビデオ喉頭鏡、声門上器具、ブジー、緊急キット——「使わないかも」ではなく「使うかも」で手元に置いておく。この一手が、いざというときチームを救います。

「入れにくい患者さん」を事前に知っておく

挿管困難は、実はある程度事前に予測できます。挿管そのものは医師の判断ですが、看護師が「今日は入れにくいかも」と知っていれば、準備の厚みが変わります。術前情報や申し送りで、次のような点に気づけるとワンランク上です。

こんな患者さんなぜ入れにくいか準備で変わること
口が大きく開かない喉頭鏡やチューブを入れるスペースが狭いビデオ喉頭鏡・細めのチューブを用意
首が後ろに反りにくい気道を一直線にする体位が作りにくい体位の工夫。補助具を手元に
肥満・短い首・いびきが強い気道が狭く、酸素化が落ちやすいプレオキシジェネーションを十分に。吸引も強化
あごが小さい・歯が出ている声帯が見えにくいビデオ喉頭鏡・ブジーを準備
妊婦・フルストマック(満腹・イレウスなど)胃の内容物を誤嚥するリスクが高い迅速導入(RSI)+輪状軟骨圧迫の介助。吸引を必ず即使える位置に

とくにフルストマック(胃の中に内容物が残っている状態)の患者さんは要注意です。緊急手術、腸閉塞、妊婦などで、麻酔導入時に胃の内容物が逆流して肺に入ると重篤な肺炎を起こします。この場合、迅速導入(RSI)という特別な手順がとられ、看護師には輪状軟骨を押さえる介助や、素早い吸引が求められます。「今日はフルストマックだ」と分かっていれば、吸引を手に持って構えていられます。

術前訪問や申し送りは、こうした「入れにくさ」を先に知る貴重な機会です。カルテの一行、麻酔科医の一言に気づけるようになると、準備の質が変わっていきますよ🍈

新人がつまずくポイントと原因

新人が挿管介助でつまずきやすいのは以下の3点です。

  • 物品準備が不十分: 「サイズ違い」や「ライトの点灯確認漏れ」が発生する。
  • 渡すタイミングが分からない: 医師が手を出してから慌てて探してしまう。
  • 緊張で動けない: SpO₂の低下アラームにパニックになってしまう。

【原因】
これらの多くは「流れの理解不足」と「経験不足」によるものです。次に何が起こるかが予測できていないため、後手後手になってしまいます。

指導者向け:教育のポイント

❌ NGな指導方法

「テープ切っておいて」「次はこのチューブ渡して」といった手順や作業のみの指導。これでは応用が利きません。

⭕️ OKな指導方法

「目的 → 手順」の順で教えることが重要です。
「カフを入れるのは空気が漏れないようにするためだから、このタイミングでシリンジを渡すんだよ」と、「なぜこの行動が必要か」を言語化して伝えます。

■ 効果的な教育ツール

  • シミュレーション: 人形を使って、実際のスピード感で物品を渡す練習を繰り返す。
  • チェックリスト: 準備忘れを防ぐための視覚的なツールを活用する。

現場で使える思考フレーム

挿管・抜管の介助中に頭が真っ白になったら、以下の3つを順に自問自答してください。

  1. 酸素化は保たれているか?(SpO₂、顔色)
  2. 次に必要な物品は何か?(医師の手の動きを見る)
  3. もし今、トラブルが起きたら対応できるか?(吸引、バッグバルブマスクの位置確認)

👉 迷ったら「患者の酸素(呼吸)を守る」ことに立ち返りましょう。

参考文献

  • 日本麻酔科学会.日本麻酔科学会気道管理ガイドライン2014(日本語訳).2015.
  • 日本麻酔科学会・周術期管理チーム委員会編.周術期管理チームテキスト 第4版.神戸:日本麻酔科学会;2020.

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