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🔬 この記事でわかること
- 腸切除で「清潔手術」から「不潔操作」に切り替わる瞬間
- 器械台を3つのゾーンに分けるゾーニングの考え方
- 不潔用トレーを器械台のどこに置くべきか(明確な答えあり)
- 不潔用トレーに入れる器械の具体的リスト
- 汚染器械を「手で受け取らない」器械出しの実践テクニック
- グローブ交換のタイミングと閉創セットという考え方
「腸を切ったあとの器械、これどこに置けばいいんだろう…」
大腸切除の器械出しに初めて入ったとき、手が止まった経験はありませんか。腸切除で使用したエシュロンが戻ってきた瞬間、術者は次の器械を求めていて、でもそのエシュロンは器械台のどこに戻していいのかわからない——。
結論から言うと、腸切除で使用した自動縫合器を含め、腸管の中に触れた器械は、一度でも触れたらその瞬間から「不潔」です。清潔な器械と一緒にしてはいけません。
この記事では、10年間手術室に立ってきたオペ看めろんが、大腸切除・結腸切除における不潔操作の器械出しと、器械台のゾーニングを、明日の手術からそのまま使えるレベルまで具体的に解説します。
📘 清潔・不潔の基本から確認したい方はこちら
▶ 【新人オペ看向け】手術室の清潔・不潔の基本と新人がつまずくポイントを徹底解説
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▶ 清潔不潔操作×腸切除術 新人オペ看が迷いやすいポイント(YouTube)
なぜ腸切除は「清潔手術」のまま終われないのか
まず大前提を整理します。手術は創部の汚染度によって4つに分類されます。
| 分類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 清潔 | 消化管・気道・尿路を開けない | 人工関節・ヘルニア |
| 準清潔 | 消化管などを計画的に開けるが、著明な汚染はない | 予定の大腸切除 |
| 汚染 | 腸内容の大量流出、新鮮外傷 | 腸管損傷 |
| 感染 | すでに感染・膿瘍がある | 穿孔性腹膜炎 |
予定の大腸切除は「準清潔手術」。つまり、手術の途中で必ず腸管を開ける=汚染源に触れることが計画の中に組み込まれている手術です。
ここが整形外科などの清潔手術と決定的に違うところ。「汚染しないように頑張る」のではなく、「汚染することは避けられないので、汚染域を広げないことを大事にする」——これが腸切除における器械出しの発想です。
大腸は体内で最も細菌数が多い臓器のひとつ。だからこそ大腸手術はSSI(手術部位感染)の発生率が高く、器械出し看護師の管理がそのまま患者さんの術後経過に直結します。
手術の流れで見る|清潔フェーズと不潔フェーズの境界線
腸切除の手術は、大きく3つのフェーズに分けて考えると整理しやすくなります。
フェーズ1|開腹〜剥離・授動(清潔)
皮膚切開から始まり、腸管を周囲組織から剥がして動かせるようにする(授動)まで。血管処理やリンパ節郭清もここに含まれます。この段階では腸管の中は開いていないため、清潔操作です。
フェーズ2|腸管切離〜吻合(不潔)
自動縫合器で腸管を切離した瞬間から、不潔フェーズが始まります。
自動縫合器は切離と同時にステープルで閉鎖するため大量の腸液が出るわけではありませんが、器械の先端は確実に腸管内腔に触れています。そして吻合のために断端を開放すれば、そこから先は明確に腸管内容と接触します。
この「切離した瞬間」を境界線として意識できるかどうかが、器械出し看護師としての第一歩です。
フェーズ3|洗浄〜閉創(清潔に戻す)
吻合が終わり、腹腔内を洗浄したあとは「清潔な状態に戻して閉じる」フェーズ。ここで汚染された器械を使ってしまうと、せっかく洗浄した創部にもう一度菌を持ち込むことになります。
⚠️ ここが最重要
フェーズ2で汚染された器械が、フェーズ3に紛れ込まないこと。この「持ち込ませない」ための仕組みがゾーニングです。記憶や注意力に頼るのではなく、置き場所で物理的に分けてしまうのが正解です。
ゾーニングの基本|器械台を3つのゾーンに分ける
ゾーニング(zoning)とは、器械台の上を清潔度に応じて区画分けし、器械の置き場所をルール化することです。腸切除では次の3ゾーンで考えます。
🟢 ゾーン1|滅菌コンテナ(最も清潔)
まだ一度も術野で使っていない器械セット。この手術で最も清潔な場所です。閉創時や「新しい清潔な器械が必要になった場面」で、ここから取り出して使います。
🔵 ゾーン2|通常の器械台(使用中・清潔)
術野で使っているが、腸管内には触れていない器械。剥離用の鉗子・剪刀・電気メスなど。清潔操作の主戦場です。
🔴 ゾーン3|不潔用トレー(汚染)
腸管内に触れた器械の終着点。ここに入った器械は、二度とゾーン1・2には戻りません。手術終了までここに置いたままにします。
不潔用トレーはどこに置く?|滅菌コンテナから最も遠い場所が正解
ここが多くの新人さんが意識できていない、しかし極めて重要なポイントです。
不潔用トレーは
滅菌コンテナから最も離れた場所
に置く
なぜ滅菌コンテナから離すのか
理由は明確です。滅菌コンテナ(未使用の器械が入っている器械セット)は、まだ術野で一度も使っていないため、この手術で最も清潔な状態が保たれているから。
そして手術中には、次のような場面で「コンテナから新しい清潔な器械を出したくなる」タイミングが必ず訪れます。
- 閉創に入るとき——汚染された器械と明確に区別して閉じたい
- 汚染部位ではない場所を操作するとき——ドレーン留置や別部位の処置
- 術野で器械が足りなくなったとき——追加の鉗子や剪刀が必要になる
このとき、滅菌コンテナのすぐ隣に汚染器械のトレーがあったらどうなるでしょうか。手を伸ばすたびに汚染トレーの上を通過し、袖口や手袋が触れるリスクが生まれます。せっかくの「最も清潔な器械」が、取り出す動作そのもので汚染されてしまう。
だからこそ、滅菌コンテナ内の器械が最後まで清潔を保てるような配置にすることが大事なのです。
配置の考え方(イメージ)
| 🟢 滅菌コンテナ 最も清潔/未使用 | 🔵 通常の器械台 使用中・清潔 | 🔴 不潔用トレー 術野に近い側/汚染 |
| ← 清潔 汚染 → | ||
実際の器械台のサイズや術者の立ち位置によって最適解は変わりますが、「清潔度の高い順に並べ、汚染トレーを端に置く」という原則は変わりません。器械台を展開する段階から、この配置を意識して組み立てましょう。
不潔用トレーに入れる器械リスト
では、具体的にどの器械を不潔用トレーで管理するのか。腸切除ではあらかじめ「不潔操作で使うとわかっている器械」を、最初から専用トレーにまとめておくのが基本です。
最初から不潔用トレーに入れておく器械
| 器械 | 用途 |
|---|---|
| 自動縫合器 (エシュロン・シグニアなど) | 腸管の切離・吻合。先端が腸管内腔に入る |
| アリス鉗子 | 腸管断端の把持。断端=開放された腸管の縁に触れる |
| 腸管断端把持用の鑷子 | 吻合時に断端を保持する |
| 断端トリミング用の剪刀 (クーパーなど) | 腸管断端を整える。切離面に直接触れる |
術中に「汚染された時点で」追加していく器械
上記以外にも、予定になかった器械が腸管内容に触れる場面は頻繁に起こります。
- 吻合中に術者が持ち替えた持針器・鑷子
- 腸液を拭ったガーゼを掴んだ鉗子
- 腸管を牽引していて内容物に触れた鉗子
- 吻合部の補強縫合に使った器械
これらは「汚染された、と気づいたその瞬間に」不潔用トレーへ追加します。「あとでまとめて分けよう」は絶対にNG。数分後には、どれが汚染されたか本人にもわからなくなります。
⚠️ 判断基準はシンプルに
「一度でも消化管側に触れたら不潔」。迷ったら不潔扱いにします。清潔な器械を1本余計に不潔にしても手術は続けられますが、汚染器械を清潔と誤認すれば患者さんの感染リスクになります。迷ったときは常に厳しい側に倒すのが鉄則です。
不潔操作時の器械出し実践|トレーを介して受け取る
ここからは、実際の手の動かし方の話です。
汚染器械は「手で受け取らない」
術者が使い終わった自動縫合器やアリス鉗子を返してくるとき、つい反射的に手で受け取ってしまいがちです。でもこれは避けたい動作。
汚染された器械は、器械出し看護師が手で受け取るのではなく、専用トレーを差し出してそこに置いてもらう。
こうすることで、器械出し看護師のグローブが汚染されにくくなり、汚染域が広がるのを防げます。自分の手が汚染されれば、その手で次に触る器械も、器械台も、すべて汚染リスクを負うことになります。手袋1枚の差が、器械台全体の清潔度を左右するのです。
✅ 実践のコツ
- 不潔フェーズに入ったら、トレーを利き手と反対側にスタンバイしておく
- 術者が器械を返す気配を見せたら、先にトレーを差し出す
- 「こちらにお願いします」と声に出して誘導する
- 受け取ったらそのままトレーごと定位置に戻す(持ち替えない)
先読みして「渡す準備」をしておく
不潔フェーズは手術の中でもテンポが速く、術者の集中力も高まっている場面です。ここで器械出しが手間取ると、術者は自分で器械を取りに行こうとし、それが清潔野の汚染につながります。
切離の直前には、自動縫合器のリロード(カートリッジ)を必要数だけ手元に準備し、ステープル高が腸管の厚みに合っているかを術者と確認しておきましょう。段取りの良さが、そのまま清潔管理につながります。
医師の動きを監視する|清潔野に戻される前にブロック
器械出し看護師の仕事は、器械を渡すことだけではありません。術野全体の清潔を監視する「番人」でもあります。
そして現場で最も起こりやすいインシデントが、これです。
🚨 術者が、不潔になった器械を無意識に清潔な器械台へ戻そうとする
これは決して術者が不注意なわけではありません。術者は術野に集中していて、「この器械が今どの清潔度なのか」を管理する余裕がないのです。手を止めずに器械を置く動作は、ほとんど無意識に行われます。
だからこそ、切除・吻合フェーズに入ったら、器械出し看護師は器械の行方を常に目で追う必要があります。
- 術者の手元から器械が離れる瞬間を視野に入れておく
- 清潔台に置かれそうになったらトレーを差し出して物理的に誘導する
- 間に合わなければ「先生、そちら不潔です」と声に出す
- 万一置かれてしまったら、その器械と接触部分をまとめて汚染扱いにする
「先生に指摘するのは気が引ける」と感じる新人さんは多いですが、これは指摘ではなく、チームの一員としての情報共有です。SSIを防ぐのは執刀医だけの仕事ではありません。むしろ清潔管理の主担当は器械出し看護師であり、声を出すことが役割そのものなのです。
言いにくい場合は、「不潔トレーこちらです」と物の位置で誘導するだけでも十分伝わります。否定形で指摘するより、正しい置き場所を示すほうがスムーズです。
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器械をどれだけきれいに分けても、グローブが汚染されたままでは意味がありません。手袋こそが、汚染を運ぶ最大の媒体だからです。
交換すべき2つのタイミング
① 消化管の開放・切離の直後
腸管を開けた・切離した直後は、目に見えなくても手袋に腸内容が付着している可能性があります。必要に応じて速やかに交換します。
② 不潔操作がすべて終わった時点
吻合が完了し、洗浄に移る前後。ここで執刀医・助手医師・器械出し看護師の3者がそろってグローブ交換を行い、汚染域を閉創フェーズへ持ち越さないようにします。
ポイントは「3者そろって」という部分。誰か一人でも汚染された手袋のまま閉創に入れば、そこから清潔野へ菌が持ち込まれます。器械出し看護師が声をかけて全員で交換する流れを作りましょう。
🔵 外回り看護師との連携:3者同時交換となると、グローブを3〜6組まとめて開ける必要があります。吻合が終わりに近づいた段階で外回りに声をかけ、サイズごとに準備しておいてもらうとスムーズです。
閉創は清潔器械で|「閉創セット」という考え方
不潔操作が終わり、腹腔内洗浄も済んだら、いよいよ閉創です。ここで使うのは汚染されていない清潔な器械。
施設によっては、この目的のために「閉創セット」を独立して用意しています。
📦 閉創セットの一例
- 有鉤鑷子(皮膚・筋膜の把持)
- コッヘル(筋膜の把持・牽引)
- ペアン(結紮・把持)
- クーパー(糸切り)
- 持針器
これらが一式セットとして組み込まれており、閉創の直前に開封して使用します。
閉創セットが用意されていない施設でも、考え方は同じです。滅菌コンテナに残しておいた未使用の器械を、閉創専用として取り出す。これが「滅菌コンテナを最後まで清潔に保っておく」ことの意味であり、不潔用トレーをコンテナから遠ざける理由でもあります。
器械台の設計は、手術の最初から最後までつながっているのです。
新人がつまずく2つのポイントと改善策
① 「汚染された器械か?」「清潔器械か?」その判断が難しい
事前に腸管内腔で使用するとされている器械でも「実際に腸管内腔で使用したか?」「汚染器械として良いのか?」その区別と判断が難しいケースがあります。特に目の前の器械の受け渡しや管理に一生懸命になればなるほど、つい術野での操作を見逃してしまい、「器械がどのように使用されたか?」が分からなくなってしまうこともあるでしょう。
基本的な考え方としては、目視で腸液が付いていなくても、腸管内腔に触れた時点で汚染です。
少しでも腸管内腔に触れた可能性がある場合は「汚染器械」として扱って大丈夫です。またどうしても判断に迷う場合は、先輩看護師や外回りで術野を見ている看護師などに確認してみることもおすすめです。
② 汚染された器械を清潔野で使用しそうになる・気づいたが言い出せない
「汚染された器械を清潔野で使用しそうになる」
最も避けたいのがこれです。
そして、「汚染されている器械と気づいているが、言い出せない」これが患者さんにとって最大のリスクになります。執刀医は術野での手術操作に集中しているため、使用器械が「汚染器械か・清潔器械か」についてまで意識が回らないケースもあります。そして、腸管内で使用した器械は使用後に不潔トレーで受け取ることがベストですが、手術操作によっては腸管内での術操作の直後に、別部位(清潔部位)の術操作に移るケースもよくあります。
その際、腸管内で使用した器械をそのまま使用しそうな場合には、「先生、その器械は不潔なので、清潔なものに変えますね」と自然な言い方で、嫌味なく伝えられることが大切です。
まとめ
- 予定の大腸切除は「準清潔手術」=汚染は避けられない前提。汚染をどこに閉じ込めるかを設計するのが器械出しの発想
- 手術は①開腹〜授動(清潔)②切離〜吻合(不潔)③洗浄〜閉創(清潔に戻す)の3フェーズ。境界は「腸管を切離した瞬間」
- ゾーニングは🟢滅菌コンテナ/🔵通常の器械台/🔴不潔用トレーの3ゾーン。ゾーン3は一方通行
- 不潔用トレーは滅菌コンテナから最も離れた場所に置く。閉創時などに最も清潔な器械を取り出すため、コンテナの清潔を最後まで守る
- 自動縫合器・アリス鉗子・断端把持用鑷子・トリミング用剪刀は最初から不潔用トレーへ。術中に汚染した器械もその瞬間に追加する
- 汚染器械は手で受け取らず、トレーを差し出して受ける。グローブの汚染=汚染域の拡大
- 術者が汚染器械を清潔台に戻そうとする動きを常に注視し、トレーで誘導・声かけでブロック
- 不潔操作終了後は執刀医・助手・器械出しの3者でグローブ交換
- 閉創は清潔器械(閉創セット)で。判断に迷ったら常に厳しい側(不潔扱い)に倒す
清潔・不潔の管理は、慣れるまでは頭で考えることが多く大変です。でも「置き場所のルール」として体に入ってしまえば、自然と手が動くようになります。器械台を組む段階からゾーニングを意識してみてください。
参考文献
- 日本外科感染症学会 消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン作成委員会 編. 消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン2025. 診断と治療社, 2025.
- 日本手術医学会. 手術医療の実践ガイドライン(改訂第三版). 2024.
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初めまして、オペ看めろん🍈です。
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