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手術が終わって、更衣室でスクラブを脱ぎながら「今日もうまく渡せなかったな」とため息をつく。
新人の頃ならまだしも、何年も器械出しをしてきたのに、テンポがどうしても合わない日がある。先生に「ここ違うよ」と言われただけで、帰り道までずっと引きずってしまう。
前はあんなに楽しかった手術なのに、朝から「今日は入りたくないな」と思ってしまう。そんな自分が、いちばん悔しかったりしますよね。
こんにちは、オペ看めろんです。今回は、そんな気持ちを抱えているオペ看さんに向けたコラムです。
Instagramの質問BOXに届いた13人のオペ看さんの答えを読みながら、手術室で10年働いてきた私なりに感じたことを書いていきます。
先に、13人の答えから見えてきたことをお伝えします。みんな手術中は「今やること」に集中し直して、落ち込むのと振り返るのは手術のあとに回していました。
届いた相談|経験を積んでも器械出しで落ち込む
このコラムのきっかけは、フォロワーさんから届いた1通の相談でした。個人が特定されないよう、一部を言い換えて紹介させていただきます。
📮 フォロワーさんからの相談
新人ではないのに、いまもミスをしたり、思うテンポで器械を渡せなかったりして、そのたびに落ち込みます。「次は頑張ろう」と切り替えたいのに、失敗を引きずってしまう。最近はスランプなのか、楽しかった手術にも「今日は入りたくない」と思う日があります。
先生に怒られるわけではありません。でも、前はできていたことを指摘されるだけで落ち込んでしまう。
長く続けてきたからこそのプライドもあるのかもしれません。みなさんは、うまくいかなかったとき、どうやって切り替えていますか?
読んだとき、私は「これは新人さんだけの悩みではないな」と感じました。ある程度できるようになった人だからこそ抱える、少し複雑な悔しさです。
そこでこの相談をそのまま質問にして、オペ看めろんのInstagramで質問BOXを開きました。テーマは「器械出し看護中の『上手くいかないとき』、どんな風に切り替えてる?」です。
回答をくださったみなさん、本当にありがとうございました。いただいた言葉も、個人が特定されないよう言い換えて紹介させていただきます。
手術中は「今やること」だけに集中し直す
いちばん多かったのは、手術中は気持ちの整理をいったん脇に置いて、今やることだけに集中し直すという答えでした。言い方は人それぞれですが、やっていることはよく似ています。
「始まった手術は必ず終わる」と唱える
この答えを読んで、私も昔、先輩から「終わらない手術はないよ」と言われたことを思い出しました。名言のような一言ですが、苦しい場面ほど不思議と心を支えてくれる言葉です。
うまくいかない時間は、永遠に続くように感じます。でも閉創も、器械カウントも、退室も必ずやって来る。
終わりがあると思えるだけで肩の力が少し抜けて、目の前の手順に気持ちを向けやすくなります。
術野と次に渡す器械だけを見る
器械出しで頭が真っ白になるのは、さっきのミスと、この先の不安を同時に考えているときだと私は思います。その瞬間にできることは、実はとても限られています。
だから見るものを2つに絞る。術野の流れと、次に渡す器械です。
考えることを減らすと、これまで積み重ねてきた経験が、ちゃんと手を動かしてくれます。
泣きそうなのをこらえた経験は、私にもあります。こらえられた自分を、あとでちゃんとほめてあげてください。
「今日はこういう日」と一度あきらめる
少し意外に聞こえるかもしれませんが、私はこの考え方がとても好きです。うまくいく日もあれば、うまくいかない日もある。それは10年続けても変わりませんでした。
一度あきらめるのは、投げ出すことではありません。「今日は完璧じゃなくていい」と自分に許して、残りの時間を安全に終えることに気持ちを切り替えるための、ちょっとした大人の知恵だと思います。

ミスした瞬間は、明るく声に出していい
2つ目のタイプは、ミスを黙って抱えず、その場で軽く言葉にするという答えです。
これは本当に大事だと思います。ミスを言わずにごまかすより、すぐ言葉にしたほうが術野は安全ですし、先生も状況をつかみやすくなります。
そして謝るときの人間味も、立派なコミュニケーション力です。「この人はミスをしたらちゃんと言ってくれる」という小さな積み重ねが、執刀医との信頼につながっていくのだと思います。
なかったことにするふりをしながら、実はしっかり振り返っている。これ、本当にかっこいいなと思いました。
清潔野ではメモ帳を持てません。施設のルールの範囲で、滅菌済みの皮膚ペン(マーカー)で器械台の覆布の端に一言だけ書いておくなど、忘れないための小さな工夫も役に立ちます。
手術のあと|落ち込んでから振り返る
3つ目は、手術が終わってからの過ごし方です。ここでは「落ち込むこと」と「振り返ること」を分けている人が多くいました。
一回しっかり落ち込んでいい
一回しっかり落ち込んで、気持ちを整理することも大事です。私もくよくよ引きずるタイプで、うまくいかなかった日は家でしばらくぼーっとしていました。
そしてこの方の工夫は、質問のタイミングを選んでいるところです。心がざわついたまま聞くと、アドバイスまで責められているように聞こえてしまいます。
落ち着いてから聞くと、同じ言葉がちゃんと「次はこうしよう」という手順として入ってきます。
その日のうちに書いて、見返す
記憶だけに頼ると、悔しさだけが残って中身は忘れてしまいます。だからポイントだけを書いておくのがおすすめです。
私がやっていたのは、更衣室で着替える前の5分で、スマホのメモに今日の反省を書きなぐることでした。きれいなノートでなくて大丈夫です。
振り返りを繰り返すと、同じミスは確実に減っていきます。
器械出しの復習のしかたは、器械出し看護師の勉強方法の記事にも詳しくまとめています。

同僚には、少し笑いを混ぜて話す
失敗談を笑いを交えて話すと、相手も聞きやすく、相談にも乗りやすくなります。そこからいい解決策が見つかったり、気持ちの面で支えてもらえたりすることもあります。
1人で抱えこむより、笑って話せる相手がいるだけで、次の手術に向かう気持ちはずいぶん軽くなるものです。
「できなかった」に気づけるのは伸びる人
最後のタイプは、うまくいかない自分の見方そのものを変えている答えです。
自分の「これができなかったな」に気づけるということは、反省を活かして、必ず上達していける人ということです。
相談をくれた方が「前はできていたのに」と悔しく感じるのも、自分の中の基準がそれだけ高くなっているからだと私は思います。
つい「できなかったこと」に目が向きがちですが、どんな日にも「できていること」は必ずあります。
つらい状況の中でも、逃げずに最後まで器械出しを続けた。それだって立派な「できたこと」です。
自分を責めすぎず、全部を経験の貯金にしていきましょう。
スランプが続くとき、私が見直したこと
私も新人の頃は、毎日のように泣きながら帰っていました。でもあとから振り返ると、向いていなかったのではなく、振り返りを次の行動につなげられていなかっただけでした。
振り返りを続けると、自分なりの「癖」が見えてきます。私の場合は、分からないのに聞けず、自己判断で動いてしまう癖でした。
そこに気づいてからは、手術の前に聞いてから動くように変えました。
ただ、経験を積んだ人のスランプには、自分の努力だけでは変えにくい理由が混ざっていることもあります。
- 人手が足りず、手術の合間に振り返る時間がまったく取れない
- 担当する診療科が急に変わり、慣れない術式が続いている
- 夜勤やオンコールが重なって、疲れが抜けないまま手術に入っている
- 相談しにくい雰囲気で、1人で抱えるしかない
こうした状態が長く続いているなら、切り替えが下手なのではありません。働く環境のほうが、あなたに合わなくなってきているのかもしれません。
🍈 環境のせいかどうかは、比べてみないと分かりません
私は3〜5年目のころ、転職サイトに登録して他院の手当や働き方を調べたことがあります。結果は「同じくらい」で、応募はしませんでした。でも比べたことで、自分の職場で続けると納得して決められました。
・手当や求人の相場を知りたい → 看護roo!でオペ室の求人を見る
・人間関係や振り返りの雰囲気を知りたい → レバウェル看護で職場の中の様子を聞く
どちらも無料です。見るだけ、聞くだけで終わっても問題ありません。
「もしかして向いていないのかも」と感じている方には、「手術室看護師、向いてない」と感じた夜に伝えたいことも書いています。

おわりに|うまくいかない日も経験の貯金
13人の答えを読んで感じたのは、みんな同じように落ち込みながら、それぞれの方法で立て直しているということでした。
明日からすぐ試せることを、3つにまとめておきます。
- 手術中は「終わらない手術はない」と唱えて、術野と次に渡す器械に集中する
- ミスはその場で明るく言葉にして、ひとりで抱えない
- 手術のあとは一度しっかり落ち込んでから、5分だけ書いて振り返る
オペ看めろんのInstagramでは、これからも質問BOXでみなさんの声を集めていきます。「この悩み、ほかのオペ看さんはどうしてる?」という質問も、気軽に送ってくださいね。
最後に、器械出しがうまくいかなくて落ち込んでいるあなたへ。
「前はできていたのに」と悔しくなるのは、それだけ積み上げてきたものがあるからです。積み上げたものがなければ、できなくなったことにすら気づけません。
先生の一言に落ち込むのも、手術に真剣に向き合っている証拠です。スランプは、次のステップに進む前に、誰にでも訪れる時期だと私は思っています。
手術が楽しかった頃の気持ちは、なくなったわけではありません。うまくいかない日を一つずつ経験の貯金に変えていけば、「今日の手術、楽しかったな」と思える日はきっとまたやって来ます。
大丈夫。あなたはちゃんと、上手くなっている途中です。




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