Aライン管理に不安を感じていませんか?
手術室やICUに配属されて、誰もが最初にぶつかる壁のひとつが 「Aライン(動脈ライン)」の管理ではないでしょうか?
- 先輩に言われた通りに準備しているけど、正直なんとなく扱っている
- 0点校正の意味がよく分からず、見よう見まねでやっている
- もし空気が入ったらどうなるのか不安…
こうした不安を抱えながら業務にあたっている新人看護師さんは少なくありません。
⚠️ Aラインは「なんとなく」で扱うと危険
Aラインは非常に便利なデバイスですが、 扱い方を誤ると重大な事故につながります。
- 末梢の壊死
- 大量出血
- 空気塞栓
これらはすべて、正しい知識と手技で防げるリスクです。
この記事で学べること
基礎知識
Aラインの仕組みを理解できる
手技
準備・プライミングができる
実践力
波形が読めるようになる
安全管理
合併症を防げる
✔ 最後に
この記事を最後まで読めば、 Aラインの仕組みと手技が根本から理解できるようになります。
- 波形が読めるようになる
- 0点校正の意味が理解できる
- 自信を持って管理できるようになる
明日からの「なんとなく」をなくし、
プロとしての確実なスキルを身につけましょう。
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1. Aラインとは?【医療における基本】

1-1 Aライン(動脈ライン)の定義
Aライン(Arterial line:動脈ライン)とは、動脈内に直接カテーテルを留置し、そこから得られる圧力をトランスデューサー(圧力を電気信号に変換する装置)を介してモニターに表示させるシステムのことです。
私たちが普段、腕にマンシェットを巻いて測る血圧測定(NIBP:非観血的血圧測定)に対して、カテーテルを用いて血管内の圧力を直接測定する方法を「観血的動脈圧モニター」と呼びます。
この方法により、心臓が血液を送り出す際の圧力を、1拍ごとにリアルタイムかつ連続的に測定することが可能になります。
1-2 Aラインの役割
Aラインには、大きく分けて2つの重要な役割があります。
- 持続的血圧モニタリング:心拍ごとの急激な血圧変動をリアルタイムに捉えることができます。マンシェットでの測定では数分ごとの間隔が空いてしまいますが、Aラインなら瞬時の変化を見逃しません。
- 反復する動脈血ガス分析(ABG)や血液検査の採血:呼吸状態や酸塩基平衡、電解質、Hbなどを頻回に評価する必要がある重症患者さんや大手術において、毎回針を刺すことなく(患者さんに苦痛を与えず)動脈血を採取できるアクセスルートとなります。
1-3 なぜ手術室看護師に重要か
手術中の患者さんは、麻酔薬の影響や手術操作(出血、臓器の圧迫、体位変換など)によって、急激な血圧低下や変動を起こしやすい状態にあります。
手術室看護師にとって、Aラインの正しい管理は「麻酔管理の精度に直結」します。Aラインが正確に機能していなければ、麻酔科医は適切なタイミングで昇圧薬を使用したり、麻酔深度を調整したりすることができません。
また、術中の予期せぬ大出血やアナフィラキシーショックなど、術中急変の早期発見においても、Aラインから得られるリアルタイムの血圧値と波形はまさに「命綱」となります。私たちが正確にラインを管理することが、患者さんの命を守る最前線の防波堤になるのです。
2. 【手術室では?】Aラインが使われる場面
2-1 適応となる手術
手術室でAラインが挿入されるのは、主に「血圧変動が激しいと予測される手術」や「頻回の採血が必要な手術」です。具体的には以下のような場面が挙げられます。
- 心臓血管外科手術:人工心肺を使用する手術、弁置換術、冠動脈バイパス術など。血行動態がダイナミックに変化します。
- 胸部外科・呼吸器外科手術:片肺換気を行う手術や、太い血管の近くを操作する手術。
- 大血管手術:大動脈瘤に対する人工血管置換術やステントグラフト内挿術、大量出血が予想される手術。
- 長時間に及ぶ手術:侵襲が大きく長時間を要する消化器外科手術、脳神経外科手術など。
- 重症患者の手術:術前からショック状態や敗血症などを合併している患者さんの緊急手術。
2-2 麻酔中の役割
麻酔中は、麻酔薬による血管拡張作用や心機能抑制作用により、予期せぬ血圧低下が起こります。
麻酔科医は、Aラインの波形と数値をモニターモニターから片時も目を離さず、心収縮力が保たれているか、血管抵抗が適切かを評価しています。血圧が低下すれば直ちに昇圧薬(エフェドリンやノルアドレナリンなど)を投与し、血圧が上がりすぎれば降圧薬や麻酔薬を増量してコントロールを行います。
Aラインがあるからこそ、このような秒単位の即時対応が可能になっているのです。
2-3 器械出し・外回りで意識するポイント
手術室看護師として、器械出しや外回り業務中に特に意識すべきポイントがあります。
外回り看護師は、「ラインテンション(引っ張り)の管理」と「加圧バッグの圧確認」が必須です。手術の進行に伴い、執刀医や助手が動いたり、機材が移動したりする際に、Aラインが引っ張られて抜去される事故は絶対に防がなければなりません。また、加圧バッグの圧が保たれているかを定期的にチェックしましょう。
器械出し看護師は、術野の近くにAラインがある場合(例えば腕を挙上している手術など)、術野のドレープの下でラインが圧迫されたり屈曲したりしていないかを気に留める必要があります。波形がフラットになったり、数値がおかしい時は、すぐに「Aラインおかしいです!」と麻酔科医や外回り看護師に声をかける(トラブルの即報告)ことが重要です。
3. 穿刺部位と特徴(医療現場で使える比較)

Aラインは「どこにでも刺せるわけではない」ということを理解しておきましょう。末梢の血流障害を防ぐため、側副血行路(メインの血管が詰まっても、別のルートで血液が流れる仕組み)が豊かな部位が選ばれます。
3-1 橈骨動脈(第一選択)
手術室でもICUでも、最も多く選ばれる第一選択は「橈骨動脈(手首の親指側)」です。
- メリット:側副血行路(尺骨動脈)があり、手は虚血に強いため安全性が高いです。また、体表近くを走っているため穿刺しやすく、圧迫止血も容易です。
- デメリット:抹消血管であるため、ショック状態で血管が収縮していると穿刺が難しくなります。
- アレンテスト:橈骨動脈を穿刺する前には、尺骨動脈からの血流が十分に保たれているかを確認する「アレンテスト」を行うことが推奨されます(現在は省略されることもありますが、知識として必須です)。
3-2 上腕動脈
肘の内側にある上腕動脈です。
橈骨動脈での確保が困難な場合などに選ばれます。太い動脈なので穿刺しやすい反面、側副血行路が乏しいため、血栓などで閉塞した場合、前腕から先が壊死するリスクが橈骨動脈よりも高いという特徴があります。また、肘を曲げるとラインが屈曲しやすく、アラームが鳴りやすい部位でもあります。
3-3 大腿動脈
足の付け根(そけい部)にある太い動脈です。
メリットは、血管が太いためショック時でも触知しやすく、確実なモニタリングができる点です。また、大量出血時の急速輸液・輸血のルート確保と同時に行うこともあります。
しかし、デメリットとして不潔になりやすく感染リスクが高いこと、抜去後の止血が困難で巨大な血腫を作りやすいこと、そしてもし閉塞した場合は下肢全体が壊死する「重大な虚血リスク」があるため、長期留置には不向きです。
3-4 足背動脈
足の甲にある動脈です。上肢の動脈が使えない場合(両腕の熱傷や、両腕の手術など)に選択されます。
中心部から遠いため、収縮期血圧は橈骨動脈よりも高く表示される傾向があります(オーバーシュート)。また、足の動きで波形が乱れやすいという特徴があります。
4. 【実践】Aライン準備とプライミング完全手順
ここからは、いよいよ実践です。Aラインの準備とプライミング(回路内を液で満たすこと)は、新人看護師が最も最初は戸惑う、かつ「最も事故が起きやすい」ポイントです。確実に行えるようにマスターしましょう。
4-1 必要物品一覧(チェックリスト形式)

まずは、慌てないように必要物品を揃えます。
- Aライン用留置針(20Gや22Gが一般的)
- 動脈圧モニタリングキット(トランスデューサー、延長チューブ、フラッシュ装置が一体化しているもの)
- ヘパリン入り生理食塩水
- 生食バッグ(500ml)
- 加圧バッグ
- 固定用テープ・透明ドレッシング材(テガダームなど)
- モニターケーブル・モニター
- 消毒セット(クロルヘキシジンアルコールなど)
- 滅菌手袋・滅菌穴あきドレープ(清潔操作のため)
4-2 ヘパリン生食の作成
動脈は圧が高いため、そのままでは血液がカテーテル内を逆流し、あっという間に血液が凝固してラインが詰まってしまいます。これを防ぐために、抗凝固薬であるヘパリンを加えたヘパリン加生理食塩水(ヘパ生)を持続的に微量注入し続けます。
濃度の考え方ですが、一般的には「生理食塩水500mlに対して、ヘパリンナトリウム1,000単位〜2,000単位」を混注して作成します。
💡注意:施設によって「ヘパリンの濃度」や「あらかじめヘパリンが混注されている製品(ヘパリン生食バッグ)を使うか」のルールが異なります。必ず自施設のプロトコルを確認してください。最近ではヘパリン起因性血小板減少症(HIT)のリスクを考慮し、通常生食のみを使用する施設も増えています。
4-3 エア抜き完全ガイド
Aラインの準備で最も神経を使うのが、回路内の「エア抜き(気泡の除去)」です。
なぜ危険か?:動脈内に空気が入ると、血流に乗って末梢の細い血管に詰まります。これを「空気塞栓」と呼び、指先などの組織が壊死してしまう非常に重大な医療事故に直結します。「少しの空気くらいいいや」は絶対に通用しません。
【実践テクニック:確実なエア抜き手順】
- シリンジの使用:ヘパ生に回路を接続した後、ルート内の空気をシリンジで引いて確実に抜き取ります。または、キットについているフラッシュバルブをつまんで(または引いて)勢いよく液を流し込みます。
- 叩打法(タッピング):トランスデューサーや三方活栓の接続部には、見えない微小な気泡(マイクロバブル)が溜まりやすいです。液を満たす際、ペンや爪先でトランスデューサーや三方活栓を「コンコンコン」と弾きながら液を流すことで、微小な気泡を壁から剥がして追い出します。
- 先端まで満たす:延長チューブの先端部分まで、一切の気泡がない状態を作ります。大気開放用のポート(三方活栓の横の穴)にも液を満たし、空気を完全に排除します。
4-4 プライミング手順(ミスしやすいポイント)
手順として、以下のミスしやすいポイントに気をつけてください。
・クレンメ操作:生食バッグにルートを刺す時、必ずルートのクレンメ(ローラー)を閉じた状態で行います。開いたままだと一気に空気が押し出されたり、液が漏れたりしてしまいます。
・三方活栓の向き:プライミング時、液を流したい方向に向けて三方活栓が開いているかを確認します。「矢印が向いている方向が開通している(またはツマミの方向が閉鎖している)」という、三方活栓の基本構造を今一度確認しましょう。
・フラッシュ操作:回路内の空気が完全に抜けたら、最後に加圧バッグを膨らませてから、フラッシュバルブ(ピッグテールやスナップタブ)を一瞬引き、勢いよく液が出るか、そして気泡が残っていないかを最終確認します。
4-5 加圧バッグ管理
動脈の圧力(血圧)は約100〜120mmHgほどあります。もし回路内を加圧せずに繋ぐと、動脈の圧力に負けて血液が回路内に逆流してしまいます。
これを防ぐため、加圧バッグを用いて生食バッグを「300mmHg」まで加圧します。300mmHgまで加圧することで、動脈圧を上回り、フラッシュデバイスにより「毎時約3ml」という微量のヘパ生が持続的に患者さん側に押し出され続け、ラインの開存(詰まらないこと)が維持される仕組みです。
圧低下時の影響:時間が経つと加圧バッグの空気が抜け、圧が下がることがあります。圧が不十分だとチューブに血液が逆流し凝血します。定期的に加圧バッグのメーターが緑色のゾーン(300mmHg)にあるか確認する癖をつけましょう。
5. 【最重要】0点校正のやり方と失敗例

準備ができたら患者さんに接続し、いよいよ「0点校正(ゼロ点校正・ゼロイング)」を行います。これができていないと、表示される血圧データは全くの無意味になってしまいます。
5-1 0点校正とは
0点校正とは、「大気圧(私たちが生活している空気の圧力)を『ゼロ』としてモニターに覚えさせる作業」です。
血圧とは『大気圧に対して、血管内がどれだけ高い圧力か』を示しています。だからこそ、基準となる大気圧=0mmHgであることをトランスデューサーを通して機械に設定する必要があるのです。
5-2 基準位置(レベリング)
0点校正をするためには、トランスデューサーの高さを正しく合わせなければなりません。この基準となる高さを「Phlebostatic axis(静脈の静水圧軸)」と呼びます。
具体的には「第4肋間と前・後腋窩線の中点(中腋窩線)が交わる点」です。ここは、おおよそ『右心房の高さ』に相当します。「右心房の高さ=大気圧ゼロ」の基準点と覚えてください。レーザーポインター付きの水準器などを使って、トランスデューサーの心臓側(大気開放部)を正確にこの高さに合わせます。
5-3 高さズレによる誤差
もしレベリングが間違っていると、重力(静水圧)の影響でとんでもない誤差が生じます。
- トランスデューサーが高い場合:水柱の重さがマイナスに働くため、血圧は実際よりも低く表示されます。
- トランスデューサーが低い場合:水柱の重さが加わるため、血圧は実際よりも高く表示されます。
たった10cmのズレで約7.4mmHgの誤差が生じると言われています。手術室でベッドの高さを変えたり、体位変換(砕石位や側臥位など)をした際は、必ずトランスデューサーの高さを再調整し、0点校正をやり直すのが鉄則です。
5-4 実際の手順(そのまま使える)
現場ですぐに使える、確実な0点校正のステップです。
- 1. 高さを合わせる:トランスデューサーを第4肋間中腋窩線の高さに固定します。
- 2. 三方活栓を「患者側オフ(閉鎖)、トランスデューサー・大気側を開放」にします。
- 3. 大気開放:トランスデューサーの大気開放部ポートのキャップを外します。これでトランスデューサーは大気圧と交通します。
- 4. モニター操作:生体情報モニターのAラインのメニューから「0点校正(Zero)」ボタンを押します。
- 5. 確認:モニター上に「ゼロ校正完了」という表示と、「0/0 (0)」という数値が出たことを確認します。
- 6. 元に戻す(超重要!):大気開放ポートにキャップをしっかり閉め、三方活栓の向きを「患者側とトランスデューサーが交通(大気開放ポート側は閉鎖)」するように戻します。これで波形が出現します。
5-5 よくあるミス
・三方活栓の戻し忘れ:これを忘れると、圧を測定できない(波形が出ない)だけでなく、開いたポートから動脈血が外へ噴き出し、大出血につながります。
・大気開放ポートのキャップの付け忘れ、緩み:不潔になるばかりか、圧が逃げてしまい正確な測定ができず、逆血の原因にもなります。
6. 動脈圧波形の見方【新人がつまずくポイント】

数値だけでなく「波形」を読めるようになることが、デキる看護師への第一歩です。
6-1 正常波形
正常な動脈圧波形は、急峻な立ち上がりと、なだらかな下降線を描きます。
・収縮期(最高血圧):左心室がギュッと収縮し、血液が大動脈に押し出された時のピークの高さです。
・ディクロティック・ノッチ(重複切痕):波形の下り坂の途中に見える小さな「V字の切れ込み」です。これは、大動脈弁が「パンッ」と閉じた瞬間の圧変化(反射波)を表しています。このノッチがはっきり見えるのが正常で、良い波形の証拠です。
・拡張期(最低血圧):波形の最も低い部分です。末梢血管へ血液が流れていく持続的な圧を示します。
6-2 波形でわかること

波形の形は、患者さんの循環器系の状態を物語っています。立ち上がりの急峻さは「心収縮力」の強さを反映し、下降の傾きやノッチの位置は「末梢血管抵抗(血管の締め付け具合)」を表します。波形が細く鋭い場合は血管が収縮しており、波形がなだらかで幅広い場合は血管が拡張しているサインです。
6-3 異常波形と原因・対応

数値がおかしい?と思ったら、波形の形を見てください。
【オーバーシュート(アンダーダンピング)】
波形が異常に高く、ノッチの後にギザギザとした振動(アーチファクト)がつく状態です。収縮期血圧は高く、拡張期血圧は低く表示されます。
原因:回路の延長チューブが長すぎる、硬すぎる、または患者の過剰な動きなどが原因です。ルートを短くするなどの調整が必要です。
【オーバーダンピング(なまった波形)】
波形全体が丸みを帯び、ピークが低く、ディクロティック・ノッチが消失した「なだらかな山」のような波形です。収縮期血圧は実際より低く、拡張期血圧は高く表示されます。
原因と対応:これが臨床で最もよく遭遇するトラブルです。
- 回路内のエア混入:気泡がクッションになって圧力が逃げてしまいます。→丁寧にタッピングしてエア抜きを行います。
- 血栓による閉塞・しこり:カテーテル先端に血栓が付着している。→少量のフラッシュで流れるか確認。無理なくらい固い場合や医師の指示があれば、シリンジで引いて血栓を回収します。無理に押し込んではいけません。
- ラインの屈曲:患者さんの手首が曲がっていたり、テープでカテーテルが折れ曲がっている。→刺入部を確認し、手首をシーネ固定などで軽度背屈位に保ちます。
- カテーテル先端が血管壁に当たっている:針先の向きの問題。→少しだけ引いたり、角度を微調整することで改善することがあります。
7. 【実践】エア混入防止と再接続手順
手術室では、患者さんの移動時(病棟ベッドから手術台へ移る時など)に、一時的にAラインのモニターケーブルを外したり、ルートを接続し直したりする場面が多々あります。ここは最も事故が起きやすい魔の時間です。
7-1 空気が入ると何が起こるか

動脈系は脳や内臓など全身の組織に新鮮な血液や酸素を運ぶルートです。動脈ラインに空気が入ると、空気塞栓を引き起こし、その先の末梢毛細血管を詰まらせてしまいます。手首なら指の壊死、もし逆行性に内頸動脈などへ飛べば脳梗塞を引き起こす可能性すらあります。
7-2 静脈との違い
末梢静脈ルート(点滴)に少量の空気が入っても、肺の毛細血管でトラップされて吸収されるため、直ちに致命傷になることは少ないです。しかし動脈は「心臓から末梢に向かって直接流れる」ため、トラップされることなくダイレクトに組織の壊死を招きます。この決定的な違いを新人看護師は心に刻んでください。
7-3 再接続の手順(実践)

ルートが外れたり、回路を付け替えたりする際の安全な手順です。
- まずは患者側の三方活栓を閉じる(出血防止)。
- 新しいルアーコネクタ(接続部)をアルコール綿でしっかり消毒する。
- 接続前に、新しいルート側からフリーフォール(自然落下)で液を数滴ぽたぽたと落とし、先端まで確実に液が満ちていること(空気が全くないこと)を目視で確認する。
- 接続部に気泡が入らないように意識しながら、素早く、かつしっかり回して接続する。
- 接続後、三方活栓を開け、フラッシュバルブを引き、逆血(血液がスムーズに戻ってくるか)を確認する。
- 最後に少量のヘパ生でフラッシュし、ライン内をクリアにする。
7-4 ミスを防ぐコツ
「焦らないこと」が最大のコツです。急いで接続しようとして、ルートの先端の空気を見落とすのが典型的な事故パターンです。「1滴垂らして接続(ウェット接続)」をルーティン化しましょう。
8. 合併症と看護【差がつくポイント】
プロの看護師たるもの、合併症を「起こしてから対処する」のではなく「起こさないための予防線」を張ることが求められます。
8-1 出血・血腫
動脈圧は非常に高いため、接続部の緩みや、誤った抜去は短時間で致死的な大出血につながります。接続部はルアーロック式のものを確実に締め、不用意に外れない固定をします。抜去した後は、静脈の時よりもはるかに強く、長く(最低5〜10分は時計を見て)用手圧迫止血を行い、血腫(皮下での血液の塊)ができないか観察してください。
8-2 感染
血管内に直接つながるルートであるため、カテーテル関連血流感染症(CRBSI)のリスクがあります。穿刺部の発赤、熱感、腫脹、浸出液の有無を毎日観察し、ドレッシング材の交換は清潔操作でマニュアル通りに行います。
8-3 血流障害(壊死)
前述の通り、空気塞栓やカテーテル先端の血栓形成による閉塞が原因で、穿刺部より末梢(指先など)が虚血・壊死するリスクがあります。毎シフト、必ずチアノーゼ(色調不良)がないか、皮膚は温かいか冷たいか、毛細血管再充満時間(CRT:爪を押して色が戻る時間)が遅延していないかをアセスメントしてください。
8-4 抜去事故
覚醒時の不穏による自己抜去や、移動時の引っかかりによるアクシデント抜去です。手術室では、移動時にルートがベッドの柵に巻き込まれていないか確認する「目視確認と声かけ」が鉄則です。
8-5 手術室ならではの注意点
手術室では、患者さんの上に厚い滅菌ドレープがかけられるため、刺入部が一度隠れると手術が終わるまで直接見えません。そのため、ドレープをかける前に、ラインが延長チューブを含めてどこにあるのか、引っ張られていないか、三方活栓が布に擦れて偶然開いてしまうリスクはないかを徹底的に確認する必要があります。
9. よくあるトラブルQ&A(現場での解決法)

Q:急に波形がフラット(平坦)になりました!
A:まずは患者さんの状態(脈を触知し心停止していないか)を1秒で確認! 患者さんに問題がなければ、機械的なトラブルです。三方活栓の向きが患者側オフになっていないか、ルートがベッドの柵や体位で完全に屈曲・圧迫されていないか、モニターケーブルが抜けていないかを確認してください。
Q:数値が普段よりやたらと低く(高く)出ます。
A:トランスデューサーの高さ(レベリング)がずれていませんか? ベッドの高さを変えたりした後は、もう一度「患者の右心房の高さのレベル」に合わせて0点校正をやり直してください。
Q:フラッシュバルブを引いても液が流れません。
A:加圧バッグの圧は300mmHgありますか?空気が抜けてペチャンコになっていると流れません。また、ルートのどこかのクレンメが閉じている、またはカテーテル先端が完全に血栓で詰まっている可能性があります。無理に押し込まず医師に報告してください。
Q:血液が逆流してきません(逆血不良)。
A:血管壁にカテーテルがピタッと張り付いているか、カテーテルが折れ曲がっていることが多いです。手首の角度(背屈)を少し変えてみるか、フラッシュを優しく行って開通するか試します。それでも引けない場合は血栓や閉塞が疑われるため、これも無理に操作せず医師に相談します。
10. まとめ:自信を持ってAラインを管理しよう!

Aラインの管理は、患者さんの安全と直結する非常に重要な看護技術です。最初は機械の準備や波形の見方に戸惑うかもしれませんが、以下の3つのポイントをしっかり押さえておけば大丈夫です。
- 準備とプライミング:エア抜きは「命を守る作業」。絶対に空気を残さない。
- 0点校正:右心房のレベル(第4肋間中腋窩線)に高さを合わせ、環境が変わるたびにやり直す。
- 波形と観察:波形のなまり(ダンピング)や異常に気付き、穿刺部より末梢の色がピンク色で温かいかを常に確認する。
この記事で解説した手順やトラブルシューティングを、ぜひ現場のポケットノートにメモしたり、スマホに保存して、迷った時に見返してください。新人看護師の皆さんが、根拠を持った安全な動脈ラインの管理ができるよう応援しています!
参考文献
- 日本麻酔科学会・周術期管理チーム委員会編.周術期管理チームテキスト 第4版.神戸:日本麻酔科学会;2020.
- 日本麻酔科学会.安全な麻酔のためのモニター指針(2025年8月改訂).2025.
- 日本集中治療教育研究会(JSEPTIC)看護部会.動脈ラインのモニタリング—正しい測定値が得られるように管理する.
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