サージセルとタコシールの違い|タココンブとの関係と使い分けを解説

オペ看勉強まとめ
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「サージセル出して!」「タコシール準備しといて」——
急に言われて、どっちが何の止血剤か頭が真っ白になったことはありませんか?🍈

この記事では、オペ室の2大シート状止血剤サージセルとタコシール(旧タココンブ)の違いを、作用のしくみ・使い分け・器械出しの準備ポイントまでオペ看10年目が解説します。

※縫合糸の使い分けを整理したい方はこちらもどうぞ👇
📖 モノクリルとバイクリルの違いは?使い分けと器械出しのポイント

  1. 【まずは理解度チェック!】この記事の内容をテスト
  2. 最初に大事な話|「タココンブ」は今は「タコシール」
  3. そもそも、なぜシート状止血剤が必要?
    1. あわせて覚えたい止血剤の仲間たち
  4. サージセルとタコシールの違い【早見表】
  5. サージセルの特徴|「乾いたまま」がすべての基本
    1. 器械出しの鉄則:濡らさない・乾いた鑷子で
  6. タコシールの特徴|実質臓器の「面」をふさぐ切り札
    1. 器械出しの鉄則:開封タイミング・裏表・圧迫時間
  7. 【重要】サージセルは”酸性”——重ねてはいけない組み合わせがある
  8. タコシールは「貼る前」と「貼った後」で決まる
    1. 貼る前:術野をできるだけ整える
    2. 貼るとき:薬剤面(黄色)を組織へ、そして動かさない
    3. 貼った後:はがれ・ずれに注意
  9. 使い分けの考え方|「出血のタイプ」で選ばれている
  10. よくあるミスと対策【新人オペ看向け】
    1. ミス① サージセルを湿らせて渡してしまう
    2. ミス② タコシールの裏表を確認せず渡す
    3. ミス③ 指示の前に高価な製剤を開封してしまう
  11. よくある質問【Q&A】
    1. Q1. 先生が「タココンブ」と言ったら何を出せばいい?
    2. Q2. 特定生物由来製品って何がそんなに大事?
    3. Q3. 止血剤の知識は転職先でも活きる?
  12. まとめ|「ドライのサージセル・ウェットのタコシール」
  13. 参考文献
    1. ◆ ごあいさつ
    2. ◆ コメントのお願い
    3. ◆ 関連おすすめ記事
    4. ◆ オペ看勉強コンテンツ

【まずは理解度チェック!】この記事の内容をテスト

🩹 サージセルとタコシールの違いクイズ 全8問

2大シート状止血剤の使い分けと器械出しの注意点、どれだけ理解できていますか?
選択肢をタップすると、その場で正解と解説が表示されます。まずは腕試し!

最初に大事な話|「タココンブ」は今は「タコシール」

先輩や医師が「タココンブ」と呼んでいるあの製品——実はタココンブは販売終了しており、現在の製品は後継の「タコシール組織接着用シート」です。

現場では昔の呼び名が残っているため、新人さんは「タココンブって棚のどこ?」と探して混乱しがち。「タココンブ=いまのタコシール」と覚えておけば大丈夫です。この記事では以下「タコシール」で統一します。

そもそも、なぜシート状止血剤が必要?

手術の止血は基本、結紮(糸でしばる)・電気メスやエネルギーデバイスで焼くことで行います。でも、それでは止められない出血があります。

  • 血管が細かすぎて、しばる相手が見えない(毛細血管性オージング)
  • 肝臓や肺のようなやわらかい実質臓器の断面——焼くほど組織がもろく崩れる
  • 神経のそば——焼くと熱で神経を傷めるリスク

こうした「しばれない・焼けない出血」の受け皿が、シート状止血剤です。「エネルギーデバイスが引っ込んだのに、まだじわじわしている」場面はシート状止血剤の出番が近い——この予測ができると、先読みの準備が変わります。

あわせて覚えたい止血剤の仲間たち

  • スポンゼル(ゼラチンスポンジ):吸収性スポンジ。圧迫止血の定番
  • アビテン(微線維性コラーゲン):粉状・フレーク状で凹凸面に
  • フロシール(ゼラチン+トロンビン):ジェル状で狭い場所や骨面に注入できる

施設によって採用品目は違うので、自分の病院の止血剤の棚を一度「地図化」しておくのがおすすめ。「サージセルない!」と焦る前に、代替品の場所まで頭に入っていれば強いです。

サージセルとタコシールの違い【早見表】

SURGICELとTachoSilの成分・分類・得意な場面・外科的止血の補助材である点を比較する図
SURGICELとTachoSilは成分も分類も異なります。どちらも確実な外科的止血の代替ではなく補助材です。
サージセルは乾いたまま毛細血管性の出血に、タコシールは湿らせて実質臓器の切離面に貼り圧迫する使い分けの図
サージセルタコシール(旧タココンブ)
成分酸化再生セルロース(合成系)ヒトフィブリノゲン+トロンビン+コラーゲンスポンジ
由来植物由来セルロースヒト血漿由来(特定生物由来製品)
止血のしくみ血液を吸ってゲル化し凝血を促進フィブリン糊として組織面に接着・閉鎖
使い方乾いたまま貼付湿らせて薬剤面を貼り、圧迫
得意な場面毛細血管性のじわじわ出血(オージング)肝・肺・膵など実質臓器の断面、リンパ漏・エアリーク
記録通常の使用記録ロット記録・20年保存が必要

ざっくり言うと、「じわじわ出血に貼るサージセル」「臓器の切離面を面でふさぐタコシール」。ここから実務目線で深掘りします。

サージセルの特徴|「乾いたまま」がすべての基本

SURGICELを乾いた状態で必要最小量使用しトロンビンを添加せず余剰分の除去を検討する確認図
乾いた状態・必要最小量・トロンビンを添加しないことを確認し、余剰分は添付文書と術者指示に従います。

サージセルは酸化再生セルロースのシートで、血液に触れると膨らんでゲル状になり、凝血のきっかけを作ります。

  • 毛細血管性のオージング(にじむ出血)に強い
  • ハサミで必要なサイズにカットして使える
  • 数週間かけて体内で吸収される

器械出しの鉄則:濡らさない・乾いた鑷子で

サージセル最大の注意点は、濡れると効果が落ちること。生食に浸すのはNG、渡すときの鑷子も乾いたものを選びます。

また、詰め込みすぎると膨張して周囲の神経を圧迫するリスクがあるため、脊椎や神経周囲の手術では「入れすぎていないか」を医師と共有できると一歩上の器械出しです。

タコシールの特徴|実質臓器の「面」をふさぐ切り札

TachoSilの黄色い活性面・圧迫・必要最小数・血管内留置禁忌を確認する図
黄色の活性面を出血面へ向け、圧迫方法と必要数は添付文書・術者指示・施設ルールを優先します。血管内には留置しません。

タコシールは、コラーゲンスポンジにフィブリノゲンとトロンビン(血液を固める成分そのもの)を固着させたシートです。組織面に貼って圧迫すると、その場でフィブリン糊が形成され、面全体を接着・閉鎖します。

  • 肝切除・肺切除・膵切除などの断面のオージングに
  • 肺のエアリーク(空気漏れ)やリンパ漏の閉鎖にも
  • 縫合やエネルギーデバイスで止めにくい「面」の出血が主戦場

器械出しの鉄則:開封タイミング・裏表・圧迫時間

  • 開封は指示が確定してから:高価な製剤のため「準備だけ」で開けない。「開けますか?」の一声が正解
  • 薬剤面(黄色い面)を組織側に:裏表を間違えると効果が出ない
  • 湿らせて3〜5分圧迫:生食で軽く湿らせ、ガーゼ圧迫の準備までセットで
  • ロット記録を忘れない:ヒト血漿由来の特定生物由来製品のため、ロット番号の記録と長期保存(20年)が法律で義務付けられています

特に最後のロット記録は、外回りとの連携ポイント。「貼った枚数とロットの控え」を术中から意識できると、記録漏れ事故を防げます。

【重要】サージセルは”酸性”——重ねてはいけない組み合わせがある

サージセルは酸性でトロンビンを失活させるため、タコシールと重ねて使うと効果が落ちることを示す図

これは知っている人が意外と少ない、でも現場でとても大事な話です。サージセル(酸化再生セルロース)は、それ自体が酸性です。血液に触れると酸性の環境をつくり、それが凝固のきっかけになります。

ここで問題になるのが、トロンビンやフィブリン糊(タコシールなど)との併用です。トロンビンは血液を固める酵素ですが、酸性の環境では働きが落ちてしまいます。つまり、サージセルの上に直接タコシールやトロンビン製剤を重ねると、せっかくの止血成分が失活して効果が下がる可能性があるのです。

組み合わせどうなるか
サージセル+トロンビン系を直接重ねる酸性でトロンビンが失活し、止血効果が落ちる恐れ
サージセル単独問題なし。じわじわ出血に有効
タコシール単独問題なし。フィブリン糊として面をふさぐ

器械出しとして覚えておきたいのは、「サージセルとタコシールは、同じ場所に重ねて使うものではない」という感覚です。もし術者が両方を同じ部位に使おうとしている場面に気づいたら、「サージセルの上にタコシール、大丈夫でしょうか?」と一声かけられると、一歩踏み込んだ器械出しです。もちろん最終判断は医師ですが、この知識があるかどうかで気づける範囲が変わります。

「止血剤なら何を重ねても止まるだろう」ではなく、成分どうしの相性がある——これを知っているだけで、止血剤に強いオペ看に近づけます。

タコシールは「貼る前」と「貼った後」で決まる

タコシールはフィブリン糊のシートなので、貼り方ひとつで効果が大きく変わります。器械出しがサポートできる実務ポイントを、時系列で整理します。

貼る前:術野をできるだけ整える

  • 貼る面の大量出血は先に落ち着かせる。血がドクドク出ている面にシートを乗せても、押し流されて接着しません。ある程度コントロールしてからが本番です
  • シートのサイズを術野に合わせて用意。大きすぎれば余り、小さすぎれば覆いきれません。「何センチ角がいるか」を術者に確認できると早いです
  • 開封は指示が確定してから。高価な製剤で、開けたら使用扱いです

貼るとき:薬剤面(黄色)を組織へ、そして動かさない

  • 黄色い薬剤面を組織側に。裏表を間違えると接着しません。開封時に「黄色が薬剤面です」と声に出す
  • 湿らせて使う場合も、生理食塩水に長く浸しすぎない。成分が流れ出てしまいます。軽く湿らせる程度
  • 貼ったら数分間しっかり圧迫。この間に動かすと接着が剥がれます。ガーゼで押さえる手が必要なので、圧迫用のガーゼを準備しておく

貼った後:はがれ・ずれに注意

圧迫を解除するとき、ガーゼがシートにくっついて一緒にはがれることがあります。ゆっくり、シートを押さえながらガーゼだけを離すのがコツ。手袋やほかの器械が触れてずれることもあるので、貼った直後の術野は「触らない場所」として意識を共有します。

そしてロット番号の記録。タコシールはヒト血漿由来の特定生物由来製品で、「誰に・いつ・どのロットを・何枚使ったか」を長期間さかのぼれるよう記録することが法律で定められています。使った枚数とロットの控えを、外回りと必ず突き合わせる——貼ることに集中して記録が抜ける、が起こりやすい場面なので、ここは声を掛け合いましょう。

使い分けの考え方|「出血のタイプ」で選ばれている

医師が2つをどう選んでいるか、思考の流れはこうです。

術野の状況選ばれやすいものワンポイント
じわじわにじむ毛細血管性出血サージセルカットして必要量だけ
肝・肺・膵の切離面タコシール面で覆って圧迫
肺のエアリークタコシール閉鎖効果を期待
神経の近く・狭い腔サージセル少量膨張による圧迫に注意

つまり、術野で「じわっと出ている」ならサージセル、「切離面が広い・漏れを塞ぎたい」ならタコシールの流れが来る——術式と進行を見て次の一手を予測できるようになりますよ。

よくあるミスと対策【新人オペ看向け】

ミス① サージセルを湿らせて渡してしまう

タコシールの「湿らせる」と混同しがち。「サージセルはドライ、タコシールはウェット」と正反対セットで覚えましょう。

ミス② タコシールの裏表を確認せず渡す

薬剤面(黄色)が組織側です。開封時に「黄色い面が薬剤面です」と声に出して医師と確認するのが安全。

ミス③ 指示の前に高価な製剤を開封してしまう

タコシールは1枚あたりの薬価が高く、開封=使用扱いです。「準備しておいて」=「未開封で手元に置く」が基本。開けるかどうかは必ず確認を。

よくある質問【Q&A】

Q1. 先生が「タココンブ」と言ったら何を出せばいい?

現行品のタコシールを準備すればOKです。施設の採用品目によってはサージセルなど別の止血剤しかない場合もあるので、自分の病院の「止血剤の棚」を一度整理して覚えておくと慌てません。

Q2. 特定生物由来製品って何がそんなに大事?

ヒトの血液を原料とするため、万一の感染症追跡に備えて「誰に・いつ・どのロットを使ったか」を20年間さかのぼれるようにすることが法律で定められています。記録漏れは患者さんの安全に直結する——外回りと器械出しの連携が試されるポイントです。

Q3. 止血剤の知識は転職先でも活きる?

活きます。止血剤・縫合糸・エネルギーデバイスの知識は診療科をまたいで通用する「持ち運べるスキル」。肝胆膵や呼吸器外科の症例が多い病院ならタコシールの出番も多く、症例構成によって経験できる幅が大きく変わります。

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まとめ|「ドライのサージセル・ウェットのタコシール」

  • タココンブは販売終了→現在はタコシール。現場の呼び名に惑わされない
  • サージセル=酸化セルロース。乾いたまま、じわじわ出血に
  • タコシール=フィブリン糊シート。湿らせて実質臓器の断面に、圧迫3〜5分
  • タコシールは特定生物由来製品=ロット記録20年保存
  • 開封タイミング・裏表・鑷子のドライ/ウェットが器械出しの腕の見せどころ

器械・糸の「違い」シリーズはこちらもどうぞ👇
📖 モノクリルとバイクリルの違い
📖 リガシュアとハーモニックの違い

参考文献

参考文献

  1. ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社.サージセル・アブソーバブル・ヘモスタット 添付文書.
  2. CSLベーリング株式会社.タコシール組織接着用シート 電子添文(PMDA掲載).2025年5月改訂.
  3. 川原美穂子編著.完全保存版! 手術室の器械・器具210(オペナーシング2024年春季増刊).メディカ出版,2024.

※製剤の使用方法・適応は添付文書および各施設の基準・医師の指示に従ってください。

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