【サージセルとタコシールの違いは?】旧タココンブとの関係・使い分け・器械出しの準備ポイントを解説

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「サージセル出して!」「タコシール準備しといて」——
急に言われて、どっちが何の止血剤か頭が真っ白になったことはありませんか?🍈

この記事では、オペ室の2大シート状止血剤サージセルとタコシール(旧タココンブ)の違いを、作用のしくみ・使い分け・器械出しの準備ポイントまで現役オペ看が解説します。

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📖 モノクリルとバイクリルの違いは?使い分けと器械出しのポイント

最初に大事な話|「タココンブ」は今は「タコシール」

先輩や医師が「タココンブ」と呼んでいるあの製品——実はタココンブは販売終了しており、現在の製品は後継の「タコシール組織接着用シート」です。

現場では昔の呼び名が残っているため、新人さんは「タココンブって棚のどこ?」と探して混乱しがち。「タココンブ=いまのタコシール」と覚えておけば大丈夫です。この記事では以下「タコシール」で統一します。

そもそも、なぜシート状止血剤が必要?

手術の止血は基本、結紮(糸でしばる)・電気メスやエネルギーデバイスで焼くことで行います。でも、それでは止められない出血があります。

  • 血管が細かすぎて、しばる相手が見えない(毛細血管性オージング)
  • 肝臓や肺のようなやわらかい実質臓器の断面——焼くほど組織がもろく崩れる
  • 神経のそば——焼くと熱で神経を傷めるリスク

こうした「しばれない・焼けない出血」の受け皿が、シート状止血剤です。「エネルギーデバイスが引っ込んだのに、まだじわじわしている」場面はシート状止血剤の出番が近い——この予測ができると、先読みの準備が変わります。

あわせて覚えたい止血剤の仲間たち

  • スポンゼル(ゼラチンスポンジ):吸収性スポンジ。圧迫止血の定番
  • アビテン(微線維性コラーゲン):粉状・フレーク状で凹凸面に
  • フロシール(ゼラチン+トロンビン):ジェル状で狭い場所や骨面に注入できる

施設によって採用品目は違うので、自分の病院の止血剤の棚を一度「地図化」しておくのがおすすめ。「サージセルない!」と焦る前に、代替品の場所まで頭に入っていれば強いです。

サージセルとタコシールの違い【早見表】

サージセルタコシール(旧タココンブ)
成分酸化再生セルロース(合成系)ヒトフィブリノゲン+トロンビン+コラーゲンスポンジ
由来植物由来セルロースヒト血漿由来(特定生物由来製品)
止血のしくみ血液を吸ってゲル化し凝血を促進フィブリン糊として組織面に接着・閉鎖
使い方乾いたまま貼付湿らせて薬剤面を貼り、圧迫
得意な場面毛細血管性のじわじわ出血(オージング)肝・肺・膵など実質臓器の断面、リンパ漏・エアリーク
記録通常の使用記録ロット記録・20年保存が必要

ざっくり言うと、「じわじわ出血に貼るサージセル」「臓器の切離面を面でふさぐタコシール」。ここから実務目線で深掘りします。

サージセルの特徴|「乾いたまま」がすべての基本

サージセルは酸化再生セルロースのシートで、血液に触れると膨らんでゲル状になり、凝血のきっかけを作ります。

  • 毛細血管性のオージング(にじむ出血)に強い
  • ハサミで必要なサイズにカットして使える
  • 数週間かけて体内で吸収される

器械出しの鉄則:濡らさない・乾いた鑷子で

サージセル最大の注意点は、濡れると効果が落ちること。生食に浸すのはNG、渡すときの鑷子も乾いたものを選びます。

また、詰め込みすぎると膨張して周囲の神経を圧迫するリスクがあるため、脊椎や神経周囲の手術では「入れすぎていないか」を医師と共有できると一歩上の器械出しです。

タコシールの特徴|実質臓器の「面」をふさぐ切り札

タコシールは、コラーゲンスポンジにフィブリノゲンとトロンビン(血液を固める成分そのもの)を固着させたシートです。組織面に貼って圧迫すると、その場でフィブリン糊が形成され、面全体を接着・閉鎖します。

  • 肝切除・肺切除・膵切除などの断面のオージング
  • 肺のエアリーク(空気漏れ)やリンパ漏の閉鎖にも
  • 縫合やエネルギーデバイスで止めにくい「面」の出血が主戦場

器械出しの鉄則:開封タイミング・裏表・圧迫時間

  • 開封は指示が確定してから:高価な製剤のため「準備だけ」で開けない。「開けますか?」の一声が正解
  • 薬剤面(黄色い面)を組織側に:裏表を間違えると効果が出ない
  • 湿らせて3〜5分圧迫:生食で軽く湿らせ、ガーゼ圧迫の準備までセットで
  • ロット記録を忘れない:ヒト血漿由来の特定生物由来製品のため、ロット番号の記録と長期保存(20年)が法律で義務付けられています

特に最後のロット記録は、外回りとの連携ポイント。「貼った枚数とロットの控え」を术中から意識できると、記録漏れ事故を防げます。

使い分けの考え方|「出血のタイプ」で選ばれている

医師が2つをどう選んでいるか、思考の流れはこうです。

術野の状況選ばれやすいものワンポイント
じわじわにじむ毛細血管性出血サージセルカットして必要量だけ
肝・肺・膵の切離面タコシール面で覆って圧迫
肺のエアリークタコシール閉鎖効果を期待
神経の近く・狭い腔サージセル少量膨張による圧迫に注意

つまり、術野で「じわっと出ている」ならサージセル、「切離面が広い・漏れを塞ぎたい」ならタコシールの流れが来る——術式と進行を見て次の一手を予測できるようになりますよ。

よくあるミスと対策【新人オペ看向け】

ミス① サージセルを湿らせて渡してしまう

タコシールの「湿らせる」と混同しがち。「サージセルはドライ、タコシールはウェット」と正反対セットで覚えましょう。

ミス② タコシールの裏表を確認せず渡す

薬剤面(黄色)が組織側です。開封時に「黄色い面が薬剤面です」と声に出して医師と確認するのが安全。

ミス③ 指示の前に高価な製剤を開封してしまう

タコシールは1枚あたりの薬価が高く、開封=使用扱いです。「準備しておいて」=「未開封で手元に置く」が基本。開けるかどうかは必ず確認を。

よくある質問【Q&A】

Q1. 先生が「タココンブ」と言ったら何を出せばいい?

現行品のタコシールを準備すればOKです。施設の採用品目によってはサージセルなど別の止血剤しかない場合もあるので、自分の病院の「止血剤の棚」を一度整理して覚えておくと慌てません。

Q2. 特定生物由来製品って何がそんなに大事?

ヒトの血液を原料とするため、万一の感染症追跡に備えて「誰に・いつ・どのロットを使ったか」を20年間さかのぼれるようにすることが法律で定められています。記録漏れは患者さんの安全に直結する——外回りと器械出しの連携が試されるポイントです。

Q3. 止血剤の知識は転職先でも活きる?

活きます。止血剤・縫合糸・エネルギーデバイスの知識は診療科をまたいで通用する「持ち運べるスキル」。肝胆膵や呼吸器外科の症例が多い病院ならタコシールの出番も多く、症例構成によって経験できる幅が大きく変わります。

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まとめ|「ドライのサージセル・ウェットのタコシール」

  • タココンブは販売終了→現在はタコシール。現場の呼び名に惑わされない
  • サージセル=酸化セルロース。乾いたまま、じわじわ出血に
  • タコシール=フィブリン糊シート。湿らせて実質臓器の断面に、圧迫3〜5分
  • タコシールは特定生物由来製品=ロット記録20年保存
  • 開封タイミング・裏表・鑷子のドライ/ウェットが器械出しの腕の見せどころ

器械・糸の「違い」シリーズはこちらもどうぞ👇
📖 モノクリルとバイクリルの違い
📖 リガシュアとハーモニックの違い

参考文献

参考文献

  1. ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社.サージセル・アブソーバブル・ヘモスタット 添付文書.
  2. CSLベーリング株式会社.タコシール組織接着用シート 電子添文(PMDA掲載).2025年5月改訂.
  3. 川原美穂子編著.完全保存版! 手術室の器械・器具210(オペナーシング2024年春季増刊).メディカ出版,2024.

※製剤の使用方法・適応は添付文書および各施設の基準・医師の指示に従ってください。

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