【術中体温管理】手術室新人オペ看が知るべき低体温予防と外回り看護のポイント

麻酔・外回り看護
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🌡️「手術室って、なんで体温管理が重要なんですか?」

新人オペ看がよく口にするこの疑問、実はとても大切な気づきです。手術中は麻酔の影響・手術野からの熱喪失・冷たい輸液など複数の要因が重なり、患者さんの体温はみるみる下がっていきます。

✅ 術中低体温を防ぐことは、患者さんの命を守ることに直結します。

この記事では術中体温管理の「なぜ」から、保温機器の使い方・外回り看護師のモニタリングポイント・シバリングへの対応まで、新人オペ看が現場でそのまま使える知識を徹底解説します。

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術中低体温とは?なぜ手術中に体温が下がるのか

術中低体温の定義

術中低体温とは、手術中に中枢体温が36℃を下回った状態を指します。WHOの手術部位感染(SSI)予防ガイドライン(2016年)では、術中の体温を36℃以上に維持することを強く推奨しています。

手術を受ける患者さんの多くが、何らかの程度の術中低体温を経験するとされており、適切な体温管理は手術看護の最重要課題のひとつです。

体温が下がる3つのメカニズム

手術中に体温が低下する主な原因は以下の3つです。

メカニズム内容起こるタイミング
① 再分布性低体温麻酔薬による血管拡張で末梢血管が開き、体の中心部(体幹)の熱が末梢に移動する麻酔導入後30〜60分(最も急激な低下)
② 熱産生の減少麻酔・鎮静薬により代謝が抑制され、筋肉からの熱産生が低下する術中を通じて持続
③ 熱喪失の増加手術野からの蒸発・放射、冷たい輸液・輸血、低温の手術室環境による熱の喪失術中を通じて持続

特に麻酔導入直後の再分布性低体温は防ぎにくく、1〜2℃の急激な低下が起こります。このため、術前からの予防的加温(プレウォーミング)が有効とされています。

術中低体温が引き起こす合併症

「少し体温が下がるだけ」と軽く見てはいけません。術中低体温は多くの重篤な合併症と関連しています。

合併症メカニズム
手術部位感染(SSI)増加低体温により皮膚血流が低下→創部への酸素供給不足→細菌に対する抵抗力低下
術中・術後出血量増加低体温により凝固因子・血小板機能が低下→血液が固まりにくくなる
心臓合併症(不整脈・心室細動)低体温により心筋の電気的不安定性が増す
麻酔覚醒の遅延低体温により麻酔薬の代謝・排泄が遅れる
術後シバリング覚醒時に体温を上げようと筋肉が不随意に震える→酸素消費量が増大
免疫機能の低下低体温により好中球・マクロファージの機能が抑制される

これらの合併症は患者さんの術後回復を著しく遅らせ、入院期間の延長・医療費増加にもつながります。外回り看護師として体温管理に積極的に関わることが、患者さんの術後の質を大きく左右します。

手術室で使われる保温機器・方法の種類

① 強制空気加温装置(FAW:Forced Air Warming)

項目内容
代表的製品Bair Hugger™(3M)、ウォームタッチ™、Mistral-Air など
仕組み専用ブランケットに温風を送り込み、皮膚表面を加温する
特徴最も効果的な能動的加温法。体幹部・下肢・上肢用など種類がある
使用タイミング術前プレウォーミング(30分以上)〜術中を通じて継続
注意点ブランケットの穴が皮膚に直接当たらないよう確認。過加温(低温熱傷)に注意

強制空気加温装置は術中体温管理のゴールドスタンダードとも呼ばれる最も有効な保温法です。外回り看護師として術前から装着し、設定温度(通常38〜43℃)を確認するのが基本動作です。

② 輸液加温器

項目内容
代表的製品Ranger™(3M)、ホットライン®(Smiths Medical)
仕組み輸液ラインを加温チャンバーに通し、体内に入る輸液を温める
設定温度通常40〜41℃(最大43℃以下が安全基準)
適応大量輸液・輸血症例(500mL/時以上)で特に有効
注意点43℃超で溶血リスク。設定温度を必ず確認し記録する

室温(20〜22℃)の輸液を大量に投与すると体温が著しく低下します。出血量が多い症例・長時間手術では輸液加温器の使用が必須と考えましょう。

③ 保温マットレス(加温マット)

手術台に敷く加温マットレスで、患者の背面から加温します。強制空気加温装置と併用することでより高い保温効果が得られます。特に長時間手術・小児手術・体表面積の小さい患者に有効です。

④ 手術室の環境温度管理

手術室の室温は通常20〜22℃に設定されていますが、患者の状態や術式に応じて調整します。

  • 成人一般手術:20〜22℃(術者・スタッフの快適性とのバランス)
  • 小児・新生児手術:24〜26℃(体表面積比が大きく熱喪失が著しいため)
  • 熱傷手術:28℃以上(皮膚バリアの喪失により熱喪失が極めて大きい)

外回り看護師は室温設定の根拠を理解し、麻酔科医・術者と連携して適切な温度を維持することが求められます。

外回り看護師の術中体温管理ポイント

術前・術中・術後の流れと看護ケア

フェーズ外回り看護師のアクション
術前(入室〜麻酔導入前)プレウォーミング開始(強制空気加温装置を術前30分以上)、室温確認、不必要な露出を避けるポジショニング
麻酔導入直後再分布性低体温が起こる時期。加温装置の効果を確認し温度設定を最適化する
術中(手術進行中)体温を15〜30分ごとにモニタリング・記録、輸液加温器の設定確認、露出部位の被覆
閉創〜覚醒期体温が36℃未満の場合は加温を継続、シバリングの有無を観察、回復室への申し送り準備

体温モニタリングの実際

術中の体温測定部位によって精度が異なります。それぞれの特徴を把握しましょう。

測定部位精度特徴・適応
食道(食道温)◎ 最高精度中枢体温を最も正確に反映。全身麻酔・気管挿管症例に使用
膀胱(膀胱温)◎ 高精度尿量が多ければ食道温と同等。カテーテル留置症例で使いやすい
直腸(直腸温)○ 良好変動が遅い。小児手術で使用されることが多い
鼓膜(鼓膜温)△ 中程度プローブの挿入角度で誤差が生じやすい
腋窩(腋窩温)△ 精度低術中モニタリングには不向き。あくまで目安

外回り看護師として、「何度を下回ったら介入するか」を麻酔科医と術前に確認しておくことが重要です。一般的には36℃を下回った時点で積極的な加温介入を開始します。

器械出し看護師が知っておくべきこと

器械出し(スクラブ)看護師は直接体温管理機器を操作することは少ないですが、以下の点を把握しておきましょう。

  • 洗浄液(生理食塩水・蒸留水)は体温程度に温めておく:冷たい洗浄液を腹腔内に大量に使うと体温が急低下する。術前にウォーマーで温めた洗浄液を準備する
  • 長時間の開腹・開胸では熱喪失が著しい:腹腔内・胸腔内の臓器は外気にさらされると急速に冷える。術者のペースに合わせながら外回りと情報共有する
  • 灌流液・腹腔鏡用COガスも体温に影響する:腹腔鏡手術では送気するCO₂ガスが冷たいと体温低下の一因になる

術後シバリングとは?看護師の対応ポイント

シバリング(shivering)とは、麻酔覚醒時に体温回復のために骨格筋が不随意に震える現象です。全身麻酔後の患者の約40〜60%に起こるとされ、以下の問題を引き起こします。

  • 酸素消費量が最大400〜500%増加する
  • CO₂産生の増加→呼吸仕事量増大
  • 患者の不快感・疼痛増強
  • 術後出血リスクの増加(血圧・心拍数上昇)

シバリングへの対応

対応内容
保温継続強制空気加温装置・電気毛布で積極的に加温する
酸素投与酸素消費量増大に備え、十分な酸素を投与する
薬物療法ペチジン(塩酸ペチジン)が第一選択薬として有効。医師の指示のもと投与
観察・記録体温・SpO2・血圧・脈拍を頻回に測定し変化を記録する

手術室から回復室への申し送りの際、「術中最低体温・現在の体温・シバリングの有無」を必ず伝えることが術後看護の継続性につながります。

新人オペ看の「体温管理あるある失敗」と対策

よくある失敗対策
プレウォーミングを忘れて入室直前に慌てて装着する術前準備チェックリストに「加温装置30分前装着」を追加する
輸液加温器の温度設定を確認しないまま使用する接続前に必ず設定温度(40〜41℃)を目視確認・記録する
体温モニタリングを記録するのを忘れるアラーム設定(36℃未満で警告)を活用し、アラームが鳴ったら即記録する
腹腔内洗浄液が冷たいまま使われる術前に洗浄液ウォーマーで温め、「温めてあります」と術者に声かけする
シバリングを「目が覚めた証拠」と放置してしまうシバリングの開始時刻・強度・対応を記録し、医師に速やかに報告する

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まとめ

  • ✅ 術中低体温は中枢体温36℃未満の状態。WHOは36℃以上の維持を推奨
  • ✅ 体温低下の主因は①再分布性低体温(麻酔導入直後)②熱産生低下③熱喪失増加の3つ
  • ✅ 合併症はSSI・出血増加・心臓合併症・覚醒遅延・シバリングなど多岐にわたる
  • ✅ 最も効果的な保温法は強制空気加温装置(Bair Hugger™など)+術前プレウォーミング
  • ✅ 大量輸液・輸血症例には輸液加温器(最大43℃以下)が必須
  • ✅ 中枢体温測定は食道温・膀胱温が最も正確。腋窩温は術中モニタリングに不向き
  • ✅ 洗浄液は温めてから使用する。冷たい洗浄液の大量使用は体温を急低下させる
  • ✅ シバリングは酸素消費量を最大500%増加させる。保温・酸素投与・ペチジン投与で対応
  • ✅ 申し送りでは「術中最低体温・現在の体温・シバリングの有無」を必ず伝える

術中体温管理は「やって当たり前」ではなく、エビデンスに基づいた積極的な看護介入です。新人のうちからその重要性を理解し、患者さんを低体温から守れる外回り看護師を目指しましょう。

参考文献

  • World Health Organization(2016). Global Guidelines for the Prevention of Surgical Site Infection. WHO Press.
  • 日本麻酔科学会(2017).「術中体温管理に関する提言」. 日本麻酔科学会.
  • 日本手術看護学会(2021).『手術看護業務指針 第3版』. 日本手術看護学会.
  • 中島義仁 ほか(2020).「周術期体温管理の実際——強制空気加温法の効果と看護師の役割」.オペナーシング, 35(4), pp.18–26. メディカ出版. https://store.medica.co.jp/list/?Category=books
  • Sessler DI(2016). Perioperative thermoregulation and heat balance. The Lancet, 387(10038), pp.2655–2664.
  • 公益社団法人日本看護協会(2020).『周術期看護実践ガイドライン』. 日本看護協会.

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