※医療的判断・看護ケアは、必ず各施設のマニュアル・方針に従って実施してください。手術手順や使用器械は施設により異なる場合があります。
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腹腔鏡下での左半結腸・下行結腸切除術は消化器外科手術でもメジャーな手術です。
一方で、『左半結腸切除術って、どのような手術なの?』『ラパロ結腸手術って、なに?』『消化器外科手術の器械出し看護のポイントを知りたい』など、様々な疑問を持つ手術室看護師の方や、研修医の方は多いのではないでしょうか?
そのような方に向けて、今回は腹腔鏡下での左側結腸部分切除術・左半結腸切除術の手術の流れについて解説していきます。とくにこの術式は、右側と違って「砕石位」「神経温存」「DST吻合」という3つの独自ポイントがあります。そこを押さえられるかどうかで、器械出しの動きやすさが大きく変わります。
【左結腸切除術とは?】
左側結腸部分切除術・左半結腸切除術は、横行結腸から下行結腸・直腸にかけて腫瘍などができた場合、その切除に対して行われます。
腫瘍の大きさや、患者の既往歴にもよりますが、多くは腹腔鏡下で手術されます。
大腸がんに対して行う場合は、腫瘍だけを切るのではなく、その腸管を栄養している血管と、血管に沿って並ぶリンパ節をまとめて切除(リンパ節郭清)します。左側結腸では、この栄養血管が下腸間膜動脈(かちょうかんまくどうみゃく)という一本の幹から枝分かれしているのが特徴です。
手術時間
左側結腸部分切除術の場合⇨3〜4時間程度
左半結腸切除術の場合⇨4~5時間程度
器械出し看護難易度
左側結腸部分切除術の場合⇨✩✩
左半結腸切除術の場合⇨✩✩✩
※手術時間はあくまで目安です。腫瘍の位置や大きさ、癒着の程度、脾弯曲(ひわんきょく)まで授動が必要かどうかによって、大きく前後します。
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- まずはこれだけ!清潔&不潔操作を動画で解説
- 手術前に押さえたい|左側結腸の血管と「守るべき神経」
- 【下行結腸切除術の手術手順】砕石位での体位固定
- 消毒〜ドレーピング
- エネルギーデバイスのセッティング〜手術開始
- 腹腔鏡用ポートの挿入~腹腔内観察
- 左側結腸・左半結腸の術野展開
- 腹膜の切開&直腸周囲の層の確認
- 結腸間膜&下腸間膜動脈血管周囲の剥離
- 血管処理とS状結腸の受動
- 直腸洗浄
【動画でも解説】この記事の内容を動画で
この記事の内容は動画でも解説しています。通勤中や休憩中の予習・復習にどうぞ。
まずはこれだけ!清潔&不潔操作を動画で解説
手術前に押さえたい|左側結腸の血管と「守るべき神経」
手順に入る前に、左側結腸まわりの「地図」を確認しておきましょう。ここを知っておくと、術者が何を探し、何を避けているのかが分かるようになります。
左側結腸を栄養する血管
左側結腸は、腹部大動脈から分かれる下腸間膜動脈(IMA)という一本の幹から枝分かれした血管で栄養されています。
| 血管 | 栄養している範囲 |
|---|---|
| 左結腸動脈 | 下行結腸 |
| S状結腸動脈 | S状結腸 |
| 上直腸動脈 | 直腸の上部 |
どこで血管を切るかは、腫瘍の位置とリンパ節郭清の範囲によって決まります。下腸間膜動脈の根元で切る場合と、左結腸動脈を残して枝だけを切る場合があり、術者が「根部で切る」「LCAは温存する」などと話しているのは、この判断のことです。
左側結腸手術ならではの「神経温存」
左側結腸〜直腸の手術で、右側にはない大きなテーマが「自律神経の温存」です。下腸間膜動脈の根元のまわりや、直腸の背側には、上下腹神経叢(じょうかふくしんけいそう)・腰内臓神経・下腹神経といった細い神経が網の目のように走っています。
💡 神経を守ることが、術後の生活を守る
これらの神経は、排尿と性機能をコントロールしています。剥離のときに傷つけてしまうと、術後に尿が出にくくなる(排尿障害)、性機能障害が残るといった、生活の質に直結する後遺症につながります。
術者が神経の層を慎重にたどっているのは、がんを確実に取ることと、患者さんの術後の生活を守ることを両立させるため。器械出しは、この場面で術野が見えづらくならないよう、吸引やレンズ清拭でしっかり支えましょう。
近くにある「傷つけてはいけないもの」
- 左尿管・生殖腺動静脈:後腹膜を走ります。剥離の層を外すと巻き込む危険があります
- 脾臓(ひぞう):脾弯曲を授動する際、引っ張りすぎると被膜が裂けて出血することがあります
- 自律神経(上記):温存できるかどうかが術後のQOLを左右します
【下行結腸切除術の手術手順】砕石位での体位固定
腹腔鏡下大腸切除術は砕石位で行います
砕石位をとる際は、患者さんの体格に合わせて支脚器を装着し、体位固定を行います
左側結腸の手術で砕石位をとるのは、①術者・助手が患者さんの脚の間に立てる ②必要に応じて肛門側から器械(自動吻合器や内視鏡)を入れられる ③直腸洗浄が行えるためです。右側結腸の手術(多くは仰臥位)との大きな違いがここにあります。
【砕石位で注意すべき2大合併症は「腓骨神経麻痺」と「コンパートメント症候群」】
この2つは似た場面で語られますが、起こるしくみがまったく違う別々の合併症です。混同しやすいので、分けて理解しておきましょう。
①腓骨神経麻痺(ひこつしんけいまひ)=「直接の圧迫」で起こる
膝の外側にある『腓骨頭部(ひこつとうぶ)』では、神経が骨のすぐ上を浅く走っています。ここが支脚器に押しつけられると神経が傷み、術後に足首が上がらなくなる(下垂足)・足背のしびれが生じます。
そのため支脚器に下脚を乗せる際には、『腓骨頭部』が支脚器に圧迫されていないことを必ず確認します。
②コンパートメント症候群=「血流不足と内圧上昇」で起こる
こちらは神経の圧迫が原因ではありません。下肢を長時間高く挙上したままにすると、脚の血流が悪くなります。すると筋肉がむくみ、骨と筋膜で囲まれた区画(コンパートメント)の内圧が上がって、筋肉や神経がさらに血流不足に陥る——という悪循環が起こります。重症化すると筋肉が壊死し、腎障害に至ることもある重篤な合併症です。
リスクが高まるのは手術時間が長い場合や下肢を高く挙げすぎている場合。長時間手術では、可能な範囲で下肢の位置を下げる・一時的に体位を調整するといった対応がとられることがあります。
砕石位の固定では、以下をチェックしましょう。
・腓骨頭部が支脚器に当たっていないか(除圧の確認)
・下肢を挙上しすぎていないか(高すぎると血流が低下します)
・股関節・膝関節が無理な角度になっていないか(開排しすぎは神経障害の原因になります)
・腕の固定・体幹のずれ止め(頭低位にすると身体がずれやすくなります)
また、深部静脈血栓症の予防として、弾性ストッキングや間欠的空気圧迫装置が正しく装着・作動しているかも確認します。手術が長引く場合は、経過時間をチームに共有することも大切な役割です。
消毒〜ドレーピング
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①陰部を中心に消毒を行います
②患者の両脚に支脚器用の清潔カバー(レギンスカバー)をかけます
③臀部の下に清潔なドレープを敷きます
④腹腔鏡下結腸切除用のドレープを患者全体にかけます
左側結腸の手術では、腹部だけでなく陰部・肛門周囲まで消毒範囲に含めるのが特徴です。これは、術中に肛門側から器械を入れたり、直腸洗浄を行ったりする可能性があるためです。「あとから必要になっても、そこが不潔なら使えない」——だから最初から清潔にしておく、という考え方です。
結腸切除後の吻合時に経肛門的に吻合を行う場合、イルリガートルを使用して肛門部を洗浄することがあります。
肛門部の洗浄時には、洗浄液を受け止めるための三角ドレープを、患者臀部下に敷いておく必要があります。
そのため、CDHなどを使用して経肛門的に吻合を行う場合は、ドレーピングや消毒を行う前に三角ドレープを患者臀部下に敷きましょう。
ここが「あとから戻れない」ポイントです。ドレーピングが終わってから「三角ドレープを敷き忘れた」と気づくと、清潔野を崩してやり直すことになります。術前カンファレンスで「DST吻合の予定があるか=経肛門操作をするか」を必ず確認し、迷ったら敷いておく——これが安全側の判断です。
エネルギーデバイスのセッティング〜手術開始
①使用するエネルギーデバイスを接続します
②腹腔鏡手術に必要となる気腹チューブや排煙チューブを接続します
③腹腔鏡用の内視鏡カメラを接続します
④セッティングを終えたら『タイムアウト』を行い、手術開始となります
コード類(エネルギーデバイス・気腹チューブ・排煙チューブ・カメラケーブル・電気メス)は本数が多く、まとまりなく出すと術野で絡まります。
清潔野側でまとめてから一方向に出す、鉗子やクリップで固定する、といった工夫をすると、術中の引っかかりを防げます。
また、タイムアウトでは術式・切除範囲・吻合方法(機能的端々吻合かDST法か)が共有されます。ここを聞き逃さないことが、そのあとの器械準備を大きく左右します。
腹腔鏡用ポートの挿入~腹腔内観察
①No.10メスで皮膚を切開し、電気メスで止血しながら創を拡大し、指示の腹腔鏡用ポートを挿入します
②同様の操作を繰り返し、必要な数の腹腔鏡用ポートを挿入します
③気腹を開始し、カメラで腹腔内を観察します
腹腔内に入ったら、術者はまず「腹膜播種(ふくまくはしゅ)や肝転移がないか」「癒着はどうか」を観察します。ここで予定外の所見が見つかると、術式そのものが変更されることもあります。器械出しは、術者の会話に耳を傾け、方針が変わりそうな気配を感じ取れると理想的です。
左側結腸・左半結腸の術野展開
①大網(だいもう)と横行結腸を頭側に展開し、小腸を患者の右側によけます
②大動脈前面から分岐する下腸間膜動脈(かちょうかんまくどうみゃく)を同定します
右側の手術とは逆に、小腸を患者さんの右側によけて、左側結腸とその間膜が見えるようにします。頭低位(頭を下げる)にすると小腸が自然と頭側へ移動するため、術野をつくりやすくなります。
下腸間膜動脈は、腹部大動脈の前面から分かれて左下方に向かう血管です。腸間膜をピンと張ると、この血管の走行が土手のように浮き上がって見え、これから始まる剥離・郭清の出発点になります。
腹膜の切開&直腸周囲の層の確認
①腹膜を切開し、直腸間膜を確認します
②直腸の背側にある層(直腸後腔)に入ります
③腹膜反転部で前面の腹膜切開を左側に向けて行います
ここで入っていくのは、直腸間膜(直腸を包む脂肪とリンパ節のかたまり)と、その背側の仙骨前面との間にある「はがれやすい層」です。この層は血管がほとんど通っておらず、正しく入れるとほぼ出血せずにスルスルと剥離が進みます。
そしてこの層のすぐ背側に、先ほど説明した自律神経(下腹神経など)が走っています。層を正しくたどることが、そのまま神経温存につながるのです。術者が「いい層だ」と言うとき、それは出血が少なく、神経も守れているという意味だと理解しておきましょう。
結腸間膜&下腸間膜動脈血管周囲の剥離
①下腸間膜動脈・上直腸動脈と、左右腰内臓神経〜上下腹神経叢の層を確保します
②結腸間膜と後腹膜下筋膜前面との間を剥離します
③下腸間膜動脈血管の周囲を剥離します
④左結腸動脈とS状結腸動脈の分岐を確認しながら切離と郭清操作を行います
①の「神経の層を確保する」というのが、左側結腸手術のいちばん繊細な操作です。下腸間膜動脈の根元には自律神経が張りついているため、神経を血管からそっとはがして後腹膜側に残し、血管とリンパ節だけを持ち上げる——これができると、がんの郭清と神経温存が両立できます。
②の剥離では、右側と同じく結腸間膜と後腹膜下筋膜(腎前筋膜)の間の、血管が通っていない層をたどります。この層を守ることで、左尿管と生殖腺動静脈を後腹膜側に残したまま安全に進めます。剥離中に「尿管を確認した」という会話が出るのは、この安全確認のためです。
📖 なぜ「尿管の確認」を何度も言うの?
尿管は後腹膜を走る細い管で、脂肪に埋もれていると見分けがつきにくいことがあります。誤って切離・熱損傷させると、術後に尿もれや腎機能障害を起こし、再手術が必要になることも。だから術者は、剥離を進めるたびに「尿管はここ」と目で確認しながら操作しています。器械出しは、この確認のあいだ術野が見やすくなるよう、吸引やレンズ清拭で支えましょう。
血管処理とS状結腸の受動
①結腸動脈・結腸静脈を処理します
結腸動脈・結腸静脈を処理する時は指示の腹腔鏡用クリップを使用します
血管の両サイドにクリップをかけ、その間(中央部分)を腹腔鏡用剪刀もしくはエネルギーデバイスを使用し、切ります
クリップは血管の太さに合わせてサイズを選びます。小さすぎると血管を挟みきれず、大きすぎるとしっかり閉じません。ヘモロッククリップは色でサイズが分かるようになっているので、術者から「ML」「L」と言われたら色で瞬時に判断できるようにしておくと安心です。
また、体内に残る側には必ず2個以上かかっているかが重要です。下腸間膜動脈は太い動脈なので、クリップが外れると一気に出血します。器械出しは、渡したクリップの数を意識しておきましょう。
②S状結腸を外側から受動します
③内側から剥離した層と連続させます
(腫瘍が肛門に近い場合は下行結腸から脾弯曲まで受動します)
「受動(じゅどう)」とは、くっついている腸管を周囲からはがして、自由に動かせる状態にすることです。内側からと外側から剥離を進め、最後に両方の層をつなげる——これが完了すると、腸管を体外へ引き出せるようになります。
🚨 脾弯曲授動は「脾臓損傷」に注意
腫瘍が肛門に近く、腸管を長く引き下ろす必要がある場合は、脾弯曲(結腸が脾臓の下で折れ曲がっている部分)まで授動します。ここは脾臓のすぐ近くで、結腸を引っ張りすぎると脾臓の被膜が裂けて出血することがあります。
器械出しは、この場面では止血材・吸引・追加のガーゼをすぐ出せるようにしておきましょう。手術時間が延びやすい工程でもあるため、外回りは体位による神経障害・体温にも注意を払います。
直腸洗浄
イルリガートルなどを使用し、直腸洗浄を行います。
直腸洗浄には、大きく2つの目的があります。ひとつは腸管内に残っている便を洗い流して、吻合部の細菌汚染を減らすこと。もうひとつは腸管内に浮遊しているがん細胞を洗い流し、吻合部にがんが生着する(再発する)のを防ぐことです。
「なぜわざわざ洗うの?」と思うかもしれませんが、この一手間が術後の縫合不全や局所再発のリスクを下げることにつながっています。
【外回り看護ポイント】イルリガートルでの直腸洗浄方法とは?
- イルリガートルを点滴棒に吊るす
- あらかじめイルリガートルのチューブをクレンメ等でクランプしておく
- 【直腸洗浄液の作成】1000mlの生理食塩水に、50ml程度のイソジン消毒液を混ぜ入れる(※洗浄液の内容・濃度は施設の方針や術者の指示によって異なります。必ず自施設のマニュアルを確認してください)
- 直腸洗浄液をイルリガートルに注ぎ込む
- イルリガートルのチューブ先端を肛門部に挿し込む
- クレンメを外し、イルリガートルを通じて肛門側へ消毒洗浄液を流れ込ませ、直腸洗浄を行う(イルリガートルを吊るしている点滴棒を高くすることにより、高低差で消毒洗浄液が流れ込むようになります)
直腸洗浄でつまずきやすいのが、「洗浄液があふれて、術野やベッドを汚してしまう」というトラブルです。
これを防ぐために、①事前に三角ドレープを臀部下に敷いておく ②洗浄液を受けるバケツや吸引を手元に用意する ③点滴棒の高さを調整して流速をコントロールする——この3点を準備しておきましょう。
また、洗浄液は冷たいままだと体温低下の一因になります。加温した生理食塩水を使えるよう、早めに準備しておくと安心です。
下行結腸切断
自動縫合器を使用し、下行結腸切断を行います
【自動縫合器と自動吻合器のちがい】
腸管の切離に使うEchelon(エシュロン)やエンドGIAなどは、まっすぐな形をした「自動縫合器(リニアステープラー)」です。腸管をステープル(金属の針)で縫い合わせながら、同時に切り離してくれます。
一方、このあとのDST法で登場するCDHなどは「自動吻合器(サーキュラーステープラー)」。円形をしていて、腸管どうしを丸くつなぐ(吻合する)ための器械です。
「まっすぐ切るのがリニア、丸くつなぐのがサーキュラー」と覚えておくと、術者の指示を取り違えにくくなります。左側結腸の手術ではこの2種類が両方登場するため、右側の手術よりも器械の理解が求められます。
自動縫合器使用後は、使用済みステイプラー(カートリッジ)の取り外しが必要となります。
また、自動縫合器の先端は、腸内容液などが付着しており汚染度が高く、不潔です。
そのため厚いガーゼやウエットタオルなどを使用し、使用済みステイプラーに直接触れないようにしながら取り外しましょう。
カートリッジには腸管の厚みに応じた種類(色分け)があります。使用した数と種類を把握しておくと、追加を求められたときにすぐ対応できます。また、装填し忘れると空打ちになるため、渡す前に装填済みかを確認する習慣をつけましょう。
小開腹を行う
①ここまでの操作で、一度腹腔内操作を終了します
②小開腹を行います
腹腔鏡下手術でも、切除した腸管(検体)を体外に取り出すためには、どこかにお腹を開ける必要があります。これが小開腹です。器械出しにとっては、「腹腔鏡の器械」から「開腹の器械」へ一気に切り替わる大きな転換点になります。
小開腹の際は
・No.10メス
・有鈎鑷子
・ランゲンベック扁平鉤
・電気メス
・コッヘル止血鉗子
・ケリー剝離鉗子
などが必要となります
腹腔内操作の一時終了に伴い、腹腔鏡用の鉗子類は術野から戻ってくるため、器械台の上を整理しておきましょう。
また小開腹への移行時は術野を見ながら予想し、慌てずにスムーズに器械出しできるようにしましょう。
先読みのコツ:「血管処理が終わり、受動が完了して、腸管が切離された」タイミングが小開腹の合図です。腹腔鏡の鉗子が次々戻ってきたら、器械台の腹腔鏡エリアをまとめて片づけ、開腹用の器械を手前に並べ替える——この流れが自然にできると余裕が生まれます。あわせてウンドリトラクター(アレクシス)も準備しておきましょう。
腹腔内の一時終了に伴い、無影灯の点灯や、腹腔鏡用モニターの操作が必要となります。
手術の進行状況を見ながらスムーズに動けるようにしましょう。
小開腹に移ると術野が急に暗くなるため、無影灯を早めに点灯・位置調整できると術者を待たせません。反対に腹腔鏡へ戻るときは無影灯を消し、モニターを見やすくします。「明るさの切り替え」も外回りの大事な仕事です。
左側結腸部分切除・左半結腸切除を行う
①小開腹した創から左側結腸・左半結腸を引き出します
②自動縫合器を使用し、左側結腸部分切除・左半結腸切除を行います
③検体として取り出します
取れた検体(左側結腸・左半結腸)の検体保管方法については医師に確認し、適切に保管しましょう。
大腸がんの検体は、「どちらが口側か」「腫瘍の位置」「切除断端」といった情報が病理診断に直結します。術者が検体を切り開いて腫瘍を確認したり、リンパ節を取り分けたりすることもあるため、検体台・ハサミ・ホルマリン容器などをすぐ用意できるようにしておきましょう。
検体の取り違えは絶対に避けなければなりません。患者氏名・検体名・提出先を声出しで確認し、確実に記録します。
結腸吻合【機能的端々吻合もしくはDST法を選択】
【機能的端々吻合とDST法の違いとは?】

左側結腸の手術では、腸管をつなぐ方法が2通りあります。この違いが分かると、器械の準備がまったく変わってきます。
| 項目 | 機能的端々吻合(FEEA) | DST法 |
|---|---|---|
| 使う器械 | 自動縫合器(リニアステープラー) | 自動吻合器(サーキュラー/CDHなど) |
| 操作の場所 | 小開腹の創から体外で行う | 肛門側から器械を入れて体内で行う |
| つなぎ方 | 腸管の側面どうしを重ねてつなぐ | 腸管の端と端を円形につなぐ |
| 主な適応 | 腸管を体外に引き出せる場合 | 腫瘍が肛門に近く、体外に出せない場合 |
DST法(ダブルステープリングテクニック)という名前は、「ステープル(縫合)を2回使う」ことに由来します。まず①リニアステープラーで肛門側の腸管断端を閉じ、次に②サーキュラーステープラーで腸管どうしを丸くつなぐ——この2段構えの手技だからDST(ダブル=2重)なのです。
【DST法で結腸吻合するのはどのような時?】


DST法が選ばれるのは、腫瘍が肛門に近い(=S状結腸の下部や直腸に近い)場合です。この位置だと、腸管を小開腹の創から体外へ引き出すことができません。そこで、肛門側から器械を入れて体内でつなぐ方法をとります。
器械出し・外回りにとって重要なのは、DST法を行う場合は「経肛門操作」があるということ。つまり、三角ドレープの敷き込み・陰部の消毒・直腸洗浄の準備が事前に必要になります。術前に吻合方法を確認しておくべき理由が、ここにあります。
機能的端々吻合にて結腸吻合を行う場合

①小開腹の創から、残った腸管を長鑷子で引き出します
②腸管の断端は結腸切除時の自動縫合器によって封鎖されているため、鑷子で腸管断端を把持しながら外科剪刀(雑剪・直の外科剪刀)で、ステイプラー部分が残らないように切ります
結腸吻合操作時は「準不潔操作」となります
便汁などの腸管内の内容物などに触れるため、
「清潔度」が下がるからです
そのため、「腸管内に触れた器械」や、「腸内容物に触れた器械」は他の器械とは一緒にせず、分けて保管するようにしましょう
具体的なやり方の例:器械台の一角に「不潔ゾーン」をつくる、専用の膿盆を用意する、ウエットタオルを敷いて区切る——など、目で見て分かる形で分けておくのがコツです。混ざってしまうと、清潔な器械に腸内容がついて手術部位感染(SSI)の原因になりかねません。
③腸管断端の切り口をアリス(もしくは粘膜鉗子)2本で把持します
④同様にもう一方の腸管断端の切り口も③と同じようにアリス(もしくは粘膜鉗子)2本で把持します
⑤腸管を把持している4本のアリス(もしくは粘膜鉗子)を全て上方へ引き上げることで、腸管断端を持ちあげます
⑥それぞれの腸管断端の切り口から、エシュロンやエンドGIAなどの自動縫合器の先端を挿し込みます
⑦自動縫合器の先端を閉じ、余分な組織が巻き込まれていないことを確認します
4本のアリスで持ち上げるのは、腸管の切り口を大きく開いて、ステープラーの先端を入れやすくするためです。器械出しは、アリスを2本ずつ、向きをそろえて渡せるとスムーズです。
吻合前に、腸管がねじれていないかも確認しています。
万が一、腸管がねじれたまま吻合されてしまうと、術後に通過障害(腸閉塞)となる危険性があります。
あわせて術者が確認しているのが腸管の血流です。つなぐ部分の腸に十分な血が通っていないと、縫合不全(つなぎ目がうまくくっつかず、腸内容がもれる合併症)のリスクが上がります。
もうひとつ大事なのが「緊張がかかっていないか」。腸管を引っ張った状態でつなぐと、術後につなぎ目に負担がかかります。脾弯曲まで授動するのは、この緊張をなくすためでもあります。
⑧自動縫合器を作動させ、腸管同士を吻合します(この吻合方法を「機能的端々吻合」と呼びます)
吻合後、使用したアリス(もしくは粘膜鉗子)や腸管内に触れた鑷子が戻ってきます。
これらの器械は不潔なため、膿盆等で受け取り、他の器械と混ざらないようにしましょう。
⑨吻合した腸管の一部(⑥で自動縫合器先端を挿し込んだ部分の腸)が、まだ開通している状態のため、開通している腸管切り口の両側に支持糸をかけます
⑩かけた支持糸を上方へ引っ張り上げながら、腸管が閉鎖されるように自動縫合器で挟みます
⑪自動縫合器先端の上側から、⑨でかけた支持糸と腸管切り口の一部が出ていることを確認した上で、自動縫合器を作動させ、腸管同士を吻合します
ここは「ステープラーを入れるために開けた穴を、最後に閉じる」工程です。支持糸で切り口を引き上げるのは、閉じるラインをまっすぐそろえ、反対側の腸壁を巻き込まないため。器械出しは、支持糸(多くは吸収糸)と持針器をセットで準備しておくと、流れが止まりません。
DST法での結腸吻合を行う場合(肛門側からCDHなどの吻合器を挿入して吻合する方法)

①小開腹の創から腸管を体外へ出します
②口側腸管にCDH吻合器のアンビルヘッドを挿入します
③肛門側からCDH吻合器本体を挿入します
④口側に挿入したCDH吻合器と、肛門側に挿入した吻合器を合体させることで結腸吻合します
もう少しかみ砕くと、こういう流れです。まず口側(お腹側)の腸管に「アンビルヘッド」という円盤状の部品を入れて、巾着縫合で固定します。次に肛門から吻合器の本体を入れ、閉じてある腸管断端を貫いて先端を出します。そしてアンビルヘッドと本体を「カチッ」と合体させ、締めて作動させると、腸管どうしが円形につながり、余分な組織はドーナツ状に切り取られます。
DST法では、吻合器のサイズ選択が重要です。腸管の太さに合わないサイズを使うと、吻合部の狭窄や縫合不全につながります。術者にサイズを確認し、開封前に声出しでダブルチェックしましょう。
作動後は、切り取られたドーナツ状の組織(切除リング)を吻合器から取り出します。この組織が2枚とも全周きれいにそろっているかを術者が確認します。欠けていると、その部分がうまくつながっていない可能性があるためです。器械出しは、取り出したリングを清潔な受け皿に置いて術者に見せられるようにしておきましょう。
また、経肛門操作を行った器械は不潔です。他の器械と混ぜないよう、必ず分けて管理します。
吻合が終わったあと、施設によっては吻合部からの空気もれがないかを確認するテスト(リークテスト)を行うことがあります。骨盤内に生理食塩水をため、肛門側から空気を送って泡が出ないかを見る方法です。実施する場合は、注射器や送気の準備が必要になるため、術者に確認しておきましょう。
腹腔内観察・ドレーン挿入
①腹腔内操作に戻り、出血部位がないか等確認します
②腹腔内洗浄を行います
③必要に応じてドレーンを挿入します
腹腔内をあらためて観察するのは、剥離した面や血管処理をした部分から出血していないかを確かめるためです。気腹の圧で押さえられていた小さな出血が、圧を下げると見えてくることもあります。
左側結腸・直腸の手術では、右側よりも縫合不全のリスクが高いとされています。そのためドレーンは、術後に縫合不全や出血が起きたときにいち早く気づくためのセンサーとして、骨盤内などに留置されることが多くなります。
腹腔内操作に戻る際は、再び腹腔鏡用の鉗子類が必要となるためすぐに渡せるように準備します。
また、小開腹時に使用した器械は術野から下げます。
このとき、吻合操作で使った「不潔ゾーン」の器械は、清潔な器械と混ぜないまま下げることを徹底しましょう。ここでの取り違えが、そのままSSIリスクにつながります。
腹腔内操作に戻る際には、小開腹時に点灯していた無影灯を消すことや、腹腔鏡用モニター本体の操作(気腹の再開、内視鏡カメラ光源の点灯など)が必要となるため、手術の進行に合わせて動けるようにします。
あわせて、腹腔内洗浄に使う温生理食塩水の準備や、ドレーンの種類・サイズの確認も外回りの役割です。洗浄液は冷たいままだと体温低下の一因になるため、加温したものを用意しましょう。
閉腹・腹腔鏡用ポートの閉創~手術終了・退室
①止血確認が終了したら、閉腹します
閉腹前にガーゼカウント・器械カウントを実施し、
体内遺残が無いことを確認します
腹腔鏡手術では、ガーゼが腹腔内に入ったまま気づかれにくいという特徴があります。小さいガーゼを腹腔内に入れた場合は入れた枚数・出した枚数を都度声出しで記録し、閉腹前に必ず全数を回収しましょう。
また、使用済みステープラーのカートリッジ、クリップの残数、針の数、DST法で使ったアンビルや切除リングもカウント・確認の対象です。数が合わない場合は、閉腹を待ってもらい、X線撮影などで確認します。
②手術終了し、麻酔覚醒・退室となります
退室前に、砕石位による下肢のトラブルがないかを必ず確認しましょう。
・下腿の腫れ・硬さ・皮膚の色(コンパートメント症候群の早期サイン)
・足首が動くか・足背のしびれがないか(腓骨神経麻痺の確認)
・支脚器が当たっていた部位の発赤・圧痕
気づいたことは必ず記録し、病棟へ申し送ります。手術時間・体位・除圧の実施状況を伝えることが、術後の早期発見につながります。
術後に注意したい主な合併症
| 合併症 | 術中看護とのつながり |
|---|---|
| 縫合不全(左側は右側よりリスク高) | 吻合部の血流・緊張、吻合器のサイズ選択、準不潔操作の管理 |
| 排尿障害・性機能障害 | 自律神経の温存。剥離の層を保つ操作を術野で支える |
| 尿管損傷 | 剥離の層。尿管確認時の視野確保 |
| 脾臓損傷・出血 | 脾弯曲授動時の牽引。止血材・吸引の準備 |
| 手術部位感染(SSI) | 清潔・不潔操作の区別、直腸洗浄、創部保護 |
| 腓骨神経麻痺・コンパートメント症候群 | 砕石位の固定・除圧・下肢の高さ・手術時間の共有 |
左半結腸・下行結腸切除術(腹腔鏡下)の手術手順【手術室看護師・器械出し看護師・消化器外科医師向け】まとめ
今回は腹腔鏡下での左半結腸・下行結腸切除術の手術の流れについて解説してきました。最後に要点を整理しておきましょう。
- 左側結腸は下腸間膜動脈(IMA)から分岐する左結腸動脈・S状結腸動脈・上直腸動脈が栄養する
- 右側と違う3大ポイントは①砕石位 ②自律神経の温存 ③DST吻合の可能性
- 砕石位では、腓骨神経麻痺(腓骨頭の圧迫)とコンパートメント症候群(下肢挙上による血流低下・内圧上昇)という機序の異なる2つの合併症に注意
- 自律神経(上下腹神経叢・下腹神経など)を温存できるかが、術後の排尿・性機能を左右する
- 器械の名前は「まっすぐ切るのがリニア(自動縫合器)、丸くつなぐのがサーキュラー(自動吻合器)」
- DST法=ステープルを2回使う吻合法。行う場合は三角ドレープ・陰部消毒・直腸洗浄の事前準備が必須
- 左側は縫合不全のリスクが右側より高いため、ドレーン管理と申し送りが重要
各手順に伴い、それぞれ器械出し看護ポイント・外回り看護ポイントがあります。手順を丸暗記するのではなく、「なぜこの操作をしているのか」を理解しておくと、術者の次の動きが読めるようになります。手術室看護師の方や手術の全体像を把握したい医療者の方はぜひ参考にしてください🍈![]()
📚 参考文献
- 大腸癌研究会 編.「大腸癌治療ガイドライン 医師用 2024年版」.金原出版,2024年.
- 山田和彦 編著.「とことん詳しい消化器外科の器械出し」.メディカ出版,2024年.
- 小西敏郎 監修.オペナーシング2023年秋季増刊『オペナースのための予習用術式マニュアル』.メディカ出版,2023年.
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