開腹手術の器械使い分けを解説!!【外科剪刀・鉗子(かんし)】外科手術室看護師 器械出し看護師向け

消化器外科
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開腹手術で使用する外科剪刀と鉗子の使用目的と種類について解説していきます。

外科剪刀

剪刀 使用目的

剪刀はハサミとして、組織を切る際に使用します。

また、切る目的以外にも組織を鈍的に剥離する際にも使用します。

【外科剪刀を使う関連手術】

外科剪刀 種類

直剪刀(外科剪刀・直)

直剪刀は先端が真っすぐのタイプの外科剪刀で、「雑剪(ざっせん)」などとも呼ばれます。

糸やテープ、ドレーンを切る際に使用します。

そのため基本的には術野では使用しません。

【主な使用場面】

  • 手術開始前のドレープを患者に合わせた形に切る
  • 糸・テープ・ドレーンなどの医療材料の切離
  • 外回り看護師が業務内で使用(患者のリストバンドを切る・ストマの画板を切るなど)

クーパー(外科剪刀・曲)

「クーパー」とは外科剪刀の先端が曲がっているタイプのものを指し、長いものと短いものがあります。

長いものは「長クーパー」、短いものは「短クーパー」と呼ばれ、術野の深さに応じて使い分けます。

筋膜や靱帯など硬い組織を切る際に使用します。

また「切る」だけでなく、医師によっては刃先を閉じた状態で組織を剥離する際にも使用します。

【主な使用場面】

・外科開腹術や帝王切開術など、開腹する際、筋膜を切り開く

・靭帯などの硬い組織の切離

・刃先を閉じた状態での組織の剥離

メイヨー 

クーパーと同様、筋膜や靱帯など硬い組織を切る際に使用します。

また皮膚を縫った糸・ドレーン・ドレープを切るためにも使用することがあります。

外科剪刀よりも細く、メッツェンバーム剥離剪刀よりも太い中間のサイズで、先端が真っすぐ(直)のものと、反っている(曲)ものがあります。

【主な使用場面】

  • 筋膜や靭帯の切離
  • 糸・ドレーン・ドレープの切離

メッツェンバーム剪刀

メッツェンバーム剪刀は術野での使用頻度が高いはさみで、血管周囲やリンパ節周囲など、繊細な組織の剥離や切離する際に使用します。

外科開腹手術や開心術などでは必須で、特に結紮の場面で血管を切る際に使用することが多いでしょう。

基本的には先端の反っているタイプのものを使用することがほとんどです。

【主な使用場面】

  • 血管周囲やリンパ節周囲の組織剥離
  • 血管の切離

直角剪刀

直角剪刀は刃先が90°に屈曲しているはさみで、主に胃全摘手術・食道摘出手術・直腸手術・バイパス手術などで使用します。

例えば胃全摘手術や食道手術で食道側を切離したい場合、開腹手術であっても食道あたりを操作する際には術野が狭く、通常の形のはさみでは届きません。

さらに開腹創のできるだけ上縁から食道に到達しようとしても、食道に対して下側(肛門側)から斜めにはさみを入れることになるため、通常の形のはさみでは真っすぐ切離することができません。

この際に、直角剪刀の先端が90°に屈曲している形を利用することで、開腹創から食道を真っすぐ切離することが可能となります。

【主な使用場面】

  • 食道切離
  • 直腸切離

鉗子(かんし)

鉗子(かんし) 使用目的

比較的硬い組織や異物などを把持する際や、止血の際に使用します。

また鉗子には先端に鉤(こう)のある「有鈎(ゆうこう)」のものと、先端に鉤(こう)の無い「無鉤(むこう)」のものの2種類があります。

「無鉤」の鉗子には「鉤がついていないこと」の目印として、鉗子の柄の部分に「横溝」が数本あるものもあります。

鉗子(かんし) 種類

ペアン止血鉗子

柔らかい組織の把持・組織の剥離だけでなく、腸管や血管吻合時の縫合糸やテーピングした糸の把持にも使用します。

ペアン止血鉗子は先端に鉤(こう)が無いのが特徴で、先端が真っすぐ(直)のもの・反っている(曲)のもの・長いもの・短いものがあります。

真っすぐ(直)の長いペアン止血鉗子には「リスター」と呼ばれるものがあり、消化器外科や産婦人科手術で使用されるものがあります。

一方で、短いタイプのペアン止血鉗子をさらに小さくした器械に「モスキートペアン」と呼ばれるものがあり、心臓血管外科での開心術で血管を把持する際・開心術のカニュレーション時にターニクイック(医材)を把持する際・形成外科で組織を剥離する際などに使用します。

【主な使用場面】

  • 組織の剥離
  • 縫合糸・血管テープなどの把持

【ペアンを使用する関連手術】

コッヘル止血鉗子

比較的硬い組織の把持や、筋膜など弾力性に乏しい組織の把持牽引に使用します。

具体的には開腹手術時や帝王切開術での筋膜把持や、子宮摘出手術時の子宮把持などで使用します。

コッヘル止血鉗子は先端に鉤(こう)が有るのが特徴で、先端が真っすぐ(直)のもの・反っている(曲)のもの・長いもの・短いものがあります。

また短いタイプのコッヘル止血鉗子をさらに小さくした器械に「モスキートコッヘル」と呼ばれるものがあり、形成外科手術や開心術での細かい組織把持に使用します。

【主な使用場面】

  • 筋膜把持
  • 子宮などの硬い組織の把持

【コッヘルを使用する関連手術】

ケリー鉗子

血管の把持・組織の剥離・出血点の把持血管のテーピングに使用します。また腹腔鏡手術でのポート挿入時に、ポート挿入部の創部拡張のために使用する場合もあります。

ケリー鉗子の先端はペアン止血鉗子と比べて、繊細で細くなっているため、主に血管のすぐ横の薄い膜を剥離する場面や、血管を露出させてテーピングを行う場面で使用することが多いです。

ケリー鉗子は基本的に、先端の把持部断面は縦に溝が入っている「縦溝」を使うことが多いですが、横に溝が入っている「横溝」タイプのものもあり、横溝ケリーは例えばドレーン挿入時の創拡張で使用する、などで使い分けています。

また、先端がより細いタイプの「先細ケリー」は、より繊細な組織(血管との境目がギリギリの薄い膜を剥離するなど)で使用します。

このようにケリー鉗子は組織の剥離や、血管テーピング時に血管をすくい上げるような操作での使用が多いですが、血管テープ(その他、ベッセルテープ・綿テープ・ドレーン・ネラトンチューブ・ツッペルなど)の、そのものの把持でも重宝します。

【主な使用場面】

  • 血管の把持
  • 血管周囲組織の剥離
  • 血管の露出時
  • 血管テープ・ベッセルテープ・綿テープ・ドレーン・ネラトンチューブ・ツッペルなどの把持

ミクリッツ腹膜鉗子

開腹手術時に切開された腹膜の両側にかけ、腹膜を把持する際に使用します。

開腹時と閉腹時における腹膜把持以外の場面ではほとんど使用しません。

ミクリッツは先端に鉤がついていること・先端が弯曲していること・把持部の断面が横溝であることが特徴です。

【主な使用場面】

腹膜把持

開腹手術の器械【外科剪刀・鉗子(かんし)】まとめ

今回は開腹手術の器械(外科剪刀・鉗子)について解説しました!

器械出し看護師や、消化器外科手術に携わる方はぜひ参考にしてください!

また消化器外科手術の器械出しをマスターしたい方はこちらも参考にしてください!

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