「輸血の種類がいまいち覚えられない…」
「輸液って、生食と乳リンで結局何が違うの?」
「先輩から『出血量と尿量こまめに教えて!』って言われるけど、どうアセスメントすればいいか分からない…」
手術室看護師(オペ看)1年目では、「言葉は聞くけど、その中身や根拠が理解できていない」という状態になりやすいですよね。
特に、赤血球製剤、FFP、晶質液、膠質液など、“似たような言葉”が多く、新人にとっては非常に混乱しやすい領域です。
しかし実際の現場では、輸液・輸血管理は患者の循環状態や生命維持に直結する最も重要でシビアな要素です。ここを理解せずに介助につくことは、患者さんの命を危険に晒すことになりかねません。
この記事では、輸血の種類、輸液の違い、出血量・尿量カウントの本当の意味、術中循環管理の基本を、臨床ですぐに使えるレベルに落とし込んで、新人手術室看護師向けにわかりやすく徹底解説します!
\オペ看1838人のリアルな声/
輸血とは何か?「血を入れる」ではなく「機能を補う」
輸血の目的
輸血と聞くと「血が足りないから血を入れる」と単純に考えがちですが、医学的にはもっと明確な目的があります。主な目的は以下の3つです。
- 酸素運搬能維持:全身の組織・臓器に酸素を届ける力を保つ
- 循環血液量維持:血管内のボリュームを満たし、血圧と血流を保つ
- 凝固能補充:出血を止めるための成分(かさぶたを作る力)を補う
なぜ輸血が必要になるのか?
手術中に大量出血が起きたり、術前から重度の貧血や凝固異常(血が止まりにくい状態)がある場合、患者の命を守るために輸血が必要になります。臓器に酸素がいかなくなれば、数分で不可逆的なダメージ(脳死など)につながります。
👉 新人ナースへのポイント
輸血は「血を入れる」のではなく、「今、この患者に不足している機能(酸素を運ぶ力なのか、血を止める力なのか)を補う」という視点を持つことが重要です。
輸血の種類一覧とそれぞれの役割
手術室で主に扱う3つの輸血製剤について、それぞれの役割と特徴を整理しましょう。
赤血球製剤(RBC)
- 役割:酸素運搬
- 使用場面:出血、貧血
- 特徴・ポイント:Hb(ヘモグロビン)低下時に使用されます。組織の酸欠を防ぐための製剤です。保管は「冷蔵(2〜6℃)」であり、常温に出したら速やかに使用する必要があります。
新鮮凍結血漿(FFP)
- 役割:凝固因子補充
- 使用場面:大量出血、凝固異常、DIC(播種性血管内凝固症候群)
- 特徴・ポイント:血液を固まらせる成分(各種凝固因子)を補い、止血を図ります。保管は「冷凍(-20℃以下)」であり、使用前に解凍機で溶かす(約20〜30分かかる)ため、「すぐには使えない」ことを覚えておきましょう。早めのオーダー確認が必要です。
血小板製剤(PC)
- 役割:止血機能補助(一次止血)
- 使用場面:血小板減少、大量出血による消費性凝固障害時
- 特徴・ポイント:血小板自体を補い、初期の止血を助けます。保管は「室温(20〜24℃)で水平振盪(常に揺らしておく)」です。冷蔵庫に入れてはいけません。
👉 新人ナースへのポイント
輸血の種類は「何を補うための輸血か」「どう保管されているか(すぐ使えるか)」で覚えると、現場での動きがスムーズになります。
輸血の副作用と絶対に防ぐべきリスク
主な副反応(副作用)
他人の血液成分を体内に入れるため、拒絶反応やアレルギーが起こる可能性があります。
- 発熱・アレルギー:蕁麻疹や発熱、掻痒感が比較的よく見られます。
- 溶血反応(ABO不適合など):血液型不適合などで赤血球が破壊される、致死的な重篤反応です。急激な血圧低下や血尿(赤ワイン尿)が見られます。
- TRALI(輸血関連急性肺障害):輸血開始後数時間以内に急性の呼吸困難や低酸素血症を引き起こす合併症です。
- TACO(輸血関連循環過負荷):輸血のスピードが早すぎたり量が多すぎたりして、心不全や肺水腫を起こす状態です。
誤輸血の危険性と対策
患者確認ミスや血液型確認不足による誤輸血は、患者を死に至らしめる最悪の医療事故に直結します。手術室という慌ただしい環境でも、確認作業だけは絶対に省略してはいけません。
👉 新人ナースへのポイント
だからこそ、医師や他の看護師とのダブルチェック(声出し指差し確認)が絶対に必要なのです。「忙しいから」は理由になりません。
輸液とは何か?輸血との決定的な違い
輸液の目的
- 循環維持:血管内の水分ボリュームを保ち、血圧を維持する
- 水分補給:術前からの絶飲食に伴う水分不足を補う
- 電解質補正:体内のイオンバランス(ナトリウムやカリウムなど)を整える
輸液と輸血の違い(新人が混乱するポイント)
ここで一度、違いを明確にしておきましょう。
- 輸液:「水分や電解質」の補充。脱水の改善、血圧の維持、尿を出すために使います。酸素を運ぶ力はありません。
- 輸血:「血液成分(赤血球、血漿、血小板)」の補充。酸素運搬や止血など、水にはできない役割を果たします。
輸液の種類(SEO主軸)と使い分け
手術室で使われる輸液は、大きく分けて「晶質液」と「膠質液」の2つです。この2つの違いを理解することが、術中循環管理の第一歩です。
晶質液(しょうしつえき)とは
- 代表:生理食塩液、乳酸リンゲル液(ソルラクト®など)、酢酸リンゲル液(ヴィーンF®など)
- 特徴:細胞外液(血管内と細胞の間質)を補充するための液です。
- 重要な性質:血管の中に入れても、約3/4〜2/3は血管の外(間質)に逃げてしまいます。そのため、出血した量と同じ量の晶質液を入れても、血圧は十分に上がりません(組織がむくむ原因になります)。
- 用途:術中の基本的な水分補充や、軽度な出血時の初期輸液として用いられます。
膠質液(こうしつえき)とは
- 代表:アルブミン製剤、HES製剤(ボルベン®など)
- 特徴:分子が大きいため血管の壁を通り抜けにくく、血管内にとどまる力(血管内保持効果)が非常に高い液です。
- 重要な性質:入れた量のほとんどが血管内に残るため、効率よく血管のボリュームを増やし、血圧を上げることができます。
- 用途:出血等で血管内のボリュームが急激に低下した際に、効率よく血圧を上げるために使用します。
👉 新人ナースへのポイント
輸液は「投与後、水分がどこに残るか(血管内に留まるか、間質に逃げてむくむか)」で理解すると、麻酔科医がなぜ今その輸液を選んだのかがスッキリ分かります。
手術中の輸液管理と観察ポイント
なぜ術中の輸液管理が必要か
手術中は、麻酔による血管拡張(血圧低下)、術野からの出血、そしてお腹や胸を開けていることによる不感蒸泄(体液喪失)、サードスペース(第3の体液貯留スペース)への水分移動などにより、常に体内の水分バランスが激しく変動します。
観察ポイント
- 血圧・脈拍:水分が足りているかの直接的なサイン。脱水や出血があると、血圧が下がり、それを補おうとして脈が速くなります(頻脈)。
- 尿量:腎臓に十分な血流(水分)がいっているかの指標。臓器に血液が回っているかの重要なバロメーターです。
👉 新人ナースへのポイント
「いま1000mL入れた」という数字を記録するだけでなく、「入れた結果、血圧が上がったか?尿は出始めたか?」と反応を見ることが最も重要です。
出血量カウントの目的と正しいアセスメント
なぜ重要か
出血量の把握は、現在の循環血液量を評価し、輸液や輸血の必要性を判断するための最も重要な指標です。「これくらい出血したから、そろそろ輸血が必要だ」という麻酔科医の判断材料になります。
基本方法
- 吸引量:サクションボトルに貯まった量。
- ガーゼ重量測定:血を吸ったガーゼの重さから、乾いた状態の重さを引いて算出します。(血液1g = 約1mLとして計算)
注意点:洗浄液との区別
術野を洗うために使った「洗浄液(生食など)」がサクションに吸われると、出血量としてカウントされてしまいます。そのため、使用した洗浄液の量を正確に把握し、総吸引量からマイナスする必要があります。
出血量カウントの実際と連携のコツ
吸引量計算の落とし穴
総吸引量 - 使用した洗浄液量 = 吸引による出血量
洗浄液をどれだけ使ったか、器械出し看護師(スクラブ)と外回り看護師(サーキュレーター)でリアルタイムに共有することがミスを防ぐコツです。「いま生食500mL、術野に出しました!」と声に出して伝え合いましょう。
ガーゼ計算の注意点
使用済みガーゼの重量から、乾燥ガーゼの規定重量を引いて計算します。重さを測るタイミングが遅れると、血液が乾燥して軽く(過小評価)なってしまうため、こまめに計量することが鉄則です。
リアルタイムな情報共有
出血量が増えてきたら、聞かれる前に麻酔科医や執刀医へ「現在、出血量◯◯mLです。ガーゼカウントも合っています」と適宜報告(コール)し、チーム全体で状況を共有します。
尿量カウントの目的と「基準値」の意味
なぜ尿量を見るのか
尿量は単なる「おしっこの量」ではありません。尿は腎臓に血液が巡ることで作られます。つまり尿量は、腎臓にどれだけの血液が巡っているか(腎血流量)、ひいては全身の臓器にしっかり血液が回っているか(循環状態)を評価するバロメーターなのです。
尿量の基準値
一般的に、0.5mL/kg/hr 以上が正常な尿量の目安とされています。(体重60kgの患者なら、1時間あたり30mL以上)。これより少ない状態を「乏尿(ぼうにょう)」と呼びます。
👉 新人ナースへのポイント
尿量が出ている=主要臓器への循環が保たれているという重要サインです。
尿量低下(乏尿)で考えるべき3つの原因
尿量が基準を満たさない場合、ただ「出てないですね」と記録するのではなく、以下の原因をアセスメントします。
- ① 腎前性(循環血液量不足・低血圧):脱水や出血で、そもそも腎臓へ行く血液が足りていない。または血圧が低すぎて尿を生成する圧力が足りない状態。
- ② 腎性:腎臓そのものにダメージがある状態。
- ③ 腎後性(カテーテル閉塞など):尿は作られているが、物理的に尿道カテーテルが折れ曲がっていたり、血栓で詰まっていたりして出てこない状態。
👉 新人ナースへのポイント
尿が少ない時、まずは「カテーテルが折れ曲がっていないか(③)」を確認し、問題なければ「血圧は低くないか、出血が多くないか(①)」を確認して麻酔科医に報告する癖をつけましょう。
術中循環管理の基本思考プロセス
循環管理とは何か
一言で言えば、「酸素を含んだ血液を、全身の臓器へ適切に送り続けること」です。
重要指標の「つなげ方」
以下の数値を組み合わせて、患者の状態を立体的に捉えます。
- 血圧・脈拍
- SpO₂(経皮的動脈血酸素飽和度)
- 出血量
- 尿量
👉 新人ナースへのポイント
数字を単独で見るのではなく、“つなげて考える”ことが循環管理の極意です。
例:「出血量が多くなってきたぞ」→「血圧が下がり始め、脈が速くなってきた(代償機構)」→「尿量も減ってきた(腎血流の低下)」→「麻酔科医が輸血(赤血球)と膠質液をオーダーした!」という流れを理解できるようになりましょう。
手術室看護師としての役割と責任
輸血管理における役割
確実なダブルチェックはもちろん、開始後の慎重な観察(最初の5〜15分は重篤な副反応が出やすいため特に注意)、副反応出現時の迅速な報告と対応(直ちに輸血を止め、生理食塩水に繋ぎ変えるなど)を行います。
輸液管理における役割
指示された輸液が正確に投与されているかの確認、ルートの屈曲・抜去や漏れがないか(点滴が皮下漏れしていないか)の管理を行います。腕が布で覆われて見えないことも多いので、定期的に触って確認します。
タイムリーな情報共有
異常値や変化に気づいたら、すぐに麻酔科医や執刀医へ報告します。
👉 新人ナースへのポイント
外回り看護師は単なる「数字をモニターに記録する人」ではありません。全身麻酔下で声を出せない患者の代弁者として、命を守る砦となる役割を担っています。
新人がつまずくポイントとよくあるミス
- 輸液と輸血の違いが曖昧:循環の仕組みや、「血管内に留まるか」という理解が不足していることが原因です。結果として、急変時に「生食」と「アルブミン」のどちらを準備すべきかパニックになります。
- 出血量計算が合わない:洗浄液の使用量をリアルタイムで把握できておらず、後から計算が合わなくなるミスが多発します。「いま洗浄で生食どれくらい使いました?」とスクラブにこまめに聞く癖をつけましょう。
- 数字の意味が分からない:「血圧80台、尿量10mL/hr」と記録するだけで、それが「危険な状態(ショックの兆候)」であることに気づけない。記録することに必死にならず、患者のアセスメントに意識を向けましょう。
指導者向け:効果的な教育のポイント
NGな指導方法
「この輸液の名前を全部覚えてきて」「とにかく出血量の計算式を暗記して」といった、暗記中心の指導はNGです。丸暗記した知識は、緊張する現場では応用が利きません。
OKな指導方法(思考プロセスを育てる)
「出血すると血圧はどうなる?」「アルブミンを入れると血管の水分はどうなる?」など、循環のメカニズムと結びつけて、“なぜそれが必要か”を説明します。常に「Why(なぜ?)」を問いかける指導が効果的です。
最も効果的な教育アプローチ
手術後の振り返りで、実際の麻酔記録を見ながら「あの時、出血量が500mLを超えて血圧が下がったから、麻酔科の先生はHES製剤(膠質液)をオーダーしたんだよ。それでも追いつかないと判断したからRBCの輸血に踏み切ったんだね」と、実践に落とし込んだ説明をすることが、新人の理解を最も深めます。
まとめ
- 輸血には酸素運搬(赤血球)、止血(FFP・血小板)など、種類ごとに明確な役割がある。「何を補うか」を意識する。
- 輸液は血管内や間質の水分・電解質を補い、循環を維持するための基本。晶質液と膠質液の「水分の留まり方」の違いを理解する。
- 出血量・尿量は、患者の全身循環が保たれているかを評価するための極めて重要なサイン。数字単体ではなく、血圧や脈拍とつなげてアセスメントする。
参考文献・引用文献
- 厚生労働省 (2020) 『輸血療法の実施に関する指針(改定版)』.
- 日本麻酔科学会 (2021) 『周術期輸液ガイドライン』.
- メディカ出版 『オペナーシング』各号(周術期循環管理・輸血管理特集).
- 日本輸血・細胞治療学会 (2019) 『科学的根拠に基づいた赤血球輸血ガイドライン』.
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