※医療的判断・看護ケアは、必ず各施設のマニュアル・方針に従って実施してください。手術手順や使用器械は施設により異なる場合があります。
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🫀「大動脈弁置換、次に先生は何をするの?何を準備すればいいの…?」
心臓の中を直接あつかう大動脈弁置換術(AVR)は、少しの遅れが全体の流れに影響するほど繊細な手術です。生体弁と機械弁の違い、弁糸の渡し方、心筋保護——覚えることが多く、器械出しに不安を感じる手術室看護師は少なくありません。
この記事では、AVRの基礎知識・手術手順・弁の縫合や器械出しのポイントを、流れに沿ってわかりやすく解説します。読み終わる頃には、術者の動きが読めるようになっているはずです🍈
AVRは、体外循環(人工心肺)で心臓と肺の働きを肩代わりさせ、心臓を一時的に止めて、傷んだ大動脈弁を人工弁に取り換える手術です。一つひとつの手技が「何のためのものか」を理解しておくと、器械出しがぐっと落ち着いてできるようになります。まずは基礎から整理していきましょう。
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- 【動画でも解説】この記事の内容を動画で
- 大動脈弁置換術(AVR)とは?基礎知識
- 大動脈弁の種類|生体弁と機械弁の違い
- 手術を理解する3つのキーワード
- 術中経食道心エコー(TEE)の役割
- 手術前の準備
- 皮膚切開・胸骨正中切開・心膜切開
- カニュレーション(送血・脱血・ベントの管を入れる)
- 大動脈遮断・心筋保護(心臓を止めて守る)
- 大動脈切開・大動脈弁の切除
- 弁輪部の石灰除去
- 弁サイズの計測・人工弁の準備
- 人工弁の縫合|弁糸のかけ方と器械出しのコツ
- 弁の開閉確認・大動脈縫合・エア抜き
- 大動脈遮断の解除・自己心拍の回復
- 体外循環からの離脱・止血・閉胸
- 器械出し看護のポイント総まとめ
- 外回り看護のポイント
- 術後の主な合併症と観察ポイント
- よくある疑問(オペ看Q&A)
- まとめ|大動脈弁置換術(AVR)の要点
【動画でも解説】この記事の内容を動画で
この記事の内容は動画でも解説しています。通勤中や休憩中の予習・復習にどうぞ。
大動脈弁置換術(AVR)とは?基礎知識

大動脈弁置換術(Aortic Valve Replacement:AVR)とは、傷んで機能しなくなった大動脈弁を、人工弁に取り換える手術です。大動脈弁は、心臓(左心室)から全身へ血液を送り出す“出口”にある弁で、血液が逆流しないように一方通行の流れを作る扉の役割をしています。
大動脈弁の解剖をざっくり整理
大動脈弁は、通常3枚の弁尖(べんせん=弁のひら)からできています。それぞれ右冠尖・左冠尖・無冠尖と呼ばれ、この3枚がぴったり閉じたり開いたりすることで、血液の流れをコントロールしています。右冠尖・左冠尖の根元付近には、心臓自身を養う冠動脈の入り口(冠動脈口)があり、弁の操作ではこの冠動脈口を傷つけないことも重要になります。
どんな病気で行われる?(AS・AR)

大動脈弁の病気は、大きく「開きが悪くなる(狭窄)」と「閉じが悪くなる(閉鎖不全)」の2つに分けられます。
| 病気 | どんな状態? |
|---|---|
| 大動脈弁狭窄症(AS) | 弁がきちんと開かず、血液の出口が狭くなる。先天性の二尖弁や、加齢による動脈硬化(石灰化)が原因になりやすい |
| 大動脈弁閉鎖不全症(AR) | 弁がしっかり閉じず、送り出した血液が左心室へ逆流する。逆流量が多いと左室が拡大し、収縮力が低下する |
これらが進行すると、息切れ・胸痛・失神・心不全などを起こすため、手術で弁を取り換える必要があります。とくに大動脈弁狭窄症は、症状が出てからは急速に進行しやすいため、適切なタイミングでの手術が重要とされています。近年は、開胸せずカテーテルで弁を留置するTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)という方法も広く行われるようになりましたが、本記事では開胸して行う標準的なAVR(外科的大動脈弁置換術)の流れを解説します。
なお、大動脈弁狭窄症の原因のひとつに二尖弁(にせんべん)があります。通常は3枚ある弁尖が、生まれつき2枚しかない状態で、若い年代でも弁が傷みやすく、狭窄や閉鎖不全を起こしやすいのが特徴です。手術では、こうした患者さんごとの弁の形の違いにも対応していきます。
大動脈弁の種類|生体弁と機械弁の違い

人工弁には、大きく生体弁と機械弁の2種類があります。どちらを選ぶかは、患者さんの年齢やライフスタイル、抗凝固薬を続けられるかなどを考慮して決められます。器械出し看護師も、両者の違いを知っておくと準備の意味が理解できます。
| 生体弁 | 機械弁 | |
|---|---|---|
| 素材 | ウシの心膜・ブタの大動脈弁など | パイロライトカーボン・チタンなど |
| 耐久性 | 10〜20年程度(若年ほど劣化が早い傾向) | 半永久的に使用可能 |
| 抗凝固薬(ワーファリン) | 原則、生涯の服用は不要 | 生涯の服用が必要 |
| 向いている人 | 高齢者、出血リスクが高い人、妊娠希望のある人など | 若年者、再手術を避けたい人など |
生体弁の特徴
生体弁は、主にウシの心膜やブタの大動脈弁で作られた人工弁です。生体になじみやすく、血液に触れても血栓ができにくいため、抗凝固薬「ワーファリン」を生涯飲み続ける必要が原則ありません。ただし、機械弁に比べると時間とともに劣化するため、いずれ弁を取り換える再手術が必要になることがあります。耐久年数はおおむね10〜20年程度で、若い患者さんほど劣化が早い傾向があります。
近年は、生体弁が劣化した場合でも、再開胸せずにカテーテルで新しい弁を古い弁の中に入れる「TAVI-in-SAV(バルブ・イン・バルブ)」という方法が選べるケースも出てきました。こうした将来の選択肢の広がりもあり、以前より生体弁を選ぶ患者さんが増えています。どちらの弁にもメリット・デメリットがあり、患者さんの価値観も含めて選ばれます。
機械弁の特徴
機械弁は、パイロライトカーボンやチタンなどの丈夫な素材で作られた人工弁です。摩耗や劣化がほとんどなく、半永久的に使えるのが最大のメリットです。一方で、血液が機械弁に触れると血栓ができやすいため、生涯にわたって抗凝固薬(ワーファリン)を飲み続ける必要があります。飲み忘れると血栓による脳梗塞や弁の動作不良につながるため、内服管理がとても重要です。
ワーファリンは、食事(納豆やクロレラなどビタミンKを多く含む食品)や他の薬の影響を受けやすく、定期的に血液検査(PT-INR)を行って効き具合を調整する必要があります。そのため、機械弁を選ぶ場合は、患者さんが生涯にわたって内服と通院を続けられるかという生活面も含めて検討されます。器械出し・外回りとしても、こうした背景を知っておくと、患者さんへの説明や術後の関わりに活かせます。
生体弁と機械弁、どうやって選ぶ?
どちらの弁を選ぶかは、一つの正解があるわけではなく、患者さんの年齢・生活・希望などを総合して決められます。一般的な考え方の目安は次のとおりです。
- 生体弁が向いている:高齢の方、出血リスクが高くワーファリンを避けたい方、妊娠を希望する方、内服・通院の継続が難しい方
- 機械弁が向いている:若年で再手術をできるだけ避けたい方、ワーファリンの管理を続けられる方
ガイドラインでも、年齢などを目安にしつつ、最終的には患者さんと医師がよく相談して決めることが重視されています。「若いから機械弁」「高齢だから生体弁」と一律に決まるわけではなく、その人の暮らし方に合わせて選ばれるのです。
手術を理解する3つのキーワード

AVRを理解するには、次の3つのキーワードを押さえておくと、術者の動きが読めるようになります。
① 体外循環(人工心肺)
心臓を止めて弁を操作するため、心臓と肺の働きを一時的に機械(人工心肺)が肩代わりします。血液を体から抜いて(脱血)、酸素を加えてから体へ戻す(送血)ことで、心臓が止まっている間も全身に血液が流れ続けるようにします。人工心肺の操作は臨床工学技士(CE)が担い、チームで連携して進めます。
人工心肺は、脱血した血液をためる貯血槽、血液に酸素を加える人工肺、血液を送り出すポンプ、血液の温度を調整する熱交換器などで構成されます。体外循環を始める前には、ヘパリンという血液を固まりにくくする薬を投与し、回路の中で血液が固まらないようにします。器械出し・外回りともに、この体外循環チームとの息の合った連携が、手術の安全性を大きく左右します。
② 大動脈遮断(だいどうみゃくしゃだん)
弁を取り換えるには、心臓を止めて、大動脈を切り開く必要があります。そのために、大動脈遮断鉗子で上行大動脈をはさんで血流を止め(大動脈遮断/クロスクランプ)、心臓側と全身側を仕切ります。これにより、心臓を止めて弁を操作しても、体へ送る血流(人工心肺からの送血)と混ざらないようにできます。
ここが弓部大動脈の手術との大きな違いです。弓部の手術では、弓部そのものを操作するため一時的に全身の血流を止める「循環停止」が必要になりますが、AVRでは大動脈遮断より下流(末梢側)は人工心肺が血液を送り続けているため、脳や体は血流が保たれた状態が続きます。つまりAVRでは、止めるのは「心臓(と遮断部より中枢側)だけ」で、全身は循環が保たれているのです。この違いを理解しておくと、AVRの安全性の考え方が見えてきます。
③ 心筋保護(しんきんほご)
心臓を止めている間、心臓の筋肉(心筋)が酸素不足でダメージを受けないように守るのが心筋保護です。心筋保護液(カリウムなどを含む冷たい液)を心臓に流し込むことで、心臓の動きを止めながら、心筋を守った状態を保ちます。心筋保護液の流し方には2つあります。
- 順行性心筋保護:大動脈の根元や冠動脈の入り口(冠動脈口)から、血液の流れと同じ向きに保護液を流す方法
- 逆行性心筋保護:冠静脈洞(かんじょうみゃくどう=心臓の静脈の出口)にレトロカテーテルを入れ、逆向きに保護液を流す方法。冠動脈が狭い患者さんでも、心臓の広い範囲に保護液を届けやすい
⚠️ レトロカテーテルは「心臓」を守るためのもの
逆行性心筋保護に使う「レトロカテーテル」は、冠静脈洞に入れて心筋保護液を流し、心臓(心筋)を守るためのものです。名前が似た「逆行性脳灌流(RCP/上大静脈から脳を守る)」とはまったく別の技術なので混同しないようにしましょう。なお、通常のAVRでは弓部大動脈の手術のような循環停止や脳分離カテーテルは使いません。人工心肺が全身へ血液を送り続けるため、脳や体は保護された状態が保たれます。
術中経食道心エコー(TEE)の役割
心臓弁膜症の手術では、経食道心エコー(TEE)が欠かせません。TEEは、食道に細いプローブ(超音波の管)を入れて、心臓を後ろ側から詳しく観察する検査です。麻酔導入後に挿入され、手術の各場面で重要な情報を提供します。看護師も、TEEが「何を見ているか」を知っておくと、手術の流れが理解しやすくなります。
- 手術前:弁の傷み具合(狭窄・逆流の程度)や、ほかの弁の状態を最終確認する
- 手術後:新しい人工弁がきちんと開閉しているか、弁のすき間からの漏れ(弁周囲逆流)がないかを確認する
- エア抜きの確認:心臓の中に空気が残っていないか(空気塞栓の予防)を確認する
🔎 なぜTEEで“やり直し”が減るの?
TEEを使うと、手術が終わる前に人工弁の動きや漏れを確認できます。もし問題が見つかれば、閉胸する前に修正できるため、再手術のリスクを減らせます。とくに弁膜症手術では、TEEは「もう一つの目」として手術の質を支えています。外回りはプローブの準備や、食道損傷などの合併症にも配慮します。
手術前の準備
AVRは体外循環を使うため、通常の手術より準備する物品・機器が多くなります。
- 術野準備:前胸部〜膝下までを広範囲に消毒します(緊急時に足の付け根の血管から体外循環を確立する可能性などに備え、広めに消毒します)
- ドレーピング:滅菌ドレープで覆い、胸骨正中切開予定部にイソジンドレープを貼付します(方法は施設により異なります)
- 器械・機器のセッティング:電気メス・サクション・開胸鋸・体外循環関連機器・各種デバイスを準備します
- 体位:基本は仰臥位。長時間手術になりやすいため、除圧・体温管理にも配慮します
🔎 外回り看護ポイント
AVRでは人工弁(生体弁・機械弁)を清潔野へ渡す場面があります。開封時は種類・サイズ・患者指定を器械出しと声出しでダブルチェックしましょう。人工弁は非常に高価で、開封後の交換は大きな負担になります。あわせて、輸血・血液製剤や、除細動器・ペースメーカー関連の準備状況も確認しておきます。
皮膚切開・胸骨正中切開・心膜切開
皮膚・筋膜の切開
- 胸骨の正中を確認し、胸骨上窩から剣状突起の約3横指下まで皮膚を切開する
- 電気メスで皮下組織・筋膜を順に切開し、胸骨を露出する
胸骨正中切開

- 胸骨鋸(開胸鋸・スターナムソー)で上縁から下縁へ胸骨を切開する
- ランゲンベック扁平鉤や三爪・四爪鈍鉤で胸骨を展開する
- 開胸器を装着し、視野を確保する
- 骨髄止血剤(ボーンワックス)や電気メスで骨髄を止血する
🔎 器械出し看護ポイント|胸骨鋸
胸骨鋸は使用前に必ず作動確認を行い、作動しない場合はバッテリーを交換します。安全対策として、使用直前までバッテリーを外す、または「作動オフ」にしておきましょう。切開後はボーンワックスや電気メスで骨髄止血を補助します。




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