挿管困難どう対応する?手術中の緊急対応や全身麻酔中の気道確保を解説

麻酔・外回り看護
この記事は約4分で読めます。

※この記事はPRを含みます

手術室や救急現場では、予期せぬ困難に直面することがあります。その中でも「挿管困難」は、看護師や医師にとって命に直結する重要な課題です。特に手術室看護師や救急看護師、緊急対応に不慣れな看護師にとっては、不安や緊張を伴う場面でしょう。

本記事では「挿管困難とは何か」「どのような症例がリスクになるのか」「現場でどのように対応するのか」について、実体験を交えながら解説します。

挿管困難とは何か

挿管困難とは、通常の方法で気管挿管が難しい、または不可能な状態を指します。気道の確保が困難になると、酸素化不良により命の危険に直結するため、迅速かつ適切な対応が求められます。

挿管困難の原因

肥満、首が短い、顎が小さい、頸椎可動域制限などが典型的なリスク因子です。

また、口腔や咽頭の構造的な問題、腫瘍や外傷による変形も原因となります。例えば私が経験した症例では、頸椎損傷の既往を持つ患者さんで首の伸展が難しく、通常の喉頭鏡での挿管ができませんでした。

このときはエアウェイスコープを使用して無事に気道を確保できました。

事前準備の重要性

術前評価で挿管困難が予測される場合には、エアウェイスコープやマックグラスといった特殊器具を最初から準備します。また、肥満患者では麻酔薬の使用量も増加するため、ロクロニウムなど筋弛緩薬の投与量を調整する必要があります。

以前、体重100kgを超える患者さんに通常量で投与したところ、十分な筋弛緩が得られず再投与を行った経験がありました。準備段階でのアセスメントが重要になることを痛感しました。

挿管困難時の対応

挿管がうまくいかない場合は、無理に続けるとさらに危険を招きます。次のステップを冷静に踏むことが大切です。

マスク換気ができない場合

基本的にはマスク換気で酸素化を図りますが、これすらできないケースがあります。私自身も、一度患者の顎が小さくマスクフィッティングが困難で酸素化が進まず、SpO2が急激に低下したことがありました。この時はラリンジアルマスクを挿入し、何とか換気を確保することができました。

ラリンジアルマスクも使用できない場合

稀ですが、ラリンジアルマスクの挿入すらできないことがあります。その場合、緊急で気管切開を行う必要があります。現場では「DAMカート」と呼ばれる困難気道対応カートに、緊急気管切開用のキットが常備されています。実際に私の勤務先でも、一度ラリンジアルマスクが入らず酸素化が困難になり、気管切開キットを準備する場面がありました。最終的にはファイバースコープでの挿管が成功し、気管切開には至りませんでしたが、準備の大切さを痛感しました。

使用する器具と薬剤

挿管困難気道管理では、使用する器具や薬剤の知識が重要です。

主な器具

  • エアウェイスコープ
  • マックグラス
  • 喉頭鏡
  • 各サイズの気管チューブ
  • スタイレット
  • ブジー
  • マギール鉗子
  • カフシリンジ
  • ラリンジアルマスク
  • ファイバースコープ

マギール鉗子は特に経鼻挿管時に有用です。私の経験では、曲がったチューブの先端を鉗子で誘導し、確実に気管内に挿入できたことがありました。適切な使用方法を知っておくことが、安全な挿管に直結します。

薬剤セットの準備

緊急時に必要な薬剤としては、以下が代表的です。

  • アドレナリン(エピネフリン)
  • ノルアドレナリン
  • アミオダロン
  • ボスミン
  • ネオシネジン
  • バイフェドリン

過去に心停止に至った症例では、アドレナリンとアミオダロンを複数回使用しました。麻酔記録を振り返り、実際に使用頻度が高い薬剤をリスト化しておくことは、今後の備えとして非常に有効です。

看護師ができる役割

困難気道への対応は医師だけでなく、看護師の迅速な補助が不可欠です。

物品準備と連携

挿管困難が予測される患者では、必要な器具を事前にカートへまとめておくことが重要です。以前、私が新人の頃、準備不足でスタイレットを探している間に挿管が難航したことがありました。先輩から「看護師の段取りが患者を救うこともある」と言われたことを今でも覚えています。

緊急時の動き方

緊急時は医師の指示を待つだけでなく、自ら判断して必要物品を用意する姿勢が求められます。例えば、マスク換気が難しいと分かった時点でラリンジアルマスクや気管切開キットを手元に準備することが大切です。私自身も一度、状況を先読みして準備を整えていたことで、医師から「助かった」と言われた経験があります。

まとめ

挿管困難は決して珍しい状況ではなく、誰もが遭遇する可能性があります。大切なのは「事前準備」「冷静な対応」「チームでの連携」です。手術室看護師や救急看護師、緊急対応に不慣れな看護師であっても、知識と経験を積み重ねることで確実に対応力は高まります。日々の業務の中で「もし今、挿管困難が起きたらどう動くか」を意識し続けることが、現場での大きな力になるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました