「たくさんある心不全治療薬の違いが分からない・・・」
「急性心不全と慢性心不全に使う薬の違いを知りたい」
「心不全治療薬が覚えられない・・・」
このように思う循環器系医療者や、国家試験勉強中の受験生などは
ぜひ記事を参考にしてください!
心不全治療のポイント【心不全の診断と治療】
患者が心不全状態となっている場合、
☆心不全の原因
☆心不全の憎悪因子
を正確に把握した上で治療を開始する必要があります
また心不全が起きている原因には大きく分けて2つあり、
①拡張障害による心不全
②収縮障害による心不全
が挙げられます
拡張障害による心不全
拡張障害によって心不全が起きている場合は
有効な治療方法がないため、「起きないように予防していく」ことがより重要となります
収縮障害による心不全
収縮障害によって心不全が起きている場合は
「交感神経系」や「レニン・アンギオテンシン系」の亢進が生じており
この「神経体液因子の抑制」が予後を改善します
心不全治療薬の種類
心不全治療薬には大きく分けて2種類あり
①心不全によって起きている症状を改善する薬
②心不全の原因そのものを改善する薬
があります
心不全の症状を改善する薬【急性心不全治療薬】
心不全によって起きている症状の改善として
主に「うっ血を解除する治療」として使われます
心不全の苦痛を取り除くことや、命を救うための薬でもあるため
「急性心不全治療薬」として用いられることが多い薬です
【具体的な急性心不全治療薬】
・利尿薬
・血管拡張剤
・強心薬
・不整脈や頻拍の調整
心不全の原因を改善する薬【慢性心不全治療薬】
心不全の病態である「心不全の原因」・「心不全の状態」改善のためと
「神経体液性因子による病態悪化の抑制」のために使用される薬です
この薬は「慢性心不全治療薬」の中心となります
【具体的な慢性心不全治療薬】
・アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
・アンジオテンシンⅡ受容体遮断薬(ARB)
・β遮断薬
・抗アルドステロン薬
急性心不全治療薬 種類
ループ利尿薬
強力な利尿作用を持つ薬で、利尿薬の第一選択となります
ループ利尿剤の慢性投与では遠位尿細管の細胞肥大を通じて
腎機能障害やナトリウムの再吸収の遠位シフトが生じます
【代表的なループ利尿薬】
・フロセミド(ラシックス)
・アゾセミド(ダイアート)
・トラセミド(ルプラック)
注意すべき副作用としては
☆低カリウム血症
☆腎機能障害
☆神経体液性因子の過剰な分泌
などが挙げられます
サイアザイド系利尿薬
遠位尿細管でのナトリウムの再吸収を抑制し、ナトリウム利尿をもたらし
降圧剤として多く用いられます
【代表的なサイアザイド系利尿薬】
・トリクロルメチアジド(フルイトラン)
・インダパミド(ナトリックス)
・ヒドロクロロチアジド(ダイクロトライド)
副作用としては
☆低ナトリウム血症
☆皮膚症状などの過敏症
☆めまいや頭痛
などが挙げられます
バソプレシン拮抗剤
ループ利尿薬耐性の症例に対する利尿効果をもたらす内服薬です
脳下垂体から分泌されるバソプレシンのV2受容体(水分だけを再吸収する受容体)を阻害することで
尿管からの水分吸収を抑制し、電解質を失わずに利尿を増やすことができます
特に、水分だけを排出するため
低ナトリウム血症を是正することができ、心不全によるうっ血で低下した
血漿浸透圧を正常化することで血管外から血管内へ水分を移動させ
血管外のうっ血を解除しながら血管内の血液量を保持することができます
【代表的なバソプレシン拮抗剤】
・トルバプタン(サムスカ)
慢性心不全治療薬 種類
アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
「すべての心不全患者に投与してもよい」というほどの、心不全の基本薬となります
心不全治療薬としての豊富なエビデンスがあり、血管拡張によりうっ血を解除する効果もあります
注意すべき副作用としては
☆急激な血圧低下
☆腎機能悪化
☆血清カリウム上昇
などが挙げられます
アンギオテンシンⅡ受容体遮断薬(ARB)
アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)とほとんど同等の効果を発揮する薬です
アンギオテンシンⅡ受容体遮断薬(ARB)も心不全治療薬としての豊富なエビデンスがあり、血管拡張によりうっ血を解除する効果もあります
注意すべき副作用もアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)と同じですが
☆急激な血圧低下
☆腎機能悪化
☆血清カリウム上昇
などが挙げられます
β遮断薬
β遮断薬は「心臓にある交感神経の働きを抑制する薬」のことです
β遮断薬の使用により、心不全はややうっ血状態に傾くため、
使用のポイントとしては
利尿剤で体液を減らした上で、少量ずつ投与し、増量していくことが重要となります
【代表的なβ遮断薬】
・カルベジロール
・ビソプロロール
β遮断薬使用の禁忌としては
☆気管支喘息がある場合
☆房室ブロックや脚ブロックがある場合
が挙げられます
抗アルドステロン薬
遠位尿細管の遠位部に働きカリウム保持性があるため、カリウムを排泄しない利尿薬です
神経体液性因子のレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系と競合的に働く利尿剤の第2選択薬です
【代表的な抗アルドステロン薬】
・スピロノラクトン(アルダクトン)
・エプレレノン(セララ)
注意すべき副作用としては
高カリウム血症が挙げられます
心不全治療薬 まとめ
心不全の基本的な薬には
「心不全によって起きている症状を改善する薬」と
「心不全の原因そのものを改善する薬」の2種類があり、
それぞれ急性心不全と慢性心不全に使われます
循環器医師や看護師、また国家試験の受験勉強中の学生は
ぜひ記事を参考にしてください
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