「術中の看護計画って何について立案すれば良いの?」「全身麻酔で寝ている患者さんに、できる看護はあるの?」このように思うオペ室看護師の方も多いのではないでしょうか。
この記事では術中の看護計画の立案方法や、手術看護の実践方法について解説します。
- 術中の看護計画は何について立案するのか
- 立案した看護計画に沿って、実際にどのように看護介入するのか
手術看護は病棟での看護に比べると特殊なため、看護介入方法も異なります。
そのため、手術室の現場で実際に立案している看護計画をご紹介します。
オペ室看護師の勉強用としてぜひ参考にしてください。
また周術期の実習をしている看護学生の方も参考にしていただける内容となっています。

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術中の看護計画はどう立てる?大きなポイントは3つ!
手術中の看護計画を立てる上での大きなポイントは3つあります。
- 麻酔による全身状態への影響を考えること
- 手術体位による皮膚・神経状態への影響を考えること
- 手術への不安を抱える方が大多数であること
これらのポイントを踏まえた上で、手術患者さんに必要な看護計画を立案することが重要です。
以下では3つのポイントをそれぞれ詳しくみていきましょう。
具体的な術中の看護計画
麻酔による呼吸・循環変動への看護
手術を行う上で欠かせないものが「麻酔」です。
例えば全身麻酔の場合は、麻酔の影響により呼吸状態や循環動態へ影響を及ぼすため、呼吸・循環へのアセスメントと看護計画立案が必要です。
具体的には以下のような影響があります。
【呼吸への影響】
- 麻酔薬は呼吸中枢を抑制するため、自発呼吸が低下または停止する
- 気道確保が困難になり、無呼吸のリスクが高まる
- 麻酔ガスや筋弛緩薬により気道閉塞が起こりやすくなる
- 適切な人工呼吸管理が必須となる
【循環への影響】
- 麻酔薬は血管を拡張させ、血圧低下を引き起こす
- 心機能が低下し、不整脈や徐脈などのリスクがある
- 血液濃縮による血液粘度上昇で血行動態が悪化
- 体液バランスの変化により循環血液量が減少する
このように、全身麻酔下では呼吸循環動態の変化が避けられません。そのため、外回り看護師は麻酔科医師とともに常に患者のバイタルサインをモニタリングし、適切な呼吸・循環管理を行う必要があります。
さらに全身麻酔は呼吸・循環動態への変化だけでなく、体温調節機能に影響を及ぼし、体温の変化を引き起こす可能性があります。主な理由は以下の通りです。
- 代謝の低下
全身麻酔薬は新陳代謝を抑制し、熱産生を減少させます。この結果、体温が低下しやすくなります。 - 血管拡張
一部の麻酔薬は血管を拡張させ、末梢循環を増加させます。これにより、体熱の放散が促進され、体温が低下する可能性があります。 - 低体温誘発作用
特定の麻酔薬(例えば、プロポフォール)には直接的な低体温誘発作用があり、体温調節中枢に作用して体温を低下させます。 - 発汗抑制
全身麻酔下では発汗が抑制されるため、熱放散が阻害され、体温上昇の可能性があります。 - 筋肉の弛緩
筋肉の弛緩により、震えによる熱産生が低下し、体温が低下しやすくなります。
このように、全身麻酔は体温に複雑な影響を及ぼすため、周術期には体温のモニタリングと適切な体温管理が重要になります。
そのため全身麻酔を受ける患者さんに対しては、呼吸・循環・体温などの観察計画(OP)が重要です。
手術の麻酔については非常に奥が深いため、以下の記事も参考にしてください。
皮膚トラブル・神経損傷への予防看護
「皮膚トラブル・神経損傷への予防看護」は実施頻度の高い手術看護の1つです。
手術は同一体位で行われることが多いため、手術時間に比例して、皮膚や神経が圧迫されるケースが多いです。
皮膚や神経の圧迫に伴い、発赤(ほっせき)や褥瘡(じょくそう)と呼ばれる皮膚トラブルや、術後に手指のしびれや四肢の動かしにくさを生じる神経損傷などが起こりえます。
【術中の看護計画 例文】では、この「皮膚トラブル・神経損傷予防」を例に術中看護計画を立案してみます。
手術への不安軽減
手術を受ける患者さんは不安を抱える方が大多数です。
不安軽減の看護計画としては具体的に以下のようなものが挙げられるでしょう。
【観察計画(OP)】
- 術前訪問時の患者表情の観察
- 術前訪問時の手術に対する患者の発言
- 手術室入室時の患者の表情や動作(中には涙を流して入室される方や恐怖で震えている方もいらっしゃいます)
など
【援助計画(TP)】
- 術前訪問時に手術への思いを傾聴する
- 術前に必要に応じて執刀医と手術について話す時間を設ける
- 入室時から声かけやタッチングを行い不安軽減への看護介入を行う
- 麻酔導入時に患者の手を握る
【教育計画(EP)】
- 手術について分からないことは遠慮なく教えてほしいことを伝える
- 手術の不安があればいつでもお話してほしいことを伝える
【術中の看護計画 例文】皮膚トラブル・神経損傷予防
ここでは例文として「皮膚トラブル・神経損傷予防」の術中看護計画を立案してみます。
看護目標
術中に皮膚トラブル・神経損傷を起こさない
観察計画(OP)
皮膚トラブル・神経損傷予防の観察計画(OP)には以下のようなものが挙げられます。
- 術前の皮膚状態の観察
- 手術前後での皮膚変化の有無
- 術前の神経損傷の有無(麻痺・しびれの有無)
- 手術前後での神経損傷の有無
- 術前の可動域範囲の確認
術前の皮膚状態の観察

手術開始前に患者の皮膚状態を観察します。
もともと発赤・褥瘡・擦過傷などがある場合は、その部位と大きさを手術看護記録に残し、術前後で変化が無いか観察します。
手術前後での皮膚変化の有無
手術の前後で患者の皮膚状態に変化が無いかを確認します。
万が一、もともと正常だった皮膚に発赤などが生じた場合は、色や大きさを観察して手術看護記録に残し、病棟看護師へ申し送ります。
また必要に応じて皮膚トラブル発生部位を写真に残し、担当した手術室看護師や執刀医とも共有します。
術前の神経損傷の有無(麻痺・しびれの有無)
患者既往歴に伴い、術前に麻痺やしびれなどの神経症状が無いかを確認します。
また術後、症状が悪化していないかを確認します。
手術前後での神経損傷の有無
手術前後で神経損傷の有無が無いかを確認します。
万が一、手術後に「手指にしびれがある」「足が動かない」などの症状が生じた場合には、速やかに執刀医へ報告し、病棟看護師と情報共有を行います。
また術後訪問を継続し、症状の経過を観察し、状況に応じて追加の治療が必要となる場合もあります。
術前の可動域範囲の確認
手術前に患者の可動域範囲を確認しておきます。
例えば砕石位の場合は、両足を開く体位となるため、股関節に可動域制限が無いかどうか、側臥位の場合は上肢の可動域制限が無いかどうか、などを確認します。
援助計画(TP)
皮膚トラブル・神経損傷予防の援助計画(TP)には以下のようなものが挙げられます。
- 褥瘡(じょくそう)好発部位の除圧を考慮した手術ベッド作成
- 褥瘡好発部位への皮膚保護剤の塗布
- 良肢位(りょうしい)での体位固定
- 術中の置きなおし・除圧
褥瘡(じょくそう)好発部位の除圧を考慮した手術ベッド作成

基本的には、「ベッドと接する、脊柱の突起部位や骨の出ている部位」が褥瘡の好発部位となります。
例えば仰臥位の場合は、仙骨部や両肩、踵骨部位などが皮膚トラブルの起こりやすい部位です。
特に側弯症のある患者さんや、術前から低栄養状態かつBMIが17以下の患者さん、10時間以上の長時間手術を行う患者さんなどは、褥瘡リスクへのアセスメントを十分に行う必要があります。
十分にアセスメントを行った上で、褥瘡発生リスクのある部位の除圧を考慮したベッド作成を行います。
例えば、仰臥位手術で「仙骨部の圧迫リスクが高い」とアセスメントを行った場合は、
・ベッド作成時に仙骨部位へピュアフィックスなどの除圧グッズを挿入する
・ソフトナースなどの除圧グッズを使用してベッド作成を行う
などの看護計画を立案します。
褥瘡好発部位への皮膚保護剤の塗布
手術前に、あらかじめ褥瘡好発部位に皮膚保護剤を塗布することも効果的です。
皮膚保護剤には、ワセリンやリモイスバリア©などを使用します。
皮膚保護剤を塗布するタイミングとしては、
・手術室入室前に、あらかじめ病棟で塗布してくる
・手術室へ入室後、ベッドに座ってもらい塗布する
・硬膜外麻酔後に横を向いた状態で塗布する
・麻酔導入後~手術開始前に塗布する
などが挙げられます。
良肢位(りょうしい)での体位固定
関節可動域を考慮した、体位固定を行います。
無理な伸展は神経損傷につながるため、できるだけ自然に近い形で体位固定を行うことが望ましいです。
特に術前から「腕が上がりにくい」「足が開きにくい」などの患者情報がある場合は、注意が必要です。
全身麻酔に伴う筋弛緩薬(ロクロニウムなど)が投与されると、通常時よりも可動域範囲が広くなり、術前に動かしにくかった上肢や下肢を動かしやすくなることがあります。
しかし手術前(筋弛緩薬投与前)の関節可動域を超えて、伸展した状態で体位固定を行うと、手術後(麻酔の効果が無くなった後)に関節痛が出現します。
そのため無理な伸展を行わず、患者さんの関節可動域に合わせた体位固定が重要となります。
術中の置きなおし・除圧
「置きなおし」といって、一定時間を超えた同一部位への圧迫を避けるために圧を逃がすケアが重要です。
「置きなおし」は「背抜き」や「除圧」などと表現されることもあります。
例えば仰臥位時に置きなおしを行う場合は、患者さんの腰背部とベッドマットの間に手を入れることで、同一部位にかかる圧を一時的に逃がすことができます。
長時間手術の場合は、時間を決めて実施することが重要ですが、置きなおしに伴い術野が動き、手術操作に影響する恐れもあるため、実施前には執刀医に声をかけてから行うことが重要です。
教育計画(EP)
肩や腰などに痛みが出現した場合は我慢せずに看護師に伝えるように説明する
術中の体位固定に伴い、術後に肩や腰などに痛みが出現する場合があります。
特に砕石位の場合は股関節周囲に、側臥位や腹臥位の場合は上肢に痛みが出るケースがあるため、その場合は我慢せずに看護師に伝えてほしいことを説明します。
手指にしびれや上下肢の動かしにくさを感じた場合は看護師に伝えるように説明する
同様に、術中の体位固定に伴い神経圧迫を生じるケースもあります。
特に上肢や下肢に神経圧迫を引き起こすことが多く、手指のしびれや上下肢の動かしにくさなどの症状が出ることもあります。
術中の体位固定が影響していることも考えられるため、症状がある場合は看護師に伝えてほしいことを説明します。
術中の看護計画はどう立てる!?現役オペ看が現場で実践している手術看護のまとめ
手術中の看護計画は病棟看護と異なる点が多く、「麻酔に伴う全身状態への影響」や「同一体位での長時間手術」、「手術への不安」を考慮した看護ケアがポイントとなります。
これらの特性を踏まえながら、術前訪問等で得た患者情報をアセスメントし、手術患者さんに合った看護計画を立案することが重要です。

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