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「麻酔科の先生に『ちょっと喉押して!』と言われたけど、どこをどう押せばいいか分からず焦ってしまった…」
手術室に配属されたばかりの1〜3年目の看護師さんなら、一度はこんな経験があるのではないでしょうか?緊迫した気管挿管の場面で、先輩や医師から突然指示されると頭が真っ白になってしまいますよね。
実は、「喉を押す」というシンプルな指示には、全く異なる2つの目的(BURP法とセリック法)が存在します。
この記事では、それぞれの目的や正しい部位、押す力加減から医師との連携のコツまで、明日からの臨床ですぐに使える実践的な知識を分かりやすく解説します。もう挿管介助で迷わない、自信を持てる自分になりましょう!
オペ室あるある「いきなり喉押してと言われてパニック!」
手術室で気管挿管の介助についているとき、こんな経験はありませんか?
- 「喉押して!」と急に言われ、とりあえず喉仏のあたりを適当に押してしまった
- 「違う、そうじゃない!」と怒られたが、何が違うのか聞ける雰囲気ではなかった
- フルストマック(胃充満)の患者さんで、いつまで押し続ければいいか分からず手がプルプルした
これらは1〜3年目の手術室(オペ室)看護師が必ずと言っていいほど直面する「あるある」です。
気管挿管は患者さんの命を守るための最も重要な処置の一つであり、現場は常に緊迫しています。そのため、医師もつい語気が強くなりがちで、知識や経験が浅いと萎縮してしまいますよね。
しかし、安心してください。
「喉を押す」という行為の「理由(なぜそれが必要か)」が分かれば、次に何をすべきかが自然と見えてきます。焦らず適切な介助ができるよう、まずは基本となる2つの手法の全貌を紐解いていきましょう。
挿管介助における「喉を押す」2つの全く違う目的とは?
結論から言うと、「喉を押す」介助には以下の2つの種類があります。
- 視野の確保を目的とした「BURP法(バープ法)」
- 誤嚥(ごえん)の予防を目的とした「セリック法(輪状軟骨圧迫)」
この2つは「喉を押す」という見た目は似ていますが、目的・押す場所・タイミングが180度異なります。
なぜこの違いを理解することが重要なのでしょうか?
それは、目的を間違えて違う場所を押してしまうと、「挿管の邪魔をしてしまう」だけでなく、最悪の場合「患者さんの命を危険にさらす(気道閉塞や誤嚥を引き起こす)」という重大なインシデントに直結するからです。
ここからは、それぞれの方法について、「どこを」「どうやって」「いつ」押すのかを具体的に解説していきます。
【図解】BURP法(バープ法)の正しいやり方とポイント
目的:麻酔科医の「視野を良くする」こと
BURP法の最大の目的は、喉頭鏡で覗き込んだときの声門(気管の入り口)を見やすくすることです。
「あー、ちょっと声門が見えにくいな。喉押して」と医師が言った場合、十中八九このBURP法を求めています。難しい気管挿管を外からのアシストで簡単にするための手技です。
対象となる軟骨と押す方向
ターゲット:甲状軟骨(こうじょうなんこつ)
- いわゆる「喉仏(のどぼとけ)」の出っ張っている部分です。
押し方:名前の由来(B・U・R・P)
- Backward(後方・背側へ)
- Upward(上方・頭側へ)
- Rightward(右側へ)
- Pressure(圧迫する)
つまり、「喉仏を、背中側かつ頭側かつ右側にグッと押し上げる」のが正解です。
[テキスト図解:BURP法のイメージ]
患者さんの右側に立つ看護師から見て…
喉仏(甲状軟骨)を指で捉える
↓
① 下(背中側)に沈めこむ
② 上(頭側)へ持ち上げる
③ 右(麻酔科医から見て右)へずらす
新人がつまずくポイントと対策
【つまずきポイント】力が強すぎる・方向が定まらない
焦って力任せに押してしまうと、かえって気管が歪んでしまい「見えなくなった!離して!」と言われてしまいます。
【対策】
医師の目(喉頭鏡のモニターや視線)に合わせて、「これくらいですか?」「ここですか?」と声かけをしながらミリ単位で微調整しましょう。「あ、ストップ!そこ!」と言われた場所でピタッと止めて、挿管チューブが入るまでその位置をキープすることが最大のコツです。
【図解】セリック法(輪状軟骨圧迫)の正しいやり方と必須知識
目的:患者さんを「誤嚥(ごえん)から守る」こと
セリック法の目的は、胃の内容物が逆流して気管に入ってしまうのを帽子する(誤嚥を防ぐ)ことです。
緊急手術でご飯を食べたばかりの患者さん(フルストマック)や、腸閉塞などで胃に内容物が溜まっている患者さんの「迅速導入(RSI)」の際に、最後の砦として行われます。
対象となる軟骨と押す仕組み
- ターゲット:輪状軟骨(りんじょうなんこつ)
- 甲状軟骨(喉仏)のすぐ下にある、硬い指輪のような形の軟骨です。
なぜ輪状軟骨を押すのでしょうか?
気道にある軟骨の中で、輪状軟骨だけが「完全にぐるっと一周つながった輪っか」の形をしています。これを背骨に向かって真っ直ぐ押し付けることで、裏側にある食道を「ホースを足で踏みつけるように」物理的にペシャンコに潰すことができます。これにより、胃から逆流してきたものが食道から上に上がってくるのを物理的にブロックできるのです。
最重要!押すタイミングと力加減
セリック法は、やり方を一つ間違えると大事故につながるため、以下のルールを絶対に守ってください。
- タイミング:患者さんの「意識消失後」すぐ
- 意識があるうちに強く押すと、苦しくて患者さんが嘔吐してしまう危険があります。麻酔薬と筋弛緩薬が入り、意識がなくなった瞬間に圧迫を開始します。
- やめるタイミング:気管チューブの「カフが膨らむまで」絶対離さない
- チューブが気管に入っても、カフ(風船)が膨らんで気道が完全に密閉されるまでは、絶対に手を離してはいけません。「カフ入りました」と医師から合図があるまでキープです。
- 力加減:「約3kg(30N)」の力
- 弱すぎると食道を潰しきれず逆流を防げません。強すぎると気道が歪んで挿管できなくなります。親指と人差し指で輪状軟骨を挟み込み、真後ろ(背骨側)に向かってグーッと約3kgの力で圧力をかけます。
【ちょっとしたコツ】
3kgの力は意外と強いです。休憩時間などに、手のひらで体重計を押してみて「3kgってこれくらいか」と体感しておくことを強くおすすめします!
新人がつまずくポイントとよくあるミスと対策
【よくあるミス】途中で疲れてしまい、無意識に力が抜ける
迅速導入の際は緊張感が高く、思いのほか挿管に手こずることがあります。数分間3kgの力で押し続けると手がプルプルしてきて、無意識に圧迫が緩んでしまうことがあります。
【対策】
圧迫している自分の腕の肘を、ベッドの端や自分の体に固定して「体重をかける」ようにすると、腕の筋肉の疲労を防げます。また、もし力が抜けそうになったら我慢せず「手が疲れてきました、代わってください!」とすぐに周囲のスタッフに応援を呼ぶことが、患者さんの安全を守るための勇気ある行動です。
【必須知識】医師との連携ポイントとリアルな注意点
声かけと確認(自己判断は絶対にNG!)
ここまでの知識を踏まえて、実際に臨床で「喉押して!」と言われたらどうすればいいでしょうか?
一番やってはいけないのは「自己判断で適当に押す」ことです。
状況から「視野が悪いからBURP法だな」「緊急の手術だからセリック法だな」とある程度予測することは可能ですが、最終的な判断は必ず麻酔科医とすり合わせる必要があります。
【明日から使えるアクションフレーズ】
医師:「喉押して!」
あなた:「はい!『視野確保(BURP)』ですか?それとも『誤嚥防止(輪状軟骨圧迫)』ですか?」
このように、目的を確認する一言を添えるだけで、医師も「この看護師は分かっているな」と判断し、より明確な指示を出してくれるようになります。
インシデントにつながるリスクを予測する
手術室看護師としてのリアルな観察ポイントとして、挿管前〜挿管中の患者さんの変化を見逃さないことが重要です。
- サチュレーション(SpO2)の低下:挿管に時間がかかっていると、酸素化が低下します。「SpO2、90%切りました!」と声に出して医師にアラームを知らせましょう。
- 血圧の変動:麻酔薬の影響で血圧が急低下することがあります。昇圧剤の準備ができているか、ライン(点滴)が確実に取れているかを常に頭の片隅に置いておくこと。
セリック法を行っている最中に万が一嘔吐が見られた場合は、すぐに圧迫を解いて吸引の準備をしたり、患者さんの顔を横に向けたりする(側臥位にする)など、医師の指示に従って瞬時に動けるようにしておくことも重要です。状況を先読みするシミュレーションを常に頭の中で行いましょう。
周術期のリアルな観察ポイント(1〜3年目向け)
気管挿管が終わったからといって安心してはいけません。挿管直後の観察ポイントも押さえておきましょう。
- 胸郭の上がりと呼吸音
聴診器で左右の呼吸音が均等に聞こえるか(片肺挿管になっていないか)、胸がしっかり上下しているかを確認します。 - EtCO2(呼気二酸化炭素分圧)の波形
モニター上に波形が連続して出ているか。これが出ていれば、とりあえず「気管に入っている」という確実な証拠になります。 - カフ圧の確認とチューブの固定
カフ圧計を使って適切な圧になっているか確認し、テープや固定具を使ってチューブが抜けないように確実に固定します。固定中もチューブが引っ張られないように注意しましょう。
まとめ:明日から使えるアクションプラン
いかがでしたか?最後に、本日の要点を整理します。
- 喉を押す目的は2つあることを理解する
- BURP法=「視野確保」のため。甲状軟骨を「右・上・後」へずらし、チューブが入るまでキープ。
- セリック法=「誤嚥予防」のため。意識消失直後に輪状軟骨を「真後ろ」へ「約3kgの力」で押し、カフが膨らむまで絶対に離さない。
- 指示されたら必ず「目的」を医師に確認し、自己判断しない。
【明日からのアクションプラン】
1. ご自身の喉仏とその下にある輪状軟骨の位置を触って確認してみましょう。
2. 体重計を押して「3kgの力」を体感し、感覚を手に覚えさせましょう。
3. 次の挿管介助で「喉押して」と言われたら、必ず「視野のためですか?誤嚥防止ですか?」と勇気を出して聞いてみましょう。
目的さえ分かれば、もうパニックになることはありません。あなたのその適切な介助が、患者さんの命を守り、医師のスムーズな処置を助けることにつながります。自信を持って、明日からの現場に臨んでくださいね!
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