何気なく受けた脳ドッグや健康診断で「脳の血管に動脈瘤(血が溜まりコブのようになっている状態)がある」と診断されて驚いている方、または脳の手術を進められて困っている方、いらっしゃるのではないでしょうか
今回は、動脈瘤が破裂してしまうことを未然に防ぐための手術「脳動脈クリッピング手術」について解説していきます
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脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)とは何?
脳の動脈血管にできる袋状のコブのことで、血管の一部に小さく風船のように膨れ上がった状態となっています
この動脈瘤が破裂していない状態(未破裂状態)では、無症状のことがほとんどです
なぜ動脈瘤ができてしまうのか
原因はハッキリとは分かっていませんが、脳動脈血管が弱くて脆い状態になってしまうことが要因の一つと考えられています
喫煙や高血圧、過度な飲酒などが、血管を弱くて脆い状態にしてしまうため、これらが脳動脈瘤の発生の原因と考えられています
また、家族の中に脳動脈瘤が発生した方がいる場合、血管壁が遺伝的に元々弱い状態となっている可能性があり、動脈瘤の発生や破裂を引き起こす可能性が高くなるとも言われています
動脈瘤が万が一、破裂したらどうなるの?
動脈瘤が破裂すると、「血管の一部に穴が開いた状態」となるため、その部分から出血します
すると、脳を包んでいるくも膜と呼ばれる膜の内側に出血をきたします
これが「クモ膜下出血」と呼ばれる病気です
クモ膜下出血とは
クモ膜下出血とは、脳の「クモ膜下腔」と呼ばれる場所に出血することを指します
脳実質(脳そのもの)は、外側から硬膜・クモ膜・軟膜と呼ばれる3つの膜で重なるように包まれていますが、
クモ膜下腔とは、このクモ膜と軟膜の間の隙間のことを指します
クモ膜下出血の症状
- 強い頭痛(「頭をバッドで殴られたような頭痛」と表現されることが多い)
- 吐き気や嘔吐
- 意識が朦朧(もうろう)とする
- 手足の麻痺
- 「言葉が出ない」、「言葉を発しにくい」などの症状
- 意識を失うなどの意識障害
「脳動脈クリッピング手術」とはどんな手術?
脳動脈クリッピング手術とは、脳動脈瘤の根本の部分に金属製のクリップをかけることで、血液がこれ以上、動脈瘤の方へ入らないようにします
また、クリップをかけることにより、瘤の破裂により、脳血管から多量に出血してしまうことを防ぎます
脳にかける「クリップ」はチタン合金製でできており、永久に脳に留置されていても問題ないものです
また、術後のMRI検査などにも支障のないものとなっています
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脳動脈クリッピング術の流れ
手術室への入室
手術室へ向かう時は基本的には歩いて手術室へ向かいます
手術室への入室前にはご本人確認として、名前をフルネームで名乗ることや、生年月日を答えます
手術室への持ち物や、手術前に外すべきものについては以下の記事を参考にしてください
麻酔導入~手術開始
心電図や血圧計など、手術時に必要なモニター類を装着したら、麻酔をかけていきます
全身麻酔とは何かや、麻酔の仕組みについては以下の記事を参考にしてください
開頭(かいとう)する
まずはメス刃や電気メスで頭の皮膚を切っていきます
その後、頭部手術用の医療用ドリルを使用し、頭蓋骨の一部を切り取り、脳から外します(手術したい動脈瘤部分は、頭蓋骨の下側にあるため、頭蓋骨を外す必要があります)
この流れを「開頭」と呼びます
脳動脈瘤にクリップをかける
脳血管はとても細かく、小さいため、「マイクロサージャリー」と呼ばれる手術用顕微鏡を使用し、手術部分を拡大して見ながら手術を進めます
動脈瘤を確認したら、脳血管に対して適切な形・大きさのクリップを選択し、クリップをかける位置を定めます(「クリップ」には形・大きさの違う種類のものが多くあります)
位置を定めたら、適切なサイズのクリップを動脈瘤の根本部分にかけます
また、クリップをかける際は
まずは動脈瘤よりも心臓側に「テンポラリークリップ」と呼ばれる一時的なクリップをかけて血流を止めてから、
動脈瘤の根本に永久留置のためのクリップをかけます
動脈瘤の根本にクリップをかけたら、最初にかけたテンポラリークリップを外します
そうすることで、大出血することなく手術を進めることができます
この、脳血管へクリップをかけることを「クリッピング」と呼びます
クリップをかけ終えたら、「ドップラー」と呼ばれる機械などを使用し、「クリップをかけた後も正常に脳血流が保たれているか」を確認します
脳血流が問題なければ、クリッピング終了です
閉頭(へいとう)する
クリッピングを終えたら、最初に取り外した頭蓋骨を脳の元の位置に戻し、医療用ネジ等を使用し、固定します
その後、脳皮下を針糸で縫い合わせ、開いた頭を閉じていきます(閉頭)
皮膚の下の皮下出血を排出するために、「ドレーン」と呼ばれる管を脳皮下に留置する場合もあります
閉頭し終えたら、手術終了です
麻酔終了~手術室退室
手術を終えたら、麻酔から覚まし、問題なければ入院病棟へと戻ります
まとめ
脳動脈瘤クリッピング手術の流れについて解説しました
治療や手術に迷っている方はぜひ参考にしていただけると幸いです
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