甲状腺腫瘍(こうじょうせんしゅよう)摘出術の流れについて解説【手術室看護師・器械出し看護師・耳鼻科医向け】

呼吸器・耳鼻
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甲状腺腫瘍摘出術とは?

甲状腺に悪性腫瘍がある場合や、良性でも腫瘍が大きい場合に行う手術です

基本的には、甲状腺の半分を切り取りますが

両側に多発している場合や大きく浸潤している場合には甲状腺全摘となります

(甲状腺摘出術)手術患者入室〜麻酔導入

手術前の患者さんの準備や入室時に必要な確認事項については以外の記事にまとめています参考にしてください

麻酔から挿管までの手順は以外の記事にまとめています

参考にしてください

手術体位をとる【仰臥位・頸部伸展位】

全身麻酔がかかったら、次に患者体位をとっていきます

甲状腺摘出術は仰臥位で行います

また手術操作をしやすくするため、肩下に枕を挿入し頸部を伸展させたような体位『頸部伸展位(けいぶしんてんい)』とします

「肩枕」は肩甲骨の下を目がけて挿入しましょう

外回り看護ポイント

「肩枕」を挿入し、高さが出ることによって両肩がベッド面から浮いた状態となることがあります

そのような状態で手術が開始されると、両肩が牽引され術後の腕神経叢損傷(わんしんけいしょうそんしょう)につながります

そのため、肩枕挿入後は必ず「両肩がベッド面から浮いていないか」を確認し

浮いている場合は、枕やクッションを挿入することで調節していきましょう

前頸部を消毒~ドレーピング

①清潔野にて、前頸部を消毒します

②手術野のドレーピングを行います

③電気メスやサクション、バイポーラなど使用するデバイス類をセッティングします

皮下・筋層下に局所麻酔を注入する

指示の局所麻酔薬を皮下・筋層下に注入します

皮膚切開し手術開始

①前頸部を襟状に皮膚切開します

②切開した皮膚を開創器で開創、もしくは皮膚の端部分をつり針で牽引固定します

器械出し看護ポイント

皮膚切開時はNo.10メスと電気メスで切開します

組織を把持するためにモスキートコッヘルや、組織剥離のために曲がりのペアン止血鉗子を使用するため、すぐ渡せるように準備しておきます

また、助手医師は皮膚切開部をスキンフックやランゲンベック扁平鉤で開創するため、それらを助手医師へ渡せるように準備しておきます

【皮膚切開の種類には以下の4種類の方法があります】

・術後の瘢痕を考慮し、皺に平行に切開する方法

・輪状軟骨から約2横指下の頸部を襟状に切開する方法

・耳下部からのJ字切開あるいは逆J字切開とする方法

・広頸筋直下層で広く剥離する方法

前頸部の処理

小血管を処理する際は結紮(けっさつ)を行います

もしくはエネルギーデバイス等を使用し、止血しながら進めていきます

器械出し看護ポイント

結紮(けっさつ)を行うときの流れ

①ケリー鉗子もしくはペアン止血鉗子で結紮したい血管をすくい上げます

②ケリー鉗子もしくはペアン止血鉗子で結紮したい血管を2箇所で把持します

③両側で把持した血管の中央部分をメッツェンバーム剪刀で切ります

④絹糸で切った血管を結紮します

甲状腺を露出させる

①胸鎖乳突筋、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋をよけて甲状腺を露出させます

②甲状腺を穿通する小血管を電気メスやバイポーラを使用し、止血します

③甲状腺はアリス鉗子で把持して、露出させます

【甲状腺の解剖】

甲状腺は3つの構成部分から成り立ち、右側が「右葉」、左側が「左葉」、そして中間の部分を「峡部(きょうぶ)」と呼びます

上甲状腺動脈・静脈、下甲状腺動脈、中甲状腺静脈の結紮と切断

①甲状腺上極を剥離すると上甲状腺動脈と上甲状腺静脈が見えるので、これを結紮し、切断します

②同様に、下甲状腺動脈と中甲状腺静脈も結紮し、切断します

反回神経の確認と処理

反回神経を剥離し、ベリー靱帯を結紮、切断し、反回神経を露出します

【反回神経の走路】

右反回神経は気管壁から少し離れて上下に走ります

左反回神経は気管と食道の間に走り、輪状軟骨の下縁で喉頭に入ります

甲状腺腫瘍摘出

①下甲状腺静脈を結紮し、切断します

②甲状腺腫瘍を摘出します

【半葉切除と両葉切除の場合】

・半葉の場合は正中の峡部を結紮し、左右に離断します

・両葉切除のは、同様の操作を反対側でも行います

外回り看護のポイント

検体の取り扱い方法については医師に必ず確認します

甲状腺摘出部の止血確認&ドレーン挿入

①術野の止血確認をします

②ドレーンを挿入します

手術終了、麻酔覚醒

皮下縫合し、手術終了となります

手術終了後、患者さんを麻酔から覚まし、退室となります

甲状腺腫瘍摘出術まとめ

今回は甲状腺腫瘍摘出術の流れについて解説しました

手術室看護師の方、耳鼻科医の方はぜひ参考にしてください

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