大人にも子どもにも起こる脳腫瘍(のうしゅよう)について

麻酔&手術看護
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脳腫瘍(のうしゅよう)とは

脳腫瘍とは、頭蓋内(ずがいない)に発生する腫瘍の総称で

良性腫瘍と悪性腫瘍があります

良性の場合は脳実質外の組織に発生しやすく、

「増殖速度が遅い」

「正常組織との境界が分かりやすい」

などの特徴がある一方で、

悪性の場合は脳実質に発生しやすく、

「増殖速度が速い」

「正常組織との境界が分かりにくい」

「周りの組織に広がりやすい」

などの特徴があります

脳の細胞や脳を包む膜、脳神経などから発生した腫瘍[原発性脳腫瘍]、または他の臓器で生じたがん(肺がんや乳がん、大腸がんなど)が、

血液の流れによって脳に転移したもの[転移性脳腫瘍]があります

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脳腫瘍の種類

グリオーマ

グリオーマは全ての脳腫瘍のうち、約30〜40%の割合です

脳実質から発生し、進行していくもので、手術で全てを取り除くことは難しいものです

手術の目的は、頭蓋内圧を低下させること(腫瘍で脳が圧迫されていることにより、脳内の圧が高くなっているため、それを緩和すること)です

大脳半球にできるタイプのグリオーマは成人に多く、ゆっくりと浸潤性に発育するものが多いです

視床下部や小脳にできるグリオーマは小児に多く、比較的良性のものも多く見られます

髄膜腫(ずいまくしゅ)

髄膜のクモ膜細胞と呼ばれる場所に発生するもので、良性の腫瘍です

40代の女性に好発すると言われています

下垂体(かすいたい)腫瘍

脳の「下垂体」と呼ばれる場所に発生する腫瘍です

基本的には良性のものが多いです

しかし症状として、尿崩症や視力障害、下垂体前葉機能障害などがあるため、手術で取り除くことが望ましいとされます

下垂体は、鼻のすぐ上側に位置する臓器です

そのため下垂体腫瘍の手術は、手術用顕微鏡を用いて、鼻から手術を行うことがほとんどです

脳腫瘍の症状

脳腫瘍が脳に発生し、大きくなると、脳浮腫(のうふしゅ)となり、「脳がむくんでいる状態」となります

頭蓋骨は固く、変形することができないため、脳がむくみ、腫れるにつれて、脳内は圧迫され、頭蓋骨内の圧力が高い状態となってしまいます

これを「頭蓋内圧亢進(ずかいないあつこうしん)」と呼び、さまざまな症状を引き起こします

また、腫瘍が発生した場所の脳が障害されて起こる症状は「局所症状」(巣症状)と呼ばれます

頭蓋内圧亢進によって引き起こされる症状

頭蓋内圧亢進によって起こる症状には以下のようなものがあります

  • 頭痛
  • 嘔吐
  • 吐き気
  • 意識障害など

局所症状(巣症状)の一例

局所症状は、腫瘍が発生した場所の脳が障害されて起こるものを指します

脳は部位によって機能が異なるため、腫瘍が発生する位置によって、起こる症状も異なります

たとえば、「前頭葉(ぜんとうよう)」と呼ばれる場所に腫瘍ができると、上手く言葉を発することができなくなるなどの症状が現れ、

小脳に腫瘍ができると、めまいやふらつき、まっすぐ歩くことができない、などの症状が現れます

脳の解剖や部位によるそれぞれの働きについては以下の記事も参考にしてください

脳腫瘍の治療方法

基本的には手術を行い、脳腫瘍を摘出します

しかし腫瘍の摘出により、脳機能が低下するリスクが高い場合などは全てを摘出することは難しくなります

そのため、手術に追加した補助療法として、放射線療法、化学療法、免疫療法などを行います 

脳腫瘍摘出術の流れ

全身麻酔の流れについては以下の記事を参考にしてください

また手術を受ける際には、身につけているもので外さなければならないものもあるため、以下の記事も参考にしてください

消毒~手術開始

  1. 頭部の剃髪を行い、頭部の消毒を行う
  2. ナビゲーションと呼ばれる機械を使用し、脳内の腫瘍位置を確認する
  3. メスにて頭部皮膚の切開を行う

開頭

医療用ドリル使用し、頭蓋骨に穴をあけ、

頭蓋骨をある程度の大きさに切り取り、骨を取り出す

硬膜の切開

頭蓋骨の内側部分に存在する硬膜を切開し、

脳腫瘍の存在する部分への到達を目指す

マイクロ使用し、脳組織を切開

マイクロと呼ばれる手術用顕微鏡を使用し、術野を拡大させ、脳血管などの位置等を確認しながら手術を進めていく

脳腫瘍の摘出

腫瘍が大きい場合は、キューサーと呼ばれる機械等使用し、腫瘍組織をかみ砕きながら腫瘍を摘出していく

閉頭

脳腫瘍の摘出を終えたら、切開した硬膜、頭蓋骨を閉じ、手術終了となる

頭蓋骨を閉じる際は、開頭の際に切り取り取り出した頭蓋骨をそのまま元の位置へ戻し、プレートやスクリューで固定する場合が多い

小児の脳腫瘍について

15歳未満に生じる脳腫瘍を小児脳腫瘍と呼びます

脳腫瘍全体のうちの約25%が小児脳腫瘍です

幼い子どもの場合は症状を上手く伝えることができず、嘔吐や機嫌が悪いなどといった状態から発見される場合もあります

小児の場合も、成人と同様に治療は手術で腫瘍を摘出することが基本となります

全てを摘出することが難しい場合は、年齢や状況を考慮しながら、化学療法を組み合わせて行います

子どもへの全身麻酔については、以下の記事を参考にしてください

まとめ

今回は脳腫瘍の症状や治療についてまとめました

ぜひ参考にしていただけると幸いです。

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