開腹手術とは
開腹手術とは、その名のとおり、
「お腹を開いて手術する方法」のことです
皮膚をメスで切り、お腹の中を大きく開き、手術したい臓器に到達します
人間の皮膚は、体の臓器に到達するまで、何層かの組織が重なっています
体の外側から内側に向かって順に、
皮下組織(皮膚)→筋層(筋肉の層)→腹膜(お腹の臓器全体を覆う膜)→臓器
となっています
開腹手術の場合は、これらの組織の層を順番にメスで切っていき、
手術したい臓器に到達していきます
開腹手術の適応
腹腔鏡でも手術できるものが多い一方で、
開腹手術でしか実施できない手術もあります
- 摘出する臓器(検体)の大きさが大きく、腹腔鏡のポート穴から取り出せない場合
- 胃全摘手術
- 右半結腸手術(大腸の半分を取り出す手術)
- 骨盤内全摘手術 など
- 検体を摘出した後の吻合操作が複雑なもの(吻合:組織と組織をつなぎ合わせる操作)
- 心臓のバイパス術
- 膵頭十二指腸手術 など
- 手術操作のために、術野(手術をする場所)を広くとる必要のある手術
- 大動脈解離手術(心臓から出る太い動脈の手術)
- 肝臓や腎臓などの移植手術
- 手術部位が腹腔外のもの
- 四肢や指などの形成外科や皮膚科の手術
- 腰や大腿骨など整形外科での手術
- 眼科手術 など
- 体内の状態が腹腔鏡手術に適していない場合
- 何度も手術を繰り返しており、組織が癒着状態(組織と組織が強くくっついていて剥がしにくい状態)となっている場合
- 緊急手術の場合や、腹腔内で出血していることが考えられる場合 など
腹腔鏡手術とは
腹腔鏡手術とは、腹部に5〜12mm程度の小さな穴を3〜5か所程度あけて、手術をする方法です。
開けた小さな穴には「ポート」と呼ばれる筒のようなものを挿入し、このポートから腹腔鏡手術のための手術器具を挿入して手術を行います
腹腔鏡手術では、お腹をCO₂ガス(炭酸ガス)で膨らませ、ポートから挿入した腹腔鏡用カメラを用いて、モニターにお腹の中を映した状態で手術していきます
腹腔鏡手術の適応
腹腔鏡で手術ができるものは以下のものがあります
- ポート挿入につくった穴・もしくは小開腹(お腹を少し切り開くこと)から検体を取り出すことが可能な手術
- 腎臓摘出術
- 胆のう摘出術
- 虫垂炎手術
- 気胸手術などの肺部分切除手術 など
- お腹の中の癒着(組織と組織が強くくっついていること)が少ない場合
- お腹の手術経験が少ない方
- 炎症傾向が少ない方
- 全身麻酔を受けることのできる方
- 腹腔鏡手術は基本的に全身麻酔で行います。腹腔鏡手術では、腹腔内を膨らませて手術を行いますが、意識があると横隔膜をかなり圧迫し息苦しいため、全身麻酔で行います
- 心臓の弱い方など、全身麻酔に耐えることが難しい方は、腹腔鏡での手術も難しくなります
開腹手術のメリット
- お腹を開くまでの時間が、腹腔鏡手術よりも短時間であるため、緊急手術に適している(救命しやすい)
- お腹を大きく開く、すなわち術野が広いため、病変や腫瘍(がん)の位置を確認しやすい
- 術者が病変や腫瘍に直接触れることができるため、病変の状態を確認しやすい
- 病変が大きい場合や、吻合操作が必要な場合など、腹腔鏡ではできない手術でも、開腹手術であれば行うことのできるものがある
- 全身麻酔を受けることのできない状態にある患者さんでも、開腹手術であれば局所麻酔で手術を受けることができる場合がある
開腹手術のデメリット
- お腹を大きく切るため、手術後の傷が大きくなる。そのため、腹腔鏡手術に比べて、手術後は傷の痛みが強い
- 退院までの日数を要する場合が多い
- お腹の傷口から細菌が入った場合など、傷口からの感染を起こす場合がある
- 傷が目立ちやすい
腹腔鏡手術のメリット
- 小さい傷で済む
- 傷の痛みが開腹手術後に比べると少ない
- 退院までの日数が比較的短い
- 手術中はモニター画面を見ながら手術をするため、執刀の医師だけではなく、助手の医師も術野の状態を確認しやすい➝安全な手術進行につながりやすい
腹腔鏡手術のデメリット
- CO₂(炭酸ガス)でお腹を膨らませながら手術をするため、それによる合併症が起こる場合がある(皮下気腫:皮下組織の中に空気が入ってしまうこと など)
- 大きな手術の場合は、腹腔鏡でできないなど、できる手術に限界がある
- 局所麻酔では行うことができない
- 万が一、出血した場合など、開腹手術へ移行せざるを得ない場合、最初から開腹手術で行っていた時よりもややリスクがある
結局、開腹手術と腹腔鏡手術どちらが良いの?
実施する手術によって、腹腔鏡手術でできるものと、できないものがあることや、
患者さんの状態によっては開腹手術の方が適しているなど、
状況によって、適する手術方法が代わってきます
なので、一概には腹腔鏡手術と開腹手術のどちらが良いとは言い切れませんが、
基本的に事前に予定された手術で、かつ腹腔鏡手術が可能な場合は、
侵襲(手術による体への影響)の少ない腹腔鏡手術が第一選択になるかと思います🙂
コメント